情報システム部はなぜ無能という声があるのか?
多くの企業では、企業内に情報システム部門があります。名称は「情報システム部」や「システム部」、「システム推進部」など、まちまちですが、ここでは「情報システム部」と称します。
経済産業省はDXレポート※で「日本の企業でデジタルトランスフォーメーション「DX」が進まない場合には、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある」と警鐘を鳴らしており、大企業を中心にしてIT投資が積極的に行われています。
情報システム部に対する期待と否定や偏見、このギャップの原因はどこにあるのでしょうか?このギャップを解消し、情報システム部が本来の姿をとり戻すには、何が必要なのか、その解決策を提示します。
ここでは、社内SEを目指す皆さんに向けて、「情報システム部」が無能と言われる原因と、その解決策について徹底解説をしていきますので、ぜひ参考にしてください。
【参考】:※DXレポート簡易版|経済産業省
情報システム部とは
情報システム部(略称、情シス)は、企業内で社内システム開発、運用、保守などをまとめて行っているシステム部門のことです。情報システムには大別して「基幹(系)システム」と「情報(系)システム」の2種類がありますが、情報システム部はこの2種類のシステムを一手に引き受けています。
基幹システムは企業の事業を支える主要システムのことで、具体的には生産管理・販売管理・在庫管理や人事給与、財務会計などの業務システムです。
一方、情報(系)システムは、社内・社外とのコミュニケーション、情報共有に必要なメールやSNS、業務の効率化を進めるグループウェアなどを指します。他、広義では業務に必要なパソコンやOSなどのプラットフォームを意味する場合もあります。
情報システム部に対する見方
情報システム部は汎用コンピュータが導入された数十年前には電算室と呼ばれ、社内システムの運用や保守を中心に行っていました。当時はITという言葉すらなく、電算室は特殊な部門と見られがちでした。
その後次第に受発注や生産管理、販売管理などのシステムが整備され、顧客との接点が生じてくると、情報システム部と改称され、その立ち位置は徐々に変わってきました。とはいえ、情報システム部をコストのかかる部門と見る傾向は大きく変わらず、時にはリストラの対象となることもありました。
こうして日本の多くの企業では、情報システムの重要性に対する意識はなかなか高まらず、これが世界の企業とのIT格差を招き、経済産業省がDXレポートで警鐘を鳴らす事態になったと言われています。
情報システム部は決して無能ではない
「情報システム部は無能」という偏見がありますが、なぜそのような噂が出るのでしょうか?仮に情報システム部を解体したら、どんな問題が起きるか、検証をしてみましょう。検証をすることで、情報システム部が決して無能な部署ではないことが分かります。
情報システム部は企業の心臓部
最近マスコミを賑わしている大手銀行ATMの停止事故は、銀行の基幹システムである「勘定系システム」の不具合が原因です。
老朽化した「勘定系システム」を情報システム部が必死に支えているからこそ、何とか銀行は機能を保っていますが、もし情報システム部が基幹システムである「勘定系システム」の保守・運用を止めてしまえば、銀行は機能不全に陥るでしょう。
これほど重要な基幹システムを支えている情報システム部を無能扱いするのは不当なことではないでしょうか。多くの大企業では、数十年の歴史を経てレガシーシステムとなった基幹システムが残っており、予算や人員の問題から抜本的な見直しが行われないまま今日に至っています。
これが日本のIT化の遅れの象徴であり、企業の国際競争力低下の1つの要因となっています。情報システム部へ人員や予算を投入しなかったことが、こうした問題を招いた原因かもしれません。
従業員の仕事へのサポートは欠かせない
多くの企業では仕事の道具としてパソコンや情報システムが利用され、これらの正常利用のために専用のヘルプデスクを設けている企業もあります。
「パソコンが起動しない」「ネットワークにつながらない」といったトラブルにヘルプデスクが対応していますが、こうした機能がなければ業務停止のリスクがあります。情報システム部は無能どころか、有能だからこそこうしたサポートを通じて従業員の仕事を支えられるのではないでしょうか。
情報システム部あるある
情報システム部に対する理解不足から、こんな「情報システム部あるある」が起きています。その一例を挙げてみます。
▪パソコンが動かなくなったから治してほしい
バッテリーで稼働するノートパソコンで、電源コードがコンセントから外れていて起きる単純なトラブルに対しても情報システム部は対応しなければなりません。
▪パスワードを忘れて、パソコンのログインができない
パスワードは個人の重要な機密情報のため、情報システム部員といえど、簡単に知ることはできませんが、情報システム部にはこんな問い合わせが実際にあります。
情報システム部は「便利屋」のように思われ、こうした問い合わせが毎日のようにある企業も実際にあります。こうした問題を防ぐには、情報システム部には従業員のITリテラシー向上についても責任を負う必要があると考えるべきでしょう。
情報システム部の役割
多くの企業では、情報システム部の仕事内容や役割が認識されていないケースが見受けられます。一般社員と情報システム部の接点は少なく、「社用パソコンを貸与している部門」、「メールシステムの問い合わせ先」程度の認識しか持たれていない情報システム部もあります。
本来の情報システム部の役割について確認しておきましょう。基本的に情報システム部には以下4つの機能があります。
IT戦略立案とシステム企画
