CCNA試験の過去問
SNSなどでは、受験生の間で「CCNAの過去問」に関する話題が散見されます。「出題は過去問と同じ」という意見も目にします。
また、フリマサイトなどでも「CCNA過去問」が高額で販売されていますが、はたして「CCNAの過去問の入手は可能なのか」、「それを販売してもよいのか」、「過去問を購入しても構わないのか」など、受験生の皆さんの素朴な疑問に対し、1つの見方を示したいと考えます。 CCNA試験の受験を目指す方はぜひ参考にしてみてください。
そもそもCCNAとは
CCNAはネットワーク業界で最大手のシスコ社の認定資格「Cisco Certified Network Associate」の略称で、ネットワークエンジニアの初級レベルの資格のことです。
CCNAは民間資格ですが、公的資格に匹敵する権威や信用があります。また初級レベルと言っても、その試験範囲は広範囲に及び、決して簡単に合格できるような試験ではありません。
CCNAはネットワーク技術者として必要とされる知識やスキルを有する証です。ネットワークやインフラ関係のIT業界で活躍したいエンジニアなら、ぜひとも取得しておきたい資格の1つです。
CCNA試験の概要
CCNA試験の概要について確認しておきましょう。以下の通り、試験は1年中随時実施され、好きな時にいつでも受験できます。またCBT方式(詳細は後述)により、在宅受験も可能です。
▪試験名:Cisco Certified Network Associate
▪試験コード: 200-301
▪出題範囲:200-301 CCNA v1.0
▪受験料:36,960円(税込)
▪受験日:通年
▪試験方式:CBT方式
▪試験時間:120分
▪出題方式:①択一 、②複数選択、 ③ドラッグ&ドロップ
▪合格ライン:非公表(受験者の口コミでは70%前後)
▪受験申込:ピアソンVUE|シスコ技術者認定
CBT形式とは
CCNA試験は、筆記試験ではなく、PC端末を利用したCBT(Computer Based Testing)方式で行われます。テストセンターや自宅、職場などでコンピューター画面に出題される設問をキーボード入力やマウス操作で解答をしていきます。
シスコの公式サイトには認定試験の「チュートリアル」動画が掲載されていますので、こちらでイメージがつかめます。
【参考】:シスコ認定試験のチュートリアルビデオ
CCNA試験の出題範囲
シスコ社公式サイトから、CCNA試験の出題ガイドラインが公開されています。このガイドラインは変更されることがありますので、あくまでも目安としてください。参考までにそれぞれの出題比率を記載しておきます。
1.ネットワークの基礎(20%)
2.ネットワーク アクセス(20%)
3.IP コネクティビティ(25%)
4.IP サービス(10%)
5.セキュリティの基礎(15%)
6.自動化とプログラマビリティ(10%)
【参照】:CCNA 試験 v1.0 200-301
過去問を解くのは受験対策としては有効だが
さて、CCNAの受験に際して気になるのが「過去問」です。一般的に受験勉強において、過去問を解くことは試験対策として有用と見られています。それは
1.自分の実力、強みや弱みを知ることが出来る
2.出題傾向が分かり、勉強のポイントを絞れる
という理由からです。
ところが、残念なことにシスコ認定技術者試験は「過去問」が公式には一切公開されていません。
CCNAは過去問を公開していない
情報処理技術者試験の試験事務運営を行っている、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、各試験の過去問を公開しており、許諾や使用料は不要として完全オープンにしています。
一方、公的資格に匹敵すると見られているシスコ認定技術者試験はCCNAを含めて、すべて完全非公開です。
この点に違和感を覚える方が多いと思われますが、情報処理技術者試験は国民の税金で成り立つ国家試験、一方のシスコ認定技術者試験は私企業が行っている民間試験であるという点が大きく異なり、ここに非公開の理由があるようです。
過去問公開に対するシスコ社の考え方
民間企業であるシスコ社が、同社が実施する認定技術者試験を非公開とする理由は容易に察しがつきます。それは試験問題にはシスコ社製品の取り扱い、操作などの機密情報やノウハウに類する問題が出題されているからです。
では、それに対してシスコはどのように意思表明を行い、どのような方法で公開を防いでいるのでしょうか?
それはシスコ社の認定試験ポリシーの中の「機密性および合意書」に明記されています。
「機密性および合意書」の中でシスコ社は試験問題は同社の「知的財産」であるとしています。また、同文によって受験者は試験問題について、いかなる方法での配布や投稿などを行わないことへの同意が受験の条件になっています。
さらにこれに違反した場合は法的措置を講ずるとしており、受験者に非常に厳重な制約を課しています。これがシスコ社の考え方であり、姿勢です。
CCNA シミュレーション問題 例のやつ
過去問の問題流出はシスコ社にとっては由々しき問題です。 インターネット上で、「CCNA シミュレーション問題 例のヤツ」などと言った抽象的な表現を目にするのは、公開の場での具体的な表現自体が、先のシスコとの合意に反するリスクがあるからこそ、このような抽象的な表現が用いられるのでしょう。
過去問はフリマサイトなどで売られている
しかし、そのシスコ社との約束を反故にして、「過去問」をフリマサイトなどで販売、転売する動きが絶えません。これは明らかに違法行為です。受験者はシスコ社との守秘義務契約を交わして受験に臨んでいるため、受験者にはそれを遵守する義務が生じています。
その不正入手された著作物を購入し、利用した側も法的責任を負うことになりますので、こうした違法著作物の購入は厳に慎みましょう。
CCNA試験は独学で合格できる?
