メタバース導入で地方自治体はどう変わるのか?活用事例10選!
thumb_metaversecj_01
メタバース導入で地方自治体はどう変わるのか?活用事例10選!
アンドエンジニア編集部
2023.03.21
この記事でわかること
メタバースを地方自治体が抱える過疎化や少子化対策として活用する自治体が増えている
メタバースのメリットには、地域産業の活性化やふるさと納税の推進、文化財保存推進などがある
メタバースの取り組みは、それぞれの自治体が抱える問題ごとに異なっている

地方自治体のメタバースが注目を浴びる

img_metaversecj_01

メタバースは利用者がいる場所を問わず、インターネットなどを通じてどこからでも参加できる仮想空間です。例えば、東京都の町田市ではメタバース上にバーチャル市役所を設けて職員採用PR動画をYouTubeで公開しています。

こうしたメタバースを地域活性化に活用する自治体が増加しており、既に多くの取り組み事例が公表され、注目を浴びています。

【参考】:AI・アバター・メタバースなどの最新技術を使った取組を紹介します!/町田市ホームページ

メタバースとは

メタバースは、ギリシャ語で超越を意味する「meta(メタ)」と、宇宙を表す英語の「universe(ユニバース)」を組み合わせた造語で、超越した世界、すなわち仮想空間を表しています。

メタバースは現実世界とは異なり、デジタル上の世界を指します。メタバースの利用者は自身の分身であるアバターとして活動し、他の利用者とコミュニケーションを取って交流することができます。

メタバースではVRゴーグルのようなヘッドセットが必要だという誤解が一部にありますが、多くのコンテンツはスマートフォンやパソコンのブラウザを利用して体験ができるため、VRゴーグルは必ずしも必要ではありません。

メタバースとは?語源や用途・採用テクノロジーを幅広く解説

メタバースが注目を浴びる理由

近年、メタバースが注目を浴びている理由としては、メタバースに必要な関連技術の発達が挙げられます。 5Gをはじめとするインターネット回線の高速化、VR技術の発展、スマートフォンの普及などによって、誰もがメタバースに容易にアクセスできる環境が整ったことが挙げられます。

中でも特筆すべきはVR技術の発達です。メタバース上では視覚からアバターの動作に至るまで、現実と変わらない感覚で活動することが可能です。

5G技術がエンジニアに与える影響は大きい?今後の動向や求められること

地方自治体がメタバースを導入するメリット

img_metaversecj_02

地方自治体は過疎化や少子高齢化といった問題を抱え、地域の重要文化財の老朽化、継承、それらを管理する人の不足といった危機に直面しています。これらの問題解決にメタバースが有効な施策であるとの認識が広がっていることが、地方自治体のメタバース取り組みの根底にあります。

では、地方自治体がメタバースを導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのかについて見ていきましょう。

地域産業の活性化を図れる

地域産業は過疎化や少子高齢化の影響を受け、人材確保が困難になりダメージを受けていますが、メタバース導入によって、定住人口以外に関係人口を創出することが可能であり、人材面で問題解決を図ることが可能です。

またメタバース上でイベントや商談会を開催することで、商談機会の拡大、遠隔地からの訪問者の確保を図ることができ、地域産業の活性化を図ることができます。

ふるさと納税の促進ができる

メタバースはより現実に近い形で、遠隔地からの訪問者に対して地元産品のアピールを行うことができます。こうした仕組みを利用することで、ふるさと納税の返礼品を3DでPRし、自動的にふるさと納税サイトに誘導できます。

地域のメタバース人材の育成ができる

地方自治体が主体的にメタバースに取り組む上では、デジタル人材が欠かせません。学生や遠隔地にいる人、郷土愛を抱く人を対象にその魅力をメタバースを用いた実体験やセミナーなどで広く伝えることで、メタバース人材の育成を図ることができます。

文化財の保存促進ツールとなる

地方の文化財はその管理者や継承者が不足していますが、メタバースは文化財の保存促進ツールとしての役割が期待されています。さらにメタバースはNFT「Non-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)」の技術と組み合わせることで、よりその効果を高めることができます。

【参考】:「NFT」とは?非代替性トークンの仕組みと売買方法 | マイナビニュース

AWS Cloud WANで激変するネットワークエンジニアの仕事

地域の魅力発信による観光促進を図れる

メタバースは地域観光業において、その地域の魅力を広く世界に向けて発信ができます。メタバースコンテンツの参加者は、メタバース上で地域の景観や、地域特有のおすすめスポットを体験でき、また地域の人々と触れ合うことで、観光促進や移住促進を図ることができます。

