G検定はカンペが認められている?
カンニング(不正)は禁止でもカンペ(チートシート)の利用は黙認という不思議な試験があります。それがG検定(ディープラーニング検定)です。G検定とは、日本ディープラーニング協会(通称JDLA)が主催する、2017年から開始されたAIに関わる検定試験のことです。
JDLAは公式にカンペを認めたり、推奨したりしているわけではありませんが、G検定に関するさまざまな情報などから、その利用を許容していると推察されます。
この記事ではカンニング(不正)行為を推奨するものではありませんが、G検定の効果的な学習法の1つとして、カンペ作成が有効との立場から解説をしていきます。
G検定とは何か
G検定は「ディープラーニング」(AIに欠かせない深層学習)に関する基礎知識、「ディープラーニング」の活用に関する適切な方針の決定が行え、事業に活用するための能力や知識を有しているかについて問う検定試験です。
ディープラーニング検定はG検定とE検定の2種類があり、G検定は事業などへの活用を行うジェネラリスト向け、E検定はディープラーニングの実装を行うエンジニア向けと分かれています。
試験はオンラインで自宅から受験する方式で、120分の試験時間に対して約220問が出題されます。試験は3月・7月・11月と年3回開催されており、合格率は60%程度と難易度は高い訳ではありませんが、受験対策を怠ると合格できません。
【参考】:G検定公式サイト G検定とは
G検定を取得するメリット
G検定は新しい検定であり、まだまだ知名度は高くありません。しかし、AIは今後ますます重要視され、AIエンジニアに対する期待はさらに高まるでしょう。今後AI開発に関わるエンジニアにとって、AIに関する基礎知識は必須となります。
G検定取得のメリットは以下の通りです。
1.AIに関する基礎知識を有することで、AI開発に関われる可能性が広がる
2.エンジニア向けE検定資格取得のための足掛かりとなる
3.デジタル合格証「オープンバッジ」が発行され、「AIジェネラリスト」のスキル証明となる
G検定でカンペが許容される理由
JDLAはカンペの類を公式には認めてはいませんし、試験時のGoogle検索による回答も推奨はしていません。
G検定の受験時に確約させられる※受験規約には、「なりすまし、カンニング、試験中に援助を受けたりするなど不正行為があったと判断される場合、もしくはそのような行為が疑われる場合は結果を取り消される可能性があります」と明記されており、G検定におけるカンニングを禁止しています。
※受験規約は下記「JDLA受験申込専用サイト 操作マニュアル」の13頁を参照ください。
とはいえ、自宅からのオンライン受験という試験方式であり、カメラによる監視などもないことから、実質的にカンペの利用を禁ずるのは不可能です。試験問題のハッキングなどによる不正入手でもない限りは、黙認せざるを得ないというのが実際のところでしょう。
「カンペなし」で合格するに越したことはないのですが、試験の出題範囲は広く、しかも短時間の間に膨大な量の問題をこなさなくてはなりません。
試験は120分間に220問程度出題されるため、1問を30秒程度で回答しなければならず、その都度Google検索を行っていたのでは回答は間に合いません。仮にカンペを用意しても、カンペを作成するために費やすエネルギーは大きく、実質的には勉強をしているのと変わらないでしょう。
JDLAは、カンペを禁止することにエネルギーを割くよりも、カンペ作成も含めて試験対策をしっかり行った者を評価するという合理的な判断をしていると推察されます。
実際のところ、JDLAが公表している出題範囲、KWについて調べて回答案を考え、カンペを作成する労力は半端ではありません。カンペ作成そのものが勉強になり、カンペを作成することで知らず知らずの内にAIに関する基礎知識が身についていくでしょう。
【参考】:JDLA G検定受験サイト受験当日の操作マニュアル
有効なカンペ作成のポイント
先に述べた通り、「カンペ作成=有効な勉強法」と考えて良いでしょう。SNSなどを見てみると、G検定受験生が自ら作成したカンペを公開しているケースがありますが、それらをダウンロードして試験に臨めば試験に合格できると考える人がいますが、そんな生易しい試験ではありません。
JDLAが公表している『出題例』を見れば分かりますが、「カンペのみ」の機械的な転記で回答できるような出題はほぼないため、他者が作ったカンペはほとんど役に立たないということが分かると思います。
他者の作成したカンペを参考にするのは構いませんが、そのまま利用するのはやめておきましょう。そこで、これから有効な独自のカンペ作成方法について見ていきましょう。
【参考】:G検定例題
どのようなカンペが利用しやすいか?
