ChatGPTに独自データを学習させることは可能?
現在、AI領域の技術発達が進み、ビジネス分野でもChatGPTなどのAIツールの需要が高まっています。業務などでChatGPTを活用している方も多いのではないでしょうか。
ChatGPTは非常に便利なツールですが、未学習のまま利用すると期待通りの回答を得られない場合もあります。そのため、ChatGPTに独自データを学習させたい方も多いでしょう。
結論から言うと、ChatGPTに直接独自データを学習させることはできません。ただしAPIなどを利用して、間接的に独自データを学習させる方法はあります。そこで本記事では、ChatGPTに独自データを学習させる方法を詳しく解説します。
【参考】:ChatGPT公式
独自データを学習させる目的について
ChatGPTに独自データを学習させたい方は、どういった目的があるのでしょうか。独自データを学習させる目的によって学習方法も変わるため、まずは目的を整理しましょう。
ここでは、ChatGPTに独自データを学習させる目的について解説します。
決まったフォーマットで出力させたい
独自データを学習させたい方の中には、特定のフォーマットで出力させたい方も多いでしょう。例えば、議事録やレポートの生成、特定の書式に基づいた書類を作成したい場合などが考えられます。
議事録や書類を作成する場合、規定のフォーマットに沿って自動で文章を生成できればベストです。しかし、未学習のChatGPTでは応答時のフォーマットが固定されていないため、文章で回答する時もあれば、箇条書きで回答が表示される時もあります。そのため、ユーザはChatGPTの生成した文章を、規定のフォーマットに入力し直す必要がありました。
ChatGPTに独自データを学習させれば、作成したい成果物の書式に合わせて書類を自動生成できるようになります。
特定の業界知識を追加で学習させたい
特定の業界知識を前提として、文章を生成したい方も多いでしょう。例えば、医療や法律、金融の分野では専門知識や最新の法律の情報が求められます。
現在のChatGPTは、インターネット上にある一般的な知識から情報を収集して文章を生成するため、専門的な知識に特化した質疑応答や文章作成は難しいです。
しかし、学習データを追加すれば、より精度の高い文書を生成できます。例えば、ChatGPTに法律に関するデータを学習させると、契約書のレビューや法律用語の解説、法規制の解釈などを指示できます。
このように、業界に特化したタスクを実行させたい場合は、独自データの学習が必要不可欠でしょう。
ChatGPTに独自データを学習させる方法一覧
ここからはChatGPTに独自データを学習させる方法を紹介します。技術レベルや達成したい目的を踏まえて、どの学習方法を選ぶか検討してください。
APIを利用する
ChatGPTにはAPIが提供されています。このAPIを利用すれば、特定のフォーマットでの出力や、指定したプロンプトに基づいた応答を生成できます。
ただし、APIの利用には料金がかかりますので注意が必要です。APIは使用する機能やモデル、リクエストの量に応じて料金が異なります。
そのため、完全に無料で独自データを学習させたい場合は、後述するプロンプト設計などの別の方法を選びましょう。また、APIを利用する際には事前に費用を計算してから作業を行ってください。
例えば、GPT-4ターボという新しいモデルでは、1,000トークンあたり入力に0.01ドル、出力に0.03ドルかかります。その他にもモデルによって料金が異なりますので、詳細を知りたい方は以下の参考URLを参照してください。
また、ChatGPTの公式サイトには、APIのドキュメントも用意されています。APIでのデータ追加の方法が気になる方もチェックしましょう。
【参考】:ChatGPT APIについて 【参考】:ChatGPT APIの料金
プロンプト設計を行う
プロンプトとは、ChatGPTに対しての指示文を指します。下図のように、ChatGPTを起動すると「Message ChatGPT」という入力欄があり、通常であればここにプロンプトと呼ばれる指示文を入力します。
プロンプト設計とは、このプロンプトの入力内容を精査・設計することで、応答の質を高めることを指します。この設計を行うときは、コンピュータが読みやすいようにいくつか工夫するのが重要です。
例えば、下図のようにコンピュータが分かりやすいように箇条書きで命令を書く必要があります。また、補足情報を提供したり、出力形式を指定したりすることもポイントとして挙げられます。
