情報処理安全確保支援士になるメリットはある?
IPAが提供する「情報処理安全確保支援士試験」は、試験に合格して登録を行うことで士業である「情報処理安全確保支援士」を名乗ることができます。
これからセキュリティスペシャリスト、セキュリティエンジニアを目指す皆さんにとって情報処理安全確保支援士の資格取得によるメリットは何か、どんな分野で活躍できるのかは大きな関心事でしょう。
この記事は、情報処理安全確保支援のメリット・デメリット・活躍分野・将来性などについて探っていきます。
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情報処理安全確保支援士とは
サイバー攻撃や情報漏洩の増加により、企業の経営基盤や国民生活が脅かされる状況が顕在化しています。そうした中、社会の情報セキュリティの確保を目指して、国家資格である「情報処理安全確保支援士資格(通称:登録セキスペ)」が誕生しました。
ここでは、そんな情報処理安全確保支援士について試験概要や活躍分野、試験の難易度などを紹介します。
情報処理安全確保支援士試験の概要
情報処理安全確保支援士試験は、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)が運営する国家資格で、平成29年(2017年)から認定がスタートしました。
情報処理安全確保支援士試験は、廃止された情報セキュリティスペシャリスト試験の後継試験であり、情報セキュリティに関する高度な知識・技能などを有するかが問われます。
【参考】:情報処理安全確保支援士試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
他の情報系資格との違い
情報処理安全確保支援士試験の合格者は、「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」への登録が行えます。情報系資格としては初の登録制「士業」であり、正式に政府のデータベースに登録されます。
またIPA制定「情報処理安全確保支援士」ロゴマークを使用することができ、名刺やビジネス書類、ウェブサイトなどでそのロゴマークを掲示できますので、受注増など仕事で有利になります。
【参考】:根拠となる法律、資格名称、ロゴマークについて | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理安全確保支援士の活躍分野
情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)には既に約2万人の方が登録しています。多くはサイバーセキュリティに関する専門家として、企業や組織において、より安全な情報システムの企画・設計・開発・運用の支援・サイバーセキュリティ対策の立案・調査・分析・評価と、その結果に基づく指導・助言を行っています。
また、内閣情報調査室・警察庁・防衛省・IPAなどでサイバー対策の仕事に従事している方もいます。
【参考】:登録セキスペの人材像 | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理安全確保支援士試験の難易度や合格率
続いて、情報処理安全確保支援士試験の難易度や合格率について見ていきます。
情報処理安全確保支援士試験は、日本国内の情報セキュリティ関連資格試験では最難関(スキルレベル4)です。「実務経験者でも合格が難しい」「受かったらすごい」などと言われることもあります。
さらに、応用情報技術者試験(スキルレベル3)の合格者の多くがステップアップとして受験していることもあって、情報処理安全確保支援士試験の受験者増、難関化に拍車をかけています。
合格率については、令和5年度秋期では21.9%でした。過去の合格率をみていくと、概ね10〜20%を推移しており、合格は容易ではないことがわかります。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
情報処理安全確保支援士試験の有効期限は?
