モダンJavaScriptとは?
JavaScriptを学び始めると、自然に「モダンJavaScript」を学んでいくことになりますが、これまでのJavaScriptと何が違うのか気になる人もいるでしょう。モダンJavaScriptは、最近のJavaScriptを利用したWeb開発では、一般的に使用されるアプローチやツールの集合体のことです。
この記事では、モダンJavaScriptの主な特徴を中心に解説していきます。Webエンジニア、Webデザイナーを目指す方、JavaScriprのモダンな書き方を学びたい方はぜひ参考にしてください。
JavaScriptとは
モダンJavaScriptの説明に入る前に、初めにJavaScriptについておさらいしておきましょう。
JavaScriptは、Google ChromeやMicrosoft EdgeなどのWebブラウザ上で動作するプログラミング言語です。JavaScriptはほとんどのWebサイトで利用されており、次のようなことを実現できます。
1.Webサイトに「動き」をつける ユーザのアクションに応じて、ボタンのクリックやキーボード入力などを制御できます。
2.非同期処理が行える データの非同期読み込みやAPI通信などを効率的に実行できます。(jQueryを導入し、非同期通信技術のAjaxを実装すると行えます。)
3.サーバーサイドの開発ができる Node.jsなどを使ってサーバーサイドのプログラムも書けます。簡単に言えば、JavaScriptは動きのあるダイナミックなWebページを実現するためのプログラム言語であり、ユーザ体験を向上させる上で欠かせない存在と言えます。
【参考】:JavaScript | MDN 【参考】:Microsoft Edge について 【参考】:Google Chrome | Google
モダンJavaScriptとは
モダンJavaScriptは、最新のJavaScriptの機能やベストプラクティス全体を指しており、モダンJavaScriptというプログラミング言語が存在するわけではありません。モダンJavaScriptの主な特徴は次の通りです。個々の詳しい解説は後述します。
1.仮想DOMを用いるライブラリ/フレームワーク: React、Vue、Angular、Riotなどが含まれる 2.パッケージマネージャー(npm, yarn)を使用: 依存関係の解決やパッケージの管理に役立つ 3.ES2015以降の記法を使う: constやlet、テンプレート文字列、アロー関数などを活用する 4.モジュールバンドラー(Webpackなど)を使用: 複数のファイルを1つにまとめて読み込み速度を向上させる 5.トランスパイラ(Babelなど)を使用: 新しいJavaScriptの記法を古い記法に変換する
これらの要素が含まれているケースをモダンJavaScriptと称します。
【参考】:モダンJavaScriptチートシート | Modern JS Cheatsheet
なぜモダンJavaScriptを学ぶのか?
なぜJavaScriptではなく、モダンJavaScriptを学ぶ必要があるのでしょうか?次に挙げるように、現代のWeb開発において欠かせないスキルだからです。
■ 1.効率的な開発 仮想DOMやモジュールバンドラ、トランスパイラなどのツールを使うことで効率的にコードを書けます。
■ 2.最新技術への対応 ES2015以降の記法を学ぶことで、最新のWeb開発に追従できます。
■ 3.SPAの基盤 モダンJavaScriptはSingle Page Application(SPA)の基本になっています。
■ 4.依存関係の解決 パッケージマネージャが依存関係を解決してくれます。
モダンJavaScriptの特徴
ここではモダンJavaScriptの特徴と言える最新の機能やベストプラクティスの要素について、もう少し詳しく見ていきましょう。
仮想DOM
仮想DOM(Virtual DOM)は、ブラウザ上でのDOM操作を効率的に行うための仕組みです。ReactやVue.jsなどのライブラリやフレームワークで使われています。
【参考】:React 【参考】:Vue.js - The Progressive JavaScript Framework | Vue.js
パッケージマネージャ
npmやyarnなどのパッケージマネージャは、JavaScriptのライブラリやモジュールを管理するためのツールです。特定のライブラリやフレームワークを利用していると、それらのバージョン変更がアプリケーションの動作に影響を及ぼすといった依存関係の問題が起きることがあります。
パッケージマネージャはこうした依存関係の問題を解決してくれます。
【参考】:npm 【参考】:GitHub - yarnpkg/yarn
ES2015以降の記法
ES2015(ES6)以降の記法とは、2015年に公開されたJavaScriptの次期仕様です。ES2015以降の記法を利用することで、変数宣言(let, const)、クラス構文、アロー関数、分割代入といった新しい記法を使えます。
【参考】:ES2015 とは|GitBook
モジュールバンドラー
Webpackなどのモジュールバンドラーは、複数のJavaScriptファイルを1つにまとめて読み込み速度を向上させるためのツールです。
複数のファイルを1つにバンドルすることで、読み込み速度を向上させ、パフォーマンスを高めます。モジュールバンドラーを用いることにより、開発効率の向上と、本番環境でのパフォーマンス向上といった効果を得られます。
【参考】:webpack
トランスパイラ
Babelなどのトランスパイラは、新しいJavaScriptの記法を古い記法に変換する役割を果たします。ES2015以降の記法で書かれたJavaScriptを古いブラウザでも動作可能なコードに変換することで、ブラウザの互換性の問題が解消し、古いブラウザを意識せずに新しい構文が利用できます。
