プログラマーはやめとけ
憧れの職業として、人気職業ランキングに必ず登場するITエンジニアですが、その登竜門と言われるプログラマーを目指す人が少なくありません。一方で、ネット掲示板やSNSには「プログラマーやめとけ」という声が少なからずあるのも事実です。
確かに、どのような職業にも光と影がありますが、なぜプログラマーという職業に対して、このような両極端な見方があるのでしょうか?真実はどこにあるのでしょうか?
今回は、ITエンジニア経験者の目から「プログラマーはやめとけ」の理由と対策について解説していきます。皆さんの進路選択に少しでも参考になれば幸いです。
ITエンジニアは人気の職種
老若男女を問わず誰もがスマホを持ち、メールやWebを利用するのが当たり前の時代になりました。そんなIT社会の到来を背景に、高校生がなりたい職業の筆頭に「ITエンジニア」が挙げられたというニュースがあります。
ITエンジニア(システムエンジニア、プログラマーなど)が人気の職業になっているのは間違いありませんが、人気の一方でITエンジニアの不足が深刻化し、その結果ITエンジニアの仕事がハードになっているという指摘もあります。
これらの状況を認識した上で、「プログラマーやめとけ」の声に対する解決案を提示していきます。
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人気の職種なのに「やめとけ」?
人気の高い職種であるプログラマーに対し、「やめとけ」というネガティブな見方があるのはなぜなのでしょう?まずはその理由を考えてみましょう。「やめとけ」はプログラマー職に対する偏見や誤解から発せられた言葉なのか、何らかの事情でプログラマーを辞めざるを得なかった方の反省や警告なのかもしれません。
あるいはプログラマー職には「やめとけ」と言わざるを得ない、何か大きな根本的な問題があるのかもしれません。それらを探るところから、「やめとけ」の理由に迫ってみましょう。
「プログラマーはやめとけ」の6つの理由
プログラマーという職業に対する見方は、「憧れ」と「否定」の両極端に分かれているようです。ここでは、「プログラマーはやめとけ」というネガティブな見方の理由について1つずつ見ていきましょう。
納期優先で残業が多い
プログラマーに限らず、IT業界の残業の多さは否定できません。働き方改革が進行し、残業や休日出勤は確実に減少はしていますが、相対的に労働時間は長い傾向にあります。厚生労働省の資料によると、平成28年の情報通信業の所定外労働時間は198時間(全産業平均129時間)と、高水準でした。
特にシステム開発系では納期優先により、残業が続くという傾向はあります。残業発生の主な原因としては、工数見積もりのミス、要件定義ミス、バグ対応など人的ミスに起因するものが大半です。とはいえ、年間総労働時間で見ると、建設業や運輸・郵便業の方が120時間ほど多く、必ずしもIT業界の労働時間が長時間だというわけではありません。
将来AIに職を奪われる可能性がある
AI技術の発達により、プログラミング自動化の動きはあります。また、かなりの精度でコーディングを行ってくれるツールも開発されています。こうした背景から、プログラマーの職業はAIに奪われるという見方が一部にあります。
しかし、プログラミングの前提として、要件定義書や基本設計書、詳細仕様書が必要です。またインプットとアウトプット、プログラムの機能を定めなければなりません。現在のAIの能力では、これらをすべてAIが担うのは困難です。
コーディング作業の自動化まではかなりの精度で行えますが、それ以上は人的能力に依存します。つまり、コーディングそのものはAIにある程度依存するものの、プログラマーの仕事はなくならず、よりクリエイティブな仕事内容にシフトしていくことでしょう。
ブラック企業が多い
昨今は、企業の法令順守(コンプライアンス)に対する眼が厳しくなり、ブラックと噂されたIT大手企業は次々と働き方の改革を進めており、ブラック企業は大幅に減っています。
しかし、一部のベンチャー系の企業では人材不足から従業員に過酷な労働を強いている傾向はあり、SNS上などでリークも散見されます。
また、表には出にくいのですが、労働基準法の保護を受けないフリーランスプログラマーや、在宅で仕事を請け負うゲームプログラマーなどの隠れ残業や徹夜もあると見られ、職種や企業によってバラツキはありますが、一部に過酷な労働を強いられているプログラマーはいると考えられます。
技術革新が早過ぎる
IT業界は技術革新が早く、習得したスキルが役に立たなくなるという構造的な問題があります。プログラミング言語にも流行があり、「やっとJavaをマスターしたと思ったら、Pythonを習得しろと言われた」といった話も聞こえてきます。
「せっかくウォーターフォール開発に慣れたのにアジャイル開発が主となり、経験が役に立たなくなった」という人もいます。
またIT系企業では客先派遣予定の社員に、IT資格の取得を求めるケースもあり、「学生時代よりも勉強時間が多くなった」「休みの日が試験勉強で潰れてしまう」といった悲鳴も聞こえてきます。こうした環境に抵抗を覚える勉強嫌いの人は少なくないかもしれません。
職業寿命が短い
「エンジニア35歳定年説」という説が2020年頃に注目されたことがありましたが、「過酷な労働を強いられるITエンジニアは、他の職業と比べて早く体力的な限界に達する」という見方がその背景にありました。
もう1つは、プログラマーはITエンジニアの登竜門であり、35歳くらいまでにシステムエンジニアやプロジェクトマネージャーなどの上流工程に「キャリアアップできなければ辞めるしかない」という見方も一部にあります。
現在では40歳代、50歳代でも活躍するプログラマーはおり、「エンジニア35歳定年説」は消滅していますが、転職に関して言えば35歳以上のプログラマーは、他の人にはない高いスキルや実績、取得資格がないと不利です。営業職やコンサルタント職などと比べると職業寿命が短い点は否めません。
