LinuCとLPICの違いとは?
LinuCとLPICはLinuxの知識や技能を証明するための資格試験であり、どちらの試験を受験すればいいのか迷われる方は少なくないでしょう。ここでは、LPICとLinuCそれぞれの試験概要について詳しく紹介します。
そもそもLinuxとは
そもそもLinuxとは、WindowsやmacOSと同様のOSの1種です。Linuxは誰でも無償で利用できるオープンソースソフトウェアとして公開されているため、特にサーバー用のOSとして世界中で圧倒的なシェアを占めるまでになったOSです。世界中のサーバーの大半がLinuxで動いているため、クラウド時代と呼ばれる今であってもその重要性はますます高まっていると言えます。
世界中のサーバーの大半がLinuxで稼働している現状を踏まえると、システム開発を行う際にLinuxを扱えるスキルや経験は必須となってくるため、エンジニアになる上ではLinuxに関する知識は身につけておかなければなりません。LinuCやLPICの資格取得によって、対外的にLinuxのスキルや知識があることを証明できます。
LinuCはシステム開発に必要なスキルを問う資格
LinuC(リナック)とはLPI-Japanが運営する試験であり、2018年から提供が開始されました。2020年4月には出題範囲が改定され、問われる内容がシステム開発の現場で求められるクラウドやセキュリティ、ネットワーク、オープンソースのライセンスなど、今の時代に適応した現在の試験となっています。また2023年11月には、アーキテクチャ設計など上流工程で必要なスキルを問う「LinuCシステムアーキテクト」が始まりました。
LPICは世界的に認知されている資格で、日本語試験はグローバル基準に従い、英語版の試験内容を翻訳しています。LinuCは日本のNPO法人であるLPI-Japanが開発・運用をしている試験であり、はじめから日本語で問題が開発されています。LinuCが誕生した背景は、大きく3つの理由があります。
1つ目は、グローバル対応の試験の課題である試験問題の翻訳品質です。通常、英語圏の試験問題は用語が複雑で、日本語化する際に品質を高めることが難しい面があります。LinuCでは、問題を分かりやすくするために、はじめから日本語で問題を作成しています。このことで無駄なく、日本に最適化された試験として提供が可能になりました。
2つ目は、過去にLPICの試験内容の情報漏洩が起きたためです。LPICは海外の違法業者による試験内容の情報漏洩問題が発生しました。日本で行われていたLPICの試験内容も海外と同様のものであったため、認定試験の信用に関わる問題としてLPI-Japanは判断し、自分たちで開発・管理してセキュリティ面を配慮した形で試験が行えるようLinuCを開発しました。
3つ目は、試験内容の出題範囲です。以前であればLinuxだけ学習すれば済んだかもしれませんが、クラウドやDXが叫ばれる中、システム開発の現場では「クラウド/仮想化」「オープンソースへの理解」「システムアーキテクチャ」など、Linux以外にも必要となる知識やスキルが求められています。そこでそれらを体系立てて学べる認定試験としてLinuCは提供されています。
LinuCの難易度や受験料
LinuCは、難易度がレベル1からレベル3、そして最上位となるLinuCシステムアーキテクトまでの4段階があります。上位レベルの認定を受けるためには、下位レベルの認定が必要です。例えばLinuCレベル2の認定を受けるには、LinuCレベル1の認定を受けている必要があります。(ただし、LinuCシステムアーキテクトの認定はLinuCレベル2の認定を取得していることが条件となります)
全ての試験でCBT方式が採用されており、日本全国にあるテストセンターに設置してあるパソコン、またはご自宅のインターネットにつながったパソコンから受験することができます。2021年3月からはLinuCにおいても、国内外問わず日本語のほか英語での受験も可能です。
受験料についてはLinuCレベル1からレベル3までは、1試験16,500円(税込)です。LinuCレベル3の試験に至っては、1回目が不合格であった場合、2年間同一試験を1度に限り5,500円で再受験できます。LinuCシステムアーキテクトは1試験27,500円(税込)です。
合格率や合格点は公表されていませんが、合格点の目安として65%〜75%程度の得点率で合格可能ということが公表されています。また資格認定には有意性の期限があり、5年間とされています。
【参考】:LinuC:よくあるご質問
LPICとは
LPIC(エルピック)とはLPIが運営する試験であり、2001年から資格の認定が開始されました。LPIは20万人以上の認定保有者を誇るLinuxおよびオープンソースの認定機関であり、180カ国以上で試験が実施されています。また日本語や英語だけではなく、様々な言語で受験できるのが特徴です。
【参考】:LPI
LPICもLinuCと同様で、難易度がレベル1(level1)からレベル3(level3)までの3つに分かれています。また上位レベルの認定を受けるには、下位レベルの認定が必要です。
全ての試験はCBT方式で実施され、認定の有効期間は5年間です。LinuC同様にインターネットを利用してオンラインで受験することもできます。試験センターでの受験は、世界5カ国、6言語に対応します。こちらも正確な合格率や合格点は公表されていません。受験料については、受験者の居住国によって異なります。
なお、LPI-Japanが実施していた2018年8月以前におけるLPICの受験や認定に関する履歴は、手続きをすればLinuCに移行させることも可能です。
【参考】:LPICを過去に受験された皆さまへ
LinuCとLPICのどちらを受験すべきか?
