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※記事内容は2024年5月時点の情報です。 最新の情報は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のウェブサイトをご確認ください。
情報処理安全確保支援士の資格維持には更新が必須
日本に数ある情報系資格の中で、国家資格である情報処理安全確保支援士(通称:登録セキスペ)は、日本で初めての「士業」となる資格です。士業としては、弁護士・弁理士・司法書士などがよく知られています。
情報処理安全確保支援士試験に通ったからといって、情報処理安全確保支援士(通称登録セキスペ)を名乗ることはできません。支援士として未登録の場合、その名称を使う場合は履歴書などに「情報処理安全確保支援士試験合格」と書く程度です。
情報処理安全確保支援士を名乗るためには、情報処理安全確保支援士試験の合格後に登録申請が必要であり、さらに3年ごとの更新申請をしなければなりません。
もちろん「更新しない」という選択肢もありますが、更新をしないと情報処理安全確保支援士の資格は失効します。
なお、更新しない場合においても試験合格は有効で、再登録をすることも可能です。※経過措置対象者は除く
この記事では、この情報処理安全確保支援士の登録・更新に関する手続き・費用・メリット・デメリットについて解説します。
【参考】:よくあるご質問 (PDF)|IPA
【参考】:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のウェブサイト
情報処理安全確保支援士とは
情報処理安全確保支援士とは、サイバーセキュリティ分野における国家資格のことで、IPA(独立行政法人の情報処理推進機構)が試験の実施および有資格者登録簿の管理、講習の実施などを所管しています。平成29年(2017年)から資格認定がスタートしました。
情報処理安全確保支援士試験(SC)は、同じくIPAが実施しており、2016年に認定が終了した情報セキュリティスペシャリスト試験の後継試験にあたります。
【参考】:情報処理安全確保支援士試験(SC)
登録の更新制導入の目的
2020年5月に情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律が施行されましたが、これを受けて情報処理安全確保支援士の登録について「更新制」が導入されました。
更新制の目的は、サイバーセキュリティ対策に求められる知識や技能が常に最新であること、および情報処理安全確保支援士の欠格事由に該当しているか否かを定期的に確認することです。
この更新制によって、情報処理安全確保支援士制度の信頼性向上を目指すというのが趣旨です。
【参考】:情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)制度の見直しについて
情報処理安全確保支援士の更新制度の概要と期限
情報処理安全確保支援士は試験に受かっただけでは「支援士」を名乗ることはできません。「情報処理安全確保支援士試験合格」と履歴書に書いたり、名刺に入れたりすることまではできますが、弁護士や税理士のように「士業」を名乗るには、試験に合格する以外に登録が必要です。
この登録日は、4月1日(申請の受付期限:2月15日)と10月1日(申請の受付期限:8月15日)の年2回です。
また、支援士の登録維持には年1回のオンライン講習と、3年に1回の実践講習または特定講習の受講義務があります。新型感染症の観点より、実践講習はリモートで行われることになりました。
講習は約7時間、Web会議ツールを利用したグループ討議です。費用などは後述しますが、かなりの費用が掛かるため、情報処理安全確保支援士試験の大きなハードルになっているとの声もあります。
【参考】:登録セキスペ 講習受講
【参考】:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のウェブサイト
登録の更新制導入の概要
情報処理安全確保支援士における登録制度の更新制は、以下のようになっています。
▪有効期限は登録日(年2回4月1日と10月1日)または更新日から起算して3年です。 ▪更新の申請は、更新期限の60日前までに行う必要があります。 ▪登録更新申請を行うには、決められた講習を全て修了する必要があります。
情報処理安全確保支援士は登録資格で、「士業」を名乗るには登録申請が必要です。試験日が4月と10月にあることを考えると、例えば2021年の秋期試験を受験する人を例にすると、次のような流れになります。
例) 1.2021年10月10日(日) 情報処理安全確保支援士試験受験 2.2022年1月上旬 情報処理安全確保支援士の合格証書発送 3.2022年2月15日(火) 情報処理安全確保支援士登録申請締め切り 4.2022年4月1日(金) 登録証発行
【参考】:更新について
情報処理安全確保支援士試験合格後の登録期限は?
