今から学ぶC++について
汎用プログラミング言語であるC++は、C言語の上位互換として開発され、今では様々な分野で活躍しています。本記事では、C++の基礎や特徴を説明しつつ、関連する資格や有用な書籍を紹介していきます。今までC++に触れたことのない方がその基礎知識や学び方を理解していただければ幸いです。
C++とは
C++は汎用プログラミング言語の1つであり、読み方は「シープラスプラス」ですが、「シープラプラ」などという読まれ方もされています。
C++の最も大きな特徴は、C言語の高速処理をそのままにオブジェクト指向を含めた大幅な機能拡張がなされていることです。そのため、C言語が得意としていた組み込み開発やOS開発だけでなく、WEB開発などアプリケーション分野でも活躍することができます。
C++は1985年の商用リリース以降、定期的にバージョンアップがなされており、便利な新機能が次々と追加されています。最も新しいバージョンは2020年にリリースされたC++20であり、数十を超える新機能が発表されています。このように今も活発に改良がなされているC++は、プログラミング言語として非常に強力で習得する価値のある言語と言えるでしょう。
Cとの違い
C++の前身であるC言語との違いはどのようなところにあるのでしょうか。C++における数々の新機能において、特徴的とも言える違いが下記です。
・オブジェクト指向の導入 C++で最も大きな特徴でもあるオブジェクト指向は、C言語で取り入れられていた関数による手続き型と異なり、プログラムを実体のあるモノとして扱う方式です。詳細は後述しますが、クラスの概念はC言語には存在せず、C++でしか扱えないものとなっています。
・ジェネリックプログラミング C言語ではあらかじめ関数で使う型は決めておかなければなりませんでした。しかしC++で導入された「テンプレート」と呼ばれる機能を用いれば、あらゆる型に対応したコードを設計することができます。これをジェネリックプログラミングと呼びます。
・例外処理 C言語では不正なメモリアクセスを含む例外的なエラーが発生するとプログラムが即座に停止してしまいました。しかし、C++で導入された例外処理を用いれば、即座に停止することなく処理を継続されることが可能となっています。
C++の難易度
C++は一般的に非常に難易度が高いプログラミング言語と言われています。その大きな理由として、前身であるC言語自体が非常に難易度が高いことが挙げられます。機械語に近い低水準言語であるC言語では、ポインタの理解やメモリ管理の難しさがあり、使いこなすには非常にハードルが高くなっています。C++はこれに加えてオブジェクト指向を理解する必要があることが、その難易度を引き上げていると言えるでしょう。
C++で作れるもの
前述したようにC++はC言語の得意分野に加えてアプリケーション分野でも活躍できるようになっています。それを踏まえると、C++で作れるものは例えば下記のようなものがあります。
- 大規模な業務システム
- ロボット/IoT制御ソフト
- WEBアプリケーション
- 人工知能(AI)
- OS(オペレーティングシステム)
- スマートフォンアプリ
ここに挙げたものだけでなく、様々なものがC++で作ることができます。
C++入門
C++のプログラミング言語としての立ち位置を理解したところで、次は入門としてその始め方や特徴的な言語仕様を説明していきます。Cとは大きく異なるオブジェクト指向としての考え方や新たな標準関数が、C++を語る上では欠かせません。
C++の始め方
C++を始めるための環境にはどのようなものがあるのでしょうか。一般的なものや簡単なものを紹介していきます。
・コンパイラをインストール C言語と同様にC++はソースコードをコンパイルしないと実行することができません。そのコンパイルを行うものがコンパイラです。コンパイラをインストールすることでテキストエディタなどで作成したC++のコードを実行ファイルに変換し、動かすことが可能です。
・Visual Studioをインストール コンパイラを使う方法は、様々な種類があったり、インストール後に必要な設定があったりと煩雑であり、インタプリタ型でない言語の入門者にとってはややハードルが高いと言えます。そこで、Microsofが配布しているVisual Studioを活用すれば、・インストールから実行ファイル作成までをGUI操作のみで行うことが可能です。ただ、Visual Studioは大規模開発向けであったためか機能が多すぎるという欠点もあります。
・ブラウザ上で実行 比較的最近になって登場しているものがブラウザ上でコードを実行できるサービスです。この方法であればインストールもすることなく、すぐにC++を練習することができます。少しずつ練習していきたい入門者にとっては最適と言えるでしょう。
【参考】:ブラウザ上でC++を実行できるサービス例
C++特有のオブジェクト指向とは
C++の入門として必ず抑えておきたいものが、オブジェクト指向です。プログラム全体を物理的なモノ(オブジェクト)の組み合わせで構成されていると考え、その関係性をプログラム内で定義していくことでプログラム自体をより分かりやすくすることを目的としています。1970年代から生まれたこの考え方はC++だけでなく、JavaやPythonなど後発のほとんどの言語に取り入れられています。
