Javaのデザインパターンとは?
Javaのデザインパターンは、ソフトウェア設計における、設計手法のパターンを指します。例えば、建物を建築する時には、部屋のタイプや機能に合わせた設計が必要です。
ソフトウェアの開発でも、各課題に対してあらかじめ決まった型を用意しておけば、誰がみても読みやすく効率的なコードで記述できます。
つまり、デザインパターンを利用すると、コードの再利用性、拡張性が高まり、運用保守もしやすくなります。
また、デザインパターンは、「生成」「構造」「振る舞い」の3つの主要カテゴリに分類され、各パターンは特定の設計上の課題に対応しています。
本記事では、よく利用されるデザインパターンを一覧で紹介し、デザインパターンの勉強方法についても触れます。Javaを学習中の方は、ぜひ参考にしてください。
Javaのデザインパターンはもう古い?
「Javaのデザインパターンが古い」という考え方も、インターネットなどで議論されています。
確かに、一部のパターンは現代のプログラミング環境ではあまり使われなくなっていますが、多くのデザインパターンは今でも非常に有効です。新しい技術やアプローチが登場しても、これらの基本的な原則は理解しておいた方がよいでしょう。
Javaのよく使うデザインパターン一覧
ここからは、主に使われるデザインパターンの概要を説明します。それぞれ特徴が異なるため、開発したい成果物の特徴を考えてからデザインパターンを選びましょう。
ちなみに、前述の通りデザインパターンは、生成・構造・振る舞いの3つのカテゴリに大別できます。カテゴリごとのデザインパターンは、以下の通りです。
- 生成
Factory Method・Abstract Factory・Prototype・Builder・Singleton
- 構造
Adapter・Composite・Facade・Flyweight・Proxy
- 振る舞い
Observer・Command・State・Visitor・Interpreter・Chain of Responsibility・Iterator・Mediator・Memento・Strategy・Template Method
それぞれの項目について、カテゴリ別に確認しましょう。
生成
まずは、生成カテゴリのパターンを確認しましょう。生成カテゴリのパターンは、Factory Method・Abstract Factory・Prototype・Builder・Singletonです。
▪Factory Methodパターン オブジェクトの作成をサブクラスに委ねるパターンです。オブジェクトの生成をメソッドの中で行い、オブジェクトを生成することで、より柔軟にオブジェクトを利用できます。
▪Abstract Factoryパターン Abstract Factoryパターンでは、オブジェクトをいくつも作成するためのインターフェースを提供します。つまり、インスタンスを生成するためだけのクラスを提供し、まるで工場のようにオブジェクトを作ります。たくさんのオブジェクトを生成する場合は、このデザインパターンを適用するとよいでしょう。
▪Prototypeパターン Prototypeパターンは、既存のオブジェクトを複製することで新しいオブジェクトを作成します。同じようなオブジェクトをいくつも欲しい時などに利用されます。
▪Singletonパターン Singletonパターンでは、あるクラスのインスタンスが1つだけ存在することを保証します。Singletonパターンでは、新しく他のインスタンスが作られないように、コンストラクタをprivateに設定します。
▪Builderパターン 複雑なオブジェクトにおいて、段階的な構築を可能にするパターンです。料理で例えると、野菜炒めを作る時は、野菜を切る工程、焼く工程、塩胡椒で味付けする工程があります。この時、工程ごとに管理しておけば、塩胡椒で味付けする工程だけ変更したい時に、柔軟に対応できます。
このように、段階的に構築の工程を分割したパターンをBuilderパターンと呼びます。
構造
ここからは、構造カテゴリのパターンを紹介します。構造カテゴリは、Adapter・Composite・Facade・Flyweight・Proxyです。
▪Adapterパターン Adapterパターンでは、互換性のないクラスを連携させるインターフェースを作ります。クラスを継承させるなどしてクラスを連携させます。
▪Compositeパターン Compositeパターンは、個別のオブジェクトとオブジェクトの組み合わせを同じものとして扱うパターンです。複数のオブジェクトに対して同じ作業を行う場合は、このCompositeパターンが使われます。
▪Facadeパターン 複雑なシステムに対して単純化されたクラスを提供します。例えば、複数のクラスで処理が必要な作業を行う場合、それぞれのクラスを呼び出すのは面倒です。そこで、Facadeパターンでは単純化されたクラスを呼び出し、そのクラスが実作業をするクラスを呼び出して処理を行います。
▪Flyweightパターン Flyweightパターンは、多数の似たようなオブジェクトを効率的に共有してメモリを節約する目的で利用されます。特に、リソースが制限されている場合、Flyweightパターンを利用すればプログラムを軽くできます。
▪Proxyパターン Proxyパターンでは、あるオブジェクトへのアクセスを制御するための代理(プロキシ)を提供します。アクセス制御や、遅延初期化に使用されます。
振る舞い
最後に、振る舞いカテゴリのパターンを紹介します。振る舞いカテゴリのパターンは、Observer・Command・State・Visitor・Interpreter・Chain of Responsibility・Iterator・Mediator・Memento・Strategy・Template Methodです。
