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ITエンジニアとして知っておくべきOEMとソフトウェアの課題
OEM

ITエンジニアとして知っておくべきOEMとソフトウェアの課題

アンドエンジニア編集部
2024.01.24
この記事でわかること
OEMはソフトウェア開発においても必須の製造形態
OEMにはODMやPBといった似た形態がある
OEMソフトウェアも含めてソフトウェア開発には法的知識が必須

OEMとは

ソフトウエア

OEMという言葉を聞いたことがありますか?よく自動車などの工業製品では、OEM供給が頻繁に行われており、自社製品を相手先ブランドで販売する例が少なくありません。OEMは、元々はコンピューター関連製品を中心に1つの生産形態として生まれました。

OEMは"Original Equipment Manufacturing"から作られた略語で、日本語では「自社製品製造会社」の訳です。直訳してしまうと分かりにくいかもしれませので、「メーカーが他社ブランド製品を委託を受けて製造する」ということだと覚えておいてください。

受託側のOEMのメリット

OEMにもメリットやデメリットがありますが、ソフトウェアの世界で、受託側のOEMのメリットについて見ていきましょう。

▮ソフトウェア開発に専念できる

通常、ソフトウェアを開発すれば、必ず販売という問題に直面します。ソフトウェアにおけるOEM取引では、宣伝や販売はOEM委託先に委ねられるため、本業であるソフトウェア開発に専念できます。

▮販売増が望める

小規模のソフトウェア会社や個人の場合、自前でソフトウェアを開発しても、販売力がないため、売上を得ることができません。OEM取引によって宣伝力や販売力に優れた企業にソフトウェアを提供するため、販売数増加、売上増加を期待できます。

受託側のOEMのデメリット

OEMにもメリット・デメリットがありますが、ソフトウェアの世界での受託側におけるOEMのデメリットについて見ていきましょう。

▮自社ブランドの浸透が望めない

開発したソフトウェアが提供先ブランドとして販売されるため、自社ブランドの浸透が望めません

▮ノウハウ流出の恐れがある

ソフトウェアの開発ノウハウが他社に流出するリスクがあります。

▮価格決定権利が奪われる

売値はOEM提供先企業に決定権があり、優れた製品が安価に販売される可能性があります。

OEMの事例

iPhpone

OEMは工業製品の世界では一般化されています。以下に、日本でよく見かけるOEM製品の事例を挙げてみました。

自動車

自動車業界ではOEMが当たり前のように行われています。例えば、スズキのソリオは三菱自動車にOEM供給され、デリカD:2として販売されています。

他によく知られた車として、ダイハツのトールトヨタのルーミーとして販売されているのは有名です。

携帯電話

日本でスマホのシェアNo.1はApple社が販売するiphoneですが、実はiPhoneもOEMなのです。iPhone製造の代表的なOEM企業としてフォックスコン社(Foxconn)(台湾)があります。

フォックスコンは世界最大級のOEM系電子機器メーカーとして有名で、iPhone以外にもさまざまな企業に自社製品のOEM供給を行っています。

アパレル

アパレル業界はほとんどがOEMと言っても過言ではありません。代表的な例としては、株式会社小島衣料というアパレル製造メーカーがありますが、ワールド・オンワード樫山・三陽商会といった大手アパレルメーカーの製造を担っています。

他に、マツオカコーポレーションユニクロ(ファーストリテイリング社)の商品を多く製造しています。

ソフトウェア

ソフトウェアの世界では、OEMはさほど多くは見受けられませんが、セールスフォース・ドットコムの例をご紹介しましょう。

セールスフォース・ドットコムは2009年に、ソフトウェアの各メーカーが「Force.com」を利用して自社ブランドのソフトウェアサービスの開発を可能とする「OEMパートナー・プログラム」の提供を開始しました。富士通、NECなどがOEMパートナーとして名を連ねています

OEMの類似形態

ODM

OEMについては理解されたと思いますが、実はOEMとよく似た方式が他にもありますのでご紹介しておきます。

ODM

ODMは"Original Design Manufacturing"の略で、委託者のブランドで製品の設計と生産を行う手法です。OEMが生産委託であるのに対し、ODMは設計まで行いますので、OEMよりもカバー範囲が広いのが特徴です。

PB

PBは"Private Brand"の略語で、自主企画商品のことです。主に小売業など流通事業者が独自商品を企画し、メーカーに製造を委託する方式を指します。

有名なPBとしては、イオンのトップバリュなどがあります。委託生産という点ではOEMと似ていますが、OEMはあくまでもメーカーが別のメーカーに生産委託するのに対して、PBは流通業がメーカーに生産委託するという点が大きく異なります。

ODMとは?他の生産方式も合わせて分かりやすく解説!
ODMとOEMの違いとは?メリットとデメリットをわかりやすく解説

ソフトウェアのOEM

OEM版

続いて、ソフトウェアのOEMについて見ていきましょう。

OEM版

エンジニアの皆さんは「OEM版」という語句を何度か目にしたことがあると思います。パソコンにバンドルされてくるソフトをOEM版と称します。

代表的なのものとしては、Windowsがあります。最近のパソコンはほとんどがWindowsがプレインストールされていますが、これがOEM版です。

単体で販売されているWindowsは「パッケージ版」と呼びます。他に自作PCキットなどとセットで販売されているDSP版というのがありますが、ここでは説明を割愛します。

