プログラマーにタイピング速度は必要?
プログラマーをはじめ、プログラミングを業務で行う機会があるIT系エンジニアの方にとって、自分のタイピング速度は気になるものです。タイピング速度が速ければもっと業務効率を向上できるのではないかと考える人もいるかもしれません。
確かにタイピングが速いということは、単純にコーディング作業の速度が速いことを意味することはすぐに理解できるでしょう。しかし、プログラマーの仕事には速くタイピングするよりも大切なことがあるため、タイピング速度は必要ないという意見も聞かれます。
この記事では、タイピング速度を上げる方がいいかどうか悩んでいる方のために、プログラマーにはタイピング速度が必要かどうかについて解説します。また、タイピング速度を上げるメリットや練習方法についても説明します。
プログラマーに求められるタイピング速度と正確性とは
プログラマーは、タイピング速度が速いに越したことはありません。しかし、プログラミングの生産性を向上させるには、タイピングの正確性など速度以外にも重要なことがいくつかあります。
タイピングが遅いとコーディングの作業効率が落ちる
プログラミングはコードをタイピングする作業ですので、タイピング速度が遅いと、コーディング作業がその分遅くなることは間違いありません。
そのため「プログラマーにタイピング速度が必要か」という問いの答えとしては「プログラミングの速度が原因で業務が滞ることのない程度の速さは必要である」と言えます。
プログラミングの仕事は試行錯誤の繰り返しでもあります。何度もコーディングして、動かして、仕様通りの動作をできるまで繰り返すため、タイピングするタイミングは幾度となく訪れます。そのたびに入力に時間がかかっていると、全体の作業時間は必然的に長くなります。
また、「自分のタイピング速度は遅いかもしれない」というわずかなストレスを常に抱えながらプログラミングを行うのは、モチベーションの点からも良いこととは言えません。自分のプログラミングが遅いかもしれないと感じるなら、改善の努力を行う価値はあるでしょう。
速さ以上に正確さが重要
プログラマーには最低限のタイピング速度が必要ですが、それ以上にタイピングの正確性が大切です。
プログラミングでは、多少の誤字も大きな影響を及ぼしかねません。動かしてみるとエラーが発生し、コードを何度も見直して時間をかけて原因を探った結果、1文字の脱字や大文字小文字の誤記が原因だったという状況はよくあることでしょう。
正確性が低いタイピングでコーディングの入力ミスが多発すると、その分、後から修正に余計な時間を費やすことになります。そのため、タイピング速度を向上させるのであれば、同時に、誤字や脱字がないようにし、タイピングの正確さを失わないようにすることが重要です。
むしろ、タイピングの練習をする場合は「タイピング速度を上げながら正確性を保つ」という考え方ではなく、「正確性を保ちながら徐々に速度を上げる」ということを考えるべきでしょう。
タイピング量自体を減らすことも大切
プログラマーの仕事はコードを書くことではありますが、そもそも、コーディングの量が多いことはプログラマーにとって良いことではありません。できるだけ少ないコードで要求通りの動作を実現する方が理想的と言えます。
また、近年はIDE(統合開発環境)やエディタでコードの入力を補完して入力支援してくれるものを使う機会も多く、タイピングの量は少なくて済むようになってきています。
タイピング速度の重要性は、これらのコード量を減らす取り組みを行なった後、実際にコーディングする時には速いに越したことはない、という位置付けであると考えられます。
プログラミング速度を上げること自体が目的ではなく、プログラミング全体の効率化の一環としてタイピング速度の向上があると捉えましょう。
日本語とプログラミングのタイピングの違いとは
タイピング速度を向上させる時に気をつけたいこととして、日本語タイピングとプログラミングのタイピングには違いがあるということです。
日本語タイピングでは、母音「AIUEO」が圧倒的に多く使われますが、プログラミングタイピングでは、日本語であまり使わない「Q」「V」「P」などを含め、満遍なくアルファベットを使います。また、各種記号キーの入力や、Shiftキーを押しながらのキー入力も日本語タイピングではあまり登場しません。
タイピング自体の速度向上を目指す上で基本的なことに変わりはありませんが、日本語とプログラミングのタイピングにはこのような違いがあることを覚えておくと良いでしょう。
タッチタイピングができる必要がある?
