Windows11の普及率が伸びない?
2021年10月にMicrosoft(マイクロソフト)社が市場に投入した「Windows11」ですが、Windows10が登場した時ほどのシェアの広がりが見られません。マイナビニュースによると、2022年2月時点でWindows11のシェア率20%弱に対し、依然としてWindows10は80%近いシェアを占めています。
Windows11の普及度合いはMicrosoft社の思惑通りという見方がある一方、企業においてはWindows11への移行が進んでいないという説があり、その見方は大きく分かれています。
この記事では、主にWindows11への移行が進んでいないその理由について探っていきます。ITエンジニアの多くの方は、OSのメジャーアップデートに伴って仕事面で大きな影響を受けることがあるため、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
【参考】:Windows 11の市場シェアが約20%に、1カ月で3.2%上昇(マイナビニュース)
Windows11のシェアは企業用と個人用とでは大きく異なる?
Windows11の普及率について調べていると不可解な状況に遭遇します。Windws11のシェア調査に関して、20%説と1%説があり混乱しますが、実はどちらも正しいのかもしれません。それは判別方法や調査対象PCの違いなどによるものと考えられますので、両方の調査結果を確認してみましょう。
Windowsストアアプリとゲームのクロスプロモーションネットワークの「AdDuplex」は、Windows11のシェアを19.3%(2022年2月末)と発表しましたが、一方、IT資産管理Lansweeperの調査では0.52%(2022年1月)と大きな乖離があります。
1つの仮説ですが、Lansweeperの調査結果は企業のクライアントPCで使われているOSであり、AdDuplexの調査はコンシューマー(一般消費者)を対象としたものと考えられます。
【参考】:AdDuplex Report for February 2022(adduplex)
【参考】:Windows 11 Adoption Rate(Lansweeper)
そもそもWindows11とは
Windows95やWindows7が登場した際には熱狂的な歓迎ムードがありました。Windows10の発表時にもメディアを賑わせていたと記憶していますが、Windws11は静かに登場した印象があります。実際にSNSなどの反応を見ても、比較的冷ややかな反応がほとんどです。
Windows11の存在を知らない人が8割も存在するという情報すらありますので、ここでは改めてWindws11に関する基本情報を確認しておきましょう。
Windows11への無償アップグレード
Microsoft社が2021年10月5日に市場投入したWindowsの最新版「Windows11」は、Windows10パソコンで必要条件を満たしていれば、Windows11への無償アップグレードが可能となっていました。実際に、Windows11へのアップグレードに関する「Windows Update」の通知を確認した方も少なくないでしょう。
しかし、市場の反応を見ていると、Windows10が登場した時ほどの盛り上がりは感じられませんでした。SNSなどで一般ユーザーの反応を見てみると、「Windows11に興味がないわけではないが、特に移行の必要性が感じられないので様子見をしたい」という人が多いのです。
また企業のIT部門担当者に至っては、「OSのバージョン作業は時間とコストが掛かり、移行リスクもあるため必要性がなければ先送りしたい」という反応も見られました。
Windows11の特徴(Windows10との違い)
Windows11の主な変更点は、デザイン・スタートメニュー・操作性の改善などですが、他にも多くの新たな機能が搭載されています。Windows11とWindows10の大きな違いは次の5つです。
1.必要スペック(CPU、メモリー、ストレージなど)の変更 2.Androidアプリの利用が可能※ 3.タッチキーボードなどの入力機能の改善 4.Internet Explorerの廃止(Microsoft Edgeのみ) 5.タブレットモードの廃止(タブレット利用時に自動的にタブレット画面に)
この中でユーザーにとってメリットを感じられない変更点は、必要スペックの要件が厳しくなった点でしょう。購入してから5年以上経つパソコンは、Windows11の必要スペックを満たしていない可能性があります。メモリーの増設ができないノートPCの場合は、端からWindows11の導入を諦めるしかありません。
【参考】:※Android用Windows サブシステム(Microsoft公式サイト)
Windows11無償アップグレードの期限
Windows11へのアップグレードを検討中の方は、無償アップグレードの期限がいつなのか気になるところです。Microsoft社はその期限について公表はしていませんが、リリースから1年間は保証するとの見解を示していますので、リリース日の1年後となる2022年10月5日が無償アップグレード期限と考えて良いでしょう。
ちなみに、Windows10の延長サポート期限は2025年10月14日です。
【参考】:OS にはサポート期限があります!(Microsoft公式サイト)
企業でWindows11への移行が進まない理由と問題点
Windows11は、コンシューマー(一般ユーザー)では移行が順調に進んでおり、一方企業ではほとんど採用されていないという仮説に基づき、企業でWindows11への移行が進まない理由、その問題点について考察してみましょう。
Windows10は2025年10月まで利用できる
多くの企業では、クライアント端末のOSとしてWindows10を採用しており、2025年の10月までは継続利用が可能です。そのため現在安定稼働しているWindows10を捨ててまで、Windows11に移行するメリットはないと判断しているのでしょう。
特に大きな企業では、数千台〜数万台のPCのOSをアップグレードするためには、綿密な移行計画の策定・移行予算の確保・全PCの棚卸・移行プログラムの作成・テストなど、大きな負荷を覚悟する必要があります。慌ててアップグレードをするメリットがないので、企業においてWindws11への移行が進まないのは理解できます。
Windows11のハードスペックがネックになっている
Windows11への移行は、Windws11のシステム要件を満たす必要があります。スペック要件を満たさずともアップグレードを行う方法がありますが、要件を満たさないPCを無理にアップグレードすると、不都合が生じた際にサポート対象外となる可能性があり、イレギュラーなアップグレードは避けるべきです。
IT資産管理Lansweeperの調査では、CPUスペックだけの比較でも、調査対象の55.6%が不適合※の判定でした。企業の多くは、Windows移行によって、時間と労力に加え、半数近いPCをリプレイスしなければなりません。
このように、Windows11の高いハードスペック要求が、移行を妨げている2つ目の原因であり、問題点と考えられます。以下は、Windows11のシステム要件です。他に、Windows11の初期設定では、必ずマイクロソフトアカウントが必要ですので、アカウントがない方は気を付けましょう。
▪プロセッサ : 1 ギガヘルツ( GHz)以上、 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサ ▪メモリ : 4 ギガバイト( GB) ▪ストレージ : 64 GB 以上記憶装置 ▪TPM : TPMバージョン 2.0 ▪グラフィックス : DirectX 12 以上に対応 ▪ディスプレイ : 対角サイズ 9 インチ以上・8ビットカラーの高解像度( 720p)
【参考】:※Is Your Business Ready for Windows 11?(Lansweeper公式サイト)
それでもWindows11への移行は必要
ここまで、Windows11の普及率、拡大が進まない理由や問題点などについて解説してきました。企業においてWindows11への移行メリットは少なく、逆にハードルは高いという状況が、なかなかWindws11への移行が進まない原因であることが分かりました。
しかし、先延ばしをしても確実に3年後にはWindows10の利用が困難となるため、タイムリミットが来て慌てふためくことがないよう、早めに手を打っておくべきでしょう。エンジニアの皆さんは、無償アップグレードの権利を生かして個人PCでWindows11を試してみることをおすすめします。
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