【関連記事】【Pythonのライブラリ管理ツール】pipインストールを徹底解説!Windowsでも簡単?
「Python in Excel」のパブリックプレビュー版を発表
マイクロソフト社は2023年8月22日、「Python in Excel」のパブリックプレビュー版を発表しました。ExcelでPythonを利用することによって、分析機能を大幅に進化させることが可能です。
また、PythonとExcelのデータ分析を同じワークブック内でネイティブに組み合わせることができるため、それぞれの用途に応じて最適な計算や表示が可能となりました。
【参考】:Microsoft 365 Excel Blog: Announcing Python in Excel: Combining the power of Python and the flexibility of Excel. 【参考】:Microsoft 365 Blog: Introducing Python in Excel: The Best of Both Worlds for Data Analysis and Visualization
「Python in Excel」の利用メリット
これまでも、データ分析やグラフ化などの用途でExcelの利用者は多くいました。Excelの持つ数式や関数のオートコンプリート、ピボットテーブルなどは大変便利です。その反面、データ数が多い場合や複雑な処理となると、Pythonとライブラリを用いた方が圧倒的に効率的でした。
今回発表された「Python in Excel」では、Excel単一シート上でExcelとPythonをシームレスに組み合わせることが可能になります。これにより、従来Excelが苦手とした高度なデータ処理や分析、可視化も、Pythonと組み合わせて効率的に行うことが可能になりました。
Pythonは機械学習や、予測分析に強みを持っており、そのメリットをExcelに活かすことができます。
【参考】:Microsoft 365 Excel Blog: Announcing Python in Excel: Combining the power of Python and the flexibility of Excel. 【参考】:Microsoft 365 Blog: Introducing Python in Excel: The Best of Both Worlds for Data Analysis and Visualization
「Python in Excel」を利用するには
「Python in Excel」は、現在パブリックプレビュー版として公開されています。利用するには、 「Microsoft 365 Insider Program」に参加してベータ チャネルのInsiderレベルを選択します。登録者には、順次ロールアウトが始まっており利用することができます。
【参考】:Join the Microsoft 365 Insider Program
「Python in Excel」の概要
「Python in Excel」は、ExcelでPythonの得意とする高度なデータ処理や分析、可視化を可能とします。さらに、Microsoft TeamsやMicrosoft Outlookなどのコラボレーションツールを用いて、ワークブックをチームで共有し、共同作業を効率的に進めることができます。
今回のリリースにおいては、Pythonコミュニティと協力して製品化を進めていると述べています。
【参考】:Excel での Python の概要 【参考】:Excel for Microsoft 365: Excel での Python の概要
「Python in Excel」の実行環境の構築
「Python in Excel」は、Windows版Excelで動作します。現時点では、Mac版やウェブ版、iPhoneやiPad、Androidでは使用することができません。Microsoft 365 Insider Programに参加して通知を受け取ったら、 Insiderビルドをインストールします。
「Python in Excel」のセットアップと使用
「Python in Excel」の Insiderビルドをインストールしたら、まず空白のブックを開いて、リボンから「数式」を選択します。表示か「Pythonの挿入」を選択するとダイアログが表示されます。ダイアログの「プレビューを試す」をクリックすると利用可能となります。
「Python in Excel」の使い方
ExcelでPythonを使うには、Excelのセルに”=PY”と入力すると、関数オートコンプリート メニューから「PY」を選択することができます。あるいは、関数に”=PY()”と括弧を追加することで直接記述することもできます。
セルでPythonが有効になると、そのセルに緑の「PY」アイコンが表示されてPythonの入力が可能であることが分かります。
「Python in Excel」で用いるPython
「Python in Excel」をインストールすると、Anacondaによって提供される標準のPythonライブラリセットが搭載されます。matplotlib、numpy、pandas、seaborn、statsmodelsのコアライブラリはインポート済みです。
これ以外のライブラリもAnacondaが利用できるライブラリはインポートすることができます。
【参考】:Excel のオープンソース ライブラリと Python
「Python in Excel」でのPythonを使った計算
Python言語に基づく計算は、Microsoft Cloudで実行されます。そのため、ローカルに別途Pythonをインストールする必要がありませんし、ローカルのPythonの設定をExcelに反映することもできません。
Microsoft CloudでのPythonコードの実行は、Microsoft 365に準拠したエンタープライズレベルのセキュリティで保護されており、安全性が確保されています。
「Python in Excel」での外部データの取り込み
Excelで一般的に外部データを取り込むには、「Power Query」を使用します。「Python in Excel」の場合も、「Power Query」を用いてデータの整形や取り込みを行い、Pythonで分析することができます。
使用するには、リボンの「データ」タブから「データの取得」を選択し、「他のソースから」「OData フィードから」を順に選択します。表示される「Power Query プレビュー」では、「データの変換」などの読み込みオプションを指定することもできます。
【参考】:Excel での Python でのPower Queryデータの使用 【参考】:Excel の Power Query について
「Python in Excel」でPythonを用いたプロットとグラフの作成
「Python in Excel」でPythonを用いたプロットとグラフの作成では、Anacondaで導入可能なPythonライブラリが利用できます。コアセットはあらかじめインポートされているため、そのまま利用することができます。
例えばグラフ作成・可視化ライブラリのseabornやmatplotlibを用いて、折れ線グラフ、ヒストグラム、散布図、あるいは立体グラフなどが作成可能です。
【参考】:Excel プロットとグラフでの Python の作成 【参考】:seaborn 【参考】:matplotlib
「Python in Excel」でDataFrameを使用する
「Python in Excel」では、pandasのオブジェクトであるDataFrameも利用可能です。DataFrame内のデータは、Pythonのオブジェクトとしてではなく Excelの値として出力することもできます。
数式バーの「Python Output」Python出力メニューで「Python Object」あるいは「Excel Value」いずれかを指定します。
【参考】:Excel DataFrames の Python 【参考】:pandas
「Python in Excel」はExcelのデータ分析機能を高めます
「Python in Excel」は、Pythonの高機能なデータ分析を、いつものExcelから実現することができます。Excelの良さを活かしながらも、シームレスにPythonを使用することが可能です。
Excelを使った自動化では、マクロやVBAには触れたことがあっても、「Pythonはできることが多くてもちょっと」という方も多いはずです。そのようなPython未経験の方も、Excelから簡単にPythonのコードを実行したりグラフ化したりすることができますので、多くの利用者から賛同が得られることでしょう。
編集部オススメコンテンツ
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから