SQLとエクセルの違い
SQLとエクセル(Excel)は、いずれもデータを操作するためのツールです。データ操作の目的は共通していますが、それぞれ異なる特性を持っています。SQLはRDBMS(リレーショナルデータベース管理システム)でデータを操作する言語、エクセルはスプレッドシートソフトウェアです。
大量のデータを扱い、高度なデータ分析を目的とするSQLに対し、少量から中規模程度のデータ処理や分析にはエクセルが向いていると言えます。こうした特性の違いを理解した上で、それぞれを選択することが重要です。
この記事では両者の違いについて、さまざまな視点から比較していきます。データベースに関わる職種を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
【参考】:MySQL 【参考】:Microsoft Excel |Microsoft
SQLの特徴やメリットなど
SQL(Structured Query Language)は、データベースにアクセスし、操作するための標準的な言語です。データベースの基本的な操作(検索、挿入、更新、削除)を行う際に使用されます。ここでは、SQLの概要や特徴、メリットとデメリットについて見ていきます。
SQLの概要と特徴
以下にSQLの主な特徴と概要を解説します。
1. データベースクエリ SQLを使用してデータベースから情報を取得できます。例えば、特定の条件を満たす顧客のリストを取得したり、商品の在庫数を更新したりできます。
2. データ定義 データベース内のテーブルや列の作成、変更、削除などの操作を行います。テーブルの構造を定義するのに役立ちます。
3. データ制御 ユーザーアクセスの管理やセキュリティ設定などを行います。
4. 3種類のSQL ▪DDL(Data Definition Language): データ定義に関する言語で、データベースオブジェクトの作成、変更、削除を行うコマンドとしてCREATE TABLE、ALTER TABLE、DROP TABLEなどがあります。 ▪DML(Data Manipulation Language): データの操作に関する言語で、代表的なコマンドにはSELECT、INSERT、UPDATE、DELETEなどがあります。 ▪DCL(Data Control Language): データ制御に関する言語で、データベースのセキュリティとアクセス権限を管理するコマンド(例:GRANT、REVOKE)です。
5. データベース管理システム(DBMS) SQLは多くのDBMSで使用されています。例えば、Oracle Database、MySQL、Microsoft SQL Serverなどがあります。
6. SQLの進化 最新のバージョンでは、SQL Server 2019ではBig Data Clustersを導入し、大規模なデータセットと機械学習、AIの機能を統合しています。SQL Server 2022では、さらなる改善が行われており、アナリティクス、可用性、パフォーマンス、セキュリティなどの領域で進化しています。
SQLのメリット
SQLはデータサイエンティストやデータ分析者にとって必須のスキルであり、効率的なデータ操作に役立ちます。ここでは、SQLの主なメリットを挙げてみましょう。
■ 自己完結性 SQLを使えると、データの抽出から分析まで自分で行えます。他のエンジニアに依頼する手間も省けます。
■ 効率的なデータ操作 データを効率的に検索・分類できます。例えば、売り上げ数の一覧や訪問者数の推移を簡単に確認できます。
■ 国際標準化されている SQLは国際標準化されており、RDBMSのベンダーの違いを気にせずに利用できます。1度覚えれば、いつでもすぐに異なるデータベースを操作できるのは強みです。
SQLのデメリット
SQLの主なデメリットは以下の通りです。
■ 数学知識が必要 複雑な抽出や条件付けは集合論を用いた数学の知識が必要で、習得に時間がかかることがあります。
■ 学習難易度が高い データベースに関する知識やプログラミングスキルが必要で、習熟するには時間と経験が必要です。
エクセルの特徴やメリットなど
Microsoft Excelは、データの入力、分析、表示を効率的に行うためのスプレッドシートソフトウェアです。以下にエクセルの特徴やメリット・デメリットを解説します。
エクセルの概要と特徴
ここでは、エクセルの概要や特徴について確認します。
1. 表計算機能 数値データを縦横のセルに入力し、合計や平均などの計算を自動で行います。また目的に合わせてさまざまなグラフを簡単に作成できます。