情報処理安全確保支援士試験合格者はいつでも登録申請はできますが、登録の有効期限は、登録日または更新日から起算して3年です。また、登録更新申請をするためには、オンライン講習3回(1回/年)、実践講習または特定講習を3年間のいずれかの年に1回受講修了しておく(いずれの講習も更新期限の60日前までに受講修了しておく)ことと、オンラインによる登録更新申請を行う必要があります。登録更新手続きを怠ると、更新期限の翌日付で資格失効となります。
経過措置対象者は、登録消除後に再登録ができず、改めて情報処理安全確保支援士試験に合格する必要があります。
【参考】:情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)制度の見直しについて |IPA
【参考】:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のウェブサイト
登録更新サイクルの例
情報処理安全確保支援士の登録更新の例として、2022年10月に登録をした場合で解説します。
1.2022年10月1日 情報処理安全確保支援士登録(更新) 2.2023年9月30日まで オンライン講習(2022年度) 3.2024年9月30日まで オンライン講習(2023年度) 4.2025年8月1日まで オンライン講習(2024年度) 5.2025年8月1日まで 実践講習または特定講習を1回受講 6.2025年8月1日まで 登録更新申請
そして、2025年9月30日までが審査期間となり、2025年10月1日から次のサイクルが始まります。
【参考】:登録セキスペ 更新について
情報処理安全確保支援士の資格維持に掛かる費用
情報処理安全確保支援士の資格維持には、それなりの費用が掛かります。そこを理解せずに受験すると、後悔するかも知れません。資格を仕事に生かして収入増を考えている方は、登録・資格維持の費用をあらかじめ想定して用意しておきましょう。
登録申請費用は20,000円
情報処理安全確保支援士試験に合格した後、情報処理安全確保支援士の資格を得るには、登録申請が必要です。この際に以下の費用が掛かります。
1.登録免許税の収入印紙・・・9,000円 2.登録手数料・・・10,700円 3.住民票写し取得費用・・・300円
つまり、登録申請をするのに必要な費用は合計で20,000 円です。ちなみに、更新時にはこの費用は掛かりません。
特定講習または実践講習の費用
情報処理安全確保支援士の更新申請には、オンライン講習3回(1回/年)、実践講習または特定講習を3年間のいずれかの年に1回受講修了しておくことが義務付けられています。
さらに、受講するだけではなく、確認テストを受けて全問正解をし、講習終了となる必要があります。費用については以下の通りです。
▪オンライン講習・・・60,000円(20,000円×3回) ▪3年に1回受講する実践講習・特定講習・・・受講料は講習により異なります。 (例)実践講習A:80,000円 ※受講する講習によって費用は大きく変わります。
ちなみに、オンライン講習はIPAが主催する所定の講習です。実践講習は「IPA主催の実践講習」を受けますが、実践講習の代わりに「民間事業者等の特定講習」を選択することもできます。
【参考】:IPAが行う実践講習について
【参考】:民間事業者等の特定講習(PDF)
【参考】:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)のウェブサイト
情報安全確保支援士の登録・更新のメリット
ここまで情報安全確保支援士の基本情報や概要について説明してきました。一部には、資格取得は「意味ない」という意見もあります。具体的にどのようなメリットがあるのかを確認しておきましょう。
士業としてビジネスに生かせる
弁護士や税理士などと同様に、「情報処理安全確保支援士」の資格名称を正式に「士業」として使用することを認められます。名刺・書類・ビジネス関係の印刷物・広告・看板などでアピールできるため、ビジネス面でメリットを得られます。ちなみに、情報処理安全確保支援士になると、希望者は申請により手数料2,970円でバッジを貸与されます。
セキュリティスペシャリストの証
情報処理安全確保支援士はサイバーセキュリティのスペシャリストである公的な証となり、多くの企業で引っ張りだこになる可能性が高いです。企業によっては、情報安全確保支援士に対して資格手当や特別手当を支給するところもあります。また就職や転職の際にも有利でしょう。
情報安全確保支援士の登録・更新のデメリット
情報安全確保支援士の登録・更新のメリットを挙げましたが、デメリットもあります。せっかく情報安全確保支援士試験に合格しながら、デメリットが大きいと感じて登録をあきらめた人もいます。情報安全確保支援士試験のデメリットを理解した上でチャレンジしましょう。
資格維持費用が高い
先ほども資格維持費用については紹介しましたが、情報安全確保支援士の登録・更新費用、合わせて約16万円を個人で負担するには高すぎるという声があるのは事実です。
もちろん、それ以上のメリット(リターン)は期待できますが、自らにその支払能力があることを確認しておく必要があります。
罰則付きの法的義務がある
