JavaのMVCモデルとは
MVCモデルとは、Webアプリケーション開発における設計手法の1つです。アプリケーションの構造を役割ごとに明確に分離することで、コードの保守性と拡張性を高めることができます。
MVCモデルは、JavaやRuby、Pythonなどの多くのWebフレームワークに採用され、多くの開発現場で活用されています。
この記事では、JavaにおけるMVCモデルについてわかりやすく解説します。MVCモデルの概要や、各モデルの役割、処理の流れ、採用されているフレームワークについて確認しましょう。
MVCモデルの概要
MVCモデルは、Webアプリケーションの機能を、データベースなどの処理を行うModel(モデル)・画面の入出力を担当するView(ビュー)・処理をModelに振り分けたり、出力のViewに返したりするController(コントローラー)の3つの役割に分割します。
Javaにおいては、主にJavaBeansクラスで作るModel・JSPで作るView・JavaServletのControllerが、それぞれの役割を果たします。
役割を分けず、データベース処理や画面表示をまとめてコーディングしてサービスを構築する手法に比べて、MVCモデルでは各要素が独立していることにより、効率化やコードの再利用化など多くのメリットを得られます。
MVCモデルの構成要素の役割
まずは、MVCモデルを構成するModel、View、Controllerの役割を確認しましょう。
Modelの役割
Modelはシステムのメインとなるデータの保持や業務処理ロジックを担当し、システム全体の機能や安定性に影響を与えます。
具体的には、ビジネスロジックの実装、データの処理やデータベースへの保存、データベースからのデータ取得などを行います。データの形式変換や処理、検証、関連付けなども行います。
J2EEにおいてはこのModelを、他のプログラムから再利用されることを想定したJavaクラスであるJavaBeans(EJB)で実装することが一般的です。
Viewの役割
Viewは、アプリケーションのユーザインターフェースを担当します。画面のレイアウトやメニュー、ボタンなどを提供してユーザからの入力を受け付ける役割と、Modelが検索した結果のデータを画面に出力する役割を持ちます。
ViewはWebアプリケーションの中でもユーザが直接触れる部分で、操作性や画面の見栄えに影響を与える部分です。Modelから取得したデータを、ユーザにわかりやすい方法で表示することも求められます。
Javaでは、Viewは主にJSP(JavaServer Pages)を使用して実装されます。JSPを使用することで、HTMLにJavaを埋め込んで実行させ、実行結果をHTMLとして出力させることができます。
Controllerの役割
Controllerは、ViewとModelの間の通信を管理し、Webアプリケーションのデータフローを制御する役割を担っています。
Controllerは、Viewからのユーザの操作に応じてModelを呼び出し、データ処理を実行します。その後、取得したデータをViewに渡すことで、ユーザインターフェースに正しく反映されるようにします。
Controllerは画面側とサーバ処理側の役割を明確に分離し、互いの依存関係を減らすことで、アプリケーションの保守性や拡張性を高めています。
JavaにおけるMVCモデルの処理の流れ
ここでは、JavaのMVCモデルにおいて、ユーザからデータ入力を受け取り、データベース処理を行って、画面表示させるまでの流れを確認しましょう。
Controllerがリクエストを受け取る
まず、ユーザはブラウザに表示されたボタンやテキストボックス、データ入力用フォームを通して入力を行います。ユーザに入力インターフェースを提供するのは、Viewの役割です。
Viewを通してクライアントから送られたリクエストを、Controllerが受け取ります。
Controllerはデータを保持するためのJavaBeanオブジェクトを生成し、リクエストをModelに渡します。
Modelによるデータの操作
Moderlはリクエストに応じて、DAO(Data Access Object)によりデータベースアクセスを行ってデータを取得したり、ビジネスロジックでデータの処理を行ったりします。
具体的には、データベースからのデータ取得、データの保存、更新、削除などのデータの管理を行い、取得したデータはViewで表示するデータ形式に変換します。
また、ユーザから入力されたデータが不正なデータでないかを検証したり、入力やアクションに対して要求される処理を行ったりします。
このように、Modelはユーザの入力に対する処理を行い、必要なデータの操作を行って、結果をControllerに返します。
Viewによる画面出力
Controllerは、Modelから返されたデータをViewに渡します。
Viewでは、JSPにより取得したデータをHTMLの中にデータを埋め込みます。最終的にブラウザにHTTPレスポンスが返され、ユーザはその結果を画面上で確認することができます。
MVCモデルのメリット
MVCモデルでは、アプリケーションをModel、View、Controllerに分けて役割を分担することで、さまざまなメリットが得られます。
開発を分担して効率化・高品質化できることや、モジュールの再利用化、メンテナンス性の向上などが、主なメリットとして挙げられます。
