Data Cloud Allianceの発足
Google Cloudは2022年4月6日、新しいアライアンスであるData Cloud Allianceの発足アナウンスを行いました。創設メンバーはGoogle Cloud含めて12の企業からなります。翌日開催されたGoogle Data Cloud Summitで詳細説明がされました。 【参考】:Google Cloud 2022年4月6日プレスリリース 【参考】:Top 5 Takeaways from Data Cloud Summit ‘22
このイニシアティブは、グローバル企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に必要なデータへのアクセスと洞察をよりシームレスに行うための新しい協調スキームです。データアクセスが、異種のビジネスシステム・プラットフォーム・環境間で、よりポータブルでアクセスしやすくすることを目的とします。
Google Cloudとは
Google Cloudとは、Googleの提供するクラウドサービスで、コンピューティング・ストレージ・データベース・データ分析・AIと機械学習等150以上の製品をサービス提供しています。 【参考】:Google Cloud
今回のGoogle Cloudによる発表では、「データはすべてのDXのための共通の基盤です」と述べています。オープンなデータ標準・アクセスを、最も普及しているデータプラットフォームとアプリケーション間の統合に取り組むことで、DXを加速していくと表明しています。
Data Cloud Alliance概要
まず発足の背景について考えてみます。企業は新しい方法で消費者に訴求し、まったく新しいデジタルビジネスを立ち上げ、複雑化するガバナンスとコンプライアンスの要件を満たすべく、デジタル変革への道を進んでいます。
取り扱うデータはDXに不可欠です。検索・Eコマース取引・オンライン評価などで、多くのデータが生成されています。データの急増と、それを分析・管理するための多くのソフトウェアやクラウドベースのアプリケーションは、企業がデータを効果的に活用するために一層重要となると考えています。その考えのもとに新アライアンスの発足を表明しました。
このアライアンスは、業界共通のデータモデル・オープンスタンダード・統合プロセスを通じて、業界を超えたデータ分析・人工知能・機械学習のベストプラクティスの採用を推進していきます。 【参考】:Data Cloud Alliance
このアライアンスのベースは、Google Cloudです。Googleのエンタープライズ・ソリューションは、200以上の国と地域のお客様が利用しています。設立メンバーのソリューションとともに、重要なビジネス上の課題に対処することを目標とします。
新アライアンスのミッション
設立したアライアンスのミッションとしては、発足の背景である企業の課題に対処することです。具体的には、消費者への新しいアプローチ・全く新しいデジタルビジネスの立ち上げ・複雑化するガバナンスとコンプライアンス要件への対応など、DXを加速することです。
活動の考え方ですが、業界共通のデータモデル・オープンスタンダード・プロセス・エンドツーエンドの統合製品およびソリューションを通じて、業界全体での採用を加速させることです。
同様に、データガバナンス・データプライバシー・データ損失防止・グローバルコンプライアンスに関する課題と複雑性を軽減します。最新のデータおよびアナリティクス技術におけるスキル開発を推進するとしています。
新アライアンス設立の意味は?
後に紹介しますが、Data Cloud Allianceの創設メンバーは、Google Cloud含めて12の企業です。各社の特徴を理解すると設立趣旨が分かってきます。企業が所有するデータは専有するものではなく、共有するものですので設立メンバーからの賛同が得られたと考えられます。
発表内容から読み取れる設立の趣旨は、以下のものがあると考えられます。
クラウド事業者の競争激化
AWSはクラウド事業者のトップ事業者ですが、寡占化が進む中でも優位性を確保しています。AWSの事業が進むと事業独占や抱え込みのリスクが高まります。Google Cloudでは、AWSと同等サービスを提供するとともに、1社抱え込みからの開放が訴求できます。
顧客のニーズの複雑化・多様化
データ活用が進むにつれて、DXでの活用方法はビジネスニーズをより複雑で多様な問題解決への期待が高まっています。このビジネスの複雑性に対処するデータ分析は、クラウド事業者1社で提供できるものではなく、ソリューション経験の知見に基づく評価が必要となります。
エンタープライズ・ソリューションの体制強化
企業向けとなるエンタープライズ・ソリューションでは、より高いセキュリティと堅牢性が求められます。この観点からも実績を有するパートナー協業のベストプラクティスを活用しやすく、導入リスク低減につながると考えられます。
パートナー連携の要求の高まり
データ活用が進む中、クラウドサービスを超えた活用や多数のソリューションからの最適な仕組みづくりも重要です。要件定義・提供ビルディングブロックの選定・評価など、それぞれの特徴を持つパートナーの知見の活用を求める声も高まっているため、自社提供よりもアライアンスでの協業スキームを優先したと想像します。
