Pythonの統計
統計は、数量から現象や事象を調査することを表します。コンピュータを利用する際のデータ分析では、蓄積したデータを手法に基づいて解析し、そのデータの要素や性質・傾向を定量的・定性的に明らかにしていきます。解析手法としては、統計学を応用したプログラミングが一般的です。
統計に基づくデータ分析は多岐に用いられています。人工知能で用いるデータ解析や機械学習・深層学習により、金融リスク分析やウェブ・マーケティング分析、販売予測などに活用されています。
PythonはAIや機械学習等のデータ分析を得意としています。そのため、統計の数値的解析手法である統計解析やデータ分析においてPythonの利用価値が高まっています。 【参考】:Python
Pythonの利用メリット
Pythonは、コンパイルレスでかつコードがシンプルで初心者でも学びやすいメリットがあります。学習効果が高いため、色々な分野に利用されています。特に統計解析に役立つライブラリが豊富で、AIや機械学習などで数多く利用されています。
Pythonのライブラリを利用することで、収集データが簡単に分析・可視化できます。分析データは標準フォーマットを利用することで、自作アプリや各種ツールへ簡単に組み込むことが可能です。
統計解析の入門知識
統計解析は、統計学に基づく解析手法です。ベースとなるのは、統計の学問である統計学です。そのため統計学の基本用語は理解しておくとよいでしょう。
例えば、仮説の検証のためには検定という手法を用います。比較するためには推定の手法をとります。相互の関係も相関を用いて導きます。このように、数学や統計学を用いた手法がベースの知識として求められます。
コンピュータを活用する上では、計算機科学や情報工学を用いたアルゴリズム実装などのコンピュータ技法が求められます。データ分析から可視化まで全体を表す場合は、機械学習やパターン認識等の人工知能技術も有効な知識です。
統計解析の手法
統計解析では、収集されたデータを統計学に基づき考案された手法で解析し、データの規則性を導いて予測やビジネス判断に活用します。統計解析の代表的な手法は、「回帰分析」「主成分分析」「クラスター分析」などがあります。以降で、これらの手法をより詳細に解説していきます。
回帰分析の概要と適用例
回帰分析では、モデルを Y=f(X) とした場合にXとYの関係を収集データから逆算して求めます。逆算する分析のことを回帰分析と呼びます。モデルと測定値の相関を求め、精度を高めていきます。その際、線形のモデルでは最小二乗法を用いて係数を推定していきます。
適用例は、店舗の来店者数と近隣公共機関の乗降数との関係、あるいは天候との関係などがあります。広く市場分析に利用されています。
主成分分析の概要と適用例
主成分分析は、多変量解析の手法の1つでデータの分散から相関のある変数と、相関のない変数を見極め合成していきます。これにより、ばらつきのある事象の予測を行っていきます。成分分析にあたりベクトル演算と共分散の行列を用いて分析を進めます。
適用例としては、売れ筋商品と金額・品質・口コミ等の関係を調査したり、健康維持のための体重と運動量・食事量・生活習慣等の関係を調査したりすることが挙げられます。多くの要因がある場合の分析手法で、人事評価などにも応用されています。
クラスター分析の概要と適用例
クラスター分析は、データの集合から類似特性のあるデータ群を見つけ出す分析方法です。類似特性のあるデータ群は、クラスター(集団)として分類し、さらに追加特性を調査していきます。
適用例は、市場分析や事業のターゲット分析(商圏や顧客層)などに活用されています。顧客アンケートにもとづき事業決定する際にも、分析作業に活用できます。
Pythonの利用環境
Pythonを統計解析に利用する場合ですが、統合開発環境(IDE)とソフトウェア管理製品があると便利です。統合開発環境とは、ソフトウェア開発に必要とされるエディタ・言語処理・デバッグ・実行に関するツールを、単一の操作環境で統合利用するものです。
統合開発環境にはJupyter Notebookもしくは次世代インターフェースのJupyterLab、ソフトウェア管理にはAnacondaがあればほとんどの統計解析に対応できます。
統合開発環境となるJupyter Notebookのドキュメントでは、数式や図式を入れることができるためデータ分析の統合開発環境として人気があります。データ分析機能を用いて、ビッグデータのデータ分析・統合にも用いることができます。 【参考】:Project Jupyter | Home
