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ITゼネコンとは?見分け方や問題点を解説!なくすメリットも
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ITゼネコンとは?見分け方や問題点を解説!なくすメリットも

アンドエンジニア編集部
2023.08.20
この記事でわかること
ITゼネコンとはシステム開発における元請負企業のこと、もしくは多重の下請構造のこと
ITゼネコンの構造から1次請け企業の収益と、孫請け企業の収益には大きな格差がある
ITゼネコンの問題点として、「労働環境の問題」や「人材育成の問題」が挙げられる

ITゼネコンとは?

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まず、「ゼネコン」とは「General Contractor」の略称で、建設業界で使われている言葉です。ゼネコンは土木・建築の業界における元請負者として、工事を一括で発注者から直接請負い、工事全体をとりまとめる建設業者のことを指します。

では、「ITゼネコン」とはどのような意味なのでしょうか。ここからはITゼネコンの詳細やITゼネコンの見分け方に加えて、年収についても紹介します。今後IT業界を目指す方は、就職後に後悔することのないよう、ITゼネコンの仕組みをしっかり理解しておきましょう。

ITゼネコンはSIerのこと

「ITゼネコン」とはゼネコンのIT業界版で、システム開発における元請負企業、もしくは多重の下請構造のことを指します。IT業界のなかでも特にSIer業界では、元請けや下請け、孫請けなどの多重下請け構造を形成しています。

なお、SIerとは「System Integrator」の略称で、クライアントの要望に応じて、システムの設計や開発、運用、コンサルティングなどさまざまな仕事を請け負う企業のことをいいます。

SIer業界では、クライアントから直接システム開発の依頼を受ける大手企業と、ピラミッド状に多数の下請けや孫請けといわれる企業がぶら下がっている多重下請け構造がよくみられます。

このような構造は建築業界と全く同じ図式なため、これが「ITゼネコン」と呼ばれる所以です。多重下請け構造は「SIピラミッド」と呼ばれ、さまざまな問題点を生み出しています。

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ITゼネコンの見分け方

まず、どんなに大きなシステム開発企業でも、ITゼネコンになることは十分考えられます。しかし、就職や転職の際、できれば下請けや孫請けのみを行っているITゼネコンは避けたいところです。

見分け方として、取引先やクライアントを確認することが挙げられます。中規模システム会社からの受注しか行っていない場合は、SIピラミッドの下部に属するITゼネコンである可能性が高くなります。また、親会社との資本関係や、評判を確認することも大切です。

ITゼネコンの年収

一般的なシステムエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は431万円(※2023年7月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収593万円と分かりました。

国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアの年収は一般平均年収と比べて、同水準かやや高めであることが分かります。

しかし、ITゼネコンであるSIerの年収はかなりのばらつきが見られます。元請けのITゼネコンと孫請けのITゼネコンでは、仕事の受注金額が大きく異なるからです。そのため、年収アップのためにはできるだけ元請けに近い大手SIerを選ぶことが大切です。

【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁

ITゼネコンの構図が誕生した理由

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ここでは、ピラミッド型をしたITゼネコンの構図がなぜ誕生したのかを解説します。主に、2つの原因が考えられます。

発注側のコストや人員不足解消のため

官公庁やメガバンクなどの大手金融会社がシステム開発を発注する場合、大規模なシステム開発のプロジェクト案件になる場合がほとんどです。しかし、自社の中で大規模な情報システム部を抱えてシステム開発や運用を行うには、自社内に社内SEといわれるシステムエンジニアを多く雇う必要があります。

その結果、コストが高くなったり、開発を行えるだけの「人員」が不足したりするなどの問題が生じます。そのため、社内システムを開発や運用する場合は、SIer企業に外注するという構図が生まれたのです。ピラミッドのようにトップには大手企業が君臨し、次に下請け企業、さらにその下には孫請け企業が続きます。

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受注側のリスクを補うため

中小企業が大規模なシステム開発案件を受注した場合、大きなシステムトラブルを引き起こしてしまうことも考えられます。中小企業は資金不足や技術不足が原因で、質の高い機材を用意できなかったり、システムの品質を落としてしまったりする可能性があります。