情報処理安全確保支援士試験には更新制が導入されており、登録の有効期限は3年です。更新手数料は無料ですが、更新申請には講習の受講が必要です。
年数の経過によってサイバーセキュリティ関連知識の陳腐化、最新知識や技能の欠落が起きる可能性があります。こうしたことを防ぐために、欠格事由の該当がないかどうかを確認する目的で更新制度が導入されています。
・登録の有効期限は登録した日、更新日した日から3年 ・登録更新申請は、更新期限の60日前までに行う必要がある ・登録更新申請には、毎年の受講義務がある講習を修了しなければならない ・登録更新申請において、更新手数料はかからない
【参考】:登録セキスペ 更新について | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理安全確保支援士の必置化
情報処理安全確保支援士の必置化とは、企業や組織に情報処理安全確保支援士の設置義務を課すことです。
現在の制度ではそこまでの強制力はありませんが、経済産業省が提言している『情報処理安全確保支援士の普及策』の資料には必致化が提言されており、将来的な「情報処理安全確保支援士の必置化」の可能性は高いと考えていいでしょう。
【参考】:情報処理安全確保支援士制度の普及策
情報処理安全確保支援士の登録
情報処理安全確保支援士は、試験に受かっただけでは「支援士」を名乗ることはできません。「情報処理安全確保支援士試験合格」と履歴書に書いたり、名刺に入れたりすることまではできますが、弁護士や税理士のように「士業」を名乗るには登録が必要です。
登録日は、4月1日(申請の受付期限:2月15日)と10月1日(申請の受付期限:8月15日)の年2回であり、支援士登録には19,700円(登録手数料10,700円と登録免許税9,000円)が必要です。
また、支援士の登録維持には年1回のオンライン講義(2万円)と、3年に1回の集合演習(8万円)の受講義務があります。つまり3年間に「2万円×3回+8万円=14万円」の費用が必要であり、これを情報処理安全確保支援士試験の大きな受験ハードルだとする声もあります。
【参考】:登録するには | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:IPAが行う実践講習 | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:情報処理安全確保支援士 登録日・更新日別 講習受講および登録更新サイクル 早見表
情報処理安全確保支援士の年収
情報処理安全確保支援士は、セキュリティ専門のITコンサルタントやITスペシャリストとして活躍することができます。
ITコンサルタントの年収は「マイナビITエージェント 職種図鑑」での平均年収は512万円(※2024年1月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のIT技術スペシャリスト(特定技術(DB・NW・セキュリティ等))を参考にすると、平均年収758万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、情報処理安全確保支援士を含むITコンサルタントやITスペシャリストは、一般平均年収よりもやや高めであることが分かります。
情報処理安全確保支援士には、医師や弁護士のように資格保有者にしかできない独占業務はありませんが、セキュリティ専門のエンジニアとして非常に高いスキルを有しています。そのスキル、そして需要の高さが年収の高さにつながっています。
【参考】:マイナビITエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
情報処理安全確保支援士は意味ない?
一部では資格取得は「意味ない」「メリットない」という意見もあり、実はデメリットと思われる点もあります。実際にこれらのことを懸念して、試験には合格したけれど登録をあきらめた方もいます。受験に臨む前に、デメリットについても理解しておきましょう。
資格維持費用が高い
「資格を維持するために掛かる費用が高い」ということがこの資格のデメリットに挙げられます。試験に合格して登録しない限り「支援士」を名乗ることができませんので、資格を取得した以上は登録するのが当然の成り行きでしょう。
しかし、登録手数料として19,700円が必要となり、更に3年後の更新までに、追加で14万円の講習費用が発生します。この費用を所属企業が負担するケースが増えていますが、個人で負担する場合は「高すぎる」という意見が多いのは事実です。
こうしたことから、情報処理安全確保支援士を目指す人が減少する傾向も見られます。しかし、今後の需要やビジネスチャンスを考えると取得する意義は十分にあります。
法的義務がある
情報処理安全確保支援士になると、関連法規や施行規則などによって法的な義務を新たに負います。内容は「信用失墜行為の禁止」や「秘密保持義務」などで、普通に生活していれば違反することはありませんが、常に言動に注意する義務が生じるのは窮屈に感じる人もいるかもしれません。
また、毎年講習の受講義務が生じる点も重要なポイントです。受講を怠ると資格更新ができず、資格は失効となります。こうした法的義務が生じる点がデメリットと受け取られることもあります。
