IPv6基礎検定実施を公表
2022年3月23日、一般社団法人日本ネットワーク技術者協会から「IPv6基礎検定」実施の発表がありました。実施時期は2023年3月を予定しています。 【参考】:「IPv6基礎検定」を2023年3月に全国300か所で通年実施~IPv6を理解したエンジニアの育成を推進~ 【参考】:発表2022年3月23日IPv6検定03
日本ネットワーク技術者協会の概要
日本ネットワーク技術者協会は、2018年12月に設立した法人です。ネットワーク製品および各種ネットワーク製品の設定や、運用技術習得者に対する検定試験を実施します。ITネットワークの社会教育および振興を行う目的で設立されました。 【参考】:日本ネットワーク技術者協会
同協会で実施している試験には、「RTXルーター検定 for VPN」があります。ヤマハルーターを使って、VPN接続を行うための知識を問う試験です。2022年8月には「Pythonとネットワークの自動化基礎検定」を開始します。ネットワークの自動化を理解しているエンジニアの育成を推進することが目的の検定です。 【参考】:RTXルーター検定 for VPN 【参考】:Pythonとネットワークの自動化基礎検定
IPv6基礎検定は、上記検定に続いて発表された試験で3つ目の柱となる検定試験です。
IPv6基礎検定とは
IPv6基礎検定とは、一般社団法人日本ネットワーク技術者協会が主催する技術検定の1つです。試験名称は「IPv6基礎検定」で、インフラエンジニアとしてネットワークの基礎知識がある初級ネットワークエンジニアとネットワークの運用管理担当者を対象としています。 【参考】:IPv6基礎検定
2022年10月にベータ試験を予定しており、2023年3月以降は本試験を通年実施の予定です。受験料は1万円(税別)となり、全国300か所のCBT-Solutions テストセンターで受験することができます。
すでに提供されている「RTXルーター検定 for VPN」受験会場は以下のリンクで確認できますので、IPv6基礎検定についても同じセンターでの受験が想定されます。 【参考】:CBTS テストセンター RTXルーター検定
IPv6基礎検定の試験概要
IPv6基礎検定は、IPv6の基礎的な知識を問う試験です。設問数は40問、受験時間は60分です。
合格基準については、正答率70%が必要です。他の試験と比較すると、IPA(情報処理推進機構)の主催する情報処理技術者試験の合否判定は満点の60%であり、民間の試験制度はおよそ70%〜75%程度を基準としていますので、通常の理解度が評価されると判断できます。 【参考】:情報処理技術者試験 新試験制度の手引
出題範囲は、小川晃通氏の「プロフェッショナルIPv6」というテキストです。主教材は、出題範囲となる小川晃通氏の書籍「プロフェッショナルIPv6」の改訂版となる「プロフェッショナルIPv6 第2版」が使用されます。出題範囲は決まっているものの、出題比率については現在調整中のようです。他の参考教材については、小川晃通氏によるIPv6解説動画などもおすすめです。 【参考】:動画で学ぶIPv6
プロフェッショナルIPv6 第2版
IPv6基礎検定の出題範囲となる本書は、2018年7月に発行した「プロフェッショナルIPv6」の改訂版です。IPv6プロトコルの全体像から、IPv4との共存がカバーされています。紙媒体は5,000円(税別)ですが、電子書籍は無料版がダウンロード可能です。
▪著者:小川晃通 ▪ページ数:488ページ ▪出版社:ラムダノート ▪発売日:2021/12/20 【参考】:プロフェッショナルIPv6 第2版 【参考】:プロフェッショナルIPv6(無料版)
小川晃通氏の活動内容
今回IPv6基礎検定を実施するにあたり、日本ネットワーク技術者協会では小川晃通氏をIPv6アドバイザーとして招いています。
小川晃通氏は日本ネットワーク技術者協会の発表資料にも掲載されている通り、「プロフェッショナル IPv6」の他「Linux ネットワークプログラミング」などネットワーク技術関連の執筆を手掛ける専門家です。IPv6有識者として広く活動しており、YouTubeでTCP/IPやIPv6の解説動画を投稿しています。YouTubeは無料で視聴できるので、受験目的でなくてもチェックしてみましょう。