文系学生にはハードルが高い
大卒の約6割は文系出身者で占められますが、ITエンジニアの文系出身が占める割合は3割程度(IT人材白書2020-202頁)で、文系出身者にとってITエンジニアは狭き門なのです。
その上、情報処理について学んだ学生の大半は理系出身者のため、文系出身者は就活、就職後もハンデを背負うという見方があり、「(文系学生は)プログラマーやめとけ」という声が挙がっても不思議ではありませんが、文系出身者のプログラマーやITエンジニアは年々増えています。
コミュニケーションスキルを要求されるプログラマーは、実は文系出身者が向いているという考え方もあり、文系学生にとってIT業界のハードルが高いというのは思い込みから生じていると言ってよいでしょう。
【参考】:IT人材白書2020(IPA)
客先常駐はストレスが高い
客先常駐プログラマーの中には、クライアントの労働環境が悪いケースがあり、社内プログラマーへの転身や転職を希望する人もいます。中には「客先常駐が苦痛でプログラマーをやめました」という方を見かけることもあります。
クライアント側に使われる立場の客先常駐プログラマーは相談する仲間も少なく、ストレスは社内プログラマーよりは高くなってしまいがちです。
プログラマー職に対するネガティブな発想を払拭する
ここまで「プログラマーやめとけ」の理由について解説してきましたが、その対応策について考えてみましょう。プログラマーに対する認識を改め、ネガティブな発想を払拭できれば、実はプログラマーはやりがいのある、誇り高き仕事だと気付くでしょう。
残業や休日出勤は自分で管理できる
社員の平均残業時間は就職四季報などであらかじめ確認できますので、残業が嫌いな方は就活の際に調べておくとよいでしょう。また無駄な残業や、不要な休日出勤は自己管理能力を高めること、計画性を高めることで回避できる問題が少なくありません。
優秀なプログラマーを目指すなら、プログラミングスキルだけではなく、自己管理能力や計画力を高めることを意識しましょう。プログラマーからシステムエンジニアにキャリアアップする際に、それらの能力が問われるはずです。
ブラック企業への就職は回避できる
就職や転職の際、ほとんどの方は企業研究をするはずです。その企業の社風・成長性・給与・福利厚生などは必ず調べるでしょう。その際に、社員の声を知ることで、より企業の内情が分かります。
今は就職情報サイトや、社員口コミサイト、SNSなどから簡単にブラック企業か否かを知ることができます。会社選びの段階でブラック企業を避け、ホワイト企業を選ぶようにすれば、就職先で失敗することを防げます。
プログラマーには豊富なキャリアパスがある
プログラマーの職業寿命が短いと心配する方がいますが、ITエンジニアの登竜門であるプログラマーほど豊富なキャリアパスがある職種は他にありません。
ITコンサルタント・プロジェクトマネージャー・プロジェクトリーダー・システムエンジニアなど大きく括っても15種類ほどの職種があり、すべての職種に就ける可能性があります。これほどキャリアパスが豊富な職種はプログラマー以外にはなかなか見当たりません。
【参考】:わかりやすいIT・エンジニアの職種図鑑(マイナビエージェント)
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プログラマーに将来性はある
日本では経済産業省DXレポートで警告した「2025年の崖」に向かって、DX取組みの重要性が官民の共通認識としてあります。このDX推進によってプログラマーを含むITエンジニアの不足が深刻化しています。さらに少子高齢化がこれに拍車を掛け、IT人材の需給ギャップは2030年頃に向けてさらに広がるとの予測もあります。AIを用いた自動プログラミングの普及を差し引いても、プログラマーに対する需要はなくならないでしょう。
【参考】:DXレポートサマリー(経済産業省)
文系出身者でも引け目を感じる必要はない
文系出身者には、「理系出身者コンプレックス」を持つ人がいますが、実は理系出身者も文系に対してコンプレックスを抱いています。ITエンジニア、プログラマーはコミュニケーション能力を求められますが、理系にはこれが苦手な人が少なくありません。
また、システムエンジニアは法律や経済の知識も必要です。システム開発の要件定義フェイズでは経営者ヒアリングを行うこともありまず、法律や経済、経営に関する専門用語が飛び交う経営者ヒアリングを苦手とする理系出身のエンジニアもいます。
また、IT企業が文系出身者を多く採用するようになったのは、文系出身者の資質や将来性への期待があるからです。特に新卒は即戦力を期待して採用しているわけではありません。
すべて皆さんの潜在スキルに対する投資です。文系出身者を採用するのは、企業側にニーズや理由があるからです。文系出身者でもエンシニア採用で引け目を感じる必要は全くありません。
プログラマーになって後悔しないために
ここまで「プログラマーやめとけ」と言われる原因と、その対応、考え方などについて述べてきました。それでも、現役の皆さんの中には「仕事がきつい」「プログラマーをやめたい」という方はいるでしょう。この記事を読んでも考えが変わらない方は、元々プログラマーという職種がミスマッチだったのか、職場や上司、労働環境に恵まれていないのかも知れません。
選択を誤ったのであれば、もう1度正しい選択をすれば済むことです。くよくよ悩まず、思い切って進路を変更してみましょう。最近は、転職の悩み相談から、職業選択、会社選び、転職実現まですべて面倒を見てくれるような転職エージェントもあります。人知れず悩むより、転職エージェントの門を叩いてみることをおすすめします。
プログラマーの皆さんがこの記事を参考にして、よりベストな選択をされるよう願っています。
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