統計検定の難易度はどれくらい?
近年、機械学習やディープラーニングなどのAI技術や、ビッグデータを分析して企業活動に活かすデータサイエンスなど、データを分析して活用する分野に注目が集まっています。
統計検定は、このようなデータを活用する分野には欠かせない、統計学に関する知識や技能を評価する検定試験です。データを取り扱うエンジニアの方の中にも、統計検定の受験に興味を持っていて、その難易度がどの程度なのか気になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、スキルアップや実務に活かすために統計検定4級〜1級の受験を検討している方に向けて、各級の合格率・難易度、おすすめの受験級などについて解説します。
統計検定の試験情報
ここでは、まず統計検定の基本情報として、検定の概要や検定種別について説明します。
統計検定の概要
統計検定では、データに基づく客観的な判断能力や、統計に関する能力が問われます。データサイエンティストとして活躍するエンジニアや、データサイエンティストを志す学生、ビジネスシーンにおいてデータを活用する、あらゆる社会人に受験のメリットがある、おすすめの検定試験です。
統計検定は、一般財団法人 統計質保証推進協会が主催しています。国家資格ではありませんが、総務省・文部科学省・経済産業省・内閣府・厚生労働省が後援する、信頼性の高い検定として知られています。
【参考】:統計検定とは|統計検定:Japan Statistical Society Certificate
統計検定の検定種別
統計検定は受験者のレベルや受験の目的に応じて、4級・3級・2級・準1級・1級・統計調査士・専門統計調査士・データサイエンス基礎・データサイエンス発展・データサイエンスエキスパートの、10種類の区分に分かれています。
受験資格はないため、学歴や実務経験に関わらず、誰でもどのレベルからでも受験することができます。
今回解説する4級〜1級は、統計学に関する専門的な知識を問われる検定試験です。入門者向けの4級では統計に関する基本的な知識が問われ、級が上がるにつれて、より専門的な統計学の知識が求められます。最上位の1級では、実社会の様々な分野でのデータ解析を遂行する統計専門力が必要とされます。
なお、統計調査士は公的統計の理解と活用力、専門統計調査士は調査全般に関わる高度な専門的知識と利活用手法に関する能力を評価する検定です。また、データサイエンス基礎・データサイエンス発展・データサイエンスエキスパートは、データサイエンス分野に関する検定で、レベルに応じた3種類に分かれています。
【参考】:検定種別|統計検定:Japan Statistical Society Certificate
統計検定4級〜1級の試験方式
統計検定では、1級を除く、4級・3級・2級・準1級について、従来の紙媒体の試験(PBT方式試験)が2021年で終了し、現在はCBT方式での実施になりました。
CBT(Computer Based Tasting)方式とは、紙媒体ではなく、指定の試験会場でパソコンを使って試験を受ける方式です。特定の試験日は決められておらず、試験会場が指定している日であれば、受験者が希望する日にいつでも受験することができます。
【参考】:1級以外の種別の紙媒体を利用した従来の試験(PBT方式試験)の終了について(更新)|統計検定:Japan Statistical Society Certificate
統計検定の申し込み方法
PBT方式で行う1級と、CBT方式で行う1級以外では申し込み方法が異なるので注意しましょう。
まず、1級の統計検定は例年11月の第3日曜日に行われており、申し込み期間は9月初旬〜10月初旬の1ヶ月間です。公式ページのWebフォームから申し込みを行い、全国の主要都市に設置される会場で受験します。
一方、1級以外の統計検定は、提携先である株式会社オデッセイ コミュニケーションズのサイトで申し込みを行います。試験日は会場によっても異なるため、申し込み時にチェックしましょう。
【参考】:統計検定:申し込み
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統計検定の合格率と難易度
ここからは、統計検定4級から1級まで、それぞれの合格率と難易度について解説していきます。おおまかにまとめると、4級と3級は入門者向けで比較的難易度が低め、2級は資格試験として一般的な難易度、準1級と1級は高難易度と言えます。なお、合格率は統計検定公式サイトの受験データからご紹介します。
