「AI倫理」について分かりやすく解説!倫理的な問題点と取り組み事例も紹介
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「AI倫理」について分かりやすく解説!倫理的な問題点と取り組み事例も紹介
アンドエンジニア編集部
2024.02.14
この記事でわかること
AI倫理とは、AIの開発や利活用において倫理的な価値を守るための指針や原則のこと
AI倫理の背景としてはAIの急速な発展と普及、社会的影響力の増大、AIの倫理的課題がある
AI倫理に関する国際的な取り組みが進められており、それらの尊重と遵守が求められる

AI倫理とは

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ChatGPTの登場によって、AI(人工知能)が私たちの身近な存在になってきましたが、AIの急速な普及に伴ってAI倫理がクローズアップされています。AI倫理とは、AIの開発や利用において、人間の尊厳や人権、社会的正義などの倫理的な価値をどのように守るかに関する問題や原則のことです。

AI倫理は、AIがもたらす様々な利益ばかりではなく、AIによるリスクや影響にも目を向ける必要があります。例えば、AIが偏見や差別を引き起こしたり、透明性や説明責任が欠けていたり、プライバシーやセキュリティを侵害する可能性を否定できません。

AI倫理は、国際的な協力や多様なステークホルダーの参加を必要とする、複雑かつ重要な課題です。そのため、世界各国や組織では、AI倫理に関するガイドラインや勧告を策定し、実践しようとしています。しかし、AI倫理は様々な議論があり、共通の基準や規制が確立されたわけではありません。

本記事では、AI倫理に関する定義とその背景、AI倫理の現状と取り組み状況、課題などについて紹介していきます。

【参考】:国内外の議論及び国際的な議論の動向(AIに関する)|総務省

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AI倫理の定義と背景

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AI倫理について論ずる際には、AI倫理に関する定義を明確にして共通認識を持ち、AI倫理を議論すべき理由や背景についても確認しておく必要があります。シンギュラリティ「技術的特異点」が現実のものとなり、AIが人知を超える存在になると言われています。

シンギュラリティは2045年に訪れると言われていますが、レイ・カーツワイル博士はその訪れが早まるとして、2029年到来説を唱えており、時間的な猶予はありません。今からAIが人間に悪影響を及ぼすことがないよう、AI倫理について議論を深める必要があるのです。

【参考図書】:シンギュラリティは近い [エッセンス版] 人類が生命を超越するとき|NHK出版

AI倫理の定義

AI倫理は、人工知能(AI)が人類に悪影響を与えないようにするための規範を指す言葉であると定義できます。AIは社会や経済に大きな影響を及ぼす可能性がありますが、その一方で、プライバシーや公平性、透明性や説明責任などの倫理的な問題を引き起こす恐れがあります。

そこで、AIの開発や利用において、どのような価値観や原則を守るべきか、どのような技術やガイドラインを用いるべきか、といったことを考える必要があります。

AI倫理の背景

AI倫理が論じられる背景としては、以下のような事柄が挙げられます。背景を理解した上で、AI倫理について議論を深めていくことが求められます。

■ AIの急速な発展と普及 近年、ディープラーニングやビッグデータの技術革新により、AIは様々な分野で高度な能力を発揮するようになりました。また、スマートフォンやクラウドコンピューティングの普及により、AIは日常生活やビジネスにも広く浸透しています。

■ AIの社会的影響とリスク AIは人間の仕事や学習や娯楽などを効率化したり豊かにしたりすることができますが、その一方で、人間の置き換えや差別化や操作化などのリスクも存在します。また、AIは自律的かつ複雑化することで、人間が予測や制御できない振る舞いをする可能性もあります。

■ AIの倫理的課題と議論 AIが社会的影響とリスクをもたらすことから、AIは単なる技術ではなく、「道徳的主体」として扱われるべきだという主張もあります。また、AIは人間の価値観や目的に沿って設計されるべきだという考え方もあります。

これらの主張は、「AIは倫理をどう見るか」「AIは何を目指すべきか」「AIは誰に責任を負うべきか」といった問いを提起します。

【参考】:人工知能による判断の自動化と道徳的問題|公益社団法人 日本心理学会

ディープラーニングとは?機械学習との違いもわかりやすく解説

AI倫理に関する問題点と事例

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AI倫理に関して、様々な問題が起きる可能性が指摘されています。ここでは、AI倫理に関する主な問題点と、AI倫理に関して実際に起きた事件や、取り組み事例を紹介します。

AI倫理に関する問題点

AI倫理に関する問題認識は既に形成されています。ここでは具体的にどのような点が問題とされているのかについて紹介します。総務省のAI倫理ガイドラインを参考に問題点を挙げていきましょう。

【参考】:AI倫理ガイドライン|総務省

■ プライバシーの侵害 AIは大量の個人情報や機密情報を収集・分析・利用することができますが、その過程でプライバシーの侵害やデータの流出や悪用などのリスクがあります。例えば、顔認識技術は犯罪防止やセキュリティ向上に役立ちますが、同時に個人の行動や属性を追跡・識別することでプライバシーを侵害する可能性もあります。

■ 公平性の欠如 AIは人間の偏見や差別を反映したり増幅したりすることがあります。例えば、採用や融資などの判断にAIを用いる場合、学歴や性別や人種などの特徴に基づいて不公平な結果を出すことがあります。

