WindowsとLinuxの違い
PCを購入する際に、どの機種にするか迷う方も多いと思います。操作に慣れている方は、デスクトップPCを選ぶこともあるでしょう。店舗展示やネットで比較する際には、搭載OSや搭載可能OSが掲載されているはずです。ほとんどの場合は、PCといえばWindowsが搭載されていますが、企業向けやハイスペックPCを見てみるとLinuxサポートが記載されています。
ここでは、WindowsとLinuxの違いについてもう少し理解を深めていきましょう。
なぜOSが必要?
OSとはオペレーティングシステムの略で、コンピュータシステムを動作させるための基本ソフトウェアを指します。なぜOSが必要かということですが、もしOSがなければコンピュータを利用する際にシステムを動作させるソフトウェアが必要で、ハードウェア処理を行う部分についてもプログラマやユーザ自身がコントロールする必要があり、とても大変な作業になります。
OSが搭載されていることで、コンピュータシステムの動作を最適化し、複雑な内部処理を隠蔽してくれます。ユーザーインターフェースが提供されることで、システム操作を簡単に行うこともできます。
この考え方は一般向けのクライアントPCでも、企業向けのサーバーでも基本的に変わりませんが、クライアントPCの場合は、よりユーザーインターフェースに重きを置いている点に違いがあります。
Windowsの概要と特徴
Windowsはマイクロソフト社が開発提供するOSです。Windowsリリース以前は、MS-DOS等のコンソール入力が主体のOSであったのに対し、Windows登場でGUIで操作できるようになり、操作性が向上しました。そのためWindowsは、コンシューマ向けのOSとして定着し、インターネットが普及した現在も中心的なOSと位置づけられています。
Windowsのメリットとしては、利用ソフトウェアと周辺機器が非常に多く、特にマイクロソフト社の製品との親和性が高いことが挙げられます。デメリットとしては、ライセンスコストが有償であることやセキュリティ攻撃のリスクが高いことが挙げられます。
Linuxの概要と特徴
Linuxは、フィンランドのリーナス・トーバルズ氏によって開発されたオープンソースUNIX系OSです。UNIXが高額であったため、UNIX同等の機能をオープンソースソフトウェアで実装する目的で開発されました。UNIXはサーバーを稼働させるOSですので、Linuxも当初からサーバー用途で用いるコマンドラインで操作するものでした。
ここで言うLinuxは、Linuxのカーネル自体を指す場合もありますし、動作環境やシステムを含めてLinuxということもあります。Linuxのシステムはいくつか派生版があり、Linuxディストリビューションという配布形式でパッケージ化が進んでいます。代表的なものには、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)やUbuntu・SUSEなどの種類があります。
Linuxのメリットは、オープンソースソフトウェアを活用した低コスト運用が可能であることが挙げられます。デメリットは、利用に当たり問題発生の切り分け等の自己責任が求められることが挙げられます。
WindowsとLinuxの具体的な違い
ここまでで、それぞれのOSの概要をお話しました。ここからは、個別の比較項目についてWindowsとLinuxを比較していきます。具体的には、「OS実装の違い」「コマンドの違い」「サーバー用途の違い」「必要スキルの違い」について考えていきます。
WindowsとLinuxのOS実装の違い
一般的にWindowsとLinuxの速度比較をする場合には、Windowsの方が実行速度が遅い、メモリ消費が多い、などと言われます。
この理由ですが、Windowsのレジストリファイルを用いた構成管理が、カーネルやドライバーあるいはサービス間で共有されることで、情報の肥大化や断片化によりスローダウンを引き起こすことが挙げられます。Windowsでは、プログラムの実行時にバックグラウンドサービスが一緒に動作する場合もあり、管理が複雑になっている面もあります。
Linuxの場合は、デーモンと通常プロセスが個別に管理可能になっていることで、メモリ管理が単純化され最適化がしやすいことが挙げられます。これにより動作速度も高速となっています。
周辺機器については、周辺機器のベンダーによりWindows用ドライバー対応が進んでいることで、Windowsの方が性能向上や品質向上、対応機器の拡充がされている面もあります。Linuxはオープンソースのため対応周辺機器が少なく、チューニングも十分でない場合や性能スローダウンが見られる場合もあります。
WindowsとLinuxのコマンドの違い
WindowsとLinuxのコマンドも大きな違いです。コマンドの種類は多いので、ここではよく利用するコマンドを比較していきます。
最初に利用するファイルやディレクトリ操作のコマンドを見てみると、Windowsではdirで、現在のディレクトリの表示とフォルダ内のファイルやディレクトリを表示してくれます。Linuxでは用途で別れるため、カレントディレクトリの表示はpwdで、ファイルやディレクトリの表示はlsを用います。
カレントディレクトリの変更には、ともにcd・chdirを使います。ただし、Linuxは組み込みコマンドとなりますので、シェルによってはchdirが対応しない場合もあります。