【参考】:受験データ|統計検定:Japan Statistical Society Certificate
統計検定4級
統計検定4級は中学数学レベルの内容が出題される試験です。過去の合格率にはばらつきがありますが、おおむね60%前後以上で、90%を超える回もあり、難易度は低めに設定されています。
公表されている4級の合格率は以下の通りです。
試験年月 合格率 2021年11月 72.80% 2019年11月 56.20% 2019年6月 72.90% 2018年11月 55.50% 2018年6月 60.90%
4級は統計学の入門者向けの検定で、データと表やグラフ、確率の基礎知識や、統計活用力が問われます。高校生や、文系でこれから統計学を学びたいと考えている人におすすめの検定です。
統計検定3級
統計検定3級は高校数学(ⅠA、ⅡB)レベルの試験です。過去の合格率は60%程度で、4級に次いで難易度が低めの試験です。
3級の合格率は以下の通りです。
試験年月 合格率 2021年11月 75.60% 2019年11月 61.80% 2019年6月 69.00% 2018年11月 64.60% 2018年6月 67.20%
3級は、4級と同様に入門者向けではありますが、より高度な統計リテラシー、統計的推論能力が問われます。統計検定3級の勉強を通して、業務や課題で取り扱うデータを正しく解釈し、身近な問題に活かせるようになることが期待できます。
統計検定2級
統計検定2級は、大学基礎課程レベルの試験です。過去の合格率は40%前後で、4級や3級に比べると合格は難しいですが、各種検定や資格試験としては一般的な難易度と言えるでしょう。
2級の合格率は以下の通りです。
試験年月 合格率 2021年11月 34.10% 2019年11月 41.70% 2019年6月 45.60% 2018年11月 41.80% 2018年6月 43.70%
統計検定2級は、大学1・2年次に学ぶ基礎科目程度の統計学の知識と、その活用力が試される試験です。現状についての問題を発見し、その解決のためにデータを収集する能力、仮説の構築及び検証ができる統計力や、新知見獲得のきっかけとなるような統計的問題解決力を持つことが問われる試験です。
統計検定準1級
統計検定準1級は、大学専門課程レベルの試験です。過去の合格率は20%前後で、比較的難易度が高い試験です。CBT方式で随時受験できる統計検定の級の中では、最も難易度が高い試験です。
準1級の合格率は以下の通りです。
試験年月 合格率 2021年11月 23.60% 2019年6月 21.00% 2018年6月 20.20%
統計検定準1級は、大学で学ぶ統計学の基礎知識と応用的な統計学の手法を習得していることを証明する検定試験です。試験範囲は非常に広く、2級までの知識を活用しながら、実社会の諸問題にアプローチする応用力が問われます。
統計検定1級
統計検定1級は、「統計数理」と「統計応用」の2つの試験が実施され、両方に合格することで、統計検定1級合格が認められます。過去の合格率はそれぞれ20%前後ですが、統計応用の方がより合格率が低く、難易度が高いことがわかります。
1級の合格率は以下の通りです。
■統計数理
試験年月 合格率 2022年11月 22.40% 2021年11月 25.80% 2019年11月 23.00% 2018年11月 20.90%
■統計応用
試験年月 合格率 2022年11月 20.60% 2021年11月 24.00% 2019年11月 15.80% 2018年11月 19.70%
統計検定1級では、実社会における様々な分野でのデータ解析に必要な高度な能力が問われ、統計学を専攻する大学3・4年生レベルの知識及びその活用力を証明することができます。
統計検定1級は、統計学の能力を認定する試験として知名度が非常に高く、高い専門性を必要とするデータ解析を業務に活かしたい方におすすめの資格です。
難易度が高い統計数理と統計応用のどちらも合格する必要がある統計検定1級の取得は、非常に難しいと言えます。どちらかに合格して、もう片方に落ちてしまった場合、経過措置として、10年以内にもう片方に合格すれば、統計検定1級合格と認定されます。
統計検定を受験するメリット
ここでは統計検定を受験することで、実際にどのようなメリットがあるのかを説明します。
スキルを証明できる
年齢、人口、気象、価格、売上といった、さまざまなビッグデータを分析し、数値に基づいて正しい判断を行う術を学べるのが統計学です。
