プロジェクトマネージャーになるには資格は必須?
システムエンジニアを目指す人なら、誰もが目指したいプロジェクトマネージャーですが、プロジェクトマネージャーは資格がないとなれないのか、年収は高いのか、どういった資格の取得を目指せばいいのかなど、皆さんの関心事は尽きないでしょう。
この記事では、プロジェクトマネージャーになるために役立つ資格・勉強法・書籍・年収などについて解説します。プロジェクトマネージャーを目指すエンジニアの皆さんは、ぜひ最後までお読みください。
資格はスキルの証明になる
プロジェクトマネージャーは経験値を高め、実績を積むことで目指せる職種です。プロジェクトマネージャーになるための必須の資格はありませんので、マネジメントスキルを磨いていくことで、キャリアアップが可能ですが、プロジェクトマネージャー自体のハードルは決して低くはないため、客観的にマネジメントスキルがあることを証明する資格の保有が望ましいとされています。
実際に、多くのプロジェクトマネージャーはスキルを証明するための資格を取得している方がほとんどです。スキルをアピールできる資格(スキル証明)があれば、プロジェクトマネージャーになれる確率はより高まるでしょう。
資格取得は年収アップにつながる
プロジェクトマネージャーを目指す方はもちろん、あるいは既にプロジェクトマネージャーとして従事している方も、資格取得によるメリットは単なるスキルの証明だけではありません。プロジェクトマネージャー関連の資格を取得することで、年収アップにつながることも期待できます。
まずは試験に合格した際の報奨金、次に月々の給与に資格手当が加算されるケースが多いです。プロジェクトマネージャー関連の資格はいくつかありますが、ほとんどが難易度は高く、資格に関する費用も高額であるという理由もあり、多くの企業が報奨金や資格手当を支給しています。
また、プロジェクトマネージャーとして転職する際にも資格を保有していることは大きなアドバンテージとなるでしょう。
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取得したいプロジェクトマネージャー関連の資格
プロジェクトマネジメントに関する資格は、国内外の知られた資格だけで10種類以上あります。以下、一覧にしてみましたので、参考にしてみてください。
プロジェクトマネージャーの資格一覧
ここに載せたプロジェクトマネージャーの資格は全て、日本語での受験を選択できます。それぞれのレベル・難易度・受験資格・資格に対する評価は異なるため、よく比較検討することが大切です。海外での活躍を目指す方は、米国や英国の試験受験をおすすめします。
認定団体 試験種類 合格率 備考
▪PMI(米国) PMP 60% 大卒で3年以上の実務経験か必要
〃 CAPM ― PMPの初級者向け
▪IPA(日本) PM試験 15% 難易度は高め
▪PRINCE2(英国) Foundation ― イギリス圏の標準資格、基礎資格
〃 Practitioner ― イギリス圏の標準資格、上級資格
▪CompTIA(米国) CompTIA Project+ ― 受験資格はない、更新不要の国際資格
▪PMAJ(日本) PMC(基礎) ― 受験資格はPMC講習会修了者
〃 PMS(中級) ― PMC資格登録者、他指定資格保有者
〃 PMR(上級) ― プロジェクトの実務経験3年以上
▪PMO協会(日本) PJM-A ― 指定教材にて学習後受験、正答率75%以上
〃 PMO-S ― PJM-Aの上位版
【参考】:一般社団法人日本PMO協会
どの資格試験を選択すればいい?