ファイルやディレクトリの移動は、Windowsではmove、Linuxではmvです。ファイル削除は、Windowsではdel、Linuxではrmです。ディレクトリ削除はWindowsではdelやrmdir、Linuxでは”rm -r”です。ファイルコピーはWindowsではcopy、Linuxではcpを使います。
このように、完全にコマンドが一致するものではありませんので多少の慣れが必要ですが、同等の操作が可能です。
WindowsとLinuxのサーバー用途の違い
ともに利用用途は、クライアントからサーバーまで対応しています。サーバーまで対応と言っても、現実的にはWindowsは小規模から中規模までの利用が多い状況です。また商用OSのため、ライセンス管理に基づいて利用方法を決めていきます。Windowsで使用するライセンスはCAL(クライアント・アクセス・ライセンス)の購入が求められます。 【参考】:Microsoft ライセンス 【参考】:クライアント アクセス ライセンス (CAL) と マネジメント ライセンス (ML)
最新版のWindows Server 2022では、用途や用法に応じてStandard・Datacenter・Datacenter: Azure Editionの各エディションが設定されています。 【参考】:Windows Server 2022 の Standard、Datacenter、Datacenter: Azure Edition の各エディションの比較
Windowsサーバでは、Active Directory等の認証を利用し、Windowsクライアントを含めた統合運用も可能です。Linuxは基幹業務などの大規模システムをカバーします。無償で運用することもできますが、別途有償サポートを契約し、運用することもできます。
Linuxの場合は、LAMPというリファレンス構成が利用できますのでサーバー構築も効率的に行えます。Linux・Apache・MySQL・Perl・PHP・Pythonによる、実績のある構成であるため、小規模システムでもよく利用されています。特に、ウェブ・メール・FTP・ファイル・プロキシ・DNS等の基本サーバーは、ディストリビューション導入後にすぐに構築できますので、手間なく利用できます。
WindowsとLinuxの必要スキルの違い
Windowsはクライアント操作はGUIのため、簡単に操作できます。サーバー用途でも利用しますが、ハイエンドサーバでの利用はコスト面・性能面で不利となるため、中規模までの利用が多い傾向があります。
Linuxはデスクトップからサーバー用途まで対応しており、基幹業務等の大規模システムをカバーします。しかしながら、コマンドラインで操作することを基本としているので、細かい作業や高度な最適化には深い技術知識が必要とされることがあります。
WindowsとLinuxの相互運用
WindowsとLinuxを比較しましたが、それぞれのメリットを活用して相互運用するケースも増えてきています。ここでは、クロスプラットフォームで開発運用するケースを想定し、環境を近づける方法について解説します。
LinuxをWindowsで動かすには
LinuxをWindowsで動かすには、WSL2 (Windows Subsystem for Linux 2)がサポートされます。この機能は、マイクロソフト社によって提供されているサブシステムです。
Windows上でLinuxのコマンド・ツール・アプリケーション等を直接実行可能で、Linux 環境のほとんどのコマンド ライン ツール・ユーティリティ・アプリケーションがそのまま実行できます。デフォルトではUbuntuがインストールされます。 【参考】:Linux 用 Windows サブシステムとは
このほか、仮想マシンを導入することでLinux環境を構築することもできます。
WindowsをLinuxで動かすには
WindowsをLinuxで動かすには、仮想マシンを導入するのが一般的です。具体的には、「VMWare Workstation Player」「Oracle Virtual Box」などを利用し、仮想OSとしてWindowsを稼働させることができます。 【参考】:VMware Workstation Player 【参考】:Oracle VM VirtualBox
デスクトップ環境がWindows風のLinuxディストリビューションも多数リリースされています。Windows 11レイアウトに対応するZorinOSをはじめ、ChaletOS・Linux Mint・Kubuntu・Linuxfxなど、好みに応じて選択することもできます。画面レイアウトだけでも、ある程度違いを吸収することができます。
【参考】:ZorinOS 【参考】:ChaletOS 【参考】:Linux Mint 【参考】:Kubuntu 【参考】:Fedora KDE Plasma 【参考】:Linuxfx
WindowsアプリをLinuxで実行する場合はWineが対応します。Windows APIをLinuxに実装したもので、全てのアプリが動作するわけではないもののネイティブ動作させることができます。 【参考】:Wine
違いを理解し用途別に活用しましょう
ここまででWindowsとLinuxの特徴や違いを紹介してきました。使いこなすにはそれぞれの違いを理解し、用途に応じて最適なソリューションを選択することが望まれます。基本的な棲み分けでとして、デスクトップ操作環境やオフィスアプリではWindows、サーバーシステムではLinuxを想定し、用途に合わせて調整していくのが良いでしょう。
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