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インボイス制度とは?フリーランスエンジニアが受ける影響と対処法
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インボイス制度とは?フリーランスエンジニアが受ける影響と対処法

アンドエンジニア編集部
2023.01.13
この記事でわかること
インボイス制度によってフリーランスエンジニアが契約を切られる可能性がある
フリーランスエンジニアは適格証明書を発行するか決める必要がある
インボイス制度が廃止・延期になる可能性は0ではないが、実行されるものとして準備を進めることが大切

フリーランスエンジニア間で騒がれているインボイス制度とは?

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まず、インボイス制度がどういったものなのかを解説します。インボイス制度を理解するには消費税の仕組みを知る必要があるため、消費税とは何かという点から詳しく説明しましょう。

フリーランスエンジニアになるメリット・デメリット、年収や将来性

そもそも消費税とは?

消費税は商品やサービスの利用(消費)に対して課税される税金のことです。ここでいうサービスには、システム開発も含まれます。消費税が他の税金と異なるのは、課せられる人と納める人が別であることです。

消費税を納めるのは消費者ではなく事業者側であり、事業者は毎年税務署に消費税額を計算して納めています。たとえば会社を運営する場合、1,100円の売上があって消費税の税率10%であったとすると、10%の100円を納税する必要があります。

ただし実際は、100円全てを納税しなくて良いケースもあります。たとえば、会社が売上を出すためにシステム開発をフリーランスに550円で依頼したとします。この場合は550円の消費税分である50円を差し引いて納めることになるため、50円のみを税務署に納めます。

消費税はこのように、売上分の消費税から出費分の消費税を差し引いた額が納税額という仕組みです。

消費税を納めなくても良いケース

消費税はサービスを提供する場合、必ず消費者から受け取らなくてはいけません。それはフリーランスエンジニアも同じで、システム開発を提供した場合顧客から消費税を必ず受け取っています。

しかし、「消費税を受け取っていても消費税を納めたことはない」というフリーランスの方は多いですが、それは違法行為をしているという訳ではありません。

消費税は特定条件を満たさない限り、納めなくて良い決まりになっているためです。課税期間より前々年の課税売上高が1,000万円を超えていない場合、消費者からもらった消費税額は自分のものにすることができます。

インボイス制度とは?

2023年の10月1日から新しく「インボイス制度」が導入されます。インボイス制度とは、簡単に言うと消費税を厳重に管理するための制度です。具体的には、請求書を「適格請求書」に統一させます。適格請求書は、取引内容や税率・税額などの記載要件が満たされた国が定めた公式の請求書です。

適格請求書を発行することで適格請求書発行事業者として認められ、消費税を正しく税務署に支払ったという証明ができます。そのため消費税を納めた人、つまり課税売上高が1,000万円以上の方は必ず適格証明書を使わないといけないということです。

【参考】:インボイス制度の概要|国税庁

適格請求書の発行方法

適格証明書を発行するには税務署に申請を行う必要があります。申請はすでに受け付けており、簡単に行うことが可能です。

まず、登録申請書を公式サイトからダウンロードします。登録申請書にはマイナンバーや法人番号の記載が必要な他、本人確認書類の提示または写しも必要です。

申請書を提出すると税務署によって審査が行われ、合格すると「適格請求書発行事業者」として公表されます。その後、税務署から登録通知と登録番号が送付されます。

インボイス制度が導入される2023年10月に間に合わせるには、2023年3月31日までに申請を済ませる必要があります。

【参考】:[手続名]適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁

インボイス制度と関係ない業種とは?

インボイス制度と関係ない業種には、どのようなものがあるのでしょうか。取引先が一般消費者や免税事業者である場合は不要ですが、事業者の規模が大きい場合はインボイスの発行が求められるでしょう。では、具体的にどのような業種を指すのか、以下にまとめました。

・ネイルサロン ・エステサロン ・美容院 ・マッサージ店 ・スポーツジム ・学習塾 ・音楽教室 ・英会話教室

なお、エンジニアは基本的にインボイス制度の対象である職種です。

ITエンジニアの平均年収

インボイス制度が適用されるフリーランスエンジニアの年収についてですが、平均的な金額はどの程度なのでしょうか。ここでは職種をシステムエンジニアに絞り、転職エージェントサイトや経済産業省などの資料から、参考年収を算出します。

「マイナビエージェント 職種図鑑」でのシステムエンジニアの平均年収は431万円、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のSE・プログラマ(ソフトウェア製品の開発・実装)を参考にすると、平均年収568万円と分かりました。

