Windows11の回復ドライブとは

PCはCPUの高負荷・メモリ不足・ディスクやOSの不具合・ウイルス感染など、様々な原因で故障し、フリーズしたり異常な動作を起こしたりすることがあります。
Windows8以前では、購入時にPCを出荷時の状態に戻すリカバリーディスクと呼ばれるCD-ROMが付属していました。そのため、トラブルが起きてPCが動作不良を起こした際は、リカバリーディスクを使用して初期化する作業を行えば復元できる可能性がありました。
しかし、Windows8からはリカバリーディスクは付属しなくなり、代わりに回復ドライブという機能が標準搭載されるようになりました。回復ドライブとは、現在のWindowsの状態をUSBメモリに保存しておき、故障や動作不良などが起きた際に復元できるようにする機能です。
回復ドライブはリカバリーディスクと違い、購入時に付属しているわけではなくユーザが任意で作成するものであるため、トラブルが発生する前に作成しておかないと復元できなくなるので注意が必要です。
トラブルが発生してから慌てることのないように、前もって回復ドライブを作成しておくようにしましょう。
復元ポイントとの違い
Windowsのリカバリー機能には回復ドライブの他に復元ポイントが存在します。「復元ポイントがあるのに回復ドライブは必要か?」という疑問を持つ方がいるかもしれません。そもそも、回復ドライブと復元ポイントの違いはなんでしょうか。
まず、復元ポイントとはWindowsOSに備わっているバックアップ機能であり、定期的に作成される他、ユーザが任意に作成することもできます。復元ポイントを利用すると、バックアップを作成した時点までOSの状態を巻き戻すことが可能になります。
回復ドライブのように改めてOSをインストールし直すわけではないので、手軽に利用できるのが魅力です。ただし、復元ポイントはPC本体のストレージに保存されるため、OSに不具合が生じてPCが起動できなくなった場合は利用できません。
一方、回復ドライブはシステムを外部記憶装置に保存できるため、万が一PCが起動できなくなっても、回復ドライブに保存されたOSをインストールして復元が可能です。このことから、復元ポイントとは別に、回復ドライブを作成しておくことが推奨されています。
Windows11で回復ドライブを作成するための事前準備

回復ドライブを作成すると、外付けストレージ・USBメモリ・増設した内蔵ハードディスクユニットなどが接続されていた場合、それらのデータが消去されてしまう可能性があります。
そのため、回復ドライブを作成するためのUSBメモリ以外の外部記憶装置は、必ず取り外しておくようにしましょう。外部記憶装置以外のものでも何らかの影響を及ぼす可能性があるため、周辺機器は全て取り外しておくことが望ましいです。
また、ノートパソコンやタブレットPCの場合、電源は必ず接続したままで作業を進めてください。回復ドライブを作成する処理には時間がかかるため、回復ドライブの作成処理中に電源が落ちてしまった場合、システムが破損するなど予期せぬ不具合を招く恐れがあります。
回復ドライブを作成するタイミング
Windows11の回復ドライブはユーザの任意のタイミングで作成できますが、いつ作るのが正解なのでしょうか。
回復ドライブや復元ポイントがない状態では、Windowsのシステムは変更を元に戻せない不可逆の状態になっています。
Windows11では購入時にリカバリーディスクが付属しないため、リカバリーディスクの代替となるように初期セットアップが済んだ段階で1度回復ドライブを作成しておくことをおすすめします。
初期化用の他にも、2つのUSBメモリを用いて、数カ月に1度など一定期間で区切って作成したり、WindowsUpdateが適用されたタイミングで作成したりといった新旧の回復ドライブをローテーションする運用が考えられます。
回復ドライブを保存するためのUSBを用意する
回復ドライブを作成するには、まず回復ドライブを保存するためのUSBメモリを用意する必要があります。厳密にはUSBメモリだけではなく、CD-R・DVD-R・BD-R・HDD・SSDなどの記憶媒体も利用可能です。
しかし、CD-Rなどの光学ディスクは容量が少なく1枚では足りないため、読み書きに適した光学ドライブが必要です。また、外付けディスクは容量が大きいものが多く、回復ドライブとしての用途には過剰です。そのため、この記事では最も扱いやすいUSBメモリの利用を前提としています。
回復ドライブを作成するのに必要な容量は32GB以上ですが、回復ドライブとして利用すると残りの容量は使用できなくなるため、32GBのUSBメモリを使用することをおすすめします。
なお、セキュリティ機能やハードウェア暗号化機能など、特殊な機能が付与されているUSBメモリは、Windows11の回復ドライブの作成に対応していない場合があります。このような機能が付与されているUSBメモリを使う際は、事前に確認が必要です。
また、回復ドライブを作成するとUSBメモリ内の既存のデータはすべて削除されてしまいます。必要なデータがある場合は事前に退避させるようにしましょう。
回復ドライブを作成する手順