プログラマーにタッチタイピング(ブラインドタッチ)は必須ではありません。手元のキーボードを見ながらでも、プログラミングに十分な速度のタイピングは可能ですし、タッチタイピングができなくても活躍しているプログラマーもたくさんいます。
ただし、タッチタイピングができることにはメリットも多くあります。詳しいメリットについては後述しますが、手元を見ずに画面を見ながらタイピングすることで入力ミスに気付きやすく、目線を移動させる機会が減る分、疲れも軽減されます。
タッチタイピングができないよりも、できる方が効率的であることは間違いないでしょう。
どれくらいの速度があればいい?
一般的に、1分間に何文字タイピングできるかという速度を表現するのに、1分間あたりの文字入力数である「WPM(Word Per Minutes)」や、1秒間あたりの文字入力数である「WPS(Word Per Seconds)」がよく使われます。
タイピング練習サイトの「e-typing」で示されている速度の目安としては、1分間あたりの文字入力数(WPM)が209文字以上であれば、オフィスワークでは困ることのないレベルであるとされています。
プログラマーとしては、一般的なタイピング速度があれば十分でしょう。
【参考】:腕試しレベルチェック - インターネットでタイピング練習 イータイピング | e-typing ローマ字タイピング
プログラマーがタイピング速度を向上させるメリット
プログラマーにとって、タイピングの速度向上はプログラミングの効率を上げるための1つの要素であることがお分かりいただけたと思います。ここでは、タイピング速度を向上させることによってどのようなメリットがあるかを説明していきます。
コーディングの時間が短縮できる
タイピング速度が速ければ、コーディングの時間が短縮できます。コーディングを行うときは、最初にある程度まとまった分量のコードを入力することが多く、これを速く入力することができれば、プログラミングの内容の検討など他の作業に時間を使うことができます。
また、修正などにおいても1つの単語を時間をかけずに入力できるか、キーボードを見ながらゆっくりと入力するかの積み重ねが、最終的に大きな差になる可能性があります。
プログラミングの勉強効率が上がる
プログラミングの勉強をする時や、まだ使ったことがないプログラミング言語に取り組むときなど、既存のコードを写して勉強することがあるでしょう。コードを目で追うだけよりも、実際に自分でお手本のコードを真似して入力し、結果を見てみる方が理解しやすいものです。
タイピング速度が速いと、この学習の効率が良くなります。お手本のコードを、どんどん自分で入力して数をこなすことで、その言語の文法や、よく使う記号などが身に着きます。数をこなして経験を増やし、指に覚えさせるためには、タイピング速度は可能な限り速い方がいいと言えます。
タッチタイピングを習得すれば速度だけでなく正確性も向上できる
タッチタイピングができれば、手元のキーボードを見ずに、画面だけを見て入力ができるようになります。
そうなると、手元では文字を入力しながら、意識は画面に次々と入力される文字に集中できるため、入力間違いにその時点で気付きやすくなります。
プログラマーにとってタッチタイピングは必須ではありませんが、速さと正確性を両立させるために、タッチタイピングの習得を1つの目標としても良いでしょう。
タイピング速度を向上させる方法とは
タイピング速度は、練習したからといって急に速くなるというものではありません。日々の小さな積み重ねで、時間をかけて徐々に速くなっていきます。ここでは、日頃気をつけたい、タイピングの速さを向上させるコツについて解説します。
キーの位置をしっかりと把握する
タイピングの速度を向上させる基本は、キーの位置を覚えることです。まずはホームポジションの「F」と「J」の位置を覚えることから始め、少しずつどの文字・記号がキーボードのどこにあるかを抑えていきましょう。
今、位置を把握しておらず探してから押しているキーがあれば、まずはその位置を覚えてスムーズに打つことができるようになることで、その分だけタイピング速度が速くなるのです。
キーボードを眺めて位置を覚えるよりも、実際にキーボードを打って、どこにどの文字があるかをしっかりと指に覚えこませていきましょう。
毎日短い時間でもタイピング練習をする