▪Observerパターン Observerパターンは、オブジェクト間の依存関係を作り、あるオブジェクトの状態が変更されたら他のオブジェクトに自動で通知します。
▪Commandパターン プログラムではメソッドを複数呼び出すときに引数を利用しますが、その数には限りがあります。そこで、オブジェクトに送る要求を、オブジェクトそのものとしてカプセル化します。
▪Stateパターン Stateパターンは、オブジェクトの状態によって、処理を変更するパターンです。状態の変化にあわせて、柔軟に処理を行いたい場合に利用します。
▪Visitorパターン Visitorパターンはその名の通り、訪問者と受け入れ先のオブジェクトを用意するデザインパターンです。これらのオブジェクトを用意することで、受け入れ先の処理を書き換えることなく処理を追加・変更できます。
▪Interpreterパターン Interpreterパターンでは特定のものを分析し、その結果に基づいて処理を行います。解析結果に応じて処理を変えたい場合には、Interpreterパターンを利用します。
▪Chain of Responsibilityパターン Chain of Responsibilityパターンでは、複数のオブジェクトに処理を委任することができる構造を提供します。個々のオブジェクトはリクエストを処理するか、他のオブジェクトに委譲できます。
▪Iteratorパターン Iteratorパターンでは、コレクションの要素を順番にアクセスする方法を提供します。
▪Mediatorパターン オブジェクト間の複雑な通信を単純化します。Mediatorが各オブジェクトを制御し、オブジェクトは直接互いに通信するのではなく、Mediatorを介して通信します。
▪Mementoパターン オブジェクトの現在の状態を保存し、後でこの状態に戻すことができるようにします。Mementoパターンは、元に戻す操作やリカバリー機能などに使用されます。
▪Strategyパターン Strategyパターンでは、アルゴリズムのグループを定義し、それらを相互交換できるようにします。このパターンを利用すれば、アルゴリズムを動的に切り替えることができます。
▪Template Methodパターン アルゴリズムの骨組みを定義し、その中の特定の処理をサブクラスに委譲します。Template Methodパターンを使用すると、アルゴリズムの構造を変更せずに特定の処理をカスタマイズできます。
デザインパターンを使わない時もある?
プロジェクトの規模が小さい場合は、デザインパターンを使わないこともあります。デザインパターンは大規模で複雑なシステムを想定しており、シンプルな機能のみが必要な時にデザインパターンを利用すると、反対に開発が複雑になる可能性もあります。
また、プロジェクトの要件や、チームのスキルセットを考慮することも大切です。デザインパターンに慣れていないメンバーがほとんどであれば、そのデザインパターンを学ぶ時間が必要です。
上記のポイントを鑑みつつ、デザインパターンを導入するか検討しましょう。
Javaのデザインパターンを勉強する方法
Javaのデザインパターンを勉強する方法は、実際にデザインパターンを使った開発をするのが1番です。ただし、基礎知識がまだ不足している場合は、専門書籍を読むこともおすすめします。
本を読む
デザインパターンの専門書籍を読めば、基本的な理論と実践例を学べます。インターネットや書店でデザインパターンに関する本も手に入りますので、気になる方は書籍を読んで基本的な知識を身につけましょう。
本記事では、おすすめのデザインパターンの書籍を紹介します。参考書を活用して勉強したい方は、自分に合った書籍を選び、基礎知識を身につけましょう。
「Head Firstデザインパターン 第2版 ―頭とからだで覚えるデザインパターンの基本」 この書籍は、イラストや図を使ってデザインパターンの概念を丁寧に解説した書籍です。クイズなども含まれており、自分の理解度を確認しながら読み進められる参考書です。
▪著者:Eric Freeman(著)、Elisabeth Robso(著)、佐藤 直生(監修)、木下 哲也(翻訳) ▪ページ数:672ページ ▪出版社:オライリージャパン ▪発売日:2022/06 【参考】:Head Firstデザインパターン 第2版
「Java言語で学ぶデザインパターン入門第3版」 Javaで利用される基本的なデザインパターンを全て網羅して解説した本です。JavaのサンプルコードやUMLも掲載されており、初心者の方でも理解しやすい解説が魅力です。さらに、第3版ではセキュリティや依存性に関する記述なども追加されており、より時代に合った解説書に改訂されています。
▪著者:結城 浩 ▪ページ数:560ページ ▪出版社:SBクリエイティブ ▪発売日:2021/11/13 【参考】:Java言語で学ぶデザインパターン入門第3版
実際に開発する
やはり実践的なスキルを身につけるためには、デザインパターンを利用した開発を行うことをおすすめします。この時、単純すぎるプログラムではデザインパターンを上手く活用できないため、使いたいデザインパターンを想定して成果物の要件を考えましょう。
Javaのスキルを磨き市場価値を高めよう
Javaを利用したシステムは数多くあり、Javaの開発案件も非常に多いです。Javaエンジニアとして今後活躍したい方は、市場価値を高める意味でも、デザインパターンなどの知識を深めましょう。
また、Javaを身につけるためには、やはり自分で手を動かすことをおすすめします。デザインパターンに関しても概要を理解したら、コードを書いてアウトプットすることが重要です。
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