LinuxとUnixの違いとは?
LinuxとUnixはどちらも歴史が長く、多くの派生OSを生み出した重要なオペレーティングシステムです。LinuxはUnixの思想を継承しつつ、オープンソースとして開発されたOSです。LinuxはUnixと高い互換性があり、多くのUnixコマンドがLinuxでも利用できます。
一方、両者の間には哲学や設計思想、そしてコミュニティなど、様々な違いが存在します。この記事では、LinuxとUnixの違いを技術的な側面から深掘りし、それぞれのOSの特徴、利用されている場面などについて解説します。
Linuxとは
Linuxは、無料で使えるオープンソースのオペレーティングシステム(OS)です。WindowsやmacOSと同様に、コンピュータを動かすための基本的なソフトウェアであり、サーバ、スマートフォン、IoT機器など、幅広い分野で利用されています。
【参考】:Linux | Oracle 日本
Unixとは
Unixは、古くからある非常に影響力の大きいオペレーティングシステム(OS)です。多くの現代的なOSの基礎となり、その安定性と柔軟性から、特にサーバ環境で広く利用されています。マルチタスク、マルチユーザなど当時としては画期的な特徴を誇っていました。
【参考】:The Unix® Standard | The Open Group Website
UnixとWindowsの違い
Unixは1960年代後半に開発され、シンプルさ、効率性、移植性を重視した哲学に基づいており、多くの派生OSを生み出し、現代のOSの基礎を築きました。
一方、Windowsは1980年代にマイクロソフトが開発し、ユーザインターフェースの直感性を重視し、一般ユーザ向けのPC市場で大きなシェアを獲得しました。
サーバや大規模システムで、高い安定性とカスタマイズ性を求める場合は、Unix系OS (Linuxなど) が適しています。一方、デスクトップパソコンや一般的な用途で、直感的な操作性と豊富なソフトウェアを求める場合には、Windowsが適しています。
UnixとWindowsは一見異なるOSに見えますが、歴史的な背景や技術的な共通点が多く存在します。特に現代ではクラウドやコンテナ技術の発展により、両者の垣根はますます低くなっています。
Linuxの歴史をたどる
LinuxはUnix OSを原型にして開発されたので、先にUnixの歴史について見ていきましょう。Unix誕生のきっかけとなったOS、Multicsの誕生から見ていきます。
Multicsの誕生
1965年に共同プロジェクトとして、米国のベル研究所でタイムシェアリングOS、Multicsという多機能型のOSが開発されました。
タイムシェアリングとは、1台のコンピュータを複数人が同時に利用できる手法で、当時としては画期的なOSでしたが、多機能にこだわり過ぎたことでパフォーマンス面が弱く、普及には至りませんでした。
【参考】:Multics
Unixの誕生
Multicsは巨大かつ複雑という欠点が露呈し、その反省からUnixが誕生しました。Unixはベル研究所で開発がスタートし、アセンブラ言語を用いて最初のUnixが開発されましたが、1973年にはC言語で全面的な書き直しが行われました。
初期のUnixはシングルタスクOSでしたが、ハードウェアの進化に連れてマルチタスク化が行われ、機能も拡張して各種OSの祖となりました。
Unix系の代表的なOSとしては、Linux以外に、BSDやFreeBSD、Sun MicrosystemsのSolaris、IBMのAIX、HPのHP-UXがあります。「Mac OS」はBSDをベースに開発されたUnix系OSです。またAppleのモバイルOSとして知られる「iOS」もUnix技術を基盤としています。
【参考】:The Unix® Standard | The Open Group Website
Linuxの誕生
Linuxの開発は、1991年にフィンランドの大学生であったリーナス・トーバルズによって、個人的なプロジェクトとして始まりました。トーバルズは、当時大学で利用していたUNIXシステムの機能に満足しておらず、より自由でカスタマイズ可能なOSを欲していました。
彼はアンドリュー・タネンバウムが開発した教育用OSのMINIXに触発され、自分でもOSを開発することを決意しました。また、トーバルズは、自身の開発したOSを世界中の開発者と共有し、共同で発展させるというオープンソースの理念を持っていました。
【参考】:Linux Foundation
Linuxの現在
サーバOSの大半はLinux系が占めるほど、Linuxのシェアが拡大しています。他にもデスクトップOS、組み込み機器、IoT機器にも搭載されるなど、非常に幅広い分野でLinuxは活躍しています。また、身近な所では、Android OSもLinuxカーネルを採用しており、世界中のスマートフォンの70%以上を占めています。
【参考】:アニュアル レポート 2023 オープンソースの躍進 |The Linux Foundation 【参考】:Android | AndroidスマートフォンやAndroidデバイスを使ってGoogleでさらに便利に
LinuxとUnixの違い
ここまで、LinuxとUnixの関係や歴史について紹介してきましたが、具体的にLinuxとUnixは何が異なるのでしょうか。ライセンス面、実装と開発主体、利用シーンの観点から違いを確認してみましょう。
ライセンス料の違い
Unixは商業ライセンスが中心で、開発元やディストリビューター(例:IBM、HP)が利用を管理するため、企業が使用するためには購入が必要となります。
一方、Linuxはオープンソースライセンス(主にGPL)で提供されるため、誰でも無料でソースコードにアクセスし、改変・再配布が可能です。
実装と開発主体の違い