ここからは、実際に回復ドライブを作成する手順を解説していきます。システムの状態を保存する作業のため、影響が発生しないように他の実行中のアプリケーションなどは終了させておきましょう。
スタートボタンをクリックして、スタートメニューを開き、「コントロールパネル」をクリックします(①、②)。スタートメニューに表示されていない場合は検索バーに「コントロールパネル」と入力すると表示されます。

表示方法を「小さいアイコン」または「大きいアイコン」に変更して、「回復」アイコンをクリックします(③)。
「高度な回復ツール」ウィンドウで「回復ドライブの作成」をクリックすると、「ユーザーアカウントの制御」のメッセージが表示されるので「はい」をクリックします(④、⑤)。

回復ドライブ作成ウィザードで「システムファイルを回復ドライブにバックアップします。」にチェックを入れて「次へ」をクリックします(⑥、⑦)。チェックを入れなかった場合、作成した回復ドライブはデータの回復のみ可能となり、Windowsシステムの復元には使えません。
USBフラッシュドライブの接続を求められますので、用意した32GBの容量を持つUSBメモリをPCに接続します(⑧)。既に接続している場合は自動的に次の手順に進みます。

USBフラッシュドライブの選択画面で、「使用可能なドライブ」に使用可能なドライブが表示されていることを確認して、「次へ」をクリックします(⑨、⑩)。
この時、複数のドライブが表示されている場合は他のUSBストレージが接続されていないか確認してください。回復ドライブに作成するUSBメモリ以外のドライブを選択してしまうと、そのドライブのデータが失われる可能性があります。
回復ドライブの作成画面で、ドライブ上のすべてのデータが削除される旨の警告メッセージが表示されます。問題がなければ「作成」をクリックすると、作成が開始されます(⑪)。

「回復ドライブの準備ができました」と表示されるので、「完了」をクリックします(⑫)。USBメモリは取り外して問題ありません。紛失しないように大切に保管しましょう。

回復ドライブを使用してWindowsを復元する手順

ここからは、作成した回復ドライブを使用してシステムを復元する方法について解説します。回復ドライブは、回復ドライブを作成したPCの復元にしか使えない点に注意してください。例えば、AのPCで作成した回復ドライブを、BのPCで使用してシステムを復元するという使い方はできません。
まず、PCを完全シャットダウンさせる必要があります。通常のシャットダウンでは、次回の起動を高速にするために、USB機器への通電や操作状況を保持したままWindowsを終了させています。これに対して完全シャットダウンでは、電源を完全に落とした状態にします。
完全なシャットダウンの手順としては、スタートボタンをクリックし、スタートメニューから電源アイコンをクリックして、キーボードのSHIFTキーを押しながら「シャットダウン」をクリックします。(①、②)。
「シャットダウンしています」のメッセージが表示されたら、SHIFTキーから指を離してシャットダウンの完了を待ちます。

PCが完全にシャットダウンされたら、PC本体に接続されている周辺機器を全て取り外します。特に外部記憶装置は作業の影響を受ける可能性が高いので、必ず取り外すようにしましょう。準備ができたら回復ドライブが保存されたUSBメモリを接続してPCの電源をONにします。
回復ドライブが読み込まれるので、キーボードレイアウトの選択では、特に要件がなければ「Microsoft IME」をクリックします。オプションの選択では、「ドライブから回復する」をクリックし、「ドライブから回復する」では「ファイルの削除のみ行う」をクリックします(③、④)。