情報処理安全確保支援士のメリット6選
ここまで、情報処理安全確保支援士の基本情報やデメリットについて説明しました。将来的な可能性も含めて、情報処理安全確保支援士になるメリットは多くあります。具体的にどのようなメリットがあるのかを確認しておきましょう。
士業として活躍できる
弁護士や税理士と同様に、国家資格である「情報処理安全確保支援士」の資格名称を「士業」として使用することができます。これにより、企業内にとどまらず、副業や独立してセキュリティ専門のコンサルタントとしても活躍することができます。
セキュリティスペシャリストの証となる
情報処理安全確保支援士の名前は、情報セキュリティに関して高度な知識や技能を有する証となります。就職や転職の際も非常に有利になるでしょう。
情報処理安全確保支援士必置化の動きもあり、企業でも情報処理安全確保支援士に対する特別手当の支給・受験料・登録料・受講料などの費用全額負担も当たり前になるかもしれません。
公的資格試験の一部免除
情報処理安全確保支援士になると、弁理士・技術士・中小企業診断士といった国家資格試験の一部免除が可能です。また、民間資格の認定情報技術者(CITP)も自動的に付与されるなど、さまざまな特典があります。
他にも警察関係では、サイバー犯罪捜査官などの受験資格の1つとなっていますので、サイバーポリスを目指す方にも有利な資格です。
【参考】:試験のメリット | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
税制優遇
企業のサイバーセキュリティ対策などに対する税制優遇措置として、「コネクテッド・インダストリーズ税制」が平成30年6月に創設されました。
この税制は令和2年3月末に一旦廃止されましたが、情報処理安全確保支援士を配置することが条件として挙げられており、情報処理安全確保支援士はこの税制によって活躍の機会が与えられました。
今後も産業振興策の一環として、セキュリティ対策への補助金制度や優遇制度等が再開される可能性もあるため、情報処理安全確保支援士の活躍機会は引き続き期待できるでしょう。
所属企業の信頼性アップに貢献できる
企業が情報処理安全確保支援士を所属させることで、安全性の高いシステムの設計・開発・運用が行え、企業のセキュリティ強化が期待できます。
また、「情報処理安全確保支援士を所属させている企業」として周知できれば、「セキュリティ対策に重きを置いている企業」という印象付けが可能であり、信頼性のアップに繋がるでしょう。
【参考】:IT技術者の活躍の場を広げる国家資格「情報処理安全確保支援士」 | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
キャリアアップや転職に有効
情報処理安全確保支援士になることで、常に最新のIT知識を保有している人材として就業機会の増加が期待できます。簡単にはなれない職種であるからこそ、希少価値は高くなるでしょう。
現在、情報処理安全確保支援士の求人募集はそこまで多くなく、セキュリティ関連の求人の方が目立ちますが、情報処理安全確保支援士の資格があることでキャリアアップや転職の際に有利に働くでしょう。
情報安全確保支援士の活躍分野や将来性
ここでは、情報処理安全確保支援士の需要や将来性という観点から考察をします。これからセキュリティ分野での活躍を目指すITエンジニアの皆さんは、ぜひ参考にしてください。
情報セキュリティの重要性の高まりと人材不足
サイバー攻撃が年々巧妙化・過激化し、企業にとっても大きなリスクの1つとなっています。この結果、情報セキュリティに対する意識の高まりや、情報処理安全確保支援士の必置化に向けた動きなどもあって、セキュリティエンジニアとともに情報処理安全確保支援士に対する需要がさらに増大していくことが想定されます。
一方で、DXやAIブーム、loTの進展などもあってITエンジニア自体の不足も深刻化しており、このような傾向は当分続くと想定されます。
情報系初の士業として
情報処理安全確保支援士は、情報系の資格としては本邦初の士業です。単なる資格保有者ではなく、弁護士や税理士のように国に正式に認められた登録者としての活躍が期待できます。
現状では明確に「情報処理安全確保支援士」としての求人は限られていますが、セキュリティ関連の求人は以前に比べ確実に増えています。将来の活躍のためにも、セキュリティ資格の最高峰である情報処理安全確保支援士試験はぜひともチャレンジしておきたい資格です。
情報処理安全確保支援士として求められる存在に
情報処理安全確保支援士は、情報システムのセキュリティ対策という社会が直面する問題の解決に欠かせない存在です。新しい制度になってからはまだ日が浅いですが、これから益々その需要は高まっていくと考えられます。
いち早く資格を取得してIT分野で一歩リードする存在になることができれば、優秀なITエンジニアとして活躍できるはずです。また、「キャリアアップしたいけど、どの道に進めばいいのか分からない」と次の一歩が踏み出せないでいる方も多いでしょう。
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