AWSのEBSとは
AWSのEBSとは「Elastic Block Store」の略で、AWSが提供するストレージサービスの1つです。Elasticは弾力性があるという意味であり、利用目的に応じてサービスを柔軟に利用できるストレージサービスのことだと理解できます。
AWS EBSはEC2インスタンスで利用するために設計されており、EC2上の仮想マシンにEBSボリュームを割り当てることで、仮想マシンのストレージの管理が柔軟に行えるようになります。
この記事では、AWS EBSをテーマに特徴や他のサービスとの違い、利用料金や使い方などについて解説します。
【参考】:Amazon EBS(EC2 ブロックストレージボリューム)| AWS
ブロックストレージとは
ブロックストレージは「ブロック」という単位でデータを保存し、管理するストレージのことです。普段私たちが利用しているPCやサーバに搭載されるハードディスクやUSBメモリがブロックストレージに該当します。
ブロックストレージは階層構造を必要とせず、メタデータが付加されず、読み込みデータへのパスが複数指定できることなどから、高速なアクセスを実現します。ストレージには他に、ファイルストレージやオブジェクトストレージがあります。
EBSとEC2の関係
AWSにはよく知られた仮想サーバサービスEC2(Elastic Compute Cloud)がありますが、EBSとEC2はどのような関係にあるのでしょうか。EBSはEC2インスタンス(仮想サーバ)用に準備されたストレージであり、EC2のデータはすべてEBSに保存されます。
AWS S3との違い
AWS S3(Simple Storage Service)はEBSと並んで、AWSの代表的なストレージサービスです。
EBSがEC2インスタンスにアタッチして利用するのに対し、オブジェクトストレージであるS3はデータのバックアップ、災害対策用、アーカイブ、ビッグデータ分析用のデータレイクなど、主としてデータを保管場所として利用します。
そもそもAWSとは
AWSについて改めて確認しておきましょう。AWSは『Amazon Web Service』の略称で、GAFAとして知られる米国巨大IT企業4社の1つ、Amazon社が提供する100以上のクラウドコンピューティングサービスの総称です。
AWSの利用者はインターネット経由で仮想サーバやストレージ、データベースなどのサービスを利用することができます。日本では政府が行政サービスDX化のプラットフォームとしてAWSを採用したこともあり、AWSは日本国内でも注目を集めています。
【参考】:アマゾン ウェブ サービス(AWS クラウド) 【参考】:日本の行政機関のデジタルイノベーションを支援 | Amazon Web Services ブログ
AWS EBSの特徴
AWS EBSは、主にEC2インスタンスのデータ保管という役割を担っていますが、ここではAWS EBSの主な特徴について紹介していきます。
1.2種類のディスクタイプ
AWS EBSには、SSDとHDDの2種類のディスクタイプがあります。読み書きの速度が速いSSDタイプは更新頻度の高いデータの保存に適しています。一方、HDDタイプは大量のデータ転送を伴う処理に適しています。
2.高可用性
AWS EBSは障害の発生が起こりにくい高可用性を特徴としています。具体的には、AWSは99.999%の可用性を確保しており、1年間の内でダウンタイムはわずか数分程度の計算になります。この可用性の高さがEBSの特徴の1つです。
3.Snapshot機能
高可用性・耐久性を誇るEBSですが、万が一の備えとしてSnapshotと呼ばれるデータの差分バックアップ機能が用意されています。
Snapshotは直近のスナップショットから変更分のブロックだけを対象にし、完全なデータを保存しながらも、必要なストレージの量が最小限に抑えられるメリットがあります。この差分データは低料金のAWS S3に保存されるため、バックアップに掛かる費用を低く抑えられます。
4.4つのボリュームタイプ
AWS EBSは利用目的によって、4種類のボリュームタイプから選択することができます。EBSで選択できる4つのボリュームタイプについて、それぞれの特徴や用途を紹介します。
■ EBS 汎用 SSD (gp2) Amazon EC2インスタンスでデフォルトのEBSボリュームがgp2です。gp2はコストパフォーマンスが高く、開発環境やテスト環境を構築する際によく利用されています。gp2は3IOPS/GBの性能保証があり、利用状況に合わせて最大3000IOPSまでのバーストが可能です。
ただしバーストの持続時間に制限があり、高いディスクI/Oが必要な用途では注意が必要です。
■ Eプロビジョンド IOPS SSD(io1) 最高レベルのパフォーマンスを誇るEBSストレージが、io1です。アプリケーションやデータベースなど、ディスクI/Oが多く、ミッションクリティカルな処理に適しています。ストレージ容量のプロビジョニング費用に加え、IOPS毎の費用が加算されるため、他のボリュームに比較して費用は割高になります。
■ Eスループット最適化 HDD (st1) st1は高速HDDをベースとし、安定したスループットが要求されるシステムに適しています。データセットやI/Oのサイズが大きく、アクセス頻度の高いストリーミングやビッグデータ向けデータストアなどに最適です。
■ Cold HDD (sc1) sc1は低コストなボリュームタイプです。SSDを利用したボリュームと比べてHDDは大容量かつ連続したデータの保存に適しており、低速でアクセス頻度が少ないバックアップなど、大容量データの格納などの用途に適しています。