注意事項が表示されるので、問題なければ「回復」をクリックすると処理が実行されます。
「このPCを回復しています」のメッセージが表示され、続いて「Windowsをインストールしています。PCの電源を切らないでください。処理にしばらくかかります。」のメッセージが表示されるので処理が完了するまで待ちます。
処理が完了したら、Windowsが正常に動作することを確認しましょう。
回復ドライブが作成できない原因と対処法

ここでは、回復ドライブが作成できない主な原因と対処法を紹介します。手順通りに行っても失敗してしまうという場合は、以下の項目を1つずつ確認してみましょう。
USBメモリが不適合
先述したように、回復ドライブの作成には32GB以上の容量が必須です。また、パスワードログイン機能などセキュリティ機能付きのUSBメモリーは、回復ドライブ作成に対応していない場合があるので、USBメモリの仕様をしっかり確認しておきましょう。
さらに、USBメモリのシステム形式が原因の可能性もあります。その場合は、USBメモリをフォーマットしてから作成してみましょう。
フォーマットはUSBメモリを接続後、「エクスプローラー」→「USBメモリを右クリック」→「フォーマット」→「ファイルシステムを【FAT32】または【exFAT】に変更」→「開始」で行えます。
USBポートの不具合
USBメモリを接続するUSBポートのコネクタの不具合により、作成が失敗することもあります。複数のポートがある場合は、別のポートに接続して試してください。なお、作成時はUSBハブを使用せず、PC本体のUSBポートに直接挿入するようにしましょう。
スリープ時の誤操作
スリープ機能がオンになっている場合、回復ドライブ作成中でも一定時間が経過すると、PCの画面がスリープされてしまいます。スリープ状態から回復させる際に誤って「Enterキー」を押すと、作成がキャンセルされてしまう可能性があります。
このような誤操作を防ぐため、回復ドライブ作成時はスリープ機能やスクリーンセーバーをオフにしておくのがおすすめです。
Windowsのバージョンが最新ではない
Windowsのバージョンが最新の状態になっていないと、回復ドライブが正常に作成できない場合があります。そのため、作成前に最新の状態であることをしっかり確認しておきましょう。
Windowsのバージョンは、「スタートメニュー」→「設定」→「Windows Update」から確認できます。
回復ドライブを使用せずシステムを復元する方法

回復ドライブを使用せず、システムを復元するにはどういった方法があるのでしょうか。ここでは2つの方法について解説します。
復元ポイントを利用する
やはり、復元ポイントを利用するのが最も手軽な復元方法です。復元ポイントを使用すれば、データを残したままPCを簡単にシステム変更前の状態に戻すことができます。
手動で復元ポイントを作成する際は、「検索ボタンで【復元ポイントの作成】と入力し選択」→「システムの保護タブ」→「作成」→「任意の説明を記入」→「作成」で行えます。
なお、復元ポイントは、手動だけでなく自動で作成することも可能なため、もしものときのために備えておくと安心です。
【参考】システムの復元ポイントを作成する|Microsoftサポート
Windowsをクリーンインストールする
PC内のデータや設定をすべて削除し、改めてWindowsをインストールする「クリーンインストール」という方法もあります。既存のプログラムによる影響を受けないため、正常に動作しない状態を改善できる可能性があります。
復元ポイントと違い、クリーンインストールはこれまでに保存したすべてのデータが消えてしまうため、事前にバックアップを取っておくことが大切です。
クリーンインストールを行う際は、まずMicrosoftの公式ページからWindowsのデータを入手し、USBメモリなどの記録媒体を使ってインストールメディアを作成します。記録媒体の容量は8~10GBあると安心です。その後、PCを起動してセットアップを開始します。
【参考】Windows 11 のクリーン インストール手順|Microsoft Windows Insider
万が一に備えて正しく回復ドライブを利用しましょう

普段何気なく使用しているPCですが、故障やウイルス感染などで起動できなくなるリスクはいつ訪れるか分からないものです。トラブルが起きてからでは遅いので、万が一に備えてバックアップを備えたり、リカバリーの手順を整理したりしておくことが大事になってきます。
PCトラブルの備えの第一歩として、PCの購入時に回復ドライブを作成し、大切に保管しておくことから始めましょう。
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