ITILファンデーション認定資格とは
近年のIT技術の発展により、ITサービスは企業にとってなくてはならないものとなりつつあります。ペーパーレス化や業務フローの改善、顧客へのサービス品質向上など、ITサービス利用の目的は様々ですが、使いこなすにはITサービスの運用管理の知識やスキルが必要です。
IITILファンデーションとは、ITサービスをより効果的に使用するためのITサービスマネジメント(ITSM)を活用するためのフレームワークである、「ITIL」のスキルを認定する資格です。
この記事では、ITILファンデーション資格に興味がある方のために、ITILファンデーションの資格概要や取得のメリット、合格に向けた勉強方法などについて解説します。
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ITILファンデーションはITILの知識を証明するもの
ここでは、まずそもそも「ITIL」とは何か、そしてその資格試験であるITILファンデーションとはどのような試験であるかを説明します。
ITILとは
ITILとは、1980年後半から1990年代の初めにかけてイギリスで誕生しました。イギリスの政府機関が景気回復の施策として、IT投資に対する費用対効果を向上させるために、ITサービスマネジメント(ITSM)におけるベストプラクティス(成功事例)をまとめた書籍群が「ITIL」です。
ITサービスマネジメントとは、顧客や企業がITサービスを利用するために維持管理することです。例えば、IT部門が社内で利用するITサービスの管理をしたり、企業が顧客の要求に応じてITサービスを提供したりする際に、ITサービスマネジメントの考え方が必要です。
【参考】:Certifications | PeopleCert - Best Practice by applying
ITILのバージョン
ITILは、これまで何度かバージョンアップを行っています。初代ITILでは40冊ほどあった書籍群が、2000年から2001年にかけて「ITIL V2」として7冊にまとめられました。
2004年から2007年頃には、ライフサイクルの概念を取り入れた「ITIL V3」がリリースされ、さらに2011年にV3のマイナーバージョンアップである「ITIL2011」に改定されました。
2019年に、現在の最新バージョンとなる「ITIL 4」がリリースされています。
ITIL 4では、V3までのライフサイクルに代わって「サービスバリューチェーン」の概念が導入され、ITサービスを利用者に提供するという考え方から、 ITサービスの提供者と利用者がITサービスを共に作っていくという考え方にシフトしています。
ITILファンデーションとは
ITILファンデーションとは、ITサービスマネジメントについての知識やスキルを持ち、ITILを活用できる人材であることを証明する資格です。
ITIL資格試験には「ファンデーション」「インターミディエイト」「エキスパート」「マスター」の4つのランクがあり、ITILファンデーションはその中でも入門者向けの難易度である資格試験です。
ITILファンデーションは、イギリス政府と民間企業が合弁で設立したAXELOS社が主催しており、現在はAXELOS社の親会社となったPeopleCertが主導しています。
【参考】:ITIL®4 Foundation | PeopleCert - Best Practice by applying 【参考】:ITIL 4 Foundation Certification | Axelos
ITILファンデーション取得のメリットとは
ITILを採用するシステム運用企業が増えている中で、ITILファンデーションはITの運用管理に関わる資格試験として広く知られています。ITILファンデーションを取得することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ITILスキルを持つことが証明できる
ITILは世界的に知られるITサービスマネジメントのフレームワークです。そのため、ITILファンデーション資格を取得することで、世界基準のITマネジメント知識を持つことを証明することができます。企業のIT部門や情報システム部門で働く場合には、この資格で得た知識を活かすことができるでしょう。
ITサービス利用の改善が図れる
ITILファンデーションの取得のためにITILを勉強することで、ITサービスの品質向上や、ITサービス利用者の満足度を向上させることができるというメリットがあります。
その結果、ITサービスの運用にかかっていたコストの削減、ITサービスの品質向上や業務効率化、IT作業にかかる負担の軽減が可能となり、ITサービスを通して企業に利益をもたらすことができるでしょう。
転職やキャリアアップに有利になる場合がある
ITILファンデーションを取得すると、基礎的なITサービスマネジメントの知識を持つことが証明できるため、ITサービス運用の仕事への転職で有利になる場合があります。
また、企業によってはITIL資格を持つことで資格手当が出る場合もあります。資格取得の際には、あらかじめ企業に確認しておくと良いでしょう。
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ITILファンデーションの試験概要
ここでは、ITILファンデーションの資格概要を説明します。実際に受験する際に必要となる情報を確認しておきましょう。
試験概要
ITILファンデーションの試験時間や問題数、合格ラインなどは以下の通りです。
■難易度:ファンデーション(基礎) ■試験時間:60分 ■試験問題数:40問(多肢選択) ■公式書籍持ち込み:不可(Closed book) ■合格ライン: 26問(正答率65%)
【参考】:ITIL®4 Foundation | PeopleCert - Best Practice by applying
受験方法
受験の申し込みは、試験配信業者である「プロメトリック」で行うことができます。受験料は67,793円(税込)です。
【参考】:PeopleCert/ITIL(R) ファンデーション試験 | プロメトリック
受験日は自分のスケジュールに合わせて決めることができ、受験場所も最寄りのテストセンターを選んで受験することができます。以下のページからテストセンターや開催日程を確認することができます。
