エッジコンピューティングとは?
この数年でIoT(Internet of Things)により、全てのモノがインターネット網に接続され情報共有が加速しています。従来のIoT機器は、そのデータ全てをインターネット網のクラウドデータセンターに格納する形式が主流となっていました。しかし、利用用途によってはIoT機器により近いエリアごとに情報を格納し計算や表示・制御を行う必要が出てきました。そのための接続形態をエッジコンピューティングと言います。
IoTとエッジコンピューティングの関係は?
IoTの接続の形態として、エッジ側すなわちデータ収集IoT機器側に、コンピューティングサーバーおよび格納ストレージを配置します。その接続形態をエッジコンピューティングと言います。わかりやすく言うと、エッジコンピューティングとはIoTの配置・接続アーキテクチャの一種を指します。
分散コンピューティングとは?
データの格納や保存を集約する形態を集中型システムと言います。同様に、データの格納や保存を分散する形態を分散型システムと言います。エッジコンピューティングでは各IoTエッジデバイスを一定のグループに分散して集約しますので、分散コンピューティングの形態を取っています。
IoTゲートウェイとは?エッジコンピューティングとの違いは?
各センサーは、アナログデータや入力形式が多種多様のため個別に取込み方法が設定されています。各センサー群からデータを収集してまとめてITで認知できるデータに変換する方式を、IoTゲートウェイと言いデータ変換機能を持ったIoT機器と言えるでしょう。IoTゲートウェイでは省電力プロセッサが搭載されているだけですから、エッジコンピューティングの特徴である高速演算やデータ保存の機能を持っていません。
IoTで見えてきた課題とは?
2017年頃よりIoTのフレームワーク化が盛んになっています。ここでいうフレームワークとは、異なるIoT機器の送受信の形式を定義し相互利用を促進するものです。そのために実証実験(PoC)が進められています。その実証実験では概ね3点の重要な課題が出てきています。
1つ目は通信コストの高さです。IoTではインターネットでデータを共有するために、常時接続の形式をとります。そのため、無通信の状態でも通信契約に基づいた一定の費用が発生してしまいます。
2つ目は通信のレイテンシ(遅れ時間)の問題です。IoT機器に何らかの応答をする場合、所定のレスポンス時間に応答が必要とされます。特にクラウドシステムにデータを格納する場合は、その遅れはSLAとして保証されないこともあります。
3つめはセキュリティの問題です。IoT機器から生成されるデータによっては生産管理データや、機密性の高い情報が含まれます。そのため自社固有の情報となる機密情報は、インターネット網を通した通信にによるセキュリティリスクが発生します。
エッジ IoTサーバーとは?
エッジIoTサーバーは、エッジコンピューティングを支えるサーバーでエッジサーバーとも言います。IoTエッジ機器をグルーピングして設置し、直接IoTの全データをクラウドシステムに送るのではなく、エッジIoTサーバーがデータを格納・計算処理します。この形式をエッジコンピューティングと言います。
エッジコンピューティングのメリットは?
エッジコンピューティングのメリットは、先ほどの3つの課題に対処可能なことです。具体的には、エッジIoTサーバーでデータを集約することにより、クラウドシステムに送信が必要な最低限の共有データのみをインターネットに送るので、通信費用が圧縮できます。また、IoT機器に必要なレスポンスをエッジIoTサーバーで行いレイテンシの保証が可能になります。同様に、不用意に機密データを送信することがありませんのでセキュリティが強化されます。加えて、IoT機器管理やデータ保全も一括して対応可能なので、運用コストが低減できるでしょう。
エッジコンピューティングのデメリットは?
デメリットとしては、インテリジェントなサーバーをIoT機器に近いところに複数台設置するので、全体の初期コストが増加することが挙げられます。とはいえ、最終的な運用コストは低減できるので適正な配置を検討することで対処が可能です。
エッジコンピューティングの活用例は?
エッジコンピューティングの活用のケースはどんどん増えてきています。同様に、活用例が公表されることでさらにその適応が拡大しています。5Gによる高速・広帯域網が整備されると、さらに適応領域が広がると考えられます。ここでは具体的な活用例を見ていきましょう。
自動運転での活用例
乗用車のコネクテッドカー構想は、5G通信網を活用したエッジコンピューティングの例です。自動運転をするためには膨大な制御情報がセンサー群から取込まれます。そのデータを車載コンピュータに格納。車載コンピュータは自動運転の制御にも用いられますが、稼働データとして基地局を通じて監視システムへ送られます。
農業分野での活用例
農業では人手不足もあり、IoTの活用が期待されています。広大な土地での農作物の栽培は従来人手による目視と作業が中心でした。現在は、IoTによる温度管理およびドローンによる生育監視や農薬散布の適正化等にIoTが活用されつつあります。エッジコンピューティングにより、気象データや生育画像をAI分析することで、必要最低限の作業で収穫を最大化させることが実証実験されています。今後その成果が実際の農作業に活用されていくでしょう。
生産管理での活用例
生産管理では生産システムから膨大な時系列データが送信されます。そのデータは品質の統計データとなりますので、自社のノウハウを含む機密性が高いものです。したがって情報流出のリスク回避のため、各機器を取りまとめてエッジIoTサーバーがデータを一括して取り込み格納・集計することが増えています。また、近年生産品・加工品を画像として取り込み、AI分析し品質を評価するケースが増えてきています。その場合もエッジIoTサーバーにより画像パターンを分析するのが効率的な手法です。
無人店舗での活用例
コンビニや店舗の無人化の実験が進んでおり、すでに商用利用もされてきています。店舗内では、RFID(無線タグ)に加えてスマートフォンと連携した情報通信と監視カメラによる人物特定と、買い物手続きに活用されています。データ収集に関しては、買い物のストレスを低減するために通信のレイテンシを最小にする必要があり、店舗ごとにエッジIoTサーバが稼働し運用を支えています。
エッジコンピューティングの今後の適用領域は?
エッジコンピューティングは高速データ処理が可能であるため、異常検知やよりリアルタイム性の高いレスポンス時間でのフィードバック処理等にさらに活用の場が広がるでしょう。また、時系列データの格納により統計処理やAI分析への活用がより進んでいくでしょう。
特にエッジコンピューティングは、高速演算に加えて画像処理エンジンを搭載できる点に特徴を持っています。そのため、静止画によるアプリケーションから動画あるいは3次元画像によるアプリケーションに利用範囲が拡大しています。さらに、製造製品の状態をより詳細に分析することや、画像診断による品質検査が可能となっています。同様に、橋梁やトンネルの老朽化検査のための音響・画像テストや、防犯システムによる不審者検知や追跡も可能になってきています。以上のことから、エッジコンピューティングの適用領域は一層拡大していくと想定できるでしょう。
エッジコンピューティングの考え方を理解しIoTの活用を進めていきましょう
IoTは、5Gによる高速・広帯域網を用いて遠隔操作や遠隔監視での活用が進んでいきます。エッジコンピューティングにより効果的なIoT機器の活用やデータ蓄積がより期待されています。我々の生活を支えるシステムへの採用例が増えており、今後も拡大していくでしょう。ぜひエッジコンピューティングを利用した設計・開発・構築のスキルを高めて実際の場で活用していきましょう。
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