AWS Elastic Beanstalkとは?
クラウドサービスで知られるAWSには200近いサービスがありますが、Elastic Beanstalkはその内の1つで、クラウドでアプリケーションを簡単にデプロイしたり、実行したりできる環境を提供するサービスです。
AWS Elastic Beanstalkはわかりやすく言えば、開発者がアプリケーションの開発に集中できるようにするためのサービスです。具体的には、典型的なWeb環境や非同期型のワーカー環境を構築したり、リリースから運用までのプロセスを自動化したりできます。
この記事では、AWS Elastic Beanstalkの概要、仕組み、デプロイメントのオプション、メリットとデメリット、活用方法などについて解説します。AWSを初めて利用する方、利用を予定している方はぜひ参考にしてください。
【参考】:AWS Elastic Beanstalk とは?|AWS Elastic Beanstalk
AWS Elastic Beanstalkの特徴とデプロイオプション
AWS Elastic Beanstalkの読み方は「ビーン・ストーク」です。Elastic Beanstalkは、AWS上でWebアプリケーションを最速で立ち上げられるサービスです。
アプリケーションのコードをアップロードするだけで、リソースのプロビジョニング、ロードバランシング、オートスケーリング、モニタリングなどの細かい作業はサービスが自動的に処理してくれます。
AWSのサービスではEC2がよく知られていますが、Elastic Beanstalkがアプリケーションのデプロイに特化しているのに対し、EC2は仮想マシン環境(EC2インスタンス)の提供をメインに、自由度が高いサービスである点が大きな違いです。
ここでは特徴とデプロイオプションについて見ていきましょう。
【参考】:Amazon EC2|AWS
特徴
AWS Elastic Beanstalkにはさまざまな特徴がありますが、ここでは6つの特徴について1つずつ解説します。
【参考】:特徴 - AWS Elastic Beanstalk | AWS
■ 1.多彩なアプリケーションプラットフォーム Elastic Beanstalkは、人気のある多数の言語やフレームワークで作成されたウェブアプリケーションをサポートしています。Java、.NET、Node.js、PHP、Ruby、Python、Go、Dockerなど、開発者が選択したプラットフォームでアプリケーションをデプロイできます。
■ 2.アプリケーションデプロイの多様な選択肢 Elastic Beanstalkでは、AWSマネジメントコンソール、Elastic Beanstalkコマンドラインインターフェース、Visual Studio、Eclipseを介してコードをデプロイできます。
複数のデプロイポリシー(1度にローリング、追加バッチによるローリング、イミュータブル、ブルー/グリーン)が提供され、スピーディかつ安全にデプロイが行えます。
■ 3.モニタリング Elastic Beanstalkには、アプリケーションの状態のモニタリングと管理のための統一されたユーザーインターフェース(UI)が用意されています。アプリケーションの健全性を確認するために40を超える主要メトリクスや属性を収集し、モニタリングダッシュボードで可視化できます。
■ 4.アップデートと管理 マネージドプラットフォームアップデートを使用して、Elastic Beanstalk環境の最新プラットフォームバージョンや新しいパッチを自動的に取得でき、イミュータブルデプロイメカニズムによって、これらのアップデートが安全に実装されます。
■ 5.スケーリング Elastic Beanstalkは、Elastic Load BalancingとAuto Scalingを使用してアプリケーションを自動的にスケールできます。さらに複数のアベイラビリティーゾーンを使用することで、アプリケーションの信頼性と可用性を高めることができます。
■ 6.カスタマイズ Elastic Beanstalkでは、スポットインスタンスを含むAmazon EC2インスタンスタイプなど、AWSリソースを自由に選択でき、アプリケーションにとって最適なリソースを確保できます。
5つのデプロイメントオプション
AWS Elastic Beanstalkには、5つのデプロイメントオプションが用意されています。利用する前にそれぞれの特徴や選択基準を理解しておくことをおすすめします。
■ 1.All at once(1度にすべて) すべてのEC2インスタンスを1度に更新するデプロイメントオプションです。デプロイの時間は最短ですが、サービスの一時的な停止を許容する必要があります。
■ 2.Rolling(ローリング) Auto Scaling Group内のEC2インスタンスを指定した台数ずつ更新する方法です。一時的な台数減があります。
■ 3.Rolling with additional batch(追加バッチによるローリング) Auto Scaling Group内のEC2インスタンスを指定した台数ずつ更新する方法ですが、一時的な台数減はありません。
■ 4.Immutable (イミュータブル) 新しいAuto Scaling Groupを作成してEC2インスタンスを更新する方法です。既存のAuto Scaling Groupにインスタンスを移動して更新します。
