テストエンジニアはきつい?
一般的に、テストエンジニアは「単体テスト」から「システム移行」までのテスト工程を担当することが多い職種です。システム開発には欠かせない重要なポジションであるテストエンジニアは、専ら「きつい」と言われてしまいます。
テストエンジニアは比較的求人件数の多い職種ですが、やりがいや楽しいと感じられることはないのでしょうか。この記事では、テストエンジニアとは何か、テストエンジニアが「きつい」と言われる理由や向いている人について解説します。
テストエンジニアの需要は高い
テストエンジニアはきつい部分のある職種ですが、システム開発時には必ず必要な工程であるため、需要は尽きません。テスト自動化ツールを用いることで人の手を使わず、テストを自動化することも最近のトレンドなので、今後はその知識やスキルを身に付けることが重要です。
テストエンジニアのメリットは、バグの修正やトラブル対処方法を身に付けられることです。実績や経験を積むことで、システム開発のために必要な知識やスキルを得ることができ、システムエンジニアなどへのキャリアアップも目指せます。
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そもそもテストエンジニアとは
テストエンジニアは、品質の保証やテスト工程に関わります。具体的には、テスト計画書の作成・テストの実施・結果の分析などを担当し、中でもテスト工程は未経験や新人などの若手であるエンジニアが担当することが多いです。
最近では、セキュリティの重要性の高まりによって、テスト工程に関してもテストに関する深い知識やスキルをもつエンジニアを求める傾向があります。しかし、テストエンジニアとして単独で採用する企業はまだまだ少ないのが現状です。
テストエンジニアの年収
テストエンジニアの年収についてですが、「マイナビエージェント 職種図鑑」での「品質管理/QA/QC」の平均年収は526万円(※2023年2月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種の(顧客サポート/ヘルプデスク)を参考にすると、平均年収390万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、テストエンジニアは一般平均年収よりも、やや高めであることが分かります。
テスト設計ができるようになったら、システムの要件定義や設計などの上流工程を担当するシステムエンジニアへの転職を考えてみてもいいかもしれません。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2015年から2016年の間でマイナビエージェントに登録いただいた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
システム開発の流れ
そもそもシステム開発はどのように行っていくのでしょうか。ここでは、システム開発の流れについて紹介しましょう。
システム開発の工程の手法
システム開発は決まった手順通りに進めていきます。例えるなら、料理のレシピの過程と似ています。システム開発にはさまざまな種類の開発手法がありますが、ここでは代表的な「ウォーターフォールモデル」を紹介します。
・ウォーターフォールモデル ウォーターフォールモデルは、要件定義・設計などの上流工程から、保守・運用などの下流工程へ、順を追って行われていきます。例えば、プログラミング工程が完了していない場合は、それより下流にあたるテスト工程を行うことはありません。
スケジュール管理がしやすいため、SIer企業が行うような大規模なシステム開発に適している手法と言えるでしょう。一方、前工程でのミスが後工程で発覚した場合は、手戻りが発生し、コストが多くかかってしまうので注意が必要です。
システム開発の各工程の紹介
ここでは、システム開発の各工程について紹介します。一般的に、システム開発の工程は、「要件定義→外部設計→内部設計→プログラミング(構築)→単体テスト→結合テスト→システムテスト→運用テスト→システム移行」のような流れをたどります。
なお、開発対象が「インフラ」か「アプリ」か、あるいはプログラミングを担当するかしないか等により、工程は多少変化します。今回は「アプリのシステム開発」を元に紹介します。
・要件定義 要件定義は、顧客が求めるシステムについてヒアリングを行い、必要な機能や要件をまとめる工程です。プロジェクトが進んでいくとともに要件定義の工程に手戻りすることも多く、目的を明確にする必要があります。プロジェクトがうまくいくか否かはこの要件定義で決まると言っていいほどに重要な工程です。
・外部設計 外部設計では、要件定義書を参考に、開発するシステムの実際の仕様を設計していきます。ユーザーの使いやすさ(ユーザビリティー)に大きな影響を与えるため、利用しやすいシステムを開発するために重要な工程です。
