エンベデッドシステムスペシャリスト試験とは?
エンベデッドシステムスペシャリスト試験(略号ES)は、独立行政法人のIPA(情報処理推進機構)が主催している国家資格であり、家電や車といった機器の組み込み系システムなどのエンベデッドシステムに関する専門能力を認定する資格です。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は大変難易度の高い試験であり、知名度がまだ高くないことから、資格取得に対して「意味ない」という意見もありますが、この資格を取得することで、組み込みエンジニアとしてのスキル証明になり、組み込みエンジニアへの道が大きく開ける資格試験です。
この記事では、エンベデッドシステムスペシャリスト試験について、試験概要や難易度、試験対策となる勉強方法などについて解説します。エンベデッドエンジニアを目指す人はぜひ参考にしてみてください。
【参考】:エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の概要
ここではエンベデッドシステムスペシャリスト試験の概要、難易度について見ていきましょう。
試験概要
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、次の要領にて実施されます。試験は最寄りの試験会場にて、PBT方式(Paper Based Testing)で行われます。
▪受験資格:学歴や年齢を問わず受験が可能です。 ▪受験申込:利用者ID(マイページアカウント)取得後にマイページにログインして申し込みます。 ▪試験日 :年1回秋期(2023年は10月8日に実施) ▪試験方式:PBT(Paper Based Testing)方式で実施 ▪受験料 :7,500円(税込) ▪合格証書:受験日の約3ヶ月後に郵送されます。 ▪試験結果:受験日の翌々月に受験者ポータルサイトのマイページにて確認できます。 ▪問題冊子:書き込み及び持ち帰りは認められています。 ▪試験会場:全国主要56都市の試験会場で実施されます。 ▪合格基準:午前Ⅰ~午後Ⅱ試験まで各々正答率が60%以上 ▪午前Ⅰ免除:令和3年度秋期~令和5年度春期試験の AP、高度試験、支援士試験合格者 ▪試験の構成: 午前Ⅰ 午前Ⅱ 午後Ⅰ 午後Ⅱ ◇試験時間 50分 40分 90分 120分 ◇出題形式 多肢選択 多肢選択 記述式 論述式 ◇解答/出題 30問/30問 25問/25問 1問/2問 1問/3問
【参考】:独立行政法人情報処理推進機構 | CBT-Solutions CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト 【参考】:令和5年度秋期試験案内書(PDF形式) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
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出題範囲
午前試験では、テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の分野に関する広い知識が求められますが、午後試験では組み込みシステムおよびIoTに関する事業戦略、製品戦略からハードウェア設計・ソフトウェア設計・開発・実装・サポート及び保守計画までの専門知識が問われます。
詳しくはシラバスで確認しましょう。
【参考】:エンベデッドシステムスペシャリスト試験(レベル4)シラバス
難易度・合格率
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、情報処理技術者試験のスキルレベル4に位置づけられる通り、最難関の部類に属します。合格率は17%前後で推移しており、狭き門です。
また、午前Ⅰ試験から午後Ⅱ試験まで4つの試験でそれぞれ合格点を取る必要があり、1つでも合格点に達していないと不合格となります。こうした点もエンベデッドシステムスペシャリスト試験が難しいと言われる理由です。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料P5
過去問題
多くのIT系試験では過去問の徹底演習が合格の鍵となっています。エンベデッドシステムスペシャリスト試験はIPAの過去問題サイトを初めとして、過去問題が公開されていますので、過去問の反復演習を徹底しましょう。
【参考】:過去問題 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
合格に必要な勉強時間
試験に合格できる勉強時間は、受験者それぞれのスキルや経験、知識によって大きく変わります。そのため一概には言えませんが、ITエンジニアとしての実務経験と基礎的な知識を有している場合、1日に3時間程度の勉強時間を確保しても、半年(540時間)程度必要だと言われています。
勉強時間を1日当たり1〜2時間程度しか確保できない人は、1年計画で受験準備を進めましょう。
エンベデッドシステムスペシャリストの年収
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の合格者が就く仕事としては、システムエンジニアが最も多いと考えられますので、システムエンジニアの年収について見ていきましょう。
「マイナビエージェント 職種図鑑」でのシステムエンジニアの平均年収は431万円(※2023年9月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「場合がIT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のSE・プログラマ(顧客向けシステムの開発・実装)を参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円であり、システムエンジニアの年収とほぼ同程度ですが、年齢を考慮するとシステムエンジニアの年収は民間企業平均年収よりは高めと考えられます。