カンペの作成にノートを利用される方もいるかと思いますが、手書きノートの作成には手間が掛かるのと、試験の際に検索するのが難しいという弱点があります。カンペ作成の手間を減らし、試験本番でも検索しやすいカンペを目指すという視点で考えると、以下の3点がおすすめです。
1.Excelの利用
Excelの良さは、簡単に作成できる点と、並び替えや検索も素早くできる点です。出題範囲はJDLAの公式サイトにPDFで掲載されているので、これをダウンロードして出題キーワードについて調べた結果(回答)を入力していけば良いでしょう。
2.辞書作成ツールなどの利用
辞書作成ツールを利用すると、出題キーワードから簡単に用語集が作れる点が便利です。辞書作成のフリーソフト、シェアウェアなどを見つけて自分専用のカンペを作成できます。
3.辞書サイトを自作
プログラミングスキルのある方は、G検定向けの辞書サイトを自身で作ってみるという方法もあります。作成した用語集は移動中やスキマ時間にスマホやタブレットで確認できるようにしておけば、学習はさらに効率的になります。
以上3つ(Excel・用語集作成・辞書サイト作成)をご紹介しました。こうして作成したカンペは逐次アップデートができるため、G検定合格後も座右のツールとして活躍することでしょう。
【参考】: G検定の試験出題範囲(シラバス)2021
カンペ作成に用いる教材は何を使えばいい?
先ほどご紹介した「G検定の試験出題範囲(シラバス)」を網羅するものとして、どんな教材があるのかという視点から探してみました。これらの教材をうまく活用して独自のカンペを作成していけば、合格に大きく近づけるでしょう。
1.深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト)公式テキスト
G検定の公式テキストであり、試験の出題範囲に対する網羅性が高いテキストと言えます。フルカラーでビジュアル性に優れ、また重要語句は太字になっているなど、読みやすく分かりやすいのが特徴です。章末には練習問題も付いており、直ぐに理解度が分かる点もおすすめポイントの1つです。
▪監修:一般社団法人日本ディープラーニング協会 ▪著者:浅川 伸一、江間 有沙、工藤 郁子、巣籠 悠輔、瀬谷 啓介、松井 孝之、松尾 豊 ▪発行日:2018年10月22日 ▪価格:3,080円(税込) ▪出版社:翔泳社 ▪仕様:A5・344ページ
2.これ1冊で最短合格 ディープラーニングG検定ジェネラリスト 要点整理テキスト&問題集
数式を極力使わず、分かりやすさと図解による説明が特徴です。G検定向けの参考書ですが、ディープラーニングの全体像を理解したい学生や一般の方にも適しています。先に紹介した深層学習教科書ディープラーニングG検定公式テキスト』で基礎を学び、その補強と応用編して使うと良いでしょう。
▪監修:浅川 伸一 ▪技術校閲:遠藤 太一郎 ▪著者: 山下 長義、伊達 貴徳、山本 良太、横山 慶一、松本 敬裕、杉原 洋輔 ▪発行日:2020年3月/25日 ▪価格:2,750円(税込) ▪出版社: 秀和システム ▪仕様:A5・270ページ
日本ディープラーニング協会監修のテキストです。国内35社の事例からディープラーニングについて解説しており、ディープラーニングに対する理解を深めるのに役立ちます。G検定対策としては直接役に立たないかもしれませんが、入門書として読むと良いでしょう。
▪監修:日本ディープラーニング協会 ▪編集:日経クロストレンド ▪発行日:2018年10月29日 ▪価格:1,980円(税込) ▪出版社:日経BP ▪仕様:A5・292ページ
4.AI白書2020
情報技術者試験で知られるIPA(独立行政法人情報処理推進機構)主管の白書です。DX推進の観点から国内外のAIの動向についてまとめられています。AIに関心が強い方には非常に興味をそそられる内容となっています。AIの実装やDX推進に関わる方には必読の書です。
また、本書からG検定に出題されることもあるため、カンペ作成の際には参考にすると良いでしょう。
▪発行:株式会社角川アスキー総合研究所 ▪発行日:2020年3月2日 ▪価格:4,180円(税込) ▪発売:株式会社KADOKAWA ▪仕様:A4・536ページ
G検定取得後のキャリアパス
G検定資格を取得した方は、より実践的なE検定の資格取得を目指すと良いでしょう。その後、それらのスキルを活かせる職種として、以下の2つをおすすめします。
1.機械学習エンジニア
機械学習エンジニアは、その名の通り機械学習に携わるエンジニアです。現在、AIの予測モデルに関する需要が高まっており、今後ますます必要とされる職種になるでしょう。機械学習エンジニアを目指すには、Pythonなどのプログラミング言語スキルに加え、統計学などの知識も求められます。
2.データサイエンティスト
データサイエンティストは機械学習エンジニアとよく似たAIエンジニア職種ですが、データの分析に特化した業務が中心で、AI開発は行いません。統計学の素養、問題解決能力が求められます。
AIエンジニアを目指してG検定に臨もう
ここまでG検定試験の概要や、合格するための方法として効果的なカンペ作成などについて解説してきました。G検定に合格するのは目的ではなく、AIエンジニアとして活躍するための足掛かりです。自身の将来目標やビジョンをしっかり見定め、G検定合格を目指してください。
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