LinuCとLPICでは、試験内容・難易度・有効期限・受験方式など共通点が数多くあり、どちらも日本で受験することが可能です。そのため、LinuCとLPICのどちらを受験すべきか気になる方も多いでしょう。
LinuCとLPICでは問われる内容が大きく異なるため、合格に向けた学習でどういうスキルや知識を身に付けたいかを考えた上で選ぶことをお勧めします。
Linuxを含めてシステム開発に必要となるスキルや知識を体系的に習得したいということであればLinuCを選ぶことをお勧めします。クラウド/仮想化技術やセキュリティ、ネットワークなどはどんなシステム開発をする上でも必須の内容であり、Linuxと合わせて網羅的に学習できるのが最大のメリットです。
Linuxについてのスキルを身につけたい、海外の開発者とのコミュニケーションをすでに行っている場合であれば、LPICを選ぶことをお勧めします。長い期間実施されている試験なので、世界的に実績が豊富で認知度は高いと言えます。
LinuCやLPICの資格を取得するメリット
LinuCとLPICの共通点や違いは理解できたでしょうか。ここでは、LinuCやLPICの資格を取得するメリットについて詳しく紹介します。
就職や転職でアピールできる
LinuCやLPICの資格を取得すれば、就職や転職の活動で自身のスキルをアピールすることができます。特にサーバーエンジニアなどのインフラエンジニアでは、Linuxの知識や技能は土台となるスキルです。
またアプリケーションエンジニアでも、Linuxに関するスキルがあるとインフラエンジニアとのコミュニケーションをスムーズにできるなどのメリットがあります。
さらに、未経験からエンジニアを目指す上でLinuCやLPICの資格を保有していると、エンジニアになりたいという意志を面接官に示すことが可能です。
このように、Linuxのスキルはエンジニアの業務など幅広い用途で利用できるため、就職や転職の際にアピールしやすいです。また、LinuCやLPICの資格を保有していれば、Linuxのスキルを客観的に証明することができます。そのため就職や転職の活動で有利になることもあるでしょう。
他にも、基本情報技術者試験・CCNA・ORACLE MASTERなど様々なIT系の資格があるため、将来のキャリアや目指す職種に合わせて、適した資格を取得するのがおすすめです。
【参考】:基本情報技術者試験
【参考】:CCNA
【参考】:ORACLE MASTER
資格手当や報奨金がもらえる
LinuCやLPICの資格を取得すると、資格手当や報奨金として一時金を受け取ることができる企業もあります。また、これらの資格取得を昇進や昇格の条件としている企業もあります。そのためLinuCやLPICの資格はスキルアップやスキルの証明だけではなく、年収アップにもつながるでしょう。
実務で役立つLinuxのスキルを習得できる
LinuCやLPICでは、基礎知識や共通知識が求められます。暗記問題で解ける問題も多く出題されるため、深い知識がなくとも合格できてしまうこともあります。これがLinuCやLPICの資格が「意味ない」と言われる理由の1つです。
しかし、きちんとコマンドの意味やLinuxの操作知識を学習すれば、実務で役立つLinuxのスキルを身に付けることができます。そのため参考書だけではなく、実際にLinuxの操作環境を用意し、検証しながら学習するのがおすすめです。
資格取得を通じて他の資格にも役立つ
LinuCレベル1とレベル2のVersion10.0における学習を通じて、AWS・Azure・GCPといったパブリッククラウドについても学ぶことができます。
また、AWSの上位認定資格である「ソリューションアーキテクト-プロフェッショナル」を取得する上でもLinuxの知識やスキルが欠かせません。LinuCの資格取得によって、Linuxのスキル証明のみならず他の資格取得においても役立ちます。
LinuCやLPICの勉強方法
LinuCやLPICの資格を取得するメリットは理解できたでしょうか。ここでは、LinuCやLPICの資格を取得するための勉強方法について詳しく紹介します。
参考書を活用する