結論から述べると、CCNAは独学で十分に合格が可能です。SNSやブログなどでは、独学で合格した方の体験記が載っていますので、閲覧することをおすすめします。
独学のメリット
独学が苦手という方には、あまりおすすめできませんが、独学には以下のように、さまざまなメリットがあります。CCNAは初級レベルの資格ですが、それでも受験には4万円近い費用が必要です。
その上にスクールなどの費用がかさむと、多くの方には大きな負担となります。以下にスクールと比べた独学のメリットを挙げてみました。
▪学習コストが安く済む(スクール利用の場合は数十万円を要する場合も)
▪自分のペースで学習ができる
▪自分に合った学習方法を選択できる
いかがでしょうか?過去問に頼らず、スクールを利用しなくとも、独学で合格は可能です。
独学のデメリット
独学は、人によってはデメリットとなることがあります。それは、独学は自己管理能力に依存するからです。自己管理が苦手で、安易な方向に流れやすい性格の方に独学は不向きです。自己管理が苦手な方は、有料のスクールなどを利用してください。
ただし、シスコ認定資格の有効期限は3年間です。改めて同レベル以上の認定試験を受験する必要がありますので、努力が苦手、自己管理ができないという方は受験そのものを考えた方がよいかもしれません。
CCNA試験の独学による合格法
CCNA資格試験に独学で合格するには、自身に合った学習プログラムを用意するところから始める必要があります。ここでは独学に向いた3つの学習法について解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
シスコなどの練習問題で知識を確認
シスコ公式サイト、CCNA Routing and Switching v3.0練習問題にはシスコによる練習問題が掲載されています。練習問題を解いて、自身のネットワーク知識を確認するとともに、シスコの出題傾向を把握してみると良いでしょう。
実務経験を有する方ならスキルチェックに、初学者は自身の勉強成果の確認に利用してみてください。
参考書や試験対策本による独学
参考書や試験対策本を選ぶ際は、自身のレベルに合ったものを選びましょう。初学者の方は、背伸びして難しい参考書を手にすると理解に時間がかかり、学習意欲が失せてしまいます。
逆に、ネットワークに関する知識がある方、実務経験がある方は入門レベルの参考書では物足りなく、結果として参考書を無駄にすることもあります。
自身のレベルに合致する参考書を選びましょう。以下、初学者の方と、ある程度の知識や経験を有する方、それぞれに最適な参考書をご紹介します。
1.初学者の方に
・著者:宮田かおり
・出版社:インプレス
・発刊日:2021年4月13日
・税込価格:2,640円
2.基本知識や経験がある方に
シスコ技術者認定教科書 CCNA完全合格テキスト&問題集[対応試験]200-301
・著者:林口裕志、浦川晃
・出版社:翔泳社
・発刊日:2020年06月24日
・税込価格:4,268円
オンライン学習を利用した独学
参考書や問題集以外に、無料で利用できるオンライン学習サイトを3つご紹介します。CCNA合格者の方の多くが利用されていますので、ぜひアクセスしてみてください。
1.CCNAイージス
『CCNAイージス』は、CCNA試験合格を目的とするWeb教科書で、CCNAの出題範囲は完全無料で学べます。章ごとに練習問題があり、スマホやタプレットを利用してスキマ時間にも効率的に学習ができます。書籍の参考書と併用するとさらに効果的でしょう。
2.Ping-t
『Ping-t』はフォーラムが魅力のオンライン学習サイトです。基本的には有料のサイトですが、ユーザー登録で、CCNA対応のコンテンツや練習問題が無料で利用可能です。「助け合いフォーラム」や合格体験記も充実しており、共同学習的な気分も味わえ、独学が苦手な方には向いていると言えます。
『@network Cisco』は実機操作を重視したWebサイトで、CCNAの練習問題に加え、ネットワーク系資格の過去問なども充実しています。実務を重視のサイトであり、実機を使って学びたい方には向いています。
『ネットワークスペシャリスト.com』は情報処理技術者試験の「ネットワークスペシャリスト」試験の受験者を主な対象として、情報提供やサポートを行っているWebサイトです。サブサイトとして「過去問道場」があり、その登録者は1万人を超えるほどの人気です。 CCNA関連の情報や練習問題は扱っていませんが、CCNAの勉強にも役立つサイトとして紹介をしておきます。
CCNAは過去問入手などの不正手段に頼らず正攻法で
この記事では「過去問」入手における不正への警鐘と同時に、CCNA資格の独学法を中心とした試験対策について紹介してきました。「過去問」を入手したい受験生の気持ちは理解できますが、シスコは「過去問」の公開を一切認めておらず、その公開は不正行為とみなされます。
CCNAは真面目に試験対策を行えば、合格できる試験です。お読みいただいたエンジニアの皆さんは、紹介した独学法を参考に、ぜひ正攻法でCCNA試験の合格を勝ち取ってください。
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