エンベデッドシステムスペシャリストとは
エンベデッドシステムスペシャリストは、組み込みシステムに関するハードウェアとソフトウェアの要求仕様書に基づき、システムの開発・実装・テストを実施します。以下で、エンベデッドシステムスペシャリストの詳しい仕事内容について解説します。
エンベデッドシステムスペシャリストの仕事内容
エンベデッドシステムスペシャリストは、主にハードウェア製造業や電子システム開発会社のエンジニアとしての仕事を担当します。実務では、顧客の要望を引き受け、要望に沿ってシステムを構築します。
他のエンジニアと異なる点は、何度も顧客と話し合いをするため、エンジニアとしてのスキルの他にコミュニケーションスキルが欠かせない点です。エンベデッドシステムスペシャリストの具体的な仕事内容は、大きく分けて以下の3つがあります。
1.組込みシステムの設計書や仕様書を作成する 顧客とのコミュニケーションを密に取って要件を定義し、主にカスタムプロジェクトとして設計・開発・構築を主導します。今後のメンテナンス等を考え、再利用可能なモジュール化を進めて保全性を高めることも重要です。
2.完成した仕様書を基に開発から実装などを行う 仕様書に沿ってシステムを設計・開発・構築します。システムは専用に特化されたものも多く、カスタムLSI・PLCの開発等のハードウェア関連や、エンベデッドOS・マイクロコード等のソフトウェア関連などがあります。
3.システム完成後は、開発環境の調整をする セキュリティ保守やトラブル対応などのアフターサポートを行います。作業は安全性・効率性・信頼性を考慮しながら要件に適合させるため、高い専門性が求められます。
なお、システム完成までの上記の工程は1人ではなく、チームで行うのが一般的です。エンベデッドシステムスペシャリストが他のチームメンバーを指導し、開発を主導します。
システムエンジニア(SE)の一種
エンベデッドシステムスペシャリストは、システムエンジニア(SE)の一種です。SEはシステムの開発やプログラマーを担当したり、ITインフラを担当したりするITスペシャリスト等に細分されます。
エンベデッドシステムスペシャリストは、その中で特に組み込みシステムのハードウェアやソフトウェアに専門性を持ち、該当領域の指導的な役割が期待されています。
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エンベデッドシステムスペシャリストの年収
ここでは、エンベデッドシステムスペシャリストの年収について解説します。エンベデッドシステムスペシャリストへ転職しようと考えている方は、参考にしてください。
平均年収
マイナビエージェントでは職種別の年収ランキングを公開しています。そのランキングによると、エンベデッドシステムスペシャリストの年収は公開されていませんが、似ている職種であるシステムエンジニア・プログラマの平均年収は443万円(※2023年2月執筆時点)となっています。
これはあくまで平均であり、業種・業界によっては平均年収がさらに高い可能性もあります。
【参考】:職種別平均年収ランキング|求人・転職エージェントはマイナビエージェント 【参考】:プログラマ・システムエンジニア(制御・組み込み)の求人・転職・中途採用|求人・転職エージェントはマイナビエージェント
専門性を高めてスキルを上げると年収アップも可能
特定領域へ特化した組み込みシステムの専門性をより高めることで、ステップアップが期待できます。より高い専門性を持つことは重要なアピールポイントとなる他、高い品質を保ったシステム開発を保証できます。
そのため、新規事業や新規開発を検討する際の重要な相談先と認知され、より市場価値の高い人材となることも可能でしょう。
また専門性に加えて多様な案件に対応できるスキルがあれば、さらに活躍の場が広がります。多用なスキルがあれば、ITコンサルタントやITアーキテクトなどに転職することもできます。転職先の企業や職種によっては、今より高収入を目指せるでしょう。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験について