国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアは一般平均年収と比較して、やや高めの年収を目指せることが分かります。

システムエンジニアを含むフリーランスエンジニアは、スキル・実績などによって年収の幅が大きく開きます。インボイス制度はフリーランスエンジニアも対象となるため、制度が実施されることで将来的な収入に不安を感じるエンジニアは多いでしょう。このようにインボイス制度自体に不安がある方は、安定した企業への転職を視野に入れることをおすすめします。

【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁

インボイス制度によってフリーランスエンジニアが受ける影響

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インボイス制度は、消費税関連の手続きを正確に行うための制度です。しかしながら、この制度によってフリーランスエンジニアが悪影響を受ける可能性があります。具体的にどういった影響を受けるのかについてみていきましょう。

適格請求書を発行しないと契約が減る可能性がある

課税売上高が1,000万未満の場合、適格証明書を発行しなければ消費税を納める必要はありません。しかしながら、適格証明書を発行しないと契約が減る可能性があります。

先程、会社は売上分の消費税から出費分の消費税を差し引いた額を納税していると解説しました。ところが取引先から受け取った請求書が適格証明書でない場合、取引先は税金を納めていないと見做されてしまうため、会社は売上分の消費税を全て納めないといけなくなります。

そのため、会社としてはなるべく、適格請求書を使ってくれる取引先に仕事を依頼したいのです。そのため、適格請求書を使っていないエンジニアは、契約を切られてしまう恐れがあります。フリーランスエンジニア間でインボイス制度が騒がれている理由は主にこちらです。

フリーランスのITエンジニアは厳しい?メリット・デメリットを解説

消費税を納める分手取り額が減ってしまう

契約を切られてしまうことを避けるために、適格証明書を発行する手もあります。適格証明書は課税売上高が1,000万円未満でも発行することが可能です。適格証明書を提出する場合、会社側はその分の消費税を納めなくて良いため契約を切られてしまうことがなくなります。

ただしこの場合、消費税を納めなくてはならず、手取り額が10%も減少してしまいます。適格証明書を発行するのが得かどうかは、その人の状況次第と言えるでしょう。

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経過措置について

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インボイス制度について、まだまだ不安に感じるエンジニアの方は多いでしょう。実は、インボイス制度は激変緩和の点より、「経過措置」と呼ばれるものが設けられています。ここでは、この経過措置について述べていきます。

6年間は仕入税額相当額の一定割合を控除できる

インボイス制度は激変緩和の観点より、6年間(令和5年10月から令和11年9月までの間)であれば、免税事業者等からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。

この経過措置による仕入税額控除を適用するには、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、この経過措置の適用を受ける旨(80%控除・50%控除の特例を受ける課税仕入れである旨)を記載した帳簿の保存が必要です。

この経過措置を適用できる期間については、以下の通りです。

・ 令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80% ・ 令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%

・令和元年10月(2019年) 【軽減税率実施】 区分記載請求書等保存方式 免税事業者からの仕入れにつき全額控除可能 控除期間:4年 ↓ ・令和5年10月(2023年) 【インボイス制度実施】 免税事業者からの仕入れにつき50%控除可能 控除期間:3年 ↓ ・令和8年10月(2026年) 免税事業者からの仕入れにつき80%控除可能 控除期間:3年 ↓ ・令和11年10月(2029年) 控除不可

【参考】:国税庁:インボイス制度の概要:Q&A 【参考】:日本税理士会連合会

インボイス制度に向けてやっておくべきこと

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インボイス制度により、売上が下がってしまうエンジニアは多くいると推測されます。そのため、エンジニアの方は今のうちにインボイス制度に向けて対策を打っておく必要があります。具体的にどういった対策を行うべきなのか見ていきましょう。

適格請求書を発行すべきか決める

まずは、現在の自分の状況を分析し適格証明書を発行すべきか決定します。たとえば、顧客から契約が切れないほど自分にしかない強みはあるかなどです。継続して発注してくれているクライアントがいる場合は、相談してみるのも良いでしょう。

適格証明書を発行する場合は、2023年3月31日までに申請しないとインボイス制度の開始に間に合わないので、早めに動くことをおすすめします。特に3月は確定申告の時期でもあり、税務署が混雑する恐れもあります。

会計作業の見直し

続いて、会計作業の見直しも行いインボイス制度に対応できるようにしておきましょう。請求書や納品書などを作成する会計ソフトが、インボイス制度に対応できるか確認する必要があります。クラウドソフトなら基本問題ありませんが、パッケージ型の場合自分で対応しないといけません。