他にエンベデッドシステムスペシャリスト試験の合格者に資格手当を支給する企業が増えており、採用情報等によると月額10,000円から20,000円程度が支給されています。
またエンベデッドシステムスペシャリストの専門性を生かし、新規事業や新製品開発などで能力を発揮することで、さらなる活躍機会を得てキャリアアップ、キャリアチェンジの可能性が高まります。
【参考】:マイナビエージェント職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
エンベデッドシステムスペシャリスト試験に独学で合格する
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は難易度の高い試験ですが、地道に正しい勉強法を実践することで合格は可能です。学習計画に従って、参考書や問題集を中心に頻出範囲を徹底的に学習することで、合格を目指せます。以下、おすすすめの参考書や問題集を紹介していきます。
情報処理教科書 高度試験午前Ⅰ・Ⅱ 2024年版
2024年試験に再出題される可能性が高い問題を厳選した参考書で、効率的に過去問の演習ができます。全高度試験の午前Ⅰと午前Ⅱの両方の対策ができます。問題の背景知識も解説しており、類似問題への対応も可能です。
また読者特典として、Webアプリが公開予定です。エンベデッドシステムスペシャリスト試験の午前対策にぜひ活用しましょう。
▪著者:松原 敬二 ▪頁数:672ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2023年9月13日
情報処理教科書 エンベデッドシステムスペシャリスト 2023年版
本書は午前Ⅱと午後Ⅰ、午後Ⅱ試験対策に絞った参考書です。令和5年の秋期試験に対応しており、午前Ⅱ試験で追加されたストラテジ系3分野や午後Ⅱの論述式対策も追加されています。また午前Ⅱ対策では再出題の可能性が高い過去問100問を収録しています。
また午後Ⅰ対策では、図の描き方・計算問題の解き方について詳しく説明しています。
▪著者:牧 隆史、松原 敬二、広田 航二、満川 一彦 ▪頁数:624ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2023年3月23日
【参考】:情報処理教科書 エンベデッドシステムスペシャリスト 2023年版 | SEshop| 翔泳社の本
2023 エンベデッドシステムスペシャリスト 総仕上げ問題集
最新の令和5年度春期試験分析や、令和3年度春期・秋期、令和4年度春期・秋期の本試験問題と詳細な解答・解説を提供しています。過去問の解答や解説が詳細に載っており、参考書としても役立ちます。本試験を想定したオリジナル「実力診断テスト」で本番前の実力判定にもおすすめです。
▪著者:アイテックIT人材教育研究部 ▪頁数:609ページ ▪出版社:アイテック ▪発売日:2023年5月22日
【参考】:2023 エンベデッドシステムスペシャリスト 総仕上げ問題集
エンベデッドシステムスペシャリストの取得メリット
エンベデッドシステムスペシャリスト試験に合格し、資格を取得するメリットを確認しておきましょう。主に以下の2つがエンベデッドシステムスペシャリスト資格の取得メリットです。
今後も需要はある
IoT技術は急速に進歩しており、自動車から家電、医療機器などの様々な分野でエンベデッドシステムが利用されていますが、その需要はこれからも高まっていくと予想されます。
そのため、IoT技術に関する知識・スキルを有する組み込みエンジニアの需要も旺盛で、エンベデッドシステムスペシャリスト資格取得者の市場価値は高く、将来性があると言えます。
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IoT技術に関するスキル証明となる
エンベデッドシステムスペシャリスト資格の取得により、組み込みシステム開発に関するハード/ソフトウェアの知識を体系的に身に付けていることの証となります。そのため、IoTに関する専門家として評価され、様々な活躍の場を与えられ、好条件の転職機会に恵まれます。
国家資格試験の一部免除
エンベデッドシステムスペシャリスト資格を有することで、以下に挙げる国家試験の一部が免除されます。具体的には以下に挙げる試験が一部免除対象ですので、以下の試験を受験する予定がある人にはメリットがあります。
・中小企業診断士:1次試験科目の一部免除 ・弁理士試験:論文式筆記試験選択科目の理工Vを免除 ・技術士試験:第一次試験の専門科目「情報工学部門」を免除 ・ITコーディネータ試験:試験の一部免除がある専門スキル特別認定試験の受験が可能
【参考】:試験のメリット | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
組み込みエンジニアを目指して活躍機会を広げよう
IoT「Internet of Things」は日本語で「モノのインターネット」と訳されていますが、その急速な進展により既に一般用語となりつつあります。IoTは様々な産業機器から自動車や家電に至るまで、それらがインターネットと繋がることで、適切な管理と最適な動作を行うことが可能です。
このIoT技術を開発し、支える上で必要とされる組み込みエンジニアになるには、そのスキル証明となるエンベデッドシステムスペシャリスト資格の取得が早道です。現在所属する企業にIoTなどの組み込みシステム開発部門があれば、配置転換を希望することで目指せるでしょう。
または、組み込みシステムやIoT製品開発を得意とする企業への転職もおすすめです。しかし、数ある求人情報から、自分に最適な企業を見つけ出すのは簡単ではありません。
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