OEMライセンス違反

WindowsなどMicrosoft製品のOEM版は、その製品がインストールされているパソコンでのみ使用できるライセンスで、OEM製品を転売することは禁じられています。また、他のパソコンにインストールして使用することもライセンス違反です。

これに違反すると、Microsoft社から損害賠償請求をされます。簡単にはバレないだろうと思いがちですが、Microsoft社は企業ごとの購入ライセンス数を調査しており、従業員数とライセンス数が著しく違うような違反はすぐに分かります。

Microsoftのライセンス管理は非常にしっかりしていますので、エンジニアの皆さんは間違ってもライセンス違反をしないよう気を付けてください。

ITエンジニアは法的知識が必要

法律

法律なんて、ITエンジニアとは無縁の話だと思っている方はいませんか?大きな企業では法務部門があり、基本的な法的問題の解決やチェックはしてくれますが、それでも法務部門の人員には限りがありますので、法務部門への丸投げはできません。

一方、IT分野にも関係法令が少なからずあり、それらの基本知識を持っておかないと、法的問題に直面する可能性があります。ITエンジニアの皆さんは日ごろから最低限、関係する法律は知っておきましょう。

その理由

ITエンジニアは独立するケースが他の職種と比べて多い傾向があります。サラリーマンエンジニアを辞めてフリーランスとして活躍する人もいれば、起業する人もいます。

ソフトウェア開発の受託をするケースもあり、自社のソフトウェアをOEM提供して大手ベンダーに販売してもらうケースもあるでしょう。このいずれも、納品物に対する何らかの法的責任を負います。

また、一般企業に勤めていても、ITエンジニアがシステム営業を担当する場合は契約行為に関わるため、法的知識が必須です。

ITエンジニアは普段からITに関わる法律についてはある程度の知識を持っておくことをおすすめします

ソフトウェアに関わる法律

ITエンジニアの皆さんがよく知る法律としては、個人情報保護法があります。個人情報の漏洩は大問題だという認識をお持ちだと思いますので、こうした法律に関する説明は今回は割愛いたします。ここでは主に、ソフトウェア開発にかかわる法律(民法)について解説します。

▮瑕疵担保責任(契約不適合担保責任) この言葉はITエンジニアの皆さんはよく耳にされていると思います。受注したソフトウェアが納品後にエラーや不具合が発生した場合、法的な問題が生じます。民法では、これらの欠陥のことを瑕疵(かし=きずのこと)と規定していました。

瑕疵とは、契約時に予定していた品質や性能を欠いた状態をいいます。瑕疵担保責任とは、納品されたソフトウェアに瑕疵が発見された場合は、ソフトウェアを制作した者がその修正をする責任を負うこということです。ただし、期間は「納品されてから1年以内」でした。

この民法の「瑕疵担保責任」は2017年の民法改正で、「契約不適合担保責任」という名称に変更されています。また旧法では「納品されてから1年以内」だった責任が、改正法では「知った時から1年以内」に変わっています。

つまり、例えば納品後3年経過した時点でクライアントが瑕疵に気付いた場合、それに対する補償(ソフトウェアの改修、ソフトウェア費用の減額など)を求めることが可能だということです。この「契約不適合担保責任」の時効は納品から5年ですので、十分注意しておく必要があります。

▮請負契約 ベンダーはソフトウェアの開発を受託する場合、請負契約で受けるケースが多いでしょう。

請負契約はシステム開発の場合、基本的にはクライアントからの要望にもとづき、ベンダーの裁量でシステムの開発を行う契約のことです。

請け負ったシステムを開発し、検収を受けて納品しない限り、報酬を受け取ることはできません。(場合によっては、前金という形で報酬の一部を受け取るケースはあります)

▮準委任契約 準委任契約は、システム開発において、ベンダーがクライアントからの依頼に基いて、開発要員の派遣などを行う契約のことです。開発責任はクライアント側にあり、ベンダー側はシステム開発工数、労働時間などで対価を受け取ります。

請負契約は納品システムに対して完成の義務を負い、納品したシステムに瑕疵が発見された場合には「契約不適合担保責任」が問われますが、準委任契約では「契約不適合担保責任」を問われることはありません

ソフトウェアのOEM契約にも注意

以上、瑕疵担保責任(契約不適合担保責任)と請負契約、準委任契約などソフトウェア開発に関わる法律について解説しましたが、最後にソフトウェアのOEM契約について触れておきましょう。

ベンダーが大手ソフトウェアメーカーからの委託を受けて、自社ソフトをOEM契約で提供するケースは少なからずあるでしょう。

この場合、ソフトウェアの納品検収方法・カスタマイズの有無・分担・著作権・所有権・契約不適合担保責任など、契約で取り交わすべきことが多々あります。

今後、ITエンジニアの皆さんが独立したり、契約担当となったりした時にこうした契約に携わる可能性がありますので、是非今から法律にも興味を持つことをおすすめします。

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