・内部設計 内部設計では、外部設計でシステムの仕様を決めたあとの、システムの中身であるプログラミング部分の詳細な設計が行われます。外部設計はユーザー側よりの視点、内部設計は開発者側よりの視点で設計するという違いがあります。
・プログラミング(構築) プログラミングでは、内部設計の工程で作成された設計書の通りに、プログラマーがコーディングを行います。プログラマーは、設計に疑問を感じた場合、設計書を担当した人、テスト工程を担当する人、またインフラエンジニアの人とも積極的にコミュニケーションを行うことが重要とされています。
・単体テスト 単体テストでは、プログラミングの対象単位と言われるモジュールごとにテストを行います。単純作業になりがちなこともあり、効率が求められる工程でもあります。システム開発においてリスクが低く、業務の勉強に適する工程でもあるため、新人に任されやすい業務でもあるでしょう。
・結合テスト 結合テストでは、複数のモジュールを組み合わせ、正しく機能しているか検証します。結合テストでは、テスト項目の洗い出しが難しい部分があり、単体テスト以上に、スキルが求められるでしょう。
・システムテスト システムテストでは、プログラミングし、結合テストまで完了したプログラムが、要件定義通りに正常に稼働するかを検証する工程です。性能性や機能性や拡張性などのテストを行います。
・運用テスト 運用テストでは、実際に運用する顧客先の環境を準備し、開発したシステムに不具合が生じないかを検証します。これまで紹介したテスト工程と比較すると、実用性に関して検証するようなテストです。
・システム移行 システム移行は、現行のシステムから開発した新しいシステムへ切り替える工程です。プロジェクトリーダーなどは、成功するかどうか緊張する場面でもあります。
・保守・運用 保守・運用では、システムが問題なく運用しているか監視を行います。さらに、より良いシステムに改善するために、プログラムの修正も担います。急を要する障害対応や、夜勤を行うことも多く「きつい」仕事と言われることも多い工程です。
テストエンジニアが「きつい」と言われる3つの理由
テストエンジニアは「きつい」「つまらない」と言われることが多いです。ここからはその理由について3つ紹介します。
残業が多い
テスト工程は下流工程であり、上流工程で発生した問題による進捗の遅れや、納期が近いことから短期間で間に合わせる必要があります。そのため、1日に行う業務量が多くなり、残業を強いられることも多いです。
IT業界の人材不足も原因の1つとして言えるかもしれませんが、昨今では働き改革によって残業の多さは改善されつつあります。
単純作業の繰り返し
テストエンジニアは、特に単体テストなどでは1つのモジュールが正常に稼働するかどうか、マニュアル通りに単純作業を繰り返すことが多いです。そのため、途中で集中力を切らしてしまうと、システムのエラーを見逃してしまう可能性もあります。自分の頭で考えて行動したい人にはつまらないと感じるかもしれません。
しかし、将来的にSEなどにキャリアアップする際には、このテスト作業の経験が活きてくるため、スキルアップの一貫だと捉えて従事しましょう。
トラブルが多い
テストエンジニアの業務の目的は、開発したシステムのバグやエラーを見つけることであるため、不具合対応が多くなります。不具合が発生すると納期に間に合わない可能性が生じ、残業・休日出勤になることも多いでしょう。この不具合対応に慣れてくると、トラブル対応能力がアップし、制作工程短縮に貢献できます。
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テストエンジニアに向いている人
上記でテストエンジニアがきついと言われるポイントを紹介しましたが、ではどのような人がテストエンジニアに向いているのでしょうか。
裏技やバグを探すのが好きな人
テストエンジニアはバグやエラーを見つけて報告することが仕事です。単純作業である裏技・バグ探しが好きな人はこの仕事が「楽しい」と思えるでしょう。また、自分が見つけたバグやエラーが改善されてシステム開発において大きく貢献できた場合は、やりがいをとても感じられるはずです。
細かいところに気付ける人
テストエンジニアはエラーを発見するために、細かいところに気付ける人が向いています。細かく丁寧にプロダクトを見ることができる人は重宝されます。
努力を惜しまない人
テストエンジニアは未経験者や新人が担うことが多いですが、業務をこなして昇進していくには常に勉強や努力が必要です。
製品の仕様や仕組みを理解するだけでなく、IT知識・ハードウェア・セキュリティ関連などプロジェクトに付随する知識が必要とされるため、勉強のための努力を惜しまない人がテストエンジニアに向いています。
テストエンジニアに必要な3つのスキル
以下に、テストエンジニアとして活躍するために必要なスキルを3つ紹介します。