IPv6基礎検定の今後の予定
将来的には、試験区分(試験グレード)の上位版が予定されています。「IPv6基礎検定」に加えて「IPv6上級検定(仮称)」が将来構想として企画中です。IPv6上級検定も、同じ教材を使用する予定ですが、出題範囲や難易度はまだ公開されていません。
IPv6基礎検定の実施背景
ここでは、IPv6基礎検定の実施背景について触れていきます。IPv4のIPアドレスが枯渇する中、日本でのIPv6の普及率は急激には増加していないのが実状です。そのため、一層の普及を促進し、セキュリティー確保をしっかりと進めていく必要があります。
日本ネットワーク技術者協会では、阻害要因となっているIPv6運用時の課題となるネットワーク安全性の確保とセキュリティ対策を実施するために、IPv6技術者育成のための検定試験として、今回IPv6基礎検定実施を決定し、発表へと至りました。
IPv6とは
既存のIPv4アドレスは、32ビットでIPアドレスを定義し、長らく利用されています。ネットワークの経路や、送受信するアドレスを識別するために利用されています。近年IoTやモバイルデバイスの急増により、このIPアドレスが枯渇の道をたどっています。すでにグローバルIPアドレスは2011年以降実際に枯渇が始まっており、対策が急務となっています。この対策のために、IPv6が策定されました。
IPv6のメリット
IPv6では従来32ビットで構成していたIPアドレスを、128ビットで定義します。そのため、IPアドレス枯渇の心配から解放されます。この他、ヘッダの簡略化やIPアドレス自動設定等により、利便性が向上しました。標準定義されているIPsecにより、セキュリティ通信を行うこともできます。
IPv6のデメリット
IPv6のデメリットとしては、IPv4とのプロトコル互換性がないことが挙げられます。移行期においてはIPv4とIPv6の共存は必須であり、普及を阻害する要因にもなっています。特にすでにIPv4で利用環境を持つユーザは、IPv6に以降するメリットを感じていないことが問題に挙げられています。
IPv6とIPv4の違い
IPv6はIPv4のIPアドレス枯渇問題を解消するために登場しました。そのためIPアドレスは、IPv4が32ビットに対してIPv6が128ビットで構成されています。IPv6では、ヘッダの簡略化やIPアドレス自動設定等が規定されていることから、ヘッダのフォーマットやIPアドレス自動設定実装の仕組みに違いがあります。
IPv6のデメリットで触れましたが、IPv4とIPv6にはプロトコル互換性がありません。ネットワーク構築の際には、IPv4とIPv6のインターネットを別ネットワークとして設計・構築します。
IPv6の対応状況
IPv6を利用するには、ネットワーク網をIPv6で通信することが必須となります。そのためには、ネットワーク端末側のOSとアプリケーションが対応している必要があります。さらに、接続ルーターとISPがサポートしている必要があります。
ISPではIPv6に多くのインターネットプロバイダーが対応していますが、契約内容によって制限を受ける場合があります。現在IPv6が利用可能かどうかは、IPv6テストサイトの表示を確認するのが良いでしょう。 【参考】:日本インターネットプロバイダー協会 ISPのIPv6対応について 【参考】:あなたの IPv6 をテストしましょう。
IPv6時代に活躍できるエンジニアを目指しましょう
IPv4のIPアドレス枯渇問題からIPv6が策定されたものの、日本においては移行がなかなか進まない状況です。しかしながら、徐々に進むIPv6利用が主要な利用環境となった段階で、この移行が爆発的に進むと想定されます。その準備のためにも、知識吸収を行ってIPv6基礎検定に挑むことをおすすめします。自身のエンジニアとしての市場価値を高めましょう。
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