売上アップとコスト削減方法の検討

インボイス制度が始まると売上が減ってしまう可能性があるため対策を検討しましょう。たとえば、取引先からの信頼を獲得する、人脈を増やし仕事の獲得数を増やすなどです。

他にも、仕事方法を見直したりスキルアップして他のエンジニアと差別化を図れるようにしたり、今のうちにできることはあるはずです。また、節税の方法についても調べて売上アップだけでなくコストも削減できないか考えてみましょう。

可能なら年収1,000万円を目指す

可能なら年収1,000万円を目指すのもおすすめです。1,000万円以上なら必ず消費税を納める義務があるため、インボイス制度に影響を受けることはありません。実際、インボイス制度を年収アップのための目標として日々精進する、という前向きに捉える方もいます。

しかし、上記のようにフリーランスの方でも年収1,000万円を超えるのは簡単ではありません。インボイス制度に伴い、フリーランスに限界を感じる場合は、心機一転、正社員として企業への転職も念頭に置いておきましょう。

プログラマーの年収1,000万円達成を目指す方法とは?必要スキルも解説
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インボイス制度が廃止・延期になる可能性は?

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インボイス制度はエンジニアにとって悪影響が大きいため、廃止・延期してほしいと考える方も多いでしょう。インボイス制度が廃止・延期になる可能性はあるのかまとめました。

インボイス制度廃止を求める声は多い

フリーランスや個人事業主の中にはインボイス制度に反対する人も多いです。また、各種団体からも反対意見が挙がっています。さらに、共産党や国民民主党などインボイス制度反対を訴える政党も多いです。 

基本的にはインボイス制度は決定事項

インボイス制度は決定事項であり、現時点では廃止・延期になる動きはありません。インボイス制度に関する法律はすでに審議可決されており、もし廃止・延期する場合は法律改正が必要になってしまいます。

そのため、インボイス制度は反対意見も多いものの実行される確率が高いとみて良いでしょう。廃止・延期になる可能性も0ではないですが、開始時に慌てることがないよう、基本的には実行されるものと考えて準備を行うことを推奨します。

インボイス制度や消費税について深く学べる本

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最後に、インボイス制度や消費税について深く学べる本をまとめました。フリーランスの方やこれから独立を目指す方は税金関係について理解し、適切な対応を取ることが大切です。

3訂版 Q&Aでよくわかる 消費税 インボイス対応 要点ナビ

本書は、インボイス制度について初めて勉強する方におすすめです。インボイス制度についてわかりやすくまとめられており、読みやすいように工夫されていると評価されています。国税庁の令和4年度改訂Q&Aなど、最新情報に完全対応している参考書です。

▪著者:熊王 征秀 ▪ページ数:272ページ ▪出版社:日本法令 ▪発売日:2022/07

【参考】:3訂版 改訂版 Q&Aでよくわかる 消費税 インボイス対応 要点ナビ

はじめて課税事業者になる法人・個人のための インボイス制度と消費税の実務

本書もインボイス制度・消費税について詳しく書かれています。図が多く挿入されているため、本を読むのが苦手な方でも内容を理解しやすい構成です。消費税の仕組みから始まり、インボイス制度への対応、消費税の申告方法などフリーランスが知っておきたい内容がまとめられています。

▪著者:小谷 羊太 監修、森本 耕平 著 ▪ページ数:232ページ ▪出版社:清文社 ▪発売日:2022/12/19

【参考】:はじめて課税事業者になる法人・個人のための インボイス制度と消費税の実務

インボイス制度に向けての準備は早めに行おう

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本記事では、インボイス制度についてまとめました。インボイス制度はどういったものなのか、インボイス制度によってエンジニアがどのような影響を受けるのかが分かりました。インボイス制度によって契約数が減少してしまうエンジニアは多くいると推測されます。

インボイス制度はすでに決定事項であり、2023年10月に予定通り始まると考えた方が良いでしょう。制度開始まではまだ時間はありますが、今のうちに対策を立てておき、影響をなるべく受けないようにすることが大切です。

  

今後フリーランスエンジニアを続けることが難しいと感じる場合は、正社員としてIT企業への転職も検討しましょう。インボイス制度が実施される際には、フリーランスからの転職者が増えると予想されるため、早めに転職活動に取り掛かることをおすすめします。

その際には、個人で自分のスキルや理想にあった企業を探すのはとても苦労がかかります。

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