「Microsoft Azure Boost」がリリース
マイクロソフトは2023年7月18日、「Microsoft Azure Boost」をプレビューリリースしました。
Microsoft Azure Boostでは、専用のシステムオンチップ(SoC)を搭載するハードウェアにI/O処理をオフロードし、パフォーマンス・品質・セキュリティの強化、およびコントロールの新たなエクスペリエンスを提供します。
プレビューリリースでは、限定された顧客に対して提供を行います。将来的には幅広い地域と多くの環境を対象としますが、互換性維持の観点から徐々に対象を広げる予定です。
【参考】:Introducing Microsoft Azure Boost Preview 【参考】:Development Preview Sign Up for Microsoft Azure Boost
そもそもMicrosoft Azureとは
Microsoft Azureとは、マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティングサービスを指します。自社の管理するデータセンターを用いて、200を超える製品とクラウドサービスを提供しており、オンプレミスと接続するハイブリッドクラウド環境にも対応します。
また、プログラム開発環境を用いて多くのプログラミング言語にも対応し、Microsoft Azure Marketplaceを通じてサードパーティサービスを追加導入することもできます。
【参考】:Microsoft Azure 【参考】:Azure とは
Microsoft Azure Boostを利用するには
Microsoft Azure Boostを利用するには、プレビュープログラムへの参加が必要です。プレビュープログラムは、最も早期にエクスペリエンスを得られる顧客が対象です。
具体的には、高速通信を実現するデータプレーン開発キット(DPDK、Data Plane Development Kit)を使用するユーザに、プログラムへの参加を呼び掛けています。
【参考】:Development Preview Sign Up for Microsoft Azure Boost
オフロードとは
オフロードは積み荷を降ろすことを意味しており、コンピュータにおいてもよく用いられます。コンピュータにおけるオフロードとは、処理を肩代わりさせることを指します。
コンピュータの処理が重くなることを「トランザクションが増加する」と言い、ネットワークにおいては、トラフィックの増加により問題が生じます。
オフロードにより、これらのトランザクションやトラフィックを別のノードやネットワーク機器、あるいはバスアダプターなどのハードウェアに肩代わりさせることで、ホストサーバの処理能力を維持し高速化と安定化をもたらすことができます。
I/O処理のオフロードの役割
クラウドサービスは、ネットワーク経由でサービスをうけるために多くのネットワークトラフィックが発生します。ホストサーバですべての処理ををこなすと、パフォーマンスに一定の制限がかかります。
そのため、ネットワークインタフェースカード(NIC)などのハードウェアに、通信プロトコルなどのI/O処理をオフロード処理させることで、トラフィック制御の高速化が図れます。
Microsoft Azure Boostの場合はネットワークとストレージに対応しており、AWSやGoogle Cloudも、すでに専用ハードウェアを用いた高速化サービスを提供しています。
【参考】:AWS Nitro System 【参考】:Google Cloud インフラストラクチャの次のイノベーション: 新しい C3 VM と Hyperdisk
Microsoft Azure Boostの概要
Microsoft Azure Boostは、ネットワークやストレージ、ホスト管理など、これまではハイパーバイザーとホストOSによって実行されていた仮想化プロセスを、専用のハードウェアとソフトウェアにオフロードするシステムです。
本発表ではMicrosoft Azure Boostの、プレビュー版をリリースします。Ebsv5 VMシリーズのリモートストレージ性能の実現や、Ev5およびDv5 VMシリーズ全体のネットワークスループットとレイテンシの改善など、現在運用中の既存のAzure VMに対してすでに成果を上げていることも合わせて公表されています。
【参考】:Introducing Microsoft Azure Boost Preview
Microsoft Azure Boostの性能的メリット
Microsoft Azure Boostでは、ハイパーバイザーとホストOSの機能をホストインフラストラクチャから切り離すことで、性能的メリットが得られます。
規模に応じてネットワークとストレージのパフォーマンスを向上させ、論理的分離のレイヤーを追加することでセキュリティを向上させ、将来のAzureソフトウェアとハードウェアのアップグレードに伴うメンテナンスの影響を軽減します。
この技術革新により、プレビューに参加するAzureユーザは、200Gbpsのネットワークスループットなど、既存の約2倍の性能メリットが受けられます。
ストレージは、NVMe対応Premium SSD v2またはUltra Diskオプションを使用することで、最大10GBps、400K IOPSのリモートストレージスループットを達成します。プレビュー提供される実験用VMでは、現在利用可能な最速のストレージワークロードを実現できます。
【参考】:Introducing Microsoft Azure Boost Preview
Microsoft Azure Boostの安全性と安定性対策
Microsoft Azure Boostのストレージとネットワークのプロセスは、ホストサーバから分離されており、セキュリティ強化が図られます。搭載されるシステムオンチップ(SoC)には、ハードウェアベースのセキュアブート機能と認証機能が備わっています。
潜在的なセキュリティリスクが軽減され、より安定したシステム運用が可能です。
このようにホストインフラストラクチャと分離することで、ホスト運用への影響を最小化し、ダウンタイムを低減し、可用性を向上するとともに、迅速なデプロイメントを可能とします。
【参考】:Introducing Microsoft Azure Boost Preview
Microsoft Azure Network Adapter概要
提供するAzure Boost VMは、最大200 Gbpsのネットワーク・スループットを達成しています。この性能は、Microsoft Azure Network Adapter(MANA)というネットワークコンポーネントによって実現されています。これまでのドライバと大きく変えずに、仮想マシンの安定性のもとに実装されます。
WindowsとLinuxで提供されるこのドライバは、一貫性を保って将来的なパフォーマンス強化や統合を可能にするものです。
【参考】:Microsoft Azure Network Adapter (MANA) overview
Microsoft Azure BoostはMicrosoft Azureの新たな選択肢となります
パブリッククラウドサービスは利用が進むにつれて、性能や安全性の課題に対して取り組みが進んでいます。 Microsoft Azure Boostは、性能面と安全性を高め、運用の安定性をもたらします。そのため、Microsoft Azureのさらなる利便性を高めるソリューションとなり、新たな選択肢の1つとなるでしょう。
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