上記では、知名度や人気の高いプロジェクトマネージャーの関連資格をピックアップしました。どの資格もプロジェクトマネージャーのスキル証明に不足はありませんが、選択の際には、その資格の取得が自らにどのようなメリットをもたらすのか、よく確認をしてから挑戦資格を決めるのが良いでしょう。
次の章では、おすすめの資格について3つに絞って紹介しますので、是非参考にしてください。
おすすめのプロジェクトマネージャーの資格3選
おすすめのプロジェクトマネージャーの資格を3つ紹介していきます。ここでは、日本で最も価値のある資格、IT業界以外でも広く活用されている資格、世界に通用する国際資格の3つに絞って紹介します。
プロジェクトマネージャ試験(PM)
プロジェクトマネージャ試験 (略称:PM)は、IPA認定の国家資格で、プロジェクトマネジメントに必要なスキルや知識を証明する資格試験です。試験の出題内容としては、プロジェクト計画立案・予算管理・品質管理・リソース確保とその整備・リスクマネジメント・プロジェクトの進捗管理・組織運営や経営に関する問題など、非常に幅広いのが特徴です。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)主催の情報処理技術者試験の内、最高難易度4の最難関試験です。プロジェクトマネージャー関連の資格として、企業などの評価は非常に高く、また就職や転職の際には非常に有利となるおすすめの資格です。
受験資格は特にありませんが、「エンジニアの実務経験10年程度、かつプロジェクト管理の経験がある人」を想定した試験のため、座学知識に加え、実務経験から見てもハードルの高い資格試験です。合格率は毎年IPAが公表しており、概ね12.7%〜14.5%と厳しい試験ではありますが、チャレンジする価値は十二分にあります。
■受験費用:7,500円(税込) ■勉強時間:個人によって非常にバラツキがありますが、システム開発従事者で最低50時間から、長い人では700時間以上を要したという報告もあります。
【参考】:プロジェクトマネージャ試験(PM)
P2M資格試験
P2M資格試験は、PMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)が主催するプロジェクトマネージャーの資格試験です。試験は主に同協会が作成している「P2M標準ガイドブック」から出題されます。P2MはPMBOKをベースに「プログラムマネジメント」を加えた日本独特の手法で、複数のプロジェクトにまたがる統合管理をその特徴にしています。
P2Mの考え方は様々な業種への適用が可能であり、IT以外では製造業や建設業でも活用され、さまざまな業界の部門責任者やマネージャーなどが受験している点が特徴です。
P2Mの試験区分で、現在実施されているものにはPMC(基礎レベル)、PMS(中級レベル)、PMSプログラム(中級レベル)、PMR(上級レベル)があり、スキルレベルに合わせて受験できます。ただし試験によっては受験資格が設けられていますので、注意が必要です。
PMAJ公式サイトには各試験の合格率が公表されていますが、PMCは60%前後、PMSは40%前後です。基礎からしっかりプロジェクトマネジメントを学びたい人、IT分野以外で学びたい人におすすめの資格です。
■受験費用: ▪PMC:17,000円(税込) ▪PMS:39,200円(税込) ▪PMSプログラム:22,500円(税込) ▪PMR:220,000円(税込)
■勉強時間: 合格に必要な勉強時間は公表されていませんが、同協会主催のPMC講習会で48時間、PMS講習会で14時間ですので、予習・復習を含めると、その倍態度の時間を見ておくと良いでしょう。
【参考】:P2M概要・試験・資格制度
プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(PMP)
PMP資格は米国のPMI「プロジェクトマネジメント協会」の認定資格です。PMPは、プロジェクトマネジメントの世界標準と言われる知識体系「PMBOK」に基づく国際資格です。
日本ではIPAのプロジェクトマネージャ試験 (PM)が圧倒的に認知度は高いですが、世界ではPMPの認知度が高く、米国ではPMP資格はMBAよりも価値があるとさえ言われます。PMP資格には厳しい受験資格が設けられ、4年生大学卒業者では「36カ月間のプロジェクトマネジメント経験と4,500時間のプロジェクト指揮実務経験」が求められます。
このように、実務経験を非常重視している試験である点が大きな特徴です。特にプロジェクトマネージャーとして世界を股にかけて活躍したい人におすすめの資格です。
■受験費用: ▪一般受験:555ドル ▪PMI会員:405ドル
■勉強時間: 合格率は概ね60%程度で、一見難易度が低そうに見えますが、豊富な実務経験に加えて100時間から200時間程度の勉強時間が必要とされています。
【参考】: プロジェクトマネジメントプロフェッショナル(PMP)
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プロジェクトマネージャーの年収や資格手当
プロジェクトマネージャーを目指すエンジニアの皆さんの中には、資格手当や年収を魅力に感じている方も少なくないでしょう。ここでは、プロジェクトマネージャーの年収や資格手当について見ていきましょう。
プロジェクトマネージャーの年収
「マイナビエージェント職業別年収ランキング」での平均年収は670万円、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」のプロジェクトマネージャーを参考にすると、平均年収891万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、プロジェクトマネージャーは一般平均年収よりも、やや高めであることが分かります。
