ChatGPTをエクセルで活用する
現代人が仕事をする上で、エクセル(Excel)はなくてはならないビジネスツールです。しかし、複雑な関数やデータ分析に苦手意識を持っている方も少なくないのではないでしょうか。そのような問題解決には、ChatGPTを利用したり、アドインのアプリを利用したりする方法があります。
ここでは、ChatGPTをExcelで活用するとできること、Excel上で利用できるアドインの「ChatGPT for Excel」について紹介します。ChatGPTのExcel連携や、Excel活用を実現してみたい方はぜひ参考にしてください。
【参考】:ChatGPT: Optimizing Language Models for Dialogue
ChatGPTをExcelで活用するとできること6選
ChatGPTを活用することで、Excelでの作業はどのように効率化できるのでしょうか?実例を交えながら見ていきましょう。
作業内容に合った関数を教えてくれる
ChatGPTに自然言語で質問することで、データ分析やグラフ作成に必要な関数を教えてもらえます。関数名だけでなく、具体的な使い方や構文も説明してくれるので、初心者でも簡単に操作できます。
ChatGPTに「Excelで従業員の平均年齢を計算したい時に使える関数は?」と質問したところ、次のような回答が返ってきました。
関数の使い方を教えてくれる
特定の関数の使い方について詳しく知りたい場合にも、ChatGPTに質問することで解決します。引数の意味や具体的な使用方法など、丁寧に教えてくれます。複雑な関数でも、ChatGPTの助けがあれば簡単に使いこなせるようになります。
ここでは、前述のAVERAGE関数の使い方について質問してみましょう。以下のように、丁寧にAVERAGE関数の機能や書式、手順、注意事項などを教えてくれます。
データ加工ができる
ChatGPTを使うことで、データの加工の自動化が可能です。例えば、重複データの削除、欠損値の補完、データの整形など、様々な処理をChatGPTに依頼できます。プログラミングの知識がなくても、ChatGPTの指示に従うだけで簡単に処理を実行できます。
データ分析やグラフ作成ができる
ChatGPTを使うことで、データ分析やグラフ作成の効率化が可能です。データを分析して必要な情報を抽出し、わかりやすいグラフを作成するといった作業をChatGPTに依頼できます。専門的な知識がなくても、説得力のある分析結果を導き出すことができます。
VBAマクロを作成できる
ChatGPTを使うことで、VBAマクロの作成が可能です。複雑なマクロでも、ChatGPTに指示を出すだけで自動的に生成してくれます。マクロの動作内容や細かい設定も、ChatGPTとやり取りしながら調整でき、プログラミング初心者でも効率的にマクロを作成することができます。
ここでは、ChatGPTに「Excelで生徒別、試験科目別のテストの点数を別のシートから読込み、試験科目別の成績ランキングを作成するVBAマクロを作成して」と指示してみました。回答の前半を紹介しますが、そのままコピペして使えるVBAマクロが一瞬で作成されていました。
その他にできること
上記以外にも、ChatGPTとExcelの連携によって様々なことができます。例えば、以下のような作業も自然言語で指示するだけで実現可能です。
・目的に合ったチャートの種類を提案する ・データを可視化する方法についてアドバイスをする ・エラーメッセージの原因を特定し、解決に導く ・Excelの作業手順を自動化する
ChatGPTをExcelのアドインで活用する
ChatGPTをExcelで活用するには、Excel上で簡単にChatGPTの機能が使える、アドインソフトを利用する方法があります。今回は、Excelでよく利用されているサードパーティ製の「ChatGPT for Excel」を紹介します。
ChatGPT for Excelとは?