ソフトウェア管理を行うAnacondaには、数値計算やデータ解析に必要な1,500を超えるライブラリが組み込まれており、250を超えるデータサイエンスや機械学習のパッケージは自動的にインストールされ、利用者はすぐに開発作業を開始することができます。 【参考】:Anaconda
Pythonのデータ分析
Pythonのデータ分析は、事前に準備・収集したデータ群に対して行います。データ分析の前段階は、あらかじめデータ収集の仕組みを考えたり、ビジネスニーズに収集データが合致するか評価したりする工程となります。
その後、収集データを用いて、データ分析を行います。場合によっては欠損データの補正等の前処理を行います。データ分析工程では、分析のためにデータを可視化したり統計解析手法に基づき分析したりします。最終的には結果を評価し、ビジネス課題の解決に用います。
Pythonを用いたデータ分析の詳細
Pythonでは、標準ライブラリやパッケージライブラリをimportすることで簡単に利用することができます。データ分析工程に標準的に用いるライブラリは、以下のように分類できます。
データの読み込み・前処理・加工工程では、データの取り込みや正規化・欠損処理などを行います。NumPy、SciPy、Pandasなどが利用されます。 【参考】:NumPy 【参考】:SciPy 【参考】:Pandas
データの可視化工程では、データの分析に必要なプロットや可視化を行います。Matplotlib、seaborn、Altairなどを用います。 【参考】:Matplotlib 【参考】:seaborn 【参考】:Altair
上記に加えて機械学習等では、モデルの作成・評価工程をscikit-learn、TensorFlow、PyTorchなどで実施します。その後、分析結果の可視化を前述のMatplotlib、seaborn、Altairなどで行います。 【参考】:scikit-learn 【参考】:TensorFlow 【参考】:PyTorch
統計解析を学べるおすすめ本
統計学にもとづく解析手法が統計解析ですので、前提となる統計学と解析手法をそれぞれ理解していくのが良いでしょう。以降では、参考となるおすすめ本を紹介していきます。まずは机上で理解を深めて実践することをおすすめします。
Pythonによる統計分析入門
Pythonと統計解析の初心者向け参考本です。Pythonのインストールや基本文法等もカバーします。Pythonをさわったことがない人も理解できる内容です。
▪著者:山内 長承 ▪ページ数:256ページ ▪出版社:オーム社 ▪発売日:2018/05/26 【参考】:Pythonによる統計分析入門
Pythonで学ぶあたらしい統計学の教科書 第2版
2018年に出版された「Pythonで学ぶあたらしい統計学の教科書」の第2版です。ページ数を大幅に増やしました。統計の基礎から、統計モデルを学び、Pythonの得意なAIや機械学習までカバーします。データ分析全般を効率的に学ぶことができます。
▪著者:馬場 真哉 ▪ページ数:600ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2022/06/08 【参考】:Pythonで学ぶあたらしい統計学の教科書 第2版
Pythonで理解する統計解析の基礎
Pythonのプログラミングを通じてデータ分析を学んでいきます。データの整理方法や、確率変数・確率分布、推定・検定などをカバーします。
▪著者:谷合 廣紀 ▪ページ数:320ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2018/09/21 【参考】:Pythonで理解する統計解析の基礎
Python実践データ分析100本ノック
ビジネスで発生する売上データや顧客データ等を題材に、即戦力となる応用力を100本ノックを通じて身につけます。機械学習までカバーし、主要なPythonライブラリを用いて演習していきます。
▪著者: 下山 輝昌、松田 雄馬、三木 孝行 ▪ページ数:272ページ ▪出版社:秀和システム ▪発売日:2019/09/27 【参考】:Python実践データ分析100本ノック
多様化するニーズに対応するには正確な分析にもとづく意思決定が有効です
これまでの蓄積データから、いかにビジネスに有効なデータを抽出するかが差別化のポイントです。特に多様化するビジネスニーズに応えるには、より正確で有効なデータが必須となります。統計解析は、一見無関係なデータから関係性を求めたり、過去の傾向から将来動向を予測するのに有効です。
ビジネスでの意思決定は迅速性と正確性が求められます。データ分析に統計的手法を活用するのは、もっとも有効です。
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