これは意外に見逃しがちですが、情報安全確保支援士は法的な義務を新たに負うことになります。「秘密保持義務」「信用失墜行為の禁止」「毎年の講習受講義務」などの法的義務です。
これらに違反すると資格喪失となるばかりか、秘密保持義務違反は懲役又は罰金刑、支援士詐称は30万円以下の罰金刑と、厳しい罰則が待ち受けます。
普通に生活していれば問題はないですが、それだけ情報処理安全確保支援士は重みのある資格だという事を理解しておきましょう。
情報安全確保支援士の登録および更新手続き
続いて、情報安全確保支援士への登録、更新にはどのような手続きが必要なのかについて見てみましょう。新規登録はペーパレスではなく紙ベースの提出書類が多く、煩雑なので記入漏れやミスがないよう気を付けましょう。
登録手続きの必要書類
登録手続きの際にIPAに提出しなければならない書類は以下の通りです。ダウンロード後にそれぞれ記入して簡易書留で郵送します。
▪1.登録申請書・現状調査票(各2枚ずつ) (Wordファイルに入力、登録免許税の収入印紙(9,000円)・登録手数料(10,700円)の振込を証明する書類が必要) ▪2.誓約書(1枚) ▪3.情報処理安全確保支援士試験の合格証書のコピー又は合格証明書の原本(1枚) ▪4.戸籍の謄本若しくは抄本又は住民票の写し(原本を提出)(1枚) ▪5.登録事項等公開届出書(1枚) ▪6.登録申請チェックリスト(1枚) ▪7.返信用の封筒(1部)※登録手数料の領収書が必要な場合にのみ必要
登録手続きの詳細は、以下を参照してください。
登録更新申請はポータルサイトで行う
情報安全確保支援士の登録更新申請の手続きはポータルサイトで行います。手続きの手順としては、情報処理安全確保支援士ポータルサイトへログインした後にWeb上で更新の申請を行います。詳細はIPAのサイトよりご確認ください。
なお、情報処理安全確保支援士ポータルサイトでは、登録変更申請の他にも下記のサービスや情報提供を行っています。
・講習受講、登録更新申請に関するご案内 ・オンライン講習 ・登録情報変更申請、徽章貸与申請 ・検索サービスの登録者公開情報編集
【参考】:登録セキスペ 更新について
【参考】:変更等の各種申請
情報安全確保支援士の適職や将来性
情報安全確保支援士資格は登録や更新することで、士業としてのメリットを得られることは理解されたと思います。では、正式に情報安全確保支援士として登録されると、どのような仕事に就けるのでしょうか。
情報安全確保支援士の適職3選
情報安全確保支援士はまだ知名度が高いとは言えませんが、情報セキュリティスペシャリストの後継資格として、以下の職種が適していると考えられます。
いずれの職種も資格だけでは就くことは難しいため、実務経験をある程度積んでいることが求められます。
・セキュリティアナリスト 主にサイバー攻撃の予防、攻撃パターンの分析、攻撃時の対処などを行います。
・セキュリティコンサルタント 企業や組織に対してセキュリティ専門家の立場から、コンサルティングを行います。
・セキュリティアーキテクト 企業や組織の委託を受けて現状調査分析を行って情報セキュリティ方針立案や、セキュリティシステムの構築を主導します。
この他にも、民間企業や官公庁関係でサイバーセキュリティ対策の仕事に就く人もいます。
情報安全確保支援士が必置化される?
2022年5月に成立した「経済安全保障推進法」の第3章では「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度の概要」について書かれています。つまり、基幹インフラの重要設備に対してサイバー攻撃などの妨害行為を防ぐための制度です。
この法律を根拠に情報処理安全確保支援士が各企業に必置化されるのではないかという憶測がネット上に出ましたが、企業側の負担を考えるとあまり現実的ではありません。しかし、情報処理安全確保支援士の需要が益々高まっていくことが予想されます。
【参考】:経済安全保障推進法の概要(PDF形式)
情報安全確保支援士の将来性
近年では数多くの企業がセキュリティ対策を重視しており、大企業だけでなく中小企業でもさまざまなセキュリティ対策を実施しています。
ネットワーク化が進むことで業務の効率化が著しい一方、サイバー攻撃の件数は増加傾向にあります。今後もセキュリティに関するスキルを保有する人材の需要が高まるでしょう。
このことにより、情報処理安全確保支援士の将来性は高いことが分かりますが、資格取得後も常に新しい知識をアップデートする姿勢が重要です。ネットワーク社会を守る仕事にはまだまだ無限の可能性があります。
試験の合格を目指すだけではなく、合格後に登録・更新を行い、しっかりとした将来計画を立てて、目標に向かってください。
情報処理安全確保支援士を目指そう
情報処理安全確保支援士の更新制度や将来性などについて解説しました。情報処理安全確保支援士は3年ごとに更新が必要となり、常に高い専門性を保ち続ける必要があります。
そのため、資格を取得した際のメリットが大きいと言えるため、エンジニアとしてスキルアップするための目標の一つにしてみてはいかがでしょうか。
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