課題発見スキル
テストエンジニアの業務内容は地道で単純作業が多く、効率を上げるためにも集中力が必要です。さらに、不具合を見つけるための「課題発見スキル」も重視されます。課題発見スキルとはその名の通り、テストを実施している際にどこにシステムの欠陥があるか見極めるスキルです。
たった1つの不具合でもシステムの大きな欠陥につながる可能性があり、不具合を見逃さないためにも集中力はもちろん、課題発見スキルを身に付けるためには日々業務をこなしながら勉強することでスキルを磨いていけるでしょう。
テスト自動化ツールを扱うスキル
最近のトレンドとして、膨大な量のテストを行う際に自動化ツールを使うことが増えています。テスト自動化ツールを使用することでコストと時間の削減が可能です。そのため、テスト自動化ツールを扱うスキルを身に付けることで業務を効率よく行え、周囲から重宝される人材となれるでしょう。
テスト自動化ツールはいくつかありますが、その中の1つをご紹介します。Apacheソフトウェア財団により開発された「Apache JMeter」は、サーバの負荷や機能についてのテストを行えます。利用できる機能の数が多く、汎用性も高いため、WebアプリケーションやWebサーバの性能測定に利用されることが多いです。
コミュニケーション能力
テストエンジニアの業務の目的は、システムのバグやエラーを見つけることです。不具合が発生した際は、正確かつ簡潔にプログラミング担当者や設計者に報告しなければなりません。この時に必要なのが、正確に不具合の現状を人に伝える能力、すなわちコミュニケーション能力です。
キャリアアップや業務に役立つ資格
ここでは、テストエンジニアに役立つ「JSTQB認定テスト技術者資格」と、今後のキャリアアップにもおすすめな「基本情報技術者試験」について紹介します。
JSTQB 認定テスト技術者資格
日本ソフトウェアテスト資格認定委員会が実施する、JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)は、国際的な資格認定のISTQBと相互認証を行っており、海外活動においても有効な資格です。
この資格は基礎・上級・エキスパートの3つのレベルに分けられ、ソフトウェアテストの評価スキルを客観的に証明できます。テストエンジニアを目指す方は、ぜひ取得しておきたい資格の1つです。
【参考】:JSTQB認定テスト技術者資格
またその他にも、日本科学技術連盟が主催する、ソフトウェアの品質を向上させる技術が試される「ソフトウェア品質技術者資格」もおすすめです。試験は初級と中級に分けられ、中級は記述問題によって難易度が上がるため、まずは初級からチャレンジしましょう。
【参考】:ソフトウェア品質技術者資格
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験とは、IPAが主催する国家試験の1つであり、基礎的なITの知識やスキルを証明する資格です。合格率はおよそ25%前後とやや難易度が高めに感じますが、学習においてITエンジニアに必要な基礎知識を広範囲に得られます。
また、就職や転職では汎用性の高い資格であるため、上位職へのキャリアアップを目指す方にもおすすめです。
この試験ではITの基礎知識以外に、プログラミングの知識も求められるため、実務でソースプログラムを解析することがあるテストエンジニアにとっては、非常に実務的な資格とも言えます。
【参考】:基本情報技術者試験(FE)
テストエンジニアの将来性
テストエンジニアは将来性が不安視されやすい職種ですが、本当にそうなのでしょうか。確かに人によっては「きつい」と感じる場面がありますが、システム開発においてはテスト工程を担当し、リリース前の最終確認を担当する非常に重要な職種であることには間違いありません。
キャリアプランについては、テストエンジニアで身に付けた知識・経験を元に、システムの要件定義や設計などの上流工程を担当するSEへの転職を目指していくパターンも多いでしょう。そのため、テストエンジニアはキャリアアップが期待できる職種として将来性が高いと言えます。
また、テストエンジニアを求めるのは大手企業が多い傾向にあり、将来的に大手での昇進が見込まれることもメリットの1つです。
テストエンジニアからのキャリアアップが大切!
テストエンジニアは「きつい」と言われますが、需要は尽きない職種です。また、さまざまなシステム開発の知識を身に付けるのに絶好の機会です。ステップアップの一環として捉えると、将来的にキャリアアップが望みやすい特徴もあります。
テストエンジニアとして活躍するなら、最近のトレンドであるテスト自動化ツールの知識・スキルを身に付け、年収アップにはシステムの要件定義や設計などの上流工程を担当できるSEを目指すのもおすすめです。
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