【参考】:Babel |Babel
モダンJavaScriptは、以上述べた要素を組み合わせ、より効率的でメンテナンス性の高いコードを書くためのアプローチです。
モダンJavaScriptのメリットとデメリット
モダンJavaScriptの特徴について解説しましたが、ここではモダンJavaScriptを利用することによるメリットとデメリットについて紹介します。モダンJavaScriptに対する理解を深めましょう。
モダンJavaScriptのメリット
モダンJavaScriptは、その特徴によって次のようなメリットが期待できます。デメリットとのバランスよく考慮して、開発を進めることが求められます。
■ 1.開発のしやすさ モダンJavaScriptは、仮想DOMを用いるライブラリやフレームワーク(React、Vue、Angularなど)を活用するため、UXの向上やコンポーネント化による開発効率の向上が期待できます。
【参考】:Angular 日本語版
■ 2.依存関係の解決 パッケージマネージャー(npmやyarnなど)の利用により、ライブラリやフレームワークの依存関係を自動的に解決します。そのため開発者は依存関係に悩まされることなく、開発に集中できます。また、この機能によって、世界中に公開されているさまざまなパッケージを簡単に利用できます。
■ 3.効率的にモダンコードが書ける 主にES2015以降の記法を使用します。constとletで変数宣言、テンプレート文字列、アロー関数などが利用できることで、より効率的でモダンなコードを書くことが可能になります。
■ 4.モジュールの読み込み速度 Webpackなどのモジュールバンドラーは、複数のJavaScriptファイルを1つにまとめて読み込んでくれます。そのため読み込みの速度を向上させます。
■ 5.古い記法を意識せず開発 ブラウザごとに表示できる記法が異なるため、トランスパイラが必要です。Babelなどのトランスパイラは、新しいJavaScriptの記法を古い記法に変換してくれるため、古い記法を意識せずに開発を行えるため、開発効率が向上します。
モダンJavaScriptのデメリット
モダンなJavaScriptの開発について知りたい方にとって、モダンJavaScriptは魅力的ですが、いくつかのデメリットも存在します。以下にモダンJavaScriptの主なデメリットを紹介しますので、デメリットを理解した上で利用するようにしましょう。
■ 1.複雑なDOM操作 モダンJavaScriptのフレームワークやライブラリでは仮想DOMを使用します。仮想DOMは、HTMLの構造をJavaScriptのオブジェクトとして再現し、リクエストがあった時にブラウザに反映させる手法ですが、逆にコードを複雑化させ、レンダリングコストを高める場合があります。
■ 2.新しい記法の学習コスト ES2015以降の記法にはさまざまな機能が追加されましたが、これらに慣れ、使いこなせるようになるまで時間や学習コストがかかります。例えば、constとletの違いの認識や、テンプレート文字列の使用方法などがあります。
■ 3.モジュールバンドラとトランスパイラの導入 モダンJavaScriptの開発では、新たに複数のファイルを一つにまとめるためのモジュールバンドラ(Webpackなど)や新しい記法を古い記法に変換するトランスパイラ(Babelなど)を使用しますが、これらのツールの導入に学習コストが新たに必要になります。
モダンJavaScriptを学ぶ
ここではモダンJavaScriptを本格的に学びたい方に、おすすめの参考書を紹介します。
既にJavaScriptの基礎を学んだ方は「改訂3版JavaScript本格入門」をおすすめしますが、初学者の方は先に「1冊ですべて身につくJavaScript入門講座」で一通りの基礎を身に付けましょう。
改訂3版JavaScript本格入門
本書は、日本で最も売れているJavaScriptの本の大幅増補改訂版です。ECMAScript 2022に対応し、最新の基本文法から応用トピックまで詳しく解説しており、モダンJavaScrptの基礎から現場での応用まで広くカバーしています。
JavaScriptの初学者には難しいと感じる方もいますので、先に初学者向けのJavaScripr参考書で基礎を押さえてから購読することをおすすめします。(参考サイト内で本書のサンプルがダウンロードできます。)
▪著者:山田祥寛 ▪出版社:技術評論社 ▪ページ数:624ページ ▪発売日:2023/2/13
【参考】:改訂3版JavaScript本格入門
1冊ですべて身につくJavaScript入門講座
Webクリエイターとして活動する方や、JavaScriptを学びたい初心者の方におすすめしたい参考書です。サンプルデータはWebサイトからダウンロードできるので、実際に手を動かしながら最新の技術を学ぶことができます。
▪著者:Mana ▪出版社:SBクリエイティブ ▪ページ数:344ページ ▪発売日:2023/03/01
【参考】: 1冊ですべて身につくJavaScript入門講座
モダンJavaScriptの習得でエンジニアとして活躍しよう
ここまでモダンJavaScriptについて、JavaScriptの概要、モダンJavaScriptの特徴や利用する理由、メリットとデメリットなどについて解説しました。
JavaScriptは比較的古い言語であり、それゆえの問題点もありますが、モダンJavaScriptの活用によってさまざまな問題を解決し、開発の生産性をあげることが可能です。この機会に、モダンJavaScriptを体得し、Web開発にぜひ活かしましょう。
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