Unixは元々はAT&Tのベル研究所で開発され、その後は商業ベンダーがAIX、 Solarisなど、独自のバージョンを展開しています。一方、Linuxは1991年にリーナス・トーバルズによって開発が開始され、多数のオープンソースコミュニティや企業がその展開に貢献しています。
利用シーンの違い
Unixは主にエンタープライズ向けで、特にメインフレームや高性能サーバ、業務アプリケーションの運用に使用されています。
一方、Linuxはサーバ、デスクトップ、モバイル(例:Android)、組み込みシステムまで広く利用され、クラウド環境や開発用途に適しています。
シェルの違い
Unixではシェルはshやtcshなどが使われることが多く、LinuxではBash(Bourne Again Shell)が使われます。シェルとはユーザとOSをつなぐコマンド・インタプリタと呼ばれるプログラムで、黒いコマンド入力画面が特徴です。
LinuxのUnixの共通点
ここまでLinuxとUnixの違いについて解説しましたが、ベースの部分では共通点が多いのも事実です。続いて、LinuxとUnixの共通点を明らかにしてみましょう。
基本的なコマンド
LinuxとUnixはどちらも国際標準規格のPOSIX(Portable Operating System Interface)に準拠しています。この規格は、システムコールやコマンドの互換性を保つ目的で設計されており、多くのコマンドの動作が統一されています。
実際に、Unix/Linuxコマンドはls、cd、mkdir、rm、grepといった基本コマンドが共通しており、ほぼ同じ使い方が可能です。
【参考】:POSIXーIEEE SA - IEEE 1003.13-2003
セキュリティ面
LinuxやUnixでは、ファイルとプロセスに対するアクセス制御が厳密に管理されています。また、どちらもマルチユーザシステムとして設計されているため、異なるユーザ間でのプロセス分離が徹底されています。こうしたことから、どちらもセキュリティ面が強固な点が共通しています。
高い安定性
LinuxやUnixは、「モジュール型の設計」を採用しています。この設計では、システムの各部分が独立して機能し、障害が発生しても他の部分に影響を与えにくい構造になっています。
また高度な権限管理が可能なため、セキュリティと安全性が両立しているのも強みです。このため、サーバなど安定稼働が求められるケースでよく使われています。
エンジニアにとってのLinuxとUnix
エンジニアにとって、LinuxとUnixは非常に重要な存在です。特に、システムエンジニアやプログラマーにとって、Linuxはなくてはならないツールと言えるでしょう。なぜLinuxとUnixがエンジニアにとって重要なのか、どう学べばいいのかについて解説します。
LinuxとUnixが重要な理由
LinuxはWebサーバ、データベースサーバなど、多くのサーバ環境で採用されており、システム開発では欠かせません。またプログラミング環境という面でもLinuxは、C、C++、Python、Javaなど、様々なプログラミング言語に対応しており、開発環境としても非常に優れています。
また、Unixは商用OSとして利用されることが多く、しかもLinuxとは共通点が多いため、両者を使えるエンジニアは企業にとっても重宝します。
Linux/Unix学習の始め方
LinuxとUnixは兄弟関係にあり、どちらか一方を学ぶと片方も学習しやすいでしょう。まずは対応する資格が豊富で、テキストや学習環境が整っているLinuxの学習から始めると良いでしょう。
ただ漫然と学習するのではなく、Linuxの関連資格の取得を目標にすると、モチベーションのコントロールがしやすくなります。
Linuxの資格
Linuxのスキル証明には、LinuCやLPICといった資格の取得が有効です。これらの資格は、Linuxの基礎知識から応用的な知識までを評価し、Linuxのスキルレベルを客観的に示すことができます。
■ Linuc 日本で開発された資格で、クラウドやDX時代のITエンジニアに求められるスキルを証明できます。日本市場向けに最適化され、LPICとは異なり、受験者には合格基準や項目別スコアも提供されます。レベル1からレベル3までの3つの段階があり、それぞれ異なる知識とスキルが求められます。
【参考】:IT資格といえば LinuC | Linux技術者認定試験 リナック | LPI-Japan
■ LPIC 世界的に認知されている資格で、Linuxの基礎的な知識から高度なシステム管理スキルまでを評価します。LPICには、スキルに応じて「LPIC-1」「LPIC-2」「LPIC-3」の3つのレベルがあり、それぞれ難易度が異なります。上位の試験を受けるには下位試験に合格する必要があります。
【参考】:Linux Professional Institute (LPI)
Unixの学習
Unixは特定メーカーや一部企業で使われており、公開された学習書も古く、学習環境が整っているとは言えません。ここではオンラインによる学習方法を紹介します。
■ 初心者向けUNIXコマンド & Vim基礎講座 on Mac この講座は、Mac環境でUNIXコマンドとVimを基礎から学びたい方におすすめのオンラインコースです。プログラミングやサーバ管理など、様々なIT分野で活躍するために必要な基本的な知識とスキルを習得することができます。
【参考】:初心者向けUNIXコマンド & Vim基礎講座 on Mac | Udemy
LinuxとUnixに明るいエンジニアを目指そう
ここまで、 LinuxとUnixの違いについて、それぞれの歴史や違い、共通点、活用シーンなどについて紹介してきました。LinuxとUnixは、現代のITインフラを支える重要な基盤技術です。
これらのOSを深く理解することは、エンジニアとしてのキャリアアップに役立つと言えます。これらOSについて学び、スキルを身につけることで、エンジニアとしての活躍範囲が広がるでしょう。
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