■ 透明性と説明責任の不足 AIはブラックボックス化することがあり、その内部ロジックや決定根拠が不明確であることがあります。また、AIは自己学習や自己改善を行うことで、人間が予測や制御できない振る舞いをする可能性もあります。これらの場合、AIは誰に対してどのような責任を負うべきか、という問題が生じます。

■ 人間性の喪失 AIは人間に代わって仕事や学習や娯楽などを行うことができますが、その過程で人間は自ら考えたり創造したり、感じる能力や機会を失う可能性があります。また、AIは人間に感情や道徳観などを持たせることもできますが、その場合、人間とAIの区別や関係性が曖昧になる可能性もあります。

■ 責任の所在 AI倫理における責任の所在に関する問題は、AIに関する事故が生じた際に、誰が責任を負うのかという点にあります。AIの利用者および開発者は、AIの利用目的や利用方法を明確にし、AIの利用によって生じるリスクを最小限に抑えることが求められます。

またAI自体にも責任があるとする見方もあり、AIには人間が設定したルールから逸脱した行動をしないことが求められます。

AI倫理に関する事例

AI倫理に関して、実際に起きた事件とともに、AI倫理に関する問題に対して実際に対策やルールを定めた事例についても紹介します。

■ GoogleがAI倫理学者を解雇した事例 Googleは2020年12月に、AI倫理学者のティムニット・ゲブル博士を解雇しました。ゲブル博士は、GoogleのAIシステムが人種や性別などの偏見を生み出す可能性があるという論文を共同執筆していたことが原因とされています。

この事例は、AIの研究や開発における自由や多様性や透明性などの倫理的価値がどのように保障されるべきかという問題を浮き彫りにしました。

【参考】:Google fires Margaret Mitchell, another top researcher on its AI ethics team | The Guardian

■ 富士通がAI倫理影響評価を適用した事例 富士通は、自社で開発した「AI倫理影響評価」を様々な事例に適用してみました。この評価は、AIシステムの利用で起こり得る倫理上のリスクを認識し適切に対処するためのチェックリストです。

例えば、医療診断支援システムや教育支援システムなどの事例では、プライバシー保護や説明可能性や安全性などの観点から、AIシステムが人間の尊厳や権利や自律性などを尊重するかどうかを評価しました。

【参考】:AIシステムの倫理上の影響を評価する方式を開発| 富士通

■ ソニーグループのAI倫理取り組み事例 ソニーグループは、2018年にAI倫理ガイドラインを策定し、2019年12月にはソニーグループAI倫理委員会を設置しました。同委員会は、リスクが大きいAIの利活用事例について検討し、是正策を提言することで、AIの利活用における責任ある行動を推進しています。

また、ソニーはAIを活用することにより、平和で持続可能な社会の発展に貢献し、人々に感動を提供することを目指しています。

【参考】:Sony Group AI Ethics Activity |総務省

AI倫理に関する国際的な動向と取り組み

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ここでは「AI倫理に関する国際的な動向と取り組み」について解説します。AI倫理に関する国際的取り組みや動向としては、以下のようなものがあります。

ユネスコのAI倫理勧告

2021年11月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、世界で技術開発が進む人工知能(AI)の倫理に関する国際的な規範を策定し、加盟国への「勧告」として採択しました。

この勧告は、人間中心のアプローチや多様性や包摂性や公平性や透明性などの原則に基づいて、AIの開発と使用における倫理的な責任やガバナンスや協力を促すものです。ユネスコは、この勧告が世界初のAI倫理規範として、加盟国や利害関係者に影響を与えることを期待しています。

【参考】:人間中心のAI社会原則会議(令和3年度 第2回)|総務省

AIガバナンスに係るガイドライン

近年、多くの国や地域や組織が、AIガバナンスに係るガイドラインや規制を策定したり提案したりしています。例えば、欧州委員会は2021年4月、「人間中心で信頼できるAI」を目指すための法的枠組み案を発表しました。

この枠組み案では、「高リスク」な分野で使用されるAIシステム(例えば医療や交通安全)に対しては厳格な要件(例えば品質管理やデータ管理)を設け、「禁止」されるべきAIシステム(例えば社会的価値観に反するもの)も明示しています。

【参考】:AI倫理に関する国際対応について|総務省

GPAI (Global Partnership on AI)

2020年6月、「人間中心」の考えに基づく責任あるAIの開発と使用に取り組む国際的なイニシアティブである「AIに関するグローバルパートナーシップ(Global Partnership on AI、GPAI)」が設立されました。このイニシアティブは、カナダとフランスが主導し、日本も含めた15か国・地域が参加しています。

GPAIは、政府・民間・学術・市民社会から成る専門家グループが活動し、「データ管理」「責任あるAI」「未来社会」「革新・商業化」という4つの分野で政策提言や技術協力を行うことを目指しています。

【参考】:AI倫理に関する国際対応について|総務省

AIの普及と発展のためにAI倫理は重要な問題

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今回は様々な事例をもとに、AIにまつわる倫理問題について解説しました。AI倫理は、AIの利活用によって生じるリスクを最小限に抑えることが求められます。AIは人間の判断力を補完することができますが、一方で、人間が抱える偏見や差別を反映することがあります。

そのため、AIの利活用にあたっては倫理的な観点から慎重な検討が必要です。

また、AIの利活用によって、社会に大きな変革がもたらされることが予想されますので、AIの利活用にあたって、私たちは社会的な影響を考慮した上で、責任ある行動が求められます。

AIを開発する側、AIを利用する側、さらにはAIを利用した仕組みやシステムにおいてもAI倫理の尊重を意識するように心がけたいものです。

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