エンベデッドシステムスペシャリストにおすすめの資格として、情報処理技術者試験のエンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)があります。合格すると、国家資格に合格した組み込みシステムの専門家として公的・対外的に認知されます。
ここでは、エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)について解説します。
【参考】:エンベデッドシステムスペシャリスト試験
資格取得のメリット
エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)は、情報処理推進機構(IPA)が認定する国家資格です。資格を取得することで、自身の保有する知識と豊富な経験を、公的・対外的に証明できます。
エンベデッドシステムスペシャリストの知識と経験に基づいた高品質な設計能力や、仕様に合致した安心・安全なシステム設計を行うスキルがあることを証明することで、自身の市場価値を高めることができます。
資格取得者は高度なスキルを持っていると認められるため、開発現場では上位職へのチャレンジや重要なプロジェクトを任されることもあるでしょう。
合格すれば他の国家試験が一部免除に
エンベデッドシステムスペシャリスト試験に合格、または午前Ⅰの科目で基準点以上を獲得すると、他の高度情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の午前Iの科目が2年間免除されます。
また、試験に合格することで他の国家試験においても一部の試験が免除されることがあります。具体的には、以下の通りです。
・ITコーディネータ(ITC)の一部試験 ・中小企業診断士試験の第一次試験科目の一部 ・弁理士試験の論文式筆記試験選択科目の理工V(情報) ・技術士試験の第一次試験の専門科目(情報工学部門)
他の資格を取得する際に負担が軽減されるという点も、エンベデッドシステムスペシャリスト試験の役に立つところです。
【参考】:情報処理技術者試験:高度試験等の一部(午前Ⅰ試験)免除制度 【参考】:ITC専門スキル認定制度|ITコーディネータ協会 【参考】:中小企業診断士第1次試験他資格等保有による科目免除 【参考】:弁理士試験の選択科目が免除される情報処理技術者試験合格者の試験区分 【参考】:第一次試験のよくあるご質問|日本技術士協会
試験の難易度
エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)の難易度は、数ある高度情報処理技術者試験のうちスキルレベル4に相当する難易度の高い資格です。スキルレベル4は、情報処理技術者試験のレベル区分でも最高ランクとなっています。
難易度は高い試験ですが、実務経験や下位資格の取得等の受験資格がないため、誰でも受験できます。
合格率
情報処理技術者試験を担当する情報処理推進機構(IPA)の発表によると、令和3年度秋期試験の合格率は18.3%です。過去の合格率もおよそ16〜17%で推移しています。他のレベル4の高度情報処理技術者試験の合格率は、約14〜15%です。
平均年齢
令和3年度秋期に実施されたエンベデッドシステムスペシャリスト試験の合格者の平均年齢は、32.9歳です。
他の同じ高度試験であるプロジェクトマネージャ試験の平均年齢は37.8歳、データベーススペシャリスト試験の平均年齢は30.4歳です。このことから、合格にはある程度の経験とキャリア、そして知識をしっかりと蓄えてからの受験が必要ということが分かります。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 平均年齢
どのくらいの勉強時間が必要?
