DaaSとは?
DaaS(読み方:ダース)は「Desktop as a Service」の略称で、わかりやすく言うと、クラウド上で仮想デスクトップ環境を提供するサービスのことです。テレワークに多く利用されており、注目を浴びています。
DaaSでは、利用者はインターネット回線などを通じて、クラウド上に構築されたデスクトップ環境にアクセスし、リモートで作業を行うことができます。
このサービスは、これまでの物理的なデスクトップや自社内で運用するVDI「仮想デスクトップ」とは異なり、クラウドベースで提供されることから、柔軟性が高く、スケーラビリティに優れています。
この記事では、DaaSとは何か、概要やメリット・デメリット、活用シーンなどを紹介します。DaaSとVDIの選択で迷っている方、仮想デスクトップに興味がある方はぜひ参考にしてください。
【参考】:AWS を使った働き方改革 : 第 1 回 - 仮想デスクトップで情報漏えいを防ぎ、リモートワークを推進 | AWS 【参考】:仮想プライベート サーバー(DaaS)とは | Google Cloud
DaaSの特徴
DaaSはどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。主な特徴としては以下の4つが挙げられます。
■ アクセスする場所を選ばない インターネットに接続できる環境であれば、オフィスや自宅、カフェなど場所を問わず、どこからでもアクセスが可能です。
■ 利用する端末を選ばない DaaSはパソコンやタブレット、スマートフォンなど、ほとんどの端末からアクセスすることが可能ですので、利用する端末を選ばない点が特徴として挙げられます。
■ 初期投資を抑えられる DaaSを利用する際には、新たにサーバ機器や専用ソフトウェアなどの購入が必要ありませんので、初期投資を大幅に削減することができます。
■ 運用管理が容易 DaaSはクラウドベースのサービスであるため、ソフトウェアのアップデートやセキュリティパッチの適用など、手間のかかる管理作業を容易に行える点も特徴として挙げられます。
DaaSのメリット
DaaSを利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?DaaSのメリットとしては、以下のように、コスト削減、情報漏洩リスクの低さ、業務効率の向上、スケーラビリティなどが挙げられます。
■ コスト削減 DaaSはクラウドサービスのため、初期費用や保守費用を抑えることができ、さらに必要に応じてリソースを柔軟に追加することができます。
■ 情報漏えいリスクが低い DaaSでは扱うデータがクラウド上で保護されるため、端末を紛失した場合でも情報漏洩リスクが低いメリットがあります。
■ 業務効率の向上 DaaSは時間や場所を問わず、どこからでもアクセスが可能なため、フレキシブルな働き方に対応できるため、業務の効率化に役立ちます。
■ スケーラビリティ DaaSは企業の成長やデータ量の増加に応じて、容易にスケールアップやスケールダウンを行うことが可能で、スケーラビリティに優れています。
DaaSのデメリット
様々なメリットが期待できるDaaSですが、デメリットも存在します。デメリットの回避策、軽減策を講じた上で導入を進めることをおすすめします。想定されるデメリットは以下の通りです。
■ 利用者の増加によるレスポンス低下 DaaSでは導入当初は快適なアクセスが得られても、利用者の増加に伴ってネットワーク負荷が高まり、回線が不安定になったり、遅延が起きたりします。ピーク時を想定した帯域幅や拡張性のあるネットワークを選定することが重要です。
■ ベンダー任せのトラブル対応 DaaSはクラウド環境に置かれるため、サーバやネットワークなどの障害対応はすべてベンダー依存となります。そのため、稼働率が高く、迅速な障害対応が行えるベンダー選定が求められます。
■ 自社のセキュリティポリシーに合わない コスト優先でパブリッククラウド上にDaaS環境を設置すると、セキュリティレベルが自社のポリシーに合わなくなる場合があります。自社のセキュリティポリシーとの兼ね合いで、プライベートクラウドを選択する必要が生じることがありますので、注意が必要です。
VDIとの違い
多くの企業でテレワークが一般化し、様々な方法によるリモートアクセスが行われています。中でも、よく利用されているのが「VDI」です。また、「VDI」と混同されがちなリモートアクセス方法として「DaaS」があります。
いずれもシンクライアント※技術を用いた仮想デスクトップ環境である点は共通していますが、大きく異なる点がいくつかあります。では、初めに「VDI」について詳しく見ていきましょう。
(※シンクライアントは、端末側にはデータやアプリケーションを置かずに、サーバ側でほとんどの処理を行う仕組みのことです。)
VDIとは
VDIとは仮想デスクトップのことであり、正式名称は「Virtual Desktop Infrastructure」です。最大の特徴は、OSやアプリケーションといったデスクトップ環境をサーバ側で再現している点にあります。
つまり、端末側は人とのやり取りを担当するだけのインターフェースだけで、端末側にはデータも残さないため、セキュリティ面で優れています。では、DaaSとは何が違うのでしょうか?
