Pythonとは
プログラミング言語のPythonは今、もっとも注目されている人気の言語ですが、注目されている理由はそのシンプルさや学びやすさだけではありません。DX推進の1つの鍵となっている「AI関連」の開発や機械学習にPythonが利用されていることが人気を集めている秘訣です。
ここでは、AIエンジニアや機械学習エンジニアを目指す方のために、PythonとAIの関係について掘り下げていきます。
そもそもPythonとは
Pythonは1990年にグイド・ヴァン・ロッサム氏が開発して1991年に公開された、比較的歴史のあるプログラミング言語です。構文が非常にシンプルで、少ないコードで開発できる点が魅力です。サンプルコードで他言語と比較したサイトなどを見てみると、Cのサンプルコードと比較して、Pythonは1/4程度の記述で済むことが分かります。
言語のタイプは、オブジェクト指向・スクリプト言語・インタプリタ言語であり、Rubyとよく似ていると言われます。他、C言語とも相性がよく、また機械学習分野やデータ解析に加えてWebアプリケーション開発にもよく利用され、使い勝手の良さと汎用性の高さも人気の理由です。
Pythonの実績
Pythonはその特性を活かしてAI開発分野の機械学習・深層学習(ディープラーニング)・データ解析処理にもよく利用されていますが、実はWebアプリケーション開発でもよく利用され、Pythonで作られたものとしてはYouTube・Instagram・DropBoxなどが知られています。
その他にも、ゲーム・アプリ、デスクトップ・アプリの開発でもPythonは活用されるなど、その汎用性の高さが際立っています。
AI(人工知能)とは
Pythonを学ぶには、AIについて理解しておくことが必要です。Pythonとは切っても切れない関係にあるAIについて見ていきましょう。
第4産業革命の原動力となるAI
今最も注目されている最新テクノロジーとして、AI(人工知能)があります。デジタル革命による第4次産業革命の時代が到来していると言われる中、AIはその中心的役割を果たそうとしています。
AIは、人が持つ知覚や知性を人工的に再現する技術として理解されていますが、AIについて一意に決まった定義があるわけではありません。まだ各界で議論があるようですが、いずれにしてもAIによって世界を根底から覆すような産業革命が起きているのは間違いありません。
特定分野では人を超えるAIが出現
AIはまだ発展途上にあり、全ての領域において人間を超えるようなAIはまだ出現していません。しかし、特定の分野ではAIが人間をはるかに超える能力を発揮しているケースもあります。医療分野では、一般的な医師に代わって的確な診断を行えるAIが出現しています。
金融分野でも超高速で、精度の高い取引を行うアルゴリズム取引が市場に浸透していると言われています。タクシードライバーの他、会計士・弁護士・教師までAIに置き換わるとさえ言われているほど、AI技術の進展には目覚ましいものがあります。
ディープラーニングとAI
AIの黎明期である「第1世代」では、人の経験則をベースにして、人の知的作業の支援をするAIが出現しました。「第2世代」では統計/探索のモデルによる最適解の発見がAIの役割となり、「第3世代」のAIでは脳モデルに基づいた認識性能の飛躍的向上を目指しています。
昨今、AIが大きく注目を浴びるようになったのは、この第3世代テクノロジーの出現にあります。
人間の脳モデルを参考にしたアルゴリズムの「ディープラーニング」(深層学習)がその代表的な例です。
従来の機械学習ではコンピュータ自身がビッグデータを読み解いて、裏にある相関関係などの特徴を見つけてくれましたが、ディープラーニングによってコンピュータは人の介在やコントロールを必要とせずに自律的・自発的に学習し、自分で判断することが可能になっています。
AI分野でPythonが注目される理由
AI分野や機械学習ではPythonが必要不可欠な言語と言われていますが、何十種類ものプログラミング言語がある中で、特にPythonが注目されるのはなぜなのでしょうか。ここでは、PythonがAIに欠かせない言語とされる背景、他言語との違いなどについて見ていきましょう。
科学技術計算分野で主流の言語に転換
Pythonは元々は分散OSの管理用に開発された言語でしたが、海外の科学者やエンジニアのコミュニティで注目され、科学技術計算の分野で評価を得て、次々と新技術の実装にPythonが利用されるようになりました。
その結果、ライブラリがさらに充実し、科学技術計算の主流言語である「R」言語の機能がPythonに盛り込まれたことで、それまで「R」を用いていた活動の多くがPythonに置き換えられていったのです。これが、Pythonが機械学習やデータ解析などで主流になっていった理由です。
教育分野で採用