タイピングは、慣れれば慣れるだけ速くなります。おすすめの練習方法は、数日おきにまとめてタイピング練習の時間を取るよりも、1日10分でも良いのでできるだけ毎日練習時間を取ることです。その方が、タイピングの感覚が体に染み込みやすいでしょう。
よく間違える単語を練習する
誰でもタイピングでよく間違えやすい単語や、苦手なキーがあります。タイピングの速度向上のためには、この苦手な単語やキーの克服がポイントとなりますので、集中して練習するようにしましょう。
また、こういった間違いやすいキーや単語を正確に入力できるようになれば、タイピングの正確性を向上させることにもつながります。
ミスが減ってから速度を上げる
タイピングの練習を始めると、とにかく速く入力することばかりに気を取られて、入力ミスが多くなることがあります。しかし、ミスが多いと、入力し直したり、後から修正が必要となったりして、本末転倒になりかねません。
そこで、まずはキーの位置と正しい指のポジションを覚えて、間違いなくタイピングする練習をしましょう。入力ミスがないようにしながら、徐々に速度を上げていくことが大切です。最初はどのキーをどの指で押すか考えるのに時間がかかりますが、続けていけばゆっくりでも確実に速度が向上していくでしょう。
おすすめタイピング練習サイト
タイピングの速度向上の練習は、自分のパソコンに入っているメモ帳やテキストエディタでも十分に行うことができますが、習得の向上を助けてくれるタイピング練習サイトもたくさんあり、これらを活用してさらに効率よく速度を上げることができます。ここでは、いくつかのタイピング練習サイトを紹介します。
寿司打
ゲーム感覚でタイピングを練習できるタイピング練習サイトです。制限時間内に、回転寿司の要領で流れてくる皿に書かれている文字を入力していきます。正確な入力が続けば制限時間が延び、いいスコアを残すことができるため、正確な入力も求められます。
初心者から上級者まで、ハイスコアを目指しながら楽しんでタイピング速度向上に取り組むのにおすすめのサイトです。
【参考】:寿司打
e-typing
e-typingは多くのタイピング練習者が登録する練習サイトです。定期的に入力例文が変わる腕試しレベルチェックを中心に、バラエティに富んだ例文のタイピング練習を行うことができます。
無料でユーザ登録することができ、登録すれば、自分のスコアを振り返ったり、苦手なキーチェックしたりするなどして効率的に練習を進めることができます。
【参考】:インターネットでタイピング練習 イータイピング | e-typing ローマ字タイピング
PTYPING
PTYPINGは、様々なプログラミング言語の用語を練習できるタイピングサイトです。速さよりも正確性を重視した練習を行うことができます。
Python・COBOL・JavaScript・PHPをはじめとした多くのプログラミング言語の単語をひたすらタイピングしていきます。タイピング中には、単語の簡単な説明も表示されるため、プログラミング言語の勉強にもなります。
【参考】:PTYPING - プログラミングとタイピングの練習
typing.io
typing.ioは、プログラマー向けの実践的タイピング練習サイトです。実際のコードをObjective-C・C#・Javascript・Rubyなどのプログラミング言語の実際のコードを入力文例としてタイピング練習を行うことができます。
自分が使うプログラミング言語に慣れるために、コードを正確に速くタイピングする練習をしたいときにおすすめです。
【参考】:Typing Practice for Programmers | typing.io
プログラマーもタイピング速度の向上でコーディングの効率アップを目指そう
プログラマーにとってのタイピング速度向上のメリットや練習方法について、お分かりいただけましたでしょうか。
プログラマーとタイピングは切り離せない関係です。もしも自分のタイピング速度が遅いかもしれないと心配であれば、これから先のプログラマーとしてのキャリアを考えて、早めにタイピング練習に取り組んでみることをおすすめします。
練習を行う時には、まずは正確さを重視して、長い目で見て速度が速くなることを目標にして、じっくりと練習を積み重ねていきましょう。
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