IT専門知識と業務知識、自社の経営知識を生かし、ITのビジネス活用と業務効率化を目的としたIT戦略を立案し、その戦略に従った基幹システム構築の企画、情報系システムの導入企画や選定を行います。業界動向、自社コアビジネスへの理解、業務知識や経営知識まで求められ、高度な能力が必要となります。
社内システム開発・運用・保守
自社のビジネスに対応する基幹システムや、売上管理、販売管理、人事給与、財務経理など日々の業務に対応する社内システムの開発や運用、保守を行います。既存システムの運用では、障害対応を行います。
社内インフラの構築と運用・保守
サーバーやストレージ、ネットワークやネットワーク機器、パソコン、スマホなどの社内インフラの構築、調達、運用、保守などを行います。また、災害対策などのBCP(Business Continuity Plan)「事業継続計画」のインフラ分野も担当します。
ヘルプデスク機能
パソコンなどのインフラ機器、利用システムに関する従業員からの問い合わせに対応します。また、パソコンなどの初期設定、OSのバージョンアップ、パソコンの修理受付なども行います。最近はアウトソーシングで外部の専門会社に委託するケースが増えています。
情報システム部が無能と言われる原因
以上述べたように、重要な役割を担っているにもかかわらず、情報システム部が無能と呼ばれる原因はどこにあるのでしょうか?原因を探ることで解決策が見えてきますので、以下に挙げてみましょう。
何をしている部署か分からない
ヘルプデスクを設置している企業では、比較的情報システム部に対する一定の理解はあるようですが、ヘルプデスク機能以外についてはなかなか理解を得られません。情報システム部がどんな仕事をしているかが見えないからです。仕事が見えないから理解が進まず、それが偏見にもつながってしまいます。
システムトラブルで仕事が止まる
現在はどの企業でも仕事にパソコンやスマホ、ネットワークやアプリケーションが欠かせません。ネットワークの停止、サーバーダウンなどの障害はいきなり業務停止を招きます。
インフラの冗長化がなされている先進企業ではシステム停止は起きにくく、業務停止に至らないことも多くありますが、システム投資を最小限に抑えている企業では、ネットワークやサーバーの障害は復旧に時間が掛かり、現場の業務が停止してしまうことがあります。
こうした影響を被った従業員からは、辛辣な批判が情報システム部に向けられがちです。また、この障害対応で大変な思いをした情報システム部員からも批判が上がることがあります。
システムの効果が見えない
情報システム部は「経費がかかる」と言われるなど、コスト部門という見方が根深くあります。それは、営業部門のように売上や利益といった評価尺度がなく、システム投資に対する効果測定がきちんと行われていないからです。そのため、情報システム部は経費に対する効果が見えず、経費の無駄遣いをしているように見られてしまいがちです。これが無能とみられる1つの要因です。
情報システム部への誤解を解き、理解を得るには
ここまで情報システム部が無能と言われる原因について述べてきましたが、その根底には情報システム部に対する理解不足があります。
経営層では、情報システム部が戦略部門であるという認識が欠けており、また現場では情報システム部によって業務が支えられているという理解が足りないケースが見られます。この状態を是正し、情報システム部の重要性に対する理解を深めてもらうには、積極的な情報発信が必要です。
経営会議への積極関与
経営会議では、IT戦略やシステム企画の説明、説得を行い、経営層の情報システム部への理解を深める絶好の場です。DX推進の必要性を説いたり、競合他社の情報システムの動向を報告したり、或いはシステム化の効果を報告したり、情報システム部のアピールの機会は豊富にあります。
なかなか理解をしてもらえないと嘆くのではなく、自ら働きかける努力が必要です。
社内SNSを活用したアピール
企業の活力を高める上で、情報共有は大変有効です。社内SNSなどは情報共有の場として設置している企業が増えていますが、この社内SNSの積極活用が情報システム部に対する理解向上に大いに役立ちます。
たとえば、ヘルプデスクに対する問い合わせの内容やその対応についてFAQとしてアップしたり、情報漏洩事故への注意喚起、新たな導入システムの使い方など、発信すべき内容は無数にあります。この発信を上手に行うことで、情報システム部の存在感を高め、理解を深めることができます。
現場第一主義を貫く
情報システム部が無能と言われる原因の1つに、「現場を知らない」「机上の空論ばかり」という批判があります。それは、情報システム部は現場の声に耳を傾けず、上から目線でシステムの開発や導入を行ってしまいがちだからです。
システム開発においては、ユーザーの声を聴いて「要求分析」や「要件定義」を行います。パッケージの導入や、システム開発の外部委託などで、この「要求分析」や「要件定義」を怠ると、批判の原因になります。
情報システム部は現場第一主義を貫くことで、現場の理解や協力を得られることを肝に銘じる必要があります。
転職エージェントを活用して社内SEを目指す
ここまで「情報システム部」が無能と言われる理由や問題点、あるべき姿について解説してきました。
しかし、未経験者がいきなり社内SEへの転職を目指すとなると、不安な要素が多々あると思います。未経験者をしっかり受け止め、理解のある企業、未経験者を活用する企業を探さなくてはなりません。また、未経験者がアピールできるものが何かをはっきり理解しておく必要があります。それらを1人で乗り越えるのはたやすいことではありません。
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