ChatGPT for Excelは、Excel上でChatGPTの機能を呼び出し、その機能を利用できるアドインソフトです。この利用によって、Excelで作業しながら、直接ChatGPTに対して質問やリクエストを行って回答を得たり、データの分析や表作成を支援してもらったりすることが可能になります。
また、マクロを作成してエクセルの自動化を図ることもできます。
【参考】:ChatGPT for Excel
ChatGPT for Excelの7つの関数
ChatGPT for Excelには7つの関数が搭載されており、それぞれの関数を用いて様々なタスクを実行できます。この関数を活用することでExcel作業を効率化し、より高度なデータ分析や可視化が行えます。
関数はそれぞれ単独で使用することも、組み合わせて使用することもできます。また、ChatGPT for Excelには、これらの関数以外にも様々な機能が搭載されています。
以下では、各関数の概要について解説します。
⬛️ AI.ASK関数 AI.ASK関数は、セルに入力された質問に対して、ChatGPTが回答を自動的に生成する機能です。複雑な質問や、専門的な知識が必要な質問にも対応することができます。
⬛️ AI.TABLE関数 AI.TABLE関数は、自然言語で記述された指示をもとに、自動的に表作成を行う機能です。列名や行ラベル、データ型などを指定する必要がなく、直感的な操作で表を作成することができます。
⬛️ AI.TRANSLATE関数 AI.TRANSLATE関数は、選択した範囲のセル内のテキストを指定の言語に翻訳する機能です。Google翻訳の技術を活用しており、高精度な翻訳が可能です。
⬛️ AI.FORMAT関数 AI.FORMAT関数は、選択した範囲のセルの書式を、ChatGPTへの指示に従って自動的に設定する機能です。フォントや罫線、配置などを個別に設定する必要がなく、統一感のある書式を簡単に作成することができます。
⬛️ AI.EXTRACT関数 AI.EXTRACT関数は、選択した範囲のセルから、特定の情報だけを抽出して新しいセルに出力する機能です。メールアドレスや電話番号、日付などを抽出するような場合に便利です。
⬛️ AI.FILL関数 AI.FILL関数は、選択した範囲の先頭行または先頭列をもとに、他の行または列に自動的にパターンを埋め込む機能です。数式やデータを入力する必要がなく、繰り返し作業を大幅に効率化することができます。
⬛️ AI.LIST関数 AI.LIST関数は、ChatGPTに質問を投げかけることで、関連する情報をリスト形式で自動的に生成する機能です。アンケート結果の分析や、商品リストの作成などに役立てることができます。
ChatGPT for Excelの利用方法
これからChatGPT for Excelを始める手順について解説していきます。ChatGPT for ExcelはExcel向けのアドインソフトですので、Excelにアドインとして導入して利用します。ここではMicrosoft 365 Excel(バージョン2406)を例にステップごとに説明します。
ChatGPT for Excelの利用料金
ChatGPT for ExcelはChatGPTのAPIを利用して動作するため、OpenAIのAPI利用料金が発生します。OpenAIのAPI利用料金は従量課金制で、1トークンあたり0.002ドルの料金が発生します。
ChatGPT for Excelを利用する場合は、Starterプラン(月額7.99ドル)とProプラン(月額5.99ドル + OpenAI APIの利用料金)の2種類から選択します。Proプランの方が低価格に見えますが、使えば使うほど料金が上がっていきます。
また、プラン選択をするまでに50回まで無料トライアルで利用可能です。ただし、利用できるAIモデルはGPT-3.5です。
OpenAIのアカウント登録
OpenAIのAPIを利用する際には、OpenAIのアカウント取得が必要です。すでにChatGPTのアカウントを取得している方は、そのアカウントでOpenAIのサイトにログインできます。新たにアカウントを取得する必要はありません。
APIキーの取得方法
OpenAIのAPIを利用する際に、APIキー(固有の識別子)が必要です。APIキーはサービスの悪用を防ぐためのセキュリティですので、APIを利用する前に取得しておきましょう。また、APIの利用の際、APIキーを求められたらただちに入力できるよう、各自で保管しておくようにしましょう。
OpenAIのユーザ登録を済ませた方は、次のページにログインすることで簡単にAPIキーの生成ができます。
【参考】:OpenAI Platform
■ OpenAIのサイトにアクセス ChatGPT APIキーを取得するには、OpenAI APIのサイトにアクセスし[+Create new secret key]の箇所をクリックします。既にAPIキーを取得済みの場合は、取得済みのAPIキーが表示されています。