オブジェクト指向におけるこのモノとして扱われる概念が、クラスです。クラスはプロパティと呼ばれる変数を属性として持っており、メソッドと呼ばれる処理も持っています。車で例えれば、車の色がプロパティであり、エンジンをかけて動かすことがメソッドです。
C++ではこのクラスを上手く活用することで自分や他人から見て非常に分かりやすく、再利用しやすいコードを書くことができます。
C++で登場した便利なライブラリ
次に、C++で新たに追加された特徴的なライブラリを見ていきましょう。ちなみに、C++における標準ライブラリには先頭に「std::」が付加されています。
「std::string」 C言語において文字列を表現する型はchar型が一般的に使われていました。しかし、char型自体は1文字しか格納できず、複数文字を格納するためには構造体やポインタを利用しなければならず、メモリ管理に気を遣う必要がありました。
C++のstring型ではそのようなメモリの心配をすることはなく、動的に文字を追加したり、削除したりすることができるため、非常に文字列を扱いやすくなりました。
「std::vector」 同じくC言語では大量のデータを使う際にはmalloc関数などでメモリ領域を確保し、使い終わったら開放をするなど手間がかかり、バグのリスクもありました。新しく追加されたvector型では動的にメモリ領域を確保してくれるため、大量のデータを格納したり、後から次々にデータを追加してもメモリの心配をする必要がありません。
データ自体をコピーする行為もvector型では非常に楽なメソッドが含まれています。
C++に関連した資格
難易度が高いと言われるC++ですが、それだけに習得していることをアピールできればエンジニアとして大きなメリットがあります。ここではC++に関連した資格を紹介していきます。
C++CertifiedAssociateProgrammer
残念ながら日本にはC++を認定する資格がありません。したがって、海外の資格を取得することでC++のスキルを証明することになります。「C++ Certified Associate Programmer」はC++の基本的なコード設計や基礎知識を問う検定です。自宅からインターネットを通じて試験を行うことができますが、295ドルと費用はやや高めです。なにより、問題文が英語のみということからも英語スキルがなければ取得は困難と言えます。
【参考】:C++ Certified Associate Programmer
C++CertifiedProfessionalProgrammer
こちらも上記と同じ試験機関によるC++の資格です。より高度なC++のスキルが求められる試験となっており、テンプレートに関するメカニズムや正しい使い方が求められるようです。試験形態や費用は上記のものと同じとなっています。こちらを取得すれば、C++のスキルだけでなく、英語スキルについてもアピールすることができるでしょう。
【参考】:C++ Certified Professional Programmer
C++を学ぶのに最適な本
難易度の高いC++ですが、様々な書籍が発行されており、入門者から上級者まで最適なものを見つけることができます。ここでは入門者に最適な書籍として2冊紹介します。
C++の絵本 第2版 C++が好きになる新しい9つの扉
「C++の絵本 第2版 C++が好きになる新しい9つの扉」はイラストが多用された分かりやすさに定評のあるC++の学習書です。1つ1つの単元が短く、非常に簡潔にまとめており、1日で読み終えることができると言われるほどです。直観的な分かりやすさからC++の入門としては非常におすすめできる書籍です。
ただし、C言語を知っている前提で進められるため、C言語の知識がない方は注意が必要です。
【参考】:C++の絵本 第2版 C++が好きになる新しい9つの扉
やさしいC++
「やさしいC++」は600ページを超えるボリュームながらもイラスト付きで非常に丁寧にまとめられており、入門者におすすめできる学習書です。「C++の絵本」と異なり、C++に関して必要な知識が網羅されているため、全て読み終われば一通りの知識を身に付けることができるでしょう。サンプルコードも多数収録されています。
こちらもある程度C言語の知識が求められるため注意が必要です。
【参考】:やさしいC++
C++を学んでエンジニアとしてスキルアップしよう
ここまで書いてきたように、C++は処理が速く、可読性の高いコードにすることができ、アプリケーション分野でも活躍できるため非常に強力な言語です。一方、その難易度の高さから躊躇してしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、C++を学び、習得することはエンジニアとして大きなスキルアップにつながるので、ぜひ積極的にチャレンジしていきましょう。
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