このような事態が起きてしまうと、クライアントから損害賠償を請求されることも想定できますが、中小企業だけではリスクを担保できません。

したがって、大手SIer企業が元請けとなり、プロジェクトを取りまとめる役割を担うことで、資金的なリスクを背負うことのできない中小企業の受け皿になっているのです。

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ITゼネコンの3つの問題点

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ここからは、ITゼネコンによって引き起こされる問題点について3つ紹介します。

給与格差の問題

上流企業とよばれる大手SIer企業が、下流企業とよばれる中小企業や零細企業にシステム開発案件の一部を委託する場合、自社の利益を抜いた値の額で発注を行います。つまり、上流企業の方が下流企業よりも利益率が高くなるように発注を行っています。

そのため、利益率に差が生じ、上流企業と下流企業との間に給与格差が生まれます。

たとえば、1つのシステム開発のプロジェクト案件で、大手SIer企業などの1次請け企業の収益と、中小・零細企業などの孫請け企業の収益には大きな格差が生まれています。孫請け企業の場合、非常に低い利益率で仕事を受注し、赤字覚悟で業務を行っていることもよくあります。

孫請け企業では、みなし残業制度など一定までしか残業代が出ないなど、ブラック企業といわれる側面もみられます。

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労働環境の問題

SIer企業がクライアントとプロジェクトの契約を行うと、納品日が決まります。しかし、これが労働環境が過酷といわれる原因の1つとなっています。

システム開発におけるプロジェクトがスケジュール通りに進むことはほとんどありません。理由としては、システムにはトラブルがつきものであるためです。そのため、納品日に間に合わない場合は、残業や休日出勤が強いられることもあります。

これ以外にも、納品日に間に合わない理由として以下のようなことが考えられます。

1.クライアントの要求事項がプロジェクトの進行中に変わる場合がある

システム開発のプロジェクトが進行中に、クライアントからの要求事項が変わることはよくあります。

たとえば、オンプレミス型のインフラシステムを開発する案件を受注したとしましょう。プロジェクトが順調に進み、システムの開発が終わった後に、クライアントからクラウド型のシステムにして欲しいと要求されることもあります。

そのため、納品日に間に合わないだけではなく、最初から要件定義や設計をやり直すこともあります。

2.大手SIer企業の社員に設計や仕様を作成するスキルがない

大手SIer企業が設計した内容をもとに、下請け企業がシステム開発工程のプログラミングやテストを行うことが多いです。しかし、大手SIer企業でも、システム開発の設計の知識やスキルが低い社員も稀にいます。

その社員が作成した設計書をもとにプログラミングを行うとなると、設計書に不備が多いため思うように作業が進みません。何度も手戻りが行われたり、無駄な問い合わせ業務を行ったりすることが増え、結果的に納期に間に合わなくなってしまいます。

このように、クライアントや元請けが原因でスケジュールに遅延が発生したとしても、下請けや孫請け企業は納期に間に合わせなければならず、過重労働に陥りやすくなってしまいます。

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人材育成の問題

ITゼネコンでは各層で求められる知識やスキルが偏ってしまうため、人材を育成するという観点から問題が生じます。1次請け、2次請け、3次請け、それぞれの企業の問題点を解説します。

1次請け企業の問題

プロジェクトをマネジメントすることが主な仕事になります。よって、品質管理やコスト管理、スケジュール管理などを担当することが多いです。

さらに、システム開発の最初の段階である要件定義工程や設計工程でさえも、2次請け企業に完全委託してしまう場合もあります。この場合、システム開発に関する知識やスキルは全く必要ないことになるため、技術が身に付かないことも少なくありません。

2次請け企業の問題

要件定義や基本的な設計をする機会は少ないでしょう。そのため、システム開発における工程のプログラミングの部分の詳細設計のみ担当し、孫請け企業に実際のプログラミングやテストを委託することが多いので、実際の開発に関するスキルは身に付きません。

しかし、プログラミングの設計を行う場合は、実際のプログラミング経験がないと設計が上手くできないことも多いのです。そのため、若い時期にプログラミング経験の下積みを行ってからプログラミングの詳細設計の工程を担当する場合もあります。

3次請け企業の問題

企業の場合は、プログラムの詳細な設計まで完了している段階で委託される場合がほとんどです。設計書通りにプログラミングを行うだけになるため、プログラミングに関するスキルは身に付けられたとしても、システム開発の設計理由に関しては知ることができません。