■ APIキーの作成 「API Keys」の取得画面が表示されたら[Create secret key]をクリックします。
■ APIキーの取得 「API Keys」が表示されたらキーの右にある[Copy]ボタンをクリックし、キーをコピーしたら、メモ帳などに貼り付けて分かるように保存してください。
ExcelにChatGPT for Excelを導入する
OpenAIのAPIキーを取得し、保管が済んだら、ChatGPT for ExcelアドインをExcelに導入してみましょう。
■ Microsoft Excelアドインを組み込む Microsoft Excelを開きます。ここでは、Microsoft365 Excel(バージョン2406)の例です。Excelのワークシートが開いたら、「リボン」の右側にある「アドイン」をクリックし、Excelのアドインアプリが一覧表示されたら、「ChatGPT for Excel」を探して、追加をクリックします。
■ ChatGPT for Excelを表示、追加する ChatGPT for Excelのコンテンツ画面が表示されたら、[追加]をクリックします。
■ ChatGPTのアドインをインストールする ChatGPT for Excelの「ライセンス条項とプライバシーポリシー」同意画面が表示されます。それぞれのリンクをクリックして内容を確認します。確認は不要という方は[続行]ボタンをクリックします。
■ ChatGPT for Excelのインストール完了 ChatGPT for Excel のインストールが済むと、Excelのリボン上右端に下図のようにChatGPT for Excelのアイコンが組み込まれ、その下にアプリのホーム画面が表示されます。
■ 必要に応じてAPIキーの登録とプラン設定 下図①のプラン選択ボタンをクリックすると、②のAPIキー設定のオン・オフ切換ボタンと、③のAPIキー入力欄が表示されます。デフォルトではフリートライアルプランとなっており、利用できるAIモデルはGPT-3.5、関数の呼び出し回数は50回までの制限があります。
制限回数を超えると、StarterプランかProプランへのアップグレードが求められます。有料ブランに切り替えると、GPT-4もしくは最新のGPT-4o(オムニ)の選択ができるようになり、大量のデータを扱えるようになります。
ChatGPT for Excelを実際に動かしてみよう
ChatGPT for Excelの導入が済むと、前述したAI関数をExcel上で利用できるようになります。ここでは、いくつかの関数を実際に使ってみましょう。ChatGPT for Excelが利用できない場合は、利用しているPCがネットワーク接続できているかどうかを確認しましょう。
AI.ASK関数による質問
AI.ASK関数を用いて、CjatGPTに質問をしてみます。B2セルに関数を「=AI.ASK(A2)」と入力し、A2セルに質問を入力してみましょう。質問は「世界で一番高い山はどこですか?」としてみました。
以下のように「エベレスト山」と正しく回答しました。続いて、2023年のプロ野球セリーグの優勝チームを尋ねてみました。ChatGPTは無料版のGPT-3.5モデルを利用しており、2023年は未学習のため「まだわかりません」と回答しました。
AI.TRANSLATE関数による翻訳
次に翻訳をしてみましょう。ここでは、 AI.TRANSLATE関数を用いて、日文から英文、英文から日文への翻訳をしてみました。
AI.LIST関数によるリスト作成
最後に特定のワードから、ChatGPTにリスト形式で回答をさせてみましょう。ここでは、「ChatGPTのメリットを5つ挙げて」とリクエストしてみました。きちんと5項目リスティングされているのが分かります。
ここまで、質問応答、翻訳、リスト作成をしてみましたが、様々なタスクをこなせることが分かりました。ただ、無料版での利用だったのでできることには制約がありますが、本格利用したい方は有料版に移行してみると良いでしょう。
ChatGPTでExcekの作業効率を高めよう
この記事では、ChatGPTをExcelで活用する方法、ChatGPTのアドインソフトであるChatGPT for Excelの機能、導入の仕方、利用方法などについて紹介しました。いずれの方法でも簡単にExcelでChatGPTが活用できます。
ただし、ChatGPTはまだ発展途上にあり、比較的万能ではありますが、学習不足だと誤った回答をする場合があります。そうしたリスクやデメリットを理解した上で、ChatGPTを上手に活用して、Excel業務の効率化を図りましょう。
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