シンギュラリティはいつ起こる?言葉の意味やエンジニアへの影響は?
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シンギュラリティはいつ起こる?言葉の意味やエンジニアへの影響は?
アンドエンジニア編集部
2022.06.17
この記事でわかること
シンギュラリティは技術特異点と言われるもので、特にAIが人知を超越するタイミングのこと
シンギュラリティによって、雇用・社会制度・人体・健康に大きな変化が生まれる
シンギュラリティの到来に関わらずエンジニアの役割や仕事は大きく変化していくので、変化に対応する姿勢が大切

「シンギュラリティ」はいつ?

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皆さんは「シンギュラリティ」という言葉を聞いたことがありますか?最近メディアで取り上げられ、話題になったワードの1つです。シンギュラリティは技術特異点と言われるもので、特にAIが人知を超越するタイミングのことを指します。

シンギュラリティはいつやってくるのか、シンギュラリティによって社会はどう変化し、私たちエンジニアはどんな影響を受けるのかなど、不安や興味が尽きません。また、シンギュラリティは絵空事であり、ありえないと考える方もいるでしょう。

ここでは、皆さんの素朴な疑問に対する答えを一緒に探します。

「シンギュラリティ」と2045年問題

シンギュラリティという言葉は、米国の発明家であり実業家・未来学者・思想家のレイ・カーツワイル博士によって生み出されました。

2005年に執筆した自著『The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology』の中で、「2045年にAI(人口知能)が地球上で最も賢く、有能な生命体として人間を上回る存在になる」と予言しています。

これがシンギュラリティであり、2045年に起きると予言されていることから「2045年問題」と言われています。

【参考】:The Singularity Is Near by Ray Kurzweil: 9780143037880 | PenguinRandomHouse.com: Books

「シンギュラリティ」の2029年到来説も

2029年到来説は、シンギュラリティの到来が従来予想よりも早まるというものです。

レイ・カーツワイル博士は2005年の著書でシンギュラリティの到来を2045年前後と予測しましたが、2017年にレイ・カーツワイル博士がシンギュラリティの到来時期を2029年前後と主張し始めたことから、この2029年問題が浮上しました。

理由は、2000年以降の急速なインターネットの普及やビッグデータの集積などによって、AIの進化を促す「ディープラーニング」(深層学習)の環境が整い、膨大なデータの蓄積によってAI技術が急速に進展していることにあります。

プレシンギュラリティとは

シンギュラリティが起きる前段階の状態をプレシンギュラリティ(前特異点)と言います。シンギュラリティはAIが人間の能力を超えることを意味するのに対し、プレシンギュラリティはAIによって社会のあらゆるシステムが変化することを意味します。

例えば、貨幣がなくなりモノは無料で手に入る・バーチャルリアリティーが生活の中心となる・労働が不要となる等があります。プレシンギュラリティも、私たちの生活に多大な影響があると予測されます。

そもそも「シンギュラリティ」とは?

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「技術的特異点」と訳されるシンギュラリティは、1980年代頃からAI研究家の間で用いられるようになった言葉です。AI(人口知能)の進化に関する概念で、シンギュラリティ (singularity)はAI自身が人類に代わって文明進歩の主役となる時点を指します。

シンギュラリティが注目されることになったきっかけは、2014年に英国で行われた「チューリングテスト」の結果にあります。

チューリングテストとは、コンピューターに知性があるかどうかを判定するテストのことです。英国で行われたチューリングテストでは、約30%の観察者が「人間かAIかの区別がつかない」と評価しました。AIの急速な進化が認識され、シンギュラリティが現実味を帯びた瞬間です。

GPT-3の登場

最近では「GPT-3」というAIツールが書いたブログ記事によって、数万人が騙されたというニュースがあったように、AIの進化スピードには目を見張るものがあります。

シンギュラリティを世に広く知らしめたレイ・カーツワイル博士は、「シンギュラリティは人工知能が人間の知能と融合する時点」と唱え、AIが人間と融和する形で進化していく可能性を指摘しています。

GPT-3の例にあるように、AIが人と区別が付かないほど人間らしくなっていく様子から、「2029年シンギュラリティ到来説」の登場にも納得できます。

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「シンギュラリティ」を裏付ける法則

ムーアの法則は「2045年問題」を裏付ける1つの根拠になっています。ムーアの法則とは「半導体の集積率は18か月で2倍になる」というものです。

ムーアの法則に従って計算すると、2030年頃には1つの半導体チップが人間の脳レベルに到達し、2050年には1つの半導体チップで人類全体の脳の計算速度に匹敵すると予測されます。

ただし、ムーアの法則は半導体の進化が著しい時期には当てはまりましたが、最近は半導体の進化も限界に近づいています。そのため、必ずしもムーアの法則は当てはまらないとの考えもあります。