多くの人が学ぶ知識ではないため、検定取得に向けて勉強してきたという事実は自信に繋がります。また、級が上がるほど難易度も高くなるので、検定に合格することで周囲から統計のスペシャリストとして認められるでしょう。
転職で有利になる
データを取り扱う企業では、「データアナリスト」「データサイエンティスト」といった求人が多く見られます。そういった職種に転職を希望する場合、統計検定に合格していることは大きな武器になります。さらに、転職後も即戦力として働ける可能性があります。
年収アップが期待できる
一般的なデータベースエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は424万円(※2023年6月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からSE/プログラマを参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、データベースエンジニアの年収は調査媒体によってバラつきがあることが分かります。
ITエンジニアの報酬は実績が重要視される傾向があるため、さらに年収を上げるには、スキルアップを図る方法が効果的です。そのため、統計検定に合格し、より高い知識を習得できれば、年収アップや上位職へのキャリアアップに繋げることができるでしょう。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
受検目的別のおすすめ受験級
統計検定の各級の難易度を説明しましたが、どの級を受けるか悩んでいる方もいるでしょう。ここでは、難易度とは異なる視点として、受験の目的や使い道別におすすめの受験級について解説します。
統計の基礎を学びたいなら3級
統計検定3級の内容は、データの正確な読み解き方を学ぶことができるため、統計学の基礎を身につけるのに適しています。高校数学の内容でカバーできるため、数学の基礎的な勉強時間を抑えながら効率的にデータリテラシーを学ぶことができます。
入門者向けとしては4級もありますが、高校程度の数学が理解できていれば、3級からでも十分合格は可能で、統計学の第一歩として受験するのにちょうど良い検定試験であると言えます。3級に合格して、さらに上位の試験にチャレンジするのもよいでしょう。
データサイエンティストなどへのキャリアアップを目指すなら2級
統計検定4級〜1級のうち、実際の仕事に活用できるのは、データを読み解き、ビジネス上の問題解決に活かすことができる能力を認定する統計検定2級以上と言われています。
そのため、履歴書に記載し、キャリアアップのために活用したいのであれば2級の取得を目指すことをおすすめします。データサイエンティストになりたいと考えている方も、最低でも統計検定2級程度の知識を身につけておく必要があるでしょう。
2級の統計検定資格を生かしてデータサイエンティストを目指すなら、スキルにあった企業を探してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。
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実社会での実用性を重視した準1級
統計学を仕事や実社会へ応用することを目的として取得を検討するのであれば、統計検定準1級を目指すことをおすすめします。準1級に合格するには、2級までの範囲を理解した上で、さらに幅広い知識と高い応用力が必要とされ、実社会への応用に重点を置いた問題を解く能力が求められます。
そのため、準1級を取得することで、ビジネスにおける意思決定や施策の評価において、データに基づく客観的な判断ができることが証明できます。
自分に合った受験級の統計検定にチャレンジしよう
ここまで、統計検定4級〜1級の試験概要や合格率・難易度、目的別の選び方について説明してきました。
4級〜準1級まではCBT方式で随時受験が可能となったため、受験のハードルも低くなりました。これを機会に自分に合った級を受験して、統計学について学びを深め、実生活に活かしてみてはいかがでしょうか。
また、転職を目指して資格に挑戦するのも良い方法です。データアナリストやデータサイエンティストは求人数も多く、今後も需要が見込まれる職種です。ぜひ、より高い級を取得するために勉強を進めましょう。
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