Data Cloud Allianceの創設メンバー
Data Cloud Allianceの創設メンバーは、Google Cloud含めて12の企業となります。ここでは、Google Cloud以外の賛同メッセージを寄せている11企業の事業特徴から、その発表のポイントを整理しています。
Accenture
Accentureは、統合コンサルティング会社で、IT系に強みを持ちます。システムインテグレーションやアウトソーシングに多くの実績を持ちます。本アライアンスでは、クラウドの連続性を通じたデータ交換のためのオープンスタンダードにこだわり、クラウド導入を推進することを表明しています。 【参考】:Accenture Home
Confluent
Confluentは、データ活用のプラットフォームを提供します。Apache Kafkaによる分散データストリーミングを得意としています。データストリーミングの専門知識を提供し、データアクセスを円滑に行います。本アライアンスでは、データ分析のスキル・テクノロジー選択、そしてデータの可搬性を保証できるよう活動を予定しています。 【参考】:Confluent
Databricks
Databricksは、統合データ分析基盤となるデータレイクハウスをApache Spark・Delta Lake・MLflowを組み合わせ実装します。「レイクハウス」プラットフォームは、自社ソフトのDelta Lakeをベースに、データの取り込み・管理・データ共有を促進し、オープンな基盤とマルチクラウドを実現します。 【参考】:Databricks
Dataiku
Dataikuは、人工知能(AI)や機械学習で用いる、データの準備・分析・視覚化・モデリングに関する統合仮想環境を提供します。データ分析やAIプロジェクトをシームレスに拡張し、企業の意思決定に利用していくことを想定しています。 【参考】:Dataiku
Deloitte
Deloitte(Deloitte Touche Tohmatsu:DTT)は、世界最大の会計事務所です。DXを推進しており、テクノロジーコンサルティングを通じて業界標準のデータモデル・プロセス・プラットフォーム統合の提案・評価を行います。 【参考】:Deloitte
Elastic
Elasticは、クロス環境でシステム・プラットフォーム・環境をこえてデータアクセスを可能にします。Elastic Cloudでクラウドプラットフォームの、オープンなデータアクセス・共有・統合をシームレスに行います。Google Cloudにおいても、お客様が強固なデータ基盤を構築できるメリットを提供します。 【参考】:Elastic
Fivetran
Fivetranは、SaaSデータ統合サービスによりデータの抽出・変換・ロードを行い、データウェアハウスの効率性を高めます。SaaSやデータベースのソースからのデータ統合という分析フェーズをスピーディーに自動化し、データ主導の意思決定を行うために、豊富な洞察をより迅速に提供します。 【参考】:Fivetran
MongoDB
MongoDBは、ドキュメント指向のNoSQLデータベースです。マルチクラウドにより、クラウドやアプリケーション環境全体におけるデータへのアクセスを統一し、DXを推進します。より多くの組織がデータを扱う需要に対応し、スマートなデータ駆動型アプリケーションを構築することができます。 【参考】:MongoDB
Neo4j
Neo4jは、Javaベースのグラフデータベースです。人気が高く高信頼・安全性の高い企業向けでも利用が進んでいます。AI/MLのパイプラインやペタバイトレベルのスケーリングに活用できます。オープンスタンダードでベストプラクティスを進化させ、Google Cloud活用を推進します。 【参考】:Neo4j
Redis
Redisは、NoSQLデータベースの1つとなるインメモリデータベースです。キャッシュ・ストリーミング・メッセージブローカとしても利用できます。本アライアンスが対象とする、データとAIにRedisを用い、お客様のモダンアプリケーションの課題を解決します。 【参考】:Redis
Starburst
Starburstは、データアナリティクスのエンジンで、データレイクやデータウェアハウスのシングルポイントアクセスを実現します。データソースに依存しないTrino(旧PrestoSQL)により、データアクセスを迅速に行うことができます。企業のデータ駆動型アプローチに対応し、DXを推進します。 【参考】:Starburst
今後もデータ活用に関する発表に注目しましょう
現在、クラウドサービスの利用は拡大し、一般消費者から企業向けまで利用の幅が広がっています。収集データも大幅に増加しており、データの収集から分析の重要度が固まっています。
今回の発表に限らず、データ駆動型(Data Driven)によるビジネスの意思決定や課題解決は、次の利用ステップとして拡大の傾向が見られます。データの収集・蓄積・分析・可視化、そして利用に関する発表は今後も続くと考えられます。次のビジネスの波に乗れるよう、今後の発表にも耳を傾けることをおすすめします。
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