■ 5.Traffic splitting (トラフィック分割) Elastic Beanstalkに新たに追加されたデプロイポリシーで、新しいAuto Scaling Groupを作成してトラフィックを切り替えながら更新する方法です。ALBが必要です。
AWS Elastic Beanstalkのメリットとデメリット
AWS Elastic Beanstalkの特徴は分かりましたが、利用することによって、どのようなメリットがあるのか、デメリットがあるとすれば、何に気を付ければよいのかについて見てみましょう。
メリット
AWS Elastic Beanstalkのメリットとしては、以下のように手間いらずで、早ければ5分から10分程度でデプロイができる点にあります。ここでは4つの主なメリットについて見ていきましょう。
■ 1.速く簡単に開始 AWS Elastic Beanstalkの利用は、AWSにアプリケーションをデプロイする際に最も速くて簡単な方法で、アプリケーションの実行環境を5〜10分ほどで構築できます。
■ 2.自動スケーリングとロードバランシング AWS Elastic Beanstalkは、Elastic Load BalancingとAuto Scalingを使用してアプリケーションを自動的にスケーリングしますので、複数のアベイラビリティーゾーンを使用することで、アプリケーションの信頼性と可用性を高めることができます。
【参考】:Elastic Load Balancing とは? |AWS 【参考】:AWS Auto Scaling|AWS
■ 3.モニタリングと管理 アプリケーションの状態のモニタリングと管理のための統一されたユーザーインターフェース(UI)が提供されています。40を超える主要メトリクスや属性を収集し、モニタリングダッシュボードで可視化ができます。
■ 4.アプリケーションバージョンの管理 アプリケーションバージョンはAmazon S3上でバージョン管理され、環境ごとに異なるバージョンをデプロイできます。
【参考】:Amazon S3(拡張性と耐久性を兼ね揃えたクラウドストレージ)|AWS
デメリット
大変優れた機能を有するAWS Elastic Beanstalkですが、次のような制約がありますので、それらを理解した上で利用しましょう。
1.サービス停止の問題 アプリケーションのデプロイ時にEC2やRDSなどのインスタンスが再生成されるため、一時的にサービスが停止します。アプリケーションの利用者に影響が及ばないよう、告知か回避策を検討しておきましょう。
2. ミドルウェア設定の管理 サーバ側のミドルウェア設定についてもYAMLファイルで管理し、デプロイする必要があります。YAMLファイルでデプロイを行うと、ミドルウェアの設定が反映されませんので、YAMLはElastic Beanstalkの利用者としては必須言語と言えます。
AWS Elastic Beanstalkの実践的な活用法
AWS Elastic Beanstalkは、開発者がインフラストラクチャの設定や運用に気を使うことなくアプリケーションをデプロイできるように設計されています。ではどのような活用法があるのでしょうか?代表的なものをいくつか挙げてみましょう。
ウェブアプリケーションのデプロイ
Elastic Beanstalkは、Webアプリケーションのデプロイに最適です。開発者はアプリケーションのコードに集中できるため、システム構成図の作成や、インフラストラクチャの設定、スケーリングなどの面倒な作業を気にせずにアプリケーションをデプロイできます。
マイクロサービスの構築
マイクロサービスアーキテクチャとは、複数の小さなサービスを組み合わせてアプリケーションを構築する開発技法ですが、Elastic Beanstalkはマイクロサービスを簡単にデプロイ・管理できるため、多くのプロジェクトで活用されています。
バッチ処理の実行
Elastic Beanstalkは、非同期型のワーカー環境をサポートしています。そのためバッチ処理や定期的なタスクを実行するためのワーカー環境を容易に構築することができます。
Canaryリリース
Canaryリリースとは新しいバージョンのアプリケーションを一部のユーザに先行して公開する手法です。Elastic Beanstalkではトラフィック分割機能を使用して、新しいバージョンと旧バージョンの両方にトラフィックを分割して流せますので、Canaryリリースを実現できます。
開発・テスト環境の構築
Elastic Beanstalkは、開発者が素早く本番環境を構築できるため、本番アプリケーションのテストやデバッグを行うのに適しています。
AWS Elastic Beanstalkを活用して開発の効率化を
ここまで、AWS Elastic Beanstalkの概要や特徴、活用法などについて解説しました。ElasticBenstalkはAWS上でアプリを動かすのに必要なサーバを立て、ネットワーク設定や、AutoScallingの設定、或いはデータベースの設定など、複雑な初期設定作業を自動で行ってくれる大変便利なサービスです。
実際に使った方からは、想像以上に簡単にデプロイができたという声も聞こえてきます。
Elastic Beanstalkは基本的に無料で気軽に利用できますので、AWSで手間をかけずにシステムを構築したい場合には、ユースケースを参考にして、ぜひElastic Beanstalkを利用してみましょう。
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