プロジェクトマネージャーは、システムエンジニアやプログラマーなどのITエンジニアがキャリアパスとして目指す職種の1つです。求められるスキルや背負う責任も大きいため、その分年収が高い傾向にあります。関わっているプロジェクトが成功すれば、報酬がプラスされることもあります。
【参考】:マイナビエージェント職業別年収ランキング ※【平均年収 調査対象者】2019年12月~2020年5月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
プロジェクトマネージャーの資格手当
求人情報でよく見かける、資格手当が出るIT資格としては、IPA主催の「プロジェクトマネージャ試験 (PM)」が有名です。PM資格手当を支給している企業の事例では、月当たり1万円から2万円程度が相場です。他に合格報奨金を支給している企業もあり、10万円程度が一般的です。
試験に合格するための勉強法とおすすめの書籍
ここでは日本において、プロジェクトマネージャーになる上で最も役立つと思われるIPA認定のプロジェクトマネージャ(PM)試験合格を目指して、勉強法やおすすめの書籍を紹介します。他の資格試験に挑戦される方も参考にしてみてください。
合格に向けた勉強法
プロジェクトマネージャ試験(PM)は「エンジニアの実務経験10年程度、かつプロジェクト管理の経験がある人」を想定した試験です。エンジニア経験が1〜2年の方がいきなり受験しても合格できるようなレベルの試験ではありません。
IPAの発表では、PM試験の合格者の平均年齢は約40歳です。したがって、少なくともエンジニア経験として5年以上、多少なりともプロジェクト管理に関わった経験がなければ合格は厳しいでしょう。
試験勉強に関して秘策や極意はありません。計画を立てて地道に、着実に勉強をすることが肝心です。先ずは試験に向かって、学習スケジュールを立てましょう。次の計画は3カ月間で150時間(平日30分、週末各5時間)勉強する場合の1つの例です。
■最初の1カ月:ひたすら参考書に目を通し、読破する。 ■2カ月目:問題集で過去問、練習問題を繰り返し解く。間違ったところ、自信がない問題は参考書で確認する。 ■3カ月目:参考書のおさらいと、論述試験対策として、論文を書く練習をする。
エンジニアの皆さんは忙しい方が多く、平日は勉強時間が取れないという方が大半かもしれません。しかし、週末にまとめて8時間続けて勉強するよりも、毎日30分でも勉強をする方が学習成果は得られやすいです。
1日に勉強時間を2時間確保するのは容易いことではありませんが、30分ならどんなに忙しい方でも確保しやすいでしょう。700ページの参考書を週末は100ページずつ読み、平日は10ページ読めば1カ月で読破できます。
全てを覚える必要はなく、重要な個所にマーカーを入れ、どこに何が書いてあったかを頭に入れる程度で構いません。自ら勉強計画を立てること、計画に従って必ず実行すること、この2つは必ず守りましょう。
おすすめのPM試験の参考書・問題集
ここでは、実際にPM試験に合格された方からの評判が良い参考書や問題集を紹介します。あなたがエンジニアとして経験を積んでおり、かつ以下の参考書や問題集を用いて計画通り勉強を進めれば、合格の可能性はかなり高まるでしょう。
■おすすめの参考書
「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2022年版」 人気の定番テキスト、2020年分の過去問と解説が載っています。またPMBOKガイド第7版にも対応しています。
▪著者:三好 康之 ▪ページ数:736ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2022/03/22 【参考】:情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2022年版
■おすすめの問題集
「2022 プロジェクトマネージャ 総仕上げ問題集」 過去3期分の本試験問題とその解答、解説が収録されています。また実力診断テスト・学習に役立つWebコンテンツ・ダウンロードコンテンツが付いており、学習成果の確認に最適です。
▪著者:アイテックIT人材教育研究部 ▪ページ数:490ページ ▪出版社:アイテック ▪発売日:2022/05/24 【参考】:2022 プロジェクトマネージャ 総仕上げ問題集
■おすすめの論文対策本
「プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版」 論文作成の自信がない方に向けて、文章の書き方を丁寧に説明しています。また、専門家による論文例が30本掲載されており、合格できる論文のイメージがつかみやすい参考書です。
▪著者:岡山昌二・落合和雄・佐々木章二・長嶋仁・満川一彦 共著 ▪ページ数:357ページ ▪出版社:アイテック ▪発売日:2020/08/20 【参考】:プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版
資格を取得してプロジェクトマネージャーを目指そう
ここまで、プロジェクトマネージャーとPM資格について解説しました。プロジェクトマネージャーになるためには、経験に加えて、そのスキル証明となる資格を持つことが大切だと分かりました。
資格はなくともプロジェクトマネージャーにはなれますが、取得すれば大きな自信となり、活躍の機会は一気に広がるでしょう。エンジニアの皆さんは、ぜひ大きな夢に向かって自己研鑽に努めて資格を取得し、優秀なプロジェクトマネージャーを目指しましょう。
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