地方自治体におけるメタバース導入の10事例

img_metaversecj_03

ここまで地方自治体の抱える問題、その解決に向けたメタバース活用の具体的メリットについて確認をしてきました。ここでは、地方自治体ではどのようにメタバースを活用しているのかについて、その導入事例、活用事例を紹介します。

地域産業の活性化

メタバース導入によって、地域産業の活性化につなげた取り組み事例を2つ紹介します。

新潟県長岡市:メタバースとNFT活用による「仮想山古志プロジェクト」 村の特産品、錦鯉をモチーフにした「Nishikigoi NFT」では、利用者はデジタル村民となって地域活性化プロジェクトに参加や、デジタル村民選挙投票などが行えるなど、遠隔地からでも村の振興やガバナンスに参加することができます。

【参考】:Nishikigoi NFT

静岡県藤枝市:DX推進事業の一環とするメタバース体験商談会の開催 地域DX推進事業の一環として藤枝ICTコンソーシアムが取り組んだメタバース体験商談会は、メタバースの「GAIA TOWN」において開催されました。

この取り組みでは、参加した地域の企業はメタバース展示会場にブースを設置し、訪問者に自社製品等のPRをしたり、また訪問者もブース内の店員に話しかけたりすることで、音声の会話を通じて商談が行えることができました。

【参考】:メタバース体験商談会|藤枝地域産業DXフェア

ふるさと納税の促進

メタバース導入によって、ふるさと納税の促進につなげた取り組み事例を2つ紹介します。

大阪府泉佐野市:バーチャルマーケットでふるさと納税の返礼品をPR ふるさと納税で3年連続日本一の大阪府泉佐野市のメタバース取り組み事例です。メタバース上に作られたバーチャルマーケット上で、来場者がデジタルポスターに触れると、同市の返礼品として人気の肉を使った焼肉を体験でき、ふるさと納税サイトに誘導されるような仕組みとなっていました。

【参考】:メタバース上でふるさと納税の返礼品を選べるブースを展開!|泉佐野市

静岡県焼津市:バーチャルマーケット上でマグロの解体ショーを実演 バーチャルマーケットに出展した焼津市のブースでは、返礼品として人気の「ネギトロ」や「カツオのたたき」などを3Dモデルで展示したり、「ミナミマグロのバーチャル解体ショー」を実演したり、焼津市の職員がVR接客に挑戦するなど、来場者と積極的な交流を行って焼津市の魅力を発信しました。

こちらの取り組みでも、来場者がデジタルポスターに触れる事でふるさと納税サイトに誘導する仕組みが採用されました。

【参考】:静岡県焼津市 バーチャルマーケット

メタバース人材の育成

メタバース導入によって、メタバース人材の育成を狙った取り組み事例を2つ紹介します。

長崎県西海市:次世代の雇用創出を狙うメタバースアカデミー 長崎県西海市では、西海クリエイティブカンパニーと連携し、デジタル人材の育成を目的に「メタバースアカデミー」をThe Sandbox上に開講しました。このメタバースアカデミーでは、メタバースなど新しい時代に対応できるデジタル人材の育成を狙いに2022年9月から8つの講義を開講しています。

【参考】:Home | メタバースアカデミー

熊本県天草市:天草メタバースで地元メタバース人材の育成 熊本県の天草市は、VRコンテンツ企画開発のpararerl及び動画制作などの広報物の制作会社コーホー部と共同して、メタバース上で同市の魅力を発信する「パララボ天草」を開設しました。

天草メタバースプロジェクトでは、VR観光体験ツアーやメタバース上での接客、案内を行うアバターガイドの指導、高校生から参加可能なVRエンジニアの教育などを通じて、天草市の魅力をメタバースを通じて発信できる人材育成を目的としています。

【参考】:paralreal 株式会社 / 企業誘致サイトTOP / 天草市

文化財の保存促進

メタバース導入によって、地域の文化財保存促進につなげた取り組み事例を2つ紹介します。

奈良県奈良市:メタバース上に「なら写真美術館」をオープン 奈良県奈良市の入江泰吉記念写真美術館では、NFT写真美術館を2022年秋に「The Sandbox」と「Decentraland」上に開設しました。