ただし、sc1は、EC2インスタンスのブートボリュームとしては利用ができませんので注意が必要です。
EBSの料金と使い方
AWS EBSを実際に利用する前に、料金と使い方について確認しておきましょう。
料金
AWS EBSの特徴やメリットは理解できても、利用料金が心配だという人もいるでしょう。無料枠が気に入って契約したところ、想定以上に費用が掛かってしまうケースもあります。そのような事態に陥らないよう、最初に料金見積もりを行い、納得した上で利用するようにしましょう。
AWSには料金見積もりツールが用意されていますので、これを利用して料金見積もりを行ってください。
【参照】:AWS 料金見積りツール
■ 無料利用枠 AWS EBSは以下の条件で12カ月間無料で利用が可能です。
▪30 GB の Amazon EBS: 汎用 (SSD) ストレージまたは磁気ストレージの任意の組み合わせ ▪200 万 I/O (EBS Magnetic の場合) ▪1 GB のスナップショットストレージ
■ 有料部分の利用料金 AWS EBSの有料部分の利用料金例を紹介します。(東京リージョンの料金です。為替変動により単位料金は変動します。)おおよその費用感が分かるでしょう。
(例)汎用SSD(gp3)ボリューム:1カ月30日間に12時間、2,000GBのボリュームをプロビジョニング(準備)し、さらにボリュームに対し 10,000 IOPS と 500MB/秒をプロビジョニングしたと仮定。
▪Gp3 ボリュームチャージ:2.677ドル(GB/月につき 0.08 ドル ) ▪Gp3 IOPS 料金:0.583ドル(プロビジョンド IOPS あたり月 0.005ドル ) ▪Gp3 のベースラインパフォーマンスの料金:0.375ドル(1 か月におけるプロビジョンド MB/秒あたり 0.06 USD )
以上を合計すると、約3.625ドル/月になります。
【参照】:Amazon EBS の料金 | Amazon Web Services
EBSを利用する手順
Amazon EBS はEC2インスタンスにアタッチする際には、同じアベイラビリティーゾーン(データセンター)に存在することが前提です。ここではEBS ボリュームのEC2インスタンスへのアタッチからマウントして、利用できるようにするまでの手順について紹介します。
■ 1.EBS ボリュームを作成する AWS EBSを利用するには、まず最初にマネジメントコンソールから以下の手順で空のEBSボリュームを作成します。
▪AWS マネジメントコンソールよりAmazon EC2 コンソールを開きます。 ▪ナビゲーションバーよりEBSボリュームを作成するリージョンを選択します。 ▪ナビゲーションペインより、「Elastic Block Store」にある[ボリューム]を選択し、[ボリュームの作成]を選択します。 ▪[ボリュームタイプ]を選択します。 ▪[サイズ (GiB)]ボリュームサイズを入力します。(1GiB~16TiB) ▪[Availability Zone]でEBSボリュームを作成するアベイラビリティーゾーン(データセンター)を選択します。 ▪EBSボリュームを暗号化する場合は [このボリュームを暗号化する] を選択します。 ※使用するアカウントで暗号化が有効になっている場合は自動的に暗号化されます。 ▪最後に[ボリュームの作成]を選択します。
【参照】:Amazon EBS ボリュームの作成 | Amazon Elastic Compute Cloud
■ 2.EC2 インスタンスにアタッチする EBSボリュームが作成できたら、同じくAmazon EC2 コンソールからEC2インスタンスにEBSボリュームをアタッチします。アタッチとは、仮想マシンにボリュームを割り当てることです。
▪ナビゲーションペインより[Elastic Block Store]の[ボリューム]を選択します。 ▪アタッチしたい EBS ボリュームにチェックを入れ、[アクション]の中 から[ボリュームのアタッチ]を選択します。 ▪[インスタンス]にインスタンスの名称または ID を入力する、もしくはリストよりインスタンスを選択します。 ▪[デバイス]でデバイス名の変更を行うことができます。
▪以上の操作を終えたら[アタッチ]を選択します。
【参照】:インスタンスへの Amazon EBS ボリュームのアタッチ | Amazon Elastic Compute Cloud
■ 3.EBS ボリュームをマウントする EBSボリュームをEC2インスタンスにアタッチできたら、次にマウントを行います。マウントとは、アタッチしたボリュームをOSなどのソフトウェアに認識させて、操作や利用が可能な状態にすることです。詳細の操作手順は以下のAWSのガイダンスに従って行ってください。
【参照】:Linux で Amazon EBS ボリュームを使用できるようにする| Amazon Elastic Compute Cloud
AWS EBSサービスを実際に試してみよう
この記事では、AWSのサービスでよく利用されるEC2では必須となるAWS EBSについて、その概要や特徴、利用料金や利用方法などについて紹介しました。AWSのサービスは個人でもアカウントを取得するだけで無料で試すことができます。
しかも実際に利用できるようになるまで、僅かな時間で済みます。まずは無料枠を有効に利用し、利用用途に応じてAWS EBSを上手に活用してみてはいかがでしょうか。
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