オブジェクト指向言語とは
オブジェクト指向言語とは、オブジェクト指向を基準として設計したもので、プログラムを簡単に記述することができるプログラミング言語のことです。これによって、人間の思考に近い表現が可能になりました。現在では、さまざまなオブジェクト指向言語が開発されています。
しかし、実際にオブジェクト指向言語の概念を、しっかり理解できている人は少ないのかもしれません。そこで、本記事ではオブジェクト指向言語をより深く知るため、重要なキーワードや代表的な言語を解説するとともに、メリットと勉強法もあわせてご紹介します。
そもそも「オブジェクト指向」とは?
オブジェクト指向とは、共通点や関連性があるデータやメソッドを「クラス」にまとめて管理する開発手法を指します。
例えば、何か機能を作りたい場合に1から全てを作ろうとすると大変です。しかし、オブジェクト指向で記述することにより、クラスにデータを渡すだけで簡単に機能を用意することができます。
オブジェクト指向が誕生したきっかけ
オブジェクト指向という考え方を初めて提唱したのは、パソコンの生みの親であり、プログラミング言語SmartTalkの開発にも携わったアラン・ケイ氏と言われています。
1950年代当時は、コンピューターの技術が急激に発展するとともに、プログラミングもより複雑さを増していました。時間と手間がかかるプログラミングに、より迅速で高い問題解決能力を持たせるため、オブジェクト指向は誕生しました。
オブジェクト指向と手続き型の違い
オブジェクト指向と比較されるのが「手続き型」です。代表的な言語には、FORTRANやCOBOLといったものがあります。オブジェクト言語がモノとモノとの関係性によりシステムを構築していくのに対して、手続き型は上から順番に記述していく手法です。
手続き型のオブジェクト指向でない言語は、順番通りなので初心者でもわかりやすいというメリットがあります。一方、大規模な開発では機能が分割しづらいのがデメリットです。
オブジェクト指向言語を理解する上で重要な概念
ここではオブジェクト指向言語を理解する上で、重要な用語や概念をわかりやすくまとめました。これからオブジェクト指向言語習得を目指す場合は、まずは以下の用語や意味を覚えましょう。
オブジェクト
オブジェクトとは、簡単に言えば全ての物や事柄のことです。オブジェクト指向では、メソッドや変数などを「オブジェクト」という単位で扱います。共通のオブジェクトは「クラス」にまとめられ、機能を開発する際に外部から利用されます。
クラス
クラスとはプログラムの設計図のようなものです。機能を開発する際に1から作るのは大変なため、クラスという設計図を用いることで容易に作れるようにします。クラスの中には、設計に必要な情報(プロパティやメソッド)が含まれています。これらを使って、機能を開発していきます。
インスタンス
インスタンスとは、設計図であるクラスから生成した実体のことです。例えば「車」というクラスを作ったとします。このクラスを基に、トラックやパトカーなどのさまざまな種類の車を作ります。この場合、トラックやパトカーがインスタンスにあたります。
インスタンスはクラスにさまざまな情報を送り、クラスはそれを基に実際の車を作っていきます。言語にもよりますが、Javaでは「new クラス名()」と書くことでインスタンスが生成可能です。
プロパティ
プロパティとは、オブジェクトを生成するためのデータを指します。いわば、どんなインスタンスでも使う共通のものです。例えば「車」というクラスなら、「タイヤの数は4本」「ハンドルは1つ」などのプロパティが必要になります。
プロパティがあるおかげで、車の定義から外れたインスタンスが生成されずに済むのです。プロパティは変数として格納し、基本的に外部から変更ができないようにします。
メソッド
メソッドとは、インスタンス全ての共通のアクションのことです。例えば「車」というクラスなら、走る・止まる・曲がるなどのメソッドがあります。これらのメソッドに情報を与えることで、車の走るスピードなどを決めていきます。メソッドがあるおかげで、1からプログラムを作る必要がなくなります。
代表的なオブジェクト指向言語一覧
ここでは、オブジェクト指向言語の代表的な例を紹介します。多くの言語をオブジェクト指向で書くことができますが、特に、現在開発現場で使われている言語を6つ厳選しました。オブジェクト指向を学ぶことで、これらの言語の理解が容易になるでしょう。1つ1つの言語の特徴について、詳しく解説していきます。
Java
Javaはオブジェクト指向言語の代表例です。JVM言語でもあり、幅広い用途に使われています。特にデスクトップアプリ、Androidアプリの開発で多く使われている言語です。Javaはソースコードの修正がしやすく、大規模開発に向いています。求人数も多いため、仕事を獲得したい方にもおすすめの言語です。
PHP
PHPはWebアプリ分野で活躍している言語です。文法が平易なのが特徴で、初心者でも習得が容易です。フレームワークも充実しており、ECサイトやSNSなど数々のアプリを作成できます。
そんなPHPですが、実はオブジェクト指向で書ける機能も備わっています。オブジェクト指向を使えば、大規模なWebアプリも開発することが可能です。
JavaScript
JavaScriptは、Webアプリ分野のフロントエンドで活躍している言語です。フロントエンドとはサイトの表側のことで、サイトのレイアウトやサイト表示後の処理を担当しています。
JavaScriptはフロントエンド開発において、20年も現役で活躍しています。Webアプリ開発に携わるなら、JavaScriptも習得すべき言語でしょう。
Python
Pythonは、プログラミング初心者から上級者まで広く使われている言語です。特徴として、シンプルで覚えることが少ない構文・1行で多くの処理を記述できる・外部ライブラリが豊富・標準ライブラリとして多くの機能が用意されている、などが挙げられます。
C++
C++は、C言語をオブジェクト指向で書けるようにした言語です。
C言語はオブジェクト指向ではなく関数型言語と呼ばれています。関数型言語は、処理を関数にまとめて取り扱う開発手法のことです。数学的な処理を得意とする他、テストがしやすいというメリットがあり、家電製品などのプログラムでC言語はよく使われます。