DaaSとVDIの違い
ここではVDIとDaaSの違いについて、比較しながら明らかにしていきます。
■ 導入方法 DaaSは導入にクラウドサービスを利用しますが、VDIはオンプレミスで自社のサーバ上に仮想環境を構築します。
■ 掛かるコスト DaaSはクラウドサービスを利用するため、初期費用がほとんど掛かりませんが、VDIは自社サーバ上に構築するため、サーバやミドルウェア、OSなど初期費用が高額になります。
■ 運用管理 DaaSでは基本的にクラウドサービス提供側が運用・監視を行いますが、VDIでは自社で運用管理を行う必要があります。
■ スケーラビリティ DaaSはクラウドサービスのため、データ量の増加などへの対応はクラウドサービス側で行います。VDIでは自社環境のため、データ量の増加や、接続端末の増加などへの対応は自社で行う必要があります。
■ セキュリティ DaaSはセキュリティグループによる通信制御やファイアウォール、常時監視など様々なセキュリティが標準で準備されていますが、VDIではこれらのセキュリティを自社で用意する必要があります。
【参考】:クラウドセキュリティ | AWS
DaaSとVDIのどちらを選ぶか
両者の違いを単純に比較すると、DaaSが優れているように見えますが、どちらを選択するかは、企業のセキュリティポリシー、オンプレミスの環境、信頼性や効率面での視点で総合的に判断する必要があります。
既に自社のセキュリティポリシーに基づいて、堅牢なセキュリティ環境が構築されており、費用よりは信頼性に重きを置く場合であれば、VDIという選択が望ましいかもしれません。一方、クラウド利用が定着している企業では、DaaSは自然な選択と言えるでしょう。
DaaSの利用シーン
DaaSはすでに様々なシーンで活用されています。では、具体的にどのようなシーンを想定すると良いのでしょうか?ここではDaaSの代表的な利用シーンを挙げて紹介していきます。
テレワークへの対応
DaaSは端末側の場所を選ばないという特性から、リモートワークや在宅勤務で着目されており、実際にDaaSの活用が増加しています。普及やリモートワークの増加に伴い、非常に注目されています。従業員がどこからでもアクセスできることで、柔軟な働き方をサポートします。
【参考】:テレワークが産業に与える影響;事業継続に強い力を発揮|その他の研究・分析レポート|経済産業省
臨時のデスクトップ環境として
システム開発プロジェクトなどのプロジェクト作業、採用活動などの期間限定業務など、デスクトップ環境が一時的に必要になるケースでは、DaaSは非常に有効な解決策となります。
初期投資が不要で、短時間で利用環境を用意できることもあり、コスト面やスピード、業務効率などでメリットが期待できます。
端末の入れ替え対応に利用
パソコンなどの端末は耐用年数の関係から、定期的に入れ替えが必要となりますが、その際にOSのインストール、アプリケーションの入れ替え、データ移行など大きな負荷を伴います。
その点、DaaSを利用すると全ての環境がクラウド上にあるため、端末入れ替えや故障対応などでほとんど手間を掛けずに対応できます。
DaaS導入で注意すべきこと
DaaSの概要やメリット、VDIとの違い、利用シーンについて理解できたところで、ここではDaaSを導入する場合に注意しておきたい点について紹介していきます。
セキュリティ
DaaSではデータはクラウド上で扱うため、サイバー攻撃の標的になる可能性があり、万全のセキュリティ対策を施す必要があります。
基本的なクラウドセキュリティは保たれますが、個人情報や企業機密に属するデータの取り扱いには万全を期すために、データの暗号化やアクセス権限の管理などに配慮しなければなりません。
ネットワーク
DaaSはすべてインターネット接続によって利用するため、安定したネットワーク品質が求められます。
クラウド接続ではネットワークもオープンネットワークからインターネットVPN、IP-VPN、専用線などさまざまな回線の選択ができますので、品質要件やトラフィック量の見積もりをしっかり行い、最適なネットワークを選択しましょう。
コスト
DaaSは基本的に初期費用がほとんど掛かりませんが、利用に応じた運用コストが発生します。運用コストを見積もり、予算化を忘れないようにしておくことが重要です。また、予算化にあたっては、事業の拡大に伴うデータ量増加や人員増を考慮しておくことが求められます。
DaaSを活用して業務改善を
ここまで、DaaSの概要や特徴、メリットやデメリット、DaaSとVDIの違い、DaaSの活用シーンなどについて解説してきました。
DaaSはVDIとクラウドサービスを融合した新たなサービスであり、それぞれの良い面を多く持ち合わせていますが、要件によってはデメリットが生じるケースもあります。また、今後DaaSは個人向けサービスや、管理者を置けない中小企業などにも広がっていく可能性があります。
コストとセキュリティ、パフォーマンスなど様々な視点からデザインして、最適なDaaSを導入し、サービス改善や業務改善に活かしていきましょう。
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