【参考】:PeopleCert/ITIL(R) ファンデーション試験 試験会場検索・予約状況確認 | プロメトリック
受験できるITILファンデーションのバージョン
現在のところ、ITILファンデーション試験は「ITIL® Foundation Version 4 (Japanese)」のみ受験可能です。V3の受験はすでに終了しています。
【参考】:PeopleCert/ITIL(R) ファンデーション試験|試験一覧・検索|受験者の方|CBT/IBT 世界水準の試験運営|プロメトリック
合格率と難易度
ITILファンデーションの合格率や合格者数は非公開となっているため、正確な数値を確認することはできません。
しかし、ITILファンデーションはITIL認定試験の中でも入門レベルの試験であり、ITILの全体的な構造や、ITサービスマネジメントがどのようなことを行うものであるのかという概要を理解していれば、合格を目指すことは難しくないでしょう。
ただし、ITIL独特の用語などについてはしっかりと学ぶ必要があるため、試験対策の勉強はしっかりと行いましょう。
資格が役立つ職種や年収
ITILファンデーションは、どういった職種で役立てることができるのでしょうか?ここでは、資格を活かせる職種とその年収について紹介します。
資格が役立つ職種
ITILファンデーションを活かせる職種には、システムエンジニアやインフラエンジニア、ITコンサルタントが挙げられます。それぞれの職種について簡単に説明します。
システムエンジニアとは、システム開発においてプログラムの前段階である「上流工程」を担当するエンジニアです。仕事内容は大きく分けて、要件定義・基本設計・詳細設計・テスト・運用・保守などの5つの仕事を行います。
インフラエンジニアとは、ITの基盤(サーバやネットワークなど)の設計、構築、運用や保守にかかわる重要な役割を担うエンジニアです。インフラエンジニアは仕事内容によって、ネットワークエンジニアやサーバーエンジニア、セキュリティエンジニア、クラウドエンジニアなどに分けられます。
ITコンサルタントとは、企業や行政などのITに関する問題点の発見と解決策の提案を行う職種であり、中小企業診断士と似ています。IT戦略の立案や新システムの導入提案、時にはプロジェクトマネージャの役割を担う場合もあります。
年収アップが期待できる
ここでは、ITILファンデーションを活かせる職種としてシステムエンジニアの年収を紹介します。
「マイナビエージェント 職種図鑑」での「システムエンジニア」の平均年収は431万円(※2023年11月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種の「IT運用・管理(顧客情報向け情報システムの運用)」を参考にすると、平均年収608万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアは平均年収と同等、もしくはやや高いことが分かります。
システムエンジニアはITILファンデーションなどのIT資格を取得したり、実績を積んでいったりすることで、スキルアップやキャリアアップを図れます。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
ITILファンデーション合格を目指す勉強方法とは
ここでは、ITILファンデーション資格試験の合格のために行うべき勉強方法について解説します。
参考書や問題集を活用する
ITILの基礎を体系的に学習するために、まず参考書や問題集を使用して勉強を行いましょう。ITILファンデーションの試験対策の参考書は多く出版されています。その中でおすすめの書籍を紹介します。
▪IT Service Management教科書 ITIL 4ファンデーション 本書では、試験で問われるITILの知識をわかりやすく解説しており、一問一答形式の確認問題で、理解度をチェックしながら学習を進めていくことができます。
ITIL 4で重要な概念である「価値共創」や「ITサービスバリューシステム」などの要素を丁寧に解説しており、2回分の模擬試験も掲載されているため、実践的な対策本として学習に役立ちます。
▪著者:株式会社 日立ソリューションズ・笹森 俊裕・満川 一彦 ▪ページ数:392ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2022年10月05日
【参考】:IT Service Management教科書 ITIL 4ファンデーション(株式会社 日立ソリューションズ 笹森 俊裕 満川 一彦)|翔泳社の本
ITIL試験対策の研修コースに参加する
独学での勉強ではモチベーションが保てない、何から手をつけて良いかわからない、という方には、費用はかかりますが、研修の受講を検討する方法もあります。
ITILを運営するPeopleCertでは認定パートナーを設けており、この認定パートナーを利用して公式な研修を受けることができます。様々な認定パートナーがITILの研修を行なっていますので、効率よく学習し、できるだけ早く資格を取得したい方はチェックしてみるといいでしょう。
【参考】:パートナー一覧 | PeopleCert - Best Practice by applying
ITILファンデーションを取得してITサービスをさらに活用しよう
ITサービスマネジメントは、IT化が進む社会で多くの企業や顧客がITサービスを活用していく中で、高い品質を維持するために重要です。ITILはITサービスマネジメントの有益な指標として、ITサービスの運用を担うエンジニアにとっては学ぶべき価値があるものです。
ITILファンデーションの資格取得を通して、ITILおよびITサービスマネジメントの知識を身につけ、ITサービスを活用できるスキルを身につけましょう。
また、資格取得を通して得た知識やスキルは今後のキャリアアップにも活かすことができます。現在転職を検討している場合、こういった資格が有利に働きます。優良企業に出会うには企業リサーチが欠かせませんが、働きながらの転職活動はなかなか困難です。
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