2. 多用途で利用 ビジネスシーンや学習、家計の管理など、さまざまなシーンで活用できます。応用で請求書、見積書、顧客名簿から家計簿まで、さまざまなものを簡単に作成できます。
3. Microsoft Officeの一部 Microsoft Officeは世界中で使われており、エクセルはその中でもシェアNo.1のソフトウェアです。そのため、他の企業とのビジネスデータのやり取りが行えるとともに、Officeの他製品との連携も行えます。
4. OneDriveを使うとさらに便利 Microsoftが提供するオンラインストレージサービスのOneDrive上でエクセルデータを共有したり、管理したりできます。スマートフォンやタブレットからもアクセスが可能で、外出先でも必要なデータを利用できます。
エクセルのメリット
エクセルの主なメリットは以下の通りです。
■ スタートアップが容易 一般的なIT企業のPCにはMicrosoft Officeが導入されていることが多いため、別途ソフトウェアを導入することなく始めることができます。エクセルでイメージを作成する手軽さは、他のツールにはない特長です。
■ 教育に掛ける時間を短縮できる すでに多くの人が使用しているため、基本の操作教育に工数がかからないという利点があります。
■ 業務内容に合ったカスタマイズがしやすい マクロや関数を組み合わせることで、簡単に業務に即した仕組みを作れます。
エクセルのデメリット
エクセルのデメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
■ 同時編集ができない エクセルファイルは排他処理がかかるため、複数人で同時に編集することができません。作業前後に連絡したり、通知機能を使用して作業後に記載したりする必要があります。
■ 履歴を追えない 複数人で変更を加える場合、修正や削除の履歴を追うことができません。予期せぬトラブルが発生した際に原因の特定が困難です。
■ 属人化しやすい エクセルに複雑な処理やマクロが組まれている場合、後任者への引継ぎが行われていないとメンテナンスが難しくなります。
SQLとエクセルの比較
SQLとエクセルは同じような目的で使われることが多いのですが、両者には基本的な違いがあります。それぞれの違いを以下の表にまとめました。
項目 SQL エクセル
▪処理できるデータ量: 多い 少ない
▪プログラミングスキル: 必要 不要
▪個人利用: 可能 適している
▪組織での利用: 適している 不向き
▪同時編集: 可能 不可
▪データ管理: しやすい しにくい
▪バージョン管理: しやすい しにくい
エクセルでSQLを使う方法
日常利用しているエクセルからSQL接続を行うには、いくつか方法があります。エクセルでSQL文を使ってみたい方はぜひチャレンジしてみてください。
クエリと接続を使用する方法
エクセルの「クエリと接続」機能を利用してSQLクエリ作成を行い、既存のSQL Serverからデータ取得を行ってシートに出力することができます。大まかな手順は以下の通りです。
1.[データ]→[既存の接続]をクリックしてデータを取得します。 2. 作成された「クエリと接続」の設定を確認し、必要に応じてSELECT文を変更します。
【参考】:Excel でクエリ作成、読み込み、編集する|Microsoft サポート 【参考】:Excel ファイルで SQL クエリを実行する|Microsoft Learn
Microsoft Visual BasicでのADOの使用
ADO(Microsoft ActiveX Data Objects)は、データベースやデータソースへのアクセスを提供するMicrosoftのプログラミングインターフェースです。このADOを使って、エクセルファイル内や外部データベースに対してSQLクエリを実行することができます。
【参考】:Microsoft ActiveX Data Objects (ADO)|Microsoft Learn
SQLとエクセルの違いを理解して上手に活用
ここまで、SQLとエクセルの違いについて、それぞれの特徴、メリットやデメリットを挙げ、一覧で確認しました。大量のデータを扱って高度なデータ分析を行いたい場合にはSQLを利用し、小〜中規模のデータ処理を行いたい場合にはエクセルが適しています。
エクセルの関数はSQL関数と共通するものが多く、エクセルが得意な方はSQL関数に馴染みやすいでしょう。両者の特性を理解した上で、それぞれの習得やブラッシュアップに努めることをおすすめします。
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