上記のようなプロンプトで期待通りの結果が返ってこなかった場合、さらにプロンプトを調整したり、命令文を追加したりすることをおすすめします。このようにプロンプト設計では、指示文に工夫を凝らして最適な回答が得られるように調整を行います。
ファインチューニング
既存のモデルを特定のタスクに最適化する方法としては、ファインチューニングというものもあります。しかし、ファインチューニングとはモデルに対してデータを学習させる方法のため、ChatGPTに直接ファインチューニングを行うことはできません。
OpenAIが提供するモデルにファインチューニングをして、新しいモデルを構築したい場合は、公式サイトのAPIリファレンスなどを参考にしてください。
【参考】:ChatGPT APIリファレンス
エンべディングを行う
エンベディングとは、テキストや画像、音声などのデータを、数値ベクトル化することです。ベクトル化を行うことで、コンピュータがデータの特徴や関連性を理解できるようになります。エンベディングで業界特有の情報のデータなどを学習させれば、ChatGPTはそれを踏まえてた回答ができます。
また、ChatGPTを提供しているOpenAIでは、エンベディングを行うためのモデルを提供しています。このモデルを利用すれば、テキストデータからエンベディングを実行し、データ間の類似性や関連性を評価できます。
つまり、ChatGPTのエンベディングを行えば、より高度な応答を得られるようになります。ただし、ChatGPTでエンベディングを行うにはPythonのコードを操作する必要があります。Pythonへの知識がある程度必要になりますので、注意してください。
また、現在ではOpenAI以外でも、多くのエンベディングツールが公開されています。ツールによっては、ノーコードで利用可能なものもありますので、自分に合ったツールを探してみましょう。
【参考】:エンベディングとは 【参考】:エンベディングのモデルの使用例
ChatGPTで追加学習を行う方法
ここまでChatGPTで追加学習を行う方法をいくつか紹介しましたが、本記事ではエンベディングの方法を紹介します。
手順はそれほど難しくありませんので、ぜひ一緒に手を動かしてみましょう。
エンベディングツールを利用して独自データを学習させる
今回は、PDFファイルの独自データを学習させる方法を紹介します。また、PythonやAPIに関する知識がない方でも取り組みやすいように、今回はノーコードのエンベティングツールを使用します。
まず、「ChatPDF」の公式サイトにアクセスします。このサービスは、PDFの情報を学習してくれるサービスです。ChatPDFにサンプルのインタビュー記事を読み込ませ、そのデータに関する質問をしてみます。
【参考】:ChatPDF公式サイト
公式サイトにアクセスすると、下図のような画面が表示されます。画面中央の「Drop PDF here」というエリアに、任意のPDFをアップロードしましょう。
ちなみに、今回アップロードするPDFの内容は下図です。架空のインタビューの文章が記述されています。
アップロードが完了すると、画面が切り替わりチャットのエリアが表示されます。質問例もいくつか表示されています。今回は「XYZ社が市場で成功を収める秘密は何ですか?」と尋ねました。
すると「XYZ社が市場で成功を収める秘密は、ユーザーのニーズを深く理解し、それに応える製品を開発することにあります。また、持続的な研究開発と革新により、常に業界をリードする製品を提供しています。」と返答され、インタビューデータを反映した応答が確認できました。
このように独自データを踏まえた応答も、ツールを利用すれば簡単に行えるようになります。ただし、データベースを読み込ませる場合や、学習させたいデータ量が膨大な場合は、別の学習方法を選びましょう。
ChatGPTで独自データを学習すれば、業務を効率化できる
未学習のChatGPTも非常に便利です。しかし、特定のフォーマットに沿った業務を自動化させたい場合や、独自データに基づいたテキスト生成などをする場合は、やはりデータを学習させた方が良いでしょう。
ChatGPTに独自データを学習させれば、ChatGPTをより幅広い業務で活用できます。本記事で紹介したようなサービスなどを活用すれば、プログラミングが苦手な方でもChatGPTに独自データを学習させることができます。この機会に、ぜひ独自データの学習に挑戦しましょう。
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