開発を分担して効率化、高品質化が図れる
MVCモデルでは、Model、View、Controllerの3つの要素に機能が分割されていることで、それぞれを独立して開発することが可能です。
これにより、1人のエンジニアが画面周りとビジネスロジックやデータベース処理などをまとめて開発する場合に比べて効率的で、専門性の高い開発を行うことが可能です。
具体的には、ユーザインターフェース担当者が、画面レイアウトや操作性を重視したViewの開発を行い、ロジック担当者がModelの実装に専念できます。
ViewとModelが明確に分離されていることで、デザイナーとロジック開発者の役割分担が明確になり、それぞれが得意分野に特化した作業を行うことで、効率化や高品質化を図れます。
コードの再利用性が向上する
MVCモデルを使用することにより、コードの再利用性が向上するメリットがあります。 各コンポーネントの結合が弱いため、他のシステムから必要な機能を呼び出すことも容易に行えます。
例えば、既存のModelを別のシステムから利用したり、Viewを異なるデバイスで再利用したりすることも可能です。これにより、開発効率が向上し、柔軟性のあるシステムを構築できます。
メンテナンス性が向上する
MVCモデルは、高いメンテナンス性も備えています。具体的には、Model、View、Controllerがそれぞれ独立しているため、特定の部分を修正する際に他の部分に影響を及ぼすことが少なくなります。
例えば、画面レイアウトに変更を行う場合には、Viewのみを変更すれば良く、Model、Controllerへの変更は不要です。
また、画面(View)と処理(ModelとController)が分離されているため、不具合発生時の原因特定がしやすいこともメリットです。
複数の担当者が同一のソースコードに対してメンテナンスを行うリスクも軽減できます。
MVCモデルを採用しているJavaフレームワーク
ここでは、数多くのJavaのフレームワークの中でも、MVCモデルを採用している代表的なものを紹介していきます。知っておくことで、さまざまな開発現場でその知識を役立てられるでしょう。
Spring Framework
Springは、大規模なビジネスや組織向けに設計されたJavaベースのフレームワークです。
依存性注入(DI)やアスペクト指向プログラミング(AOP)などの概念を取り入れることで、コンポーネントやクラス間の依存度が低く、メンテナンスしやすいアプリケーションを開発できます。
Spring FrameworkにはMVCを採用したSpring MVCが含まれており、主にWebアプリケーションの開発に使用されます。
Spring MVCでは、MVCモデルによりアプリケーションのロジックやユーザインターフェース、データ管理を分離して開発をより簡素化し、柔軟性と拡張性を向上させることができます。
また、Spring MVCは、URLに対して処理を実行するメソッドを定義できるリクエストマッピングや、フォームデータの処理などのさまざまな機能を備えており、Web開発をサポートするツールとして多くの開発現場で幅広く使われています。
JSF
JSF(Java Server Faces)は、Java EEに含まれるWebアプリケーションのユーザインタフェースを開発するためのフレームワークです。
JSFでは開発者が操作しやすいGUIを採用しており、ボタンやテキスト入力フィールドなどのUIコンポーネントをドラッグ&ドロップするだけでWebページを作成できます。
そのため、開発者が自分で画面周りのプログラミングを行う負担を軽減しながら、Webアプリケーションの作成を行うことができます。
JSFではMVCモデルによるWebアプリケーションのフレームワークが提供され、ViewとControllerの部分を担当し、入力値の検証などの機能も備えています。
Struts
Strutsは、Javaで構築されたWebアプリケーションを開発するためのオープンソースフレームワークです。
MVCモデルを採用しており、Model、View、Controllerの各部分を独立したフォルダ構成で管理することで、開発の際に各部分が干渉しあうことなく効率的に作業を進められます。
Strutsは2000年代に広く使われるようになり、J2EEによる複雑な開発を容易にしたフレームワークとして普及しました。
現在ではStrutsより新たな技術やフレームワークが登場しており、パフォーマンスやセキュリティの面での優位性は低くなっていますが、広く使われたStrutsを知っていることには意味があります。
特に、既存のシステムの保守やメンテナンスを担当するエンジニアは、Strutsの知識やスキルを持っておくにこしたことはないでしょう。
JavaのMVCモデルを理解して開発に役立てよう
ここまで、JavaにおけるMVCモデルの概要や構成について解説しました。MVCモデルの利用により、担当の明確な分離や、コードの再利用性・保守性の向上など、多くのメリットがあることが分かりました。
JavaのMVCモデルを理解することで、他の言語におけるMVCフレームワークの理解も容易となり、より幅広い開発現場で活躍できるでしょう。
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