エンベデッドシステムスペシャリスト試験に合格するために必要な勉強時間は、実務経験がある人の場合、1日3時間の勉強時間が半年程度必要と言われています。応用情報レベルの知識がない場合は、プラス100時間ほど勉強時間を確保する必要があります。
個人差はありますが、難易度が高いため十分に勉強時間を確保することが大切です。実務と並行しながら、毎日コツコツと勉強する時間を確保しましょう。
しっかり対策すれば独学でも合格可能
エンベデッドシステムスペシャリスト試験はスキルレベル4に分類される比較的難易度の高い試験ですが、きちんと学習スケジュールを立て、しっかり対策をすれば独学でも合格可能です。
試験対策においては、過去問を活用してインプットとアウトプットをしっかり行うことが重要なポイントとなります。過去問はIPAの公式サイトにも掲載されています。
午前Ⅰは他の試験とも共通の内容なので、情報処理技術者試験に必要となる基礎知識をしっかり固めるところから始めましょう。午前の試験は選択式で過去の試験と似たような問題が出題されることも多いので、過去問解くことで対策は十分にできるでしょう。
午後の試験は記述式です。ソフトウェア系かハードウェア系どちらかを選択することになりますので、自分が得意な方を選んで学習を進めると良いでしょう。
参考書の解説も読み込んで自分の解答と照らし合わせ、弱点や足らないところを把握することが大切です。繰り返し過去問や模擬問題を解くことで記述の感覚も徐々に掴むことができます。問題を解く際には時間配分も意識しましょう。おすすめの参考書は以下で紹介します。
【参考】:IPA:過去問題
エンベデッドシステムスペシャリスト試験におすすめの参考書3選
ここでは、エンベデッドシステムスペシャリスト試験の勉強でおすすめの参考書を3冊紹介します。
情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ 2022年版
次期試験に再出題される可能性の高い問題を厳選した参考書です。全高度試験の午前Ⅰと午前Ⅱの両方の対策ができます。解説付きのため、類似問題にも対応可能です。総合的な分析によって、その年度に合った最適な問題を精選しているため、効率の良い勉強ができます。
▪著者:松原 敬二 ▪ページ数:672ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2021/10/11
情報処理教科書 エンベデッドシステムスペシャリスト 2021~2022年版
本書は、午前II・午後I・午後IIの対策に絞った参考書です。午前II演習の対策では、再出題の可能性が高いと思われる過去問を100問収録しています。また午後I・午後II試験については、図の描き方・計算問題の解き方などが、図・表を用いてわかりやすく解説されています。
▪著者:牧 隆史、松原 敬二 ▪ページ数:620ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2020/09/23
【参考】:情報処理教科書 エンベデッドシステムスペシャリスト 2021~2022年版
2022 エンベデッドシステムスペシャリスト 総仕上げ問題集
令和3年度秋期試験の分析と、直近3期分の本試験問題が収録されています。過去問対策として活用できるのはもちろん、解答・解説が詳細に記載されているため参考書としても役に立ちます。本番前に実力を確かめるのにおすすめです。
▪著者:アイテックIT人材教育研究部 ▪ページ数:638ページ ▪出版社:株式会社アイテック(iTEC) ▪発売日:2022/05/25
【参考】:2022 エンベデッドシステムスペシャリスト 総仕上げ問題集
エンベデッドシステムスペシャリストの需要
現在スマート家電・ドローン・ロボット等が普及し、スマート家電等に内臓される組み込みシステムも需要が高まっています。そのため、組み込みシステムを専門的に扱うエンベデッドシステムスペシャリストの需要も高まっていると言えます。
また、IoTを含む組み込みシステムは、リアルタイム性やレスポンス保証など、通常の業務システムより厳しい品質と高い安全性が求められます。
そのため、組み込みシステムの開発では、システムに要求される機能・性能・品質・信頼性・セキュリティ面の仕様を、ハードウェアとソフトウェアの要件に適合する高度な知識と実践能力が必要です。
特に特定用途に特化したシステムにおいては、さらに高い専門性が要求されるでしょう。このことから、高度な専門知識を持つエンベデッドシステムスペシャリストの需要は今後ますます高まるでしょう。
【参考】:プログラマ・システムエンジニア(制御・組み込み)の求人・転職・中途採用|求人・転職エージェントはマイナビエージェント
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エンベデッドシステムスペシャリストを目指して年収アップを目指そう
今日の組み込みシステムは、その用途の多様性によりさらに高い専門性が求められます。適応領域は年々拡大しており、スマート家電や小型デバイス・ドローン等多岐にわたります。組み込みシステムの開発を専門とするエンベデッドシステムスペシャリストも、活躍の場が広がっています。
高い専門知識と技術を証明するのに、エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)の受験もおすすめです。資格を取得することにより対外的にスキルをアピールでき、自身のキャリアアップにもつながります。
将来性の高いエンベデッドシステムスペシャリストに転職したい場合は、自分のスキル・希望・企業との相性などを考慮して転職先を決めることが大切です。しかし、特にIT業界未経験の方ですと、どんな企業が自分に合っているのか、わからないことも多いでしょう。
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