対してC++は、スマホアプリやゲーム開発に多く使われる言語です。C言語をパワーアップした言語であるため、ポインタを使えたりメモリの管理ができたりするのもメリットです。反面覚えることが多く、初心者にはハードルが高い言語とされています。
Swift
SwiftはiOSアプリ開発で使われる言語です。iOSだけでなく、MacブックやApple WatchなどApple製品全ての開発で使えます。文法が平易な上にバグが出にくい仕様のため、初心者でも扱いやすいのが特徴です。
昔はiOS分野ではObjective-Cが主流でしたが、習得難易度の高さやSwiftの方が処理が高速なことから、次第にSwiftにシェアを奪われていきました。
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オブジェクト指向言語のメリット
ここからは実際オブジェクト指向言語を使用することで、どのようなメリットがあるのかを解説します。実務上のメリットから使用者個人のメリットまで、多くの利点が考えられます。
分業がしやすくなる
まずはじめに、分業しやすいという点がメリットとして挙げられます。大規模なシステムを構築する場合、作業を数人で分担しなくてはいけません。オブジェクト指向を使用すれば、複数人でのプログラミング作業を上手く分担することができるため、仕事をスムーズに進められます。
エラーやバグを見つけやすくなる
オブジェクト指向言語を使用することで、エラーやバグに費やしていた時間を大幅に減らせます。問題点が発覚した場合はソースコードの修正が必要ですが、オブジェクト指向なら修正部分がどこなのかがわかりやすいため、よりスピーディーに修正可能です。
効率がよくなることで収益・収入アップが見込める
オブジェクト指向言語を使用することで、仕事の効率がよくなることは間違いありません。効率があがれば当然ながら収益面、ひいては収入のアップも期待できます。
因みに、一般的なプログラマーの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は344万円(※2023年5月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収592万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、プログラマーは調査媒体によって年収にバラつきがあることが分かります。
プログラマーの報酬は能力が重要視される傾向があるため、さらに年収を上げるには、スキルアップを図ることが重要です。オブジェクト指向言語を深く理解して使いこなせるようになることで、年収アップや上位職へのキャリアアップに繋がるでしょう。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
おすすめのオブジェクト指向言語の勉強方法
ここでは、オブジェクト指向言語を学ぶ具体的方法をわかりやすく解説します。オブジェクト指向を学ぶ場合にどのようなことに気をつけるべきかも説明しているため、これからオブジェクト指向言語を学ぶ方は、ぜひ参考にしてください。
参考書を購入する
プログラミング言語の参考書は文法に関する説明が中心で、オブジェクト指向の説明は詳しく書かれていないことがあります。本で勉強する場合は、オブジェクト指向専用の参考書を購入しましょう。以下に、おすすめの参考書を2冊紹介するので、ぜひこれらを精読して基本的な概念を理解してください。
「新わかりやすいJava オブジェクト指向徹底解説 第2版 (単行本)」 わかりやすい図版や、先輩ネコと新人ネコの楽しい会話文で、Javaオブジェクト指向をじっくり丁寧に解説しています。ラムダ式やストリーム処理はもちろん、オブジェクトモデリングやrecordについても学べます。
▪著者:立山 秀利 ▪ページ数:712ページ ▪出版社:秀和システム ▪発売日:2022/1/28
【参考】:新わかりやすいJava オブジェクト指向徹底解説 第2版 (単行本)
「オブジェクト指向でなぜつくるのか 第3版」 Java・Python・Ruby・JavaScriptの最新動向を盛り込んでいる参考書です。オブジェクト指向の全体像や特徴、アジャイル開発手法と実践手法などが記載されています。
▪著者:平澤 章 ▪ページ数:372ページ ▪出版社:日経BP ▪発売日:2021/4/19
【参考】:オブジェクト指向でなぜつくるのか 第3版
実際の開発現場でスキルを磨く
オブジェクト指向に関しては実際の開発現場で働くことで、初めて有用性が分かることもあります。例えば、仕様変更時にオブジェクト指向ならすぐ変更できることや作業箇所の分担のしやすさなどは、個人で開発していても実感しにくいでしょう。
また、オブジェクト指向を用いる企業は大規模な開発をしていることが多く、人材育成の人手を回す余裕があります。研修がしっかりしているため、そこでオブジェクト指向を学ぶことも可能です。実際の開発現場で、オブジェクト指向の便利さを体感しましょう。
オブジェクト指向を自在に活用できるようになれば、プログラマーとしてキャリアアップできる可能性が高まります。今よりいい条件で働ける転職先を探すなら、プロのアドバイスを受けられる転職エージェントの活用をおすすめします。
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実際にオブジェクト指向でアプリを開発する
オブジェクト指向の概念が理解できたら、実際にオブジェクト指向でアプリを開発してみましょう。それぞれの言語で、どのように記述するかアウトプットすることで覚えていきます。簡単なアプリでもいいので、1人で完成させることが大切です。
試行錯誤しながら実行することで、開発現場で働けるだけのプログラミング力が身についていきます。
オブジェクト指向言語は開発に欠かせない存在
本記事では、オブジェクト指向言語について解説しました。オブジェクト指向は多くの開発現場で用いられており、特に大規模な開発では活用するメリットが大きいのが特徴です。また、代表的なオブジェクト指向言語にはJavaScript・PHP・Pythonなどがあります。
オブジェクト指向言語を勉強する場合は、参考書の熟読や実際にアプリ開発を試みるのがおすすめです。オブジェクト指向言語を活用できるようになれば、さらなるキャリアアップも図れます。
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