このプロジェクトでは、15万点以上ある入江泰吉氏の作品のデジタル化、NFT化によって文化財の保存を促進し、さらに美術館や奈良の魅力をメタバースを利用して世界に広げるという目的を持って進められました。

【参考】:展覧会を作ろう in メタバース | 入江泰吉記念 奈良市写真美術館

長崎県佐世保市:重要文化財の「針尾送信所」をデジタルアーカイブ 長崎県佐世保市では、ハコスコ社が結成したVR専門家組織の「メタバースマスターズ」と連携し、同市の重要文化財である「針尾送信所」のデジタルアーカイブ化に取り組んでいます。

さらに、同市はメタバースツアーやユーチューブ上で公開している「針尾送信所オンラインツアー」「現地見学会」などを行って、取り組みを広く知らしめるための接点づくりに注力しています。

【参考】:デジタルアーカイブ「針尾送信所VR」を制作、貴重な文化財の観光資源をウェブVR化(多言語対応) | ハコスコ

地域の魅力発信による観光促進

メタバース導入によって、地域の魅力発信による観光促進につなげた取り組み事例を2つ紹介します。

佐賀県嬉野市:メタバース『デジタルモール嬉野』の開設 佐賀県嬉野市では、観光まちづくりを目指したプロジェクトとして、大日本印刷、日本工営、ケー・シー・エスの各社と共同でメタバース上に「デジタルモール嬉野」を開設しました。

デジタルモール嬉野は、西九州新幹線嬉野温泉駅と同時に開業する「嬉野観光交流センター」の建築データに基づき、高精細に再現されたメタバース空間です。このデジタルモール利用者はアバターを利用してメタバース空間上を自由に散策ができる仕掛けになっています。

また、メタバース上で集めたコインの利用策が検討されており、利用者がよりメタバースを楽しめる仕組みが講じられる予定です。

【参考】:嬉野市|メタバース空間「デジタルモール嬉野」について

鹿児島県日置市:ネオ日置計画 鹿児島県日置市では、日置「ひおき」を想う人々の拠り所となるよう、メタバース上に「もうひとつの日置」創造のプロジェクト、「ネオ日置計画」を立ち上げました。

ネオ日置計画ではメタバースの特徴である対面のコミュニケーションや匿名性の利点を最大限活かし、「観光では味わうことのできない特別な体験」や「鹿児島弁で語る日置市民との交流体験」の2つの価値提供実現に向けた空間づくりを目指しています。

【参考】:魅力はメタバースではなく「人」なのだぁぁぁ!ネオ日置建設に皆さんの想いを是非ぃぃぃ!!! | ひおきと

メタバースによって生まれ変わる地方自治体

img_metaversecj_04

ここまで日本の地方自治体が抱える過疎化、少子高齢化などの課題と、それらの解決に向けたメタバースの活用、その具体的メリットや活用事例について紹介しました。

ご紹介したように、メタバースの活用方法はそれぞれの自治体によって異なりますが、それは各自治体が置かれた状況や課題が必ずしも同一ではないからです。

メタバースは問題解決の有効な手段ですが、すべてに万能ではありません。課題を明らかにし、その課題解決に向けた施策や目標を明確化する必要があります。それらの解決策を描き、課題解決を図るのはシステムエンジニア、ITエンジニアの大きな役割です。

メタバースはまだまだスタート地点に立ったばかりであり、今後は急速な拡大が見込まれています。エンジニアの皆さんは地方創生やまちづくりという大きな課題の達成に向けて、皆さんのスキルを生かしてみてはいかがでしょうか。

デジタル人材とはどんな人材?意味や育成・活用のポイントを解説!
DXの推進力となる5つのデジタル技術と、企業の適切な選択方法
気になる人のXをフォローしよう!
アンドエンジニア公式LINEでは
新着記事やエンジニアに役立つ情報をお届け!
日々のキャッチアップをお手伝いします!
マイナビITエージェント

編集部オススメコンテンツ

Sponsored
【無料個別転職相談会】アプリケーションエンジニア向け!リモート・在宅勤務で働きたい方へ
マイナビITエージェント
Sponsored

アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから

お問い合わせ・情報提供
はじめて転職される方へ
SE・システムエンジニア(IT/通信/インターネット) 求人一覧

編集部おすすめコンテンツ

Sponsored
【無料個別転職相談会】アプリケーションエンジニア向け!リモート・在宅勤務で働きたい方へ
マイナビITエージェント
Sponsored

アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから

Powered by マイナビ AGENT