米国のコンピュータ・サイエンス分野の教育で、Pythonは圧倒的な使用率を誇っている言語です。米国の大学では、プログラミング教育にPythonが頻繁に使用されています。さらに日本の大学でも近年、教育用言語としてPythonを採用する大学が増加しています。
これは、Pythonが無駄を排し、非常にシンプルな構文で、初心者にも覚えやすいことがあります。このような背景から、結果としてPython人口が拡大し、Pythonがさらに活用され、またPythonの利用が拡大するというスパイラルが生まれていることが挙げられます。
機械学習に強いといわれるRとの違い
R言語は元々、データ解析や統計プログラムを目的に開発された言語で、当初から主に学術分野や研究分野で使用されており、これらの分野ではR言語が有利でした。一方、次第にPythonがR言語が持つ機能を吸収し、安定が進んできたことで、科学計算や機械学習分野ではR言語とPythonの機能に差がなくなり、両方の言語が併存するようになりました。
とはいっても、データ解析・統計処理・多変量解析などの複雑な計算にはR言語の方が優れた部分もあり、一部の専門領域ではまだR言語が有利とされています。
PythonによるAIの作り方の手順
PythonとAIが不可分の関係にあることは分かりましたが、ではPythonを用いてどのようにAIを開発するのでしょうか。ここでは、PythonによるAI構築の一般的な手順の概略について見ていきましょう。
AIの概要設計
最初に、どのようなAIを構築するのかについてAIの概要設計を行います。概要設計では、用途や目的によってAIの機能(画像・文字認識機能、予測機能など)を決めて、開発用のPythonライブラリやフレームワークを選定し、AI構築の大枠を作ります。次に、AIに対する学習モデルの選択を行います。学習モデルには大きく分けて「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3パターンがあり、この中から最適な学習モデルを選びます。
機械学習用データの収集
次に、コンピュータに学習させるためのデータ収集を行います。AIは「機械学習」を繰り返すことでその精度が上がるため、「機械学習」用のデータが必要です。そのデータは学習に最適なデータである必要があります。不良なデータを与えればコンピュータの学習精度は低下します。学習用のデータは精査され、適したラベルが付けられ、クリーニングされ、最適化されなくてはなりませんが、最近ではこの作業を自動化する動きも出ています。
機械学習、深層学習の実施
こうして整備された学習用データを用いて、機械学習や深層学習(ディープラーニング)を行います。これらの学習には多くの場合「TensorFlow」「Amazon Machine Learning」「Azure ML」などのライブラリーや学習ツールが利用されます。
学習済みAIの実装
AIの学習が済むと、プログラミングによりAIを製品やサービスに実装します。最近では、AIの作成ツール、プログラミングに必要な機械学習ライブラリが多く公開されており、誰もが簡単にAIを作成できるようになっています。
市場価値の高いエンジニアを目指そう
市場価値の高いエンジニアを目指す上で、プログラミング言語に加え、さまざまなスキルの習得が必要です。AIや機械学習エンジニアを目指すなら、プログラミングに加えてAIや機械学習に関する知識やスキル、ビッグデータなどに関する知識も必要です。人気の高いPythonプログラマーは急速に増えていますが、それだけではエンジニアとしての市場価値は上がりません。
今後、AI開発に必須のPythonに関するスキルに加え、AI・機械学習・深層学習に関する高度なスキルが益々求められることでしょう。
Pythonエンジニアとして活躍
AIを備えたサービスや製品が増加する中、機械学習を中心にPythonエンジニアの需要が急速に増加しています。Pythonが組めるだけでは通用しなくなってくるでしょう。そこで強みとなるのは、機械学習や深層学習のスキルを有することです。
これらを体系に学ぶ方法もありますが、とにかくPythonは机上で学ぶよりは実践を重ねることです。自らPythonを用いたプロジェクトに積極的に関わり、経験を積みましょう。
データサイエンティストとして活躍
今、注目されている職種の1つにデータサイエンティストがあります。データサイエンティストとはデータの統計や分析によって、ビジネスに関する戦略策定に寄与する職種です。
データサイエンティストは統計学や確率、モデリング手法などに関する知識に加えて機械学習関する知識が求められます。機械学習ではPythonの知識が不可欠です。Pythonを学ぶ人で、統計学などを学んだ経験のある人は、データサイエンティストを目標にするのも良いでしょう。
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