他には、シンギュラリティを裏付けるものとして「収穫加速の法則」があります。収穫加速の法則とは「イノベーション同士が結び付くことで、新たなイノベーションが起き、進化は指数関数的に起きる」というものです。収穫加速の法則によってシンギュラリティが起きるとも考えられます。

「シンギュラリティ」に対する賛否

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シンギュラリティがいつ起きるかという議論の前に、シンギュラリティに対して肯定論と否定論があります。どちらが正しいかは別として、それぞれの見方を紹介します。

「シンギュラリティ」肯定論

シンギュラリティの実質的提唱者であるレイ・カーツワイル博士は、自著『The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology』の中で「シンギュラリティの到来を2045年」と予言しましたが、最近の考えとしては「2029年に早まった」と予測しています。

イギリスの著名な物理学者であるスティーブン・ホーキング氏は「完全なる人工知能の開発によって人類は終焉を迎えるかもしれない」と、シンギュラリティの到来を認めつつ、危機感を示しています。

ソフトバンクの孫正義氏はシンギュラリティは人類史上最大の革命であるとし、シンギュラリティによってすべての産業が再定義されると主張しました。

肯定派のシンギュラリティ後の未来予想には、悲観的な意見と楽観的な意見の両方があります。しかし、シンギュラリティという1つの大変化が起きるという考え方は共通しています。

「シンギュラリティ」否定論

一方、シンギュラリティ説を批判する人、否定する人たちもAIの進化は認めていますが、「AIが人間を超える存在になることはありえない」と、シンギュラリティが来ない・起こらないことを主張しています。

例えば、AIの権威として知られるスタンフォード大教授のジェリー・カプラン氏は、「AIには独立した目標や欲求がない」とし、あくまでも「AIの能力は人間のためにあり、AIと人間は同一視できない」としています。

AIの進化予想は、「AIが自我を持ち、自身の判断や欲求によって自己進化していく」か、「自我を持つことはないから自己進化はしない」の2つの意見に分かれます。いずれにしても、一昔前まではアニメの世界にしか存在しなかった論争が現実のものとなっていることは否めません。

「シンギュラリティ」によるメリットとは?

シンギュラリティには賛否両論ありますが、ここではシンギュラリティのメリットについて紹介します。例えば、ある企業では服の採寸を機械化したことにより、誤発注の原因となっていた採寸ミスを大幅に減らすことができました。

人間による手作業ではケアレスミスを完全に防ぐことは難しいですが、機械であれば単純なミスはほぼなくなるでしょう。

シンギュラリティによって産業にAIが普及すれば、単純なミスや誤操作がなくなります。これにより、より円滑に仕事が進むことによって消費者や企業側にもメリットが大きいと言えます。

「シンギュラリティ」による社会の影響と変化

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シンギュラリティ到来の賛否は分かれますが、AIは着実に進化しており、AIの進化によって世界が変わることは否めません。では、AIの進化によって世界はどのように変化するのでしょうか?雇用・社会制度・人間そのものへの影響などの視点から解説します。

雇用への影響

仕事によっては既にAIに置き換えられているものもあり、職業そのものを置き換える実証実験がスタートしています。

例えば、工場の生産ライン・生産コントロールのロボットへの置き換えによる無人工場、自動運転技術を用いた無人タクシー、レジや品出しの自動化による無人コンビニエンスストアなどです。

上記のようなAIへの置き換えがコスト面でペイできるとなれば、人の仕事は確実にAIに置き換えられるでしょう。専門家の研究でも、今後10年から20年の間に人の仕事の50%はAIに置き換わるという報告があります。

なくなる仕事と残る仕事

英国のオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らが2014年発表した論文『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか』によると、現在人間が担っている仕事の47%は、20年後になくなると言われています。

論文では将来なくなる仕事と、今後も残る仕事について記載されています。紹介されたなくなる仕事・今後も残る仕事は以下の通りです。

■なくなる仕事 一般的な事務員・飲食店の従業員・スポーツの審判・テレマーケター (電話を使用する販売員)・店舗での販売員・ネイリスト・訪問販売・料理人

■残る仕事 栄養士・教師・警察・ダンサー・歯科医師・漫画家・ミュージシャン

なくなる仕事としては、比較的単純作業が多い職種だけでなく、スポーツの審判のような知識と思考力を必要とする仕事も含まれています。

残る仕事では、人間の命に関わる医療系の仕事・専門知識と対面でのコミュニケーションが必要なホスピタリティ性の高い仕事・創造性の高いクリエイティブな仕事などが挙げられています。

以上のことから、AI化が進むにつれて職業の選択肢も今後変化すると予想されます。

社会制度への影響

「ベーシックインカム」という社会制度があり、既に実験を行っている国もあります。日本でもベーシックインカムの導入を提唱する政党や政治家がいます。

ベーシックインカムとは、国民や市民に対して無条件に最低限度の所得を分配する社会政策です。働かない人、働けない人にも所得保障がなされ、ベーシックインカムが貧困問題の解決に役立つとされています。