したがって、要件定義や設計などのシステム開発の肝となる、重要な上流工程に関するスキルを身に付けられません。

以上より、「進捗や品質などのプロジェクト管理のみ担当するシステムエンジニア」や、「要件定義やプログラミングの設計はできないけれど、プログラミングのみできるシステムエンジニア」など、偏ったスキルをもつ人材が生まれやすいという問題点が挙げられます。

裏を返せば、さまざまなシステム開発に関する知識やスキルを身に付けているエンジニアは、スタートアップ企業やベンチャー企業などにとって喉から手が出るほど欲しい人材と言えます。

システム開発のスキルを生かして転職を考えている方は、自分の希望に合った企業を探してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。

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ITゼネコンをなくすメリット

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近年、デジタル庁が国とITゼネコンの癒着をなくすために動き出しており、IT業界でもITゼネコン脱却の声が多く挙がっています。

ウォーターフォール方式である多重下請けではなく、海外と同じアジャイル方式へと移行しようという動きが多くなってきています。ここでは、ITゼネコンをなくすことのメリットについて考えます。

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多重下請け構造から抜け出すことで正当な報酬がもらえる

ITゼネコンの根本原因である多重下請け構造から抜け出すことで得られるメリットの1つに、中抜きのない正当な報酬を受け取れることがあります。多重下請けの場合は、どうしてももらえる給料が少なくなってしまい、やりがいやモチベーションが保てません。

また、「自分は下請けだから」と、自己肯定感が上がりにくいことも考えられます。それを改善するには、少しずつ多重下請けの構造から変える必要がありますが、何十年もこの構造が成り立ってきた日本で、いきなり全てのシステムを完全になくすことは難しいでしょう。

そのため、資金問題や雇用問題について、徐々に改善していく必要があります。

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労働環境が改善できる

多重下請け構造がなくなることで、エンジニアたちの労働環境が改善されることが期待できます。下請け・孫請けだったからこそ、みなし残業代しか支払われず、正当な残業手当がありませんでした。IT業界では、しばしば長時間労働が問題視されているので、労働環境の改革が必須です。

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ITゼネコンの将来

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多重下請け構造が批判されていることで、ITゼネコンへの風当たりは強くなっています。発注者の立場からすると、大規模システム開発案件の場合、大手SIer企業に発注する方が信頼できますが、案件のとりまとめの部分と開発の部分に分けて発注するなど、工夫を行うことが大切でしょう。

さらに、市場の寡占も問題となっています。官公庁は時間やコストがかかるという観点から、大手SIer企業への発注を止めようとした時期もありましたが、日本のITゼネコンの構造自体を変えることはなかなか難しいようです。

しかし、プロジェクトによってはITゼネコンの構図である、ウォーターフォール方式が良い場合もあります。ウォーターフォール方式は割り当てられた仕事に集中できるため、スキルが浅いエンジニアでもプロジェクトに参加しやすい傾向にあります。

問題なのは、多重下請けによる労働環境や賃金の低さがほとんどなため、そこをクリアできれば決して悪いものではありません。現在の日本の多重下請け構造を変えるには、革新的な方法や世間の後押しが必要です。

ITゼネコンの仕組みを理解して後悔しない働き方を

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ここまでITゼネコンの詳細や、問題点について詳しく紹介してきました。「ITゼネコン」とは「ゼネコン」のIT業界版で、システム開発における元請負企業のこと、もしくは多重下請構造のことを指します。

「SIピラミッド」ともよばれる多重下請け構造から生じる給与格差、労働環境や人材育成の問題などの課題は、今後改善されていかなければならない問題です。

とはいえ、ITゼネコンの構図が全て悪いとは言い切れません。プロジェクトによっては、効率的かつ合理的に進められるシステムでもあります。今後、ITエンジニアとしてキャリアアップしたいと考えるなら、まずはITゼネコンの仕組みをしっかり理解しましょう。

その上で、後悔しない働き先を見つけることが重要です。しかし、「ITゼネコンの見分け方がいまいちわからない」「転職後、失敗したと思いたくない」という方も多いでしょう。

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