LinuCやLPICを勉強するにあたって、参考書を活用するのは最も一般的な方法です。ただし参考書を選ぶ上で、実務経験のない方であれば、実際にLinuxの操作環境の構築方法についても解説している本を選択するのがおすすめです。
OSの仕組みやコマンドの意味は、実際に実機を活用して操作しながら学習することで、理解が深まります。
ここからは、LinuCとLPICのレベル1におけるおすすめの参考書を1冊ずつ紹介します。
▪「Linux教科書 LinuCレベル1 Version 10.0対応」 LinuCは2020年4月よりVersion 10.0にバージョンアップしており、本書籍は新しいバージョンに対応したLinuCの参考書です。また試験の運営元であるLPI-Japanが認定したテキストであるため、信頼性の高さが特徴と言えます。
101試験と102試験の両方を対策でき、練習問題や模擬試験も搭載しています。さらにLinuxを操作できる環境を、翔泳社のWebサイトからダウンロードできるため、実際に実機で検証しながら学習を進めることが可能です。
▪著者:中島能和
▪ページ数:560ページ
▪出版社:翔泳社
▪発売日:2020/06/23
【参考】:Linux教科書 LinuCレベル1 Version 10.0対応
▪「Linux教科書 LPICレベル1 Version5.0対応」 本書籍はVersion5.0に対応しており、試験の運営元であるLPIが認定したLPICの参考書です。101試験と102試験の両方を対策でき、練習問題や模擬試験も搭載しています。またLinuxの操作環境を翔泳社のWebサイトからダウンロードできるため、Linuxを実際に扱いながら勉強を深めることが可能です。
▪著者:中島能和
▪ページ数:592ページ
▪出版社:翔泳社
▪発売日:2019/04/08
【参考】:Linux教科書 LPICレベル1 Version5.0対応
勉強サイトを活用する
LinuCやLPICの学習に、勉強サイトを活用するのもおすすめです。勉強サイトの代表例として「Ping-t」が挙げられます。無料登録だけでもLinuCとLPICの101試験の対策を行うことが可能です。有料会員になれば、LinuCとLPICの全てのレベルの対策を行うことができます。
【参考】:Ping-t
Ping-tには豊富な問題が提供されているため、問題集の代わりに利用することもできます。また、通勤や休憩時間などの隙間時間を活用して勉強することもできるだけでなく、参考書と勉強サイトを併用すれば、効率的な学習が可能です。
通信講座やスクールを活用する
参考書や勉強サイトは、独学向けの勉強方法です。独学で勉強するメリットは、コストがかからないことや自分のペースで学習できることなどです。ただし、疑問点や不明点がある場合は自力で解決しなければならず、途中で挫折してしまう方も少なくありません。
独学が苦手な方は、通信講座やスクールを利用するのがおすすめです。費用は独学よりもかかりますが、サポートを受けながら学習できるため、確実な資格の取得を目指せます。このように様々な勉強方法があるため、自分に合った方法で学習しましょう。
LinuCとLPICの違いを正しく把握して試験の対策をしよう
これまでに、LinuCとLPICの違い・資格を取得するメリット・勉強方法について解説しました。
LinuCとLPIC共にLinuxのスキルを証明するための資格試験です。LinuCは、日本市場に最適化された、クラウド時代における即戦力のITエンジニア向け試験です。LPICは、世界的に認知されているLinuxに特化した試験です。このように、2つの資格の成り立ちや考え方に違いがあることを理解しましょう。
LinuCまたはLPICの資格を取得すれば、実務で役立つLinuxのスキルを習得することができ、特にインフラエンジニアの就職や転職で有利となるでしょう。勉強方法には参考書や勉強サイトなどが挙げられますが、実際にLinuxの実機に触れながら学習するのが重要です。
まずはLinuCとLPICの違いを正確に把握して、自分に合った試験の対策を行いましょう。
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