シンギュラリティによる失業者増加対策として、ベーシックインカムが議論されています。人の仕事をAIが担うことで、AIが利益を生みだします。この利益をベーシックインカム制度によって人に分配し、失業問題を解消するという考え方です。

人体や健康への影響

SF映画などに登場するサイボーグも、夢物語ではなくなりました。AI技術の発達によって脳波による人工義手や人工義足の制御が可能となり、まさにサイボーグそのものが実現する可能性が高まっています。

今まで不可能と考えられていたことが、シンギュラリティによって次々と覆される可能性があります。感情や自我は脳の働きによってコントロールされていますが、脳の解析が進めばAIが感情や自我を持つ可能性も否定できません。

このように、人とAIの融合が進むことでまったく新しい形態の人類が登場する可能性もあるでしょう。

「シンギュラリティ」によってエンジニアの仕事はどう変わる?

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シンギュラリティが到来すると、社会や私たちの生活が大きく変わることは明らかです。ここでは、私たちエンジニアの仕事にどのような影響があるのかを説明します。

AIに置き換わる仕事

AIが普及すると、人間よりもAIが担う方が効率的な仕事はAIに置き換わるでしょう。AIに置き換わるのは定型業務だけではなく、推測や推論を伴う業務もAIに置き換わります。つまり、知的労働すらもAIに置き換えられるのがシンギュラリティの特徴です。

エンジニアの仕事では、一部のプログラマーの仕事はAIに置き換わると言われています。現在でもAI技術を用いた「ノーコード開発」や「ローコード開発」が一般化しつつあり、今後はさらにAI化が進むかもしれません。

ただしエンジニアの仕事全般で考えると、AIによる自動化・簡素化は行われたとしても、エンジニアの仕事自体がAIに置き換わる可能性は低いでしょう。

AIが生み出す新たな仕事

AIが人間にとって必要不可欠な存在になっていく中、我々エンジニアはAIの価値をさらに高める役目を負っています。AIは与えられた情報や人間の指示に基づいて、人に代わる仕事をします。一方で、自ら新しいものを創出したり、新たな発見をしたりすることは苦手です。

シンギュラリティによって、いずれ上記の考え方も覆るかもしれません。しかし、AIの進化によって次のような分野で新たな仕事が生まれる可能性が高いと考えられます。

■IoT分野 「モノのインターネット」と訳される「IoT(Internet of Things)」は、AIの普及や発展に必要不可欠です。あらゆるものがインターネットに接続され、AIによってコントロールされる世界が現実になりつつあります。

逆に言えば、IoTによってAIが成り立つことから、IoT市場は今後益々成長・発展し、新たな仕事が生まれるでしょう。

■ロボット分野 ロボット自体は比較的古くからありますが、ロボットにAIを搭載することでロボットは人間に近づきます。AI開発・ロボット開発は新たな仕事を生み出します。

警備ロボット・機械を操作するロボット・ロボットを管理するロボット・介護士や看護師に代わるロボット・調理ロボット・教師ロボットなど、ありとあらゆる分野でAI搭載ロボットが開発されるでしょう。ロボットに搭載されるAIの開発は、我々エンジニアの主要な仕事の1つになると予想されます。

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今後需要が増すIT職種

現在DX推進が日本経済の大きな課題であり、「DX人材」の需要が高まっていますが、今後の需要は「AI人材」にシフトするでしょう。特に「AI人材」として注目されるエンジニア職種は、以下の通りと考えられます。

■AI開発エンジニア AIそのものの開発を行うエンジニアも必要ですが、システム開発にAI技術を組み込めるエンジニアへの期待が高まるでしょう。

システム開発によるシステム化の目的は、ビジネス・業務の効率化や利便性の向上です。効率化や利便性の向上はAI技術を駆使することで飛躍的に高まります。そのため、システム開発へのAIの導入は期待が高まっています。

■データエンジニア AIはビッグデータによって深層学習を行い、進化します。またビッグデータ活用によって、ビジネスの革新も起きています。ビッグデータの分析や解析を行うデータサイエンティストは、企業が発展するための重要な存在です。そのため、今後重要な役割を担うデータサイエンティストの需要はさらに高まるでしょう。

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「シンギュラリティ」にかかわらずエンジニアは変化に対応しよう

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シンギュラリティが実際に起きるのか、起きるとしたらいつ起きるか、その答えはまだ見つかりません。しかし、未来に向かってパラダイムシフトは確実に起きつつあり、私たちエンジニアに求められるものも次第に変化するでしょう。

例えば、AI開発に最も使われているプログラミング言語は「Python」です。ほかにも、R言語やC++が利用されています。私たちエンジニアは漫然とプログラミングを学ぶのではなく、時代の変化を認識し、目的意識を持って使用言語の選択を行い、キャリアパスを明確にすることが大切です。

常に時代の変化を捉え、しっかりと将来を見つめて対策がとれるエンジニアを目指してください。

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