「Bing Chat Enterprise」がリリース
2023年7月18日、マイクロソフトはパートナー向けイベント「Microsoft Inspire」において企業の業務用AIチャットシステムを発表しました。同日よりプレビュー版がリリースされています。プレビュー版は、Microsoft 365 E5、E3、Business Premium、Business Standardのライセンスユーザが対象です。
同イベントでは、合わせて「Microsoft 365 Copilot 」の価格も発表されました。Microsoft 365 E3、E5、Business Standard、Business Premiumのユーザに対して、1ユーザあたり月額30USドルでサービス提供するとしています。
【参考】:マイクロソフト インスパイア パートナーシップによるAI変革の加速 【参考】:AIのさらなる野望 - Bing Chat EnterpriseとMicrosoft 365 Copilotの価格を発表
Bing Chat Enterpriseの概要
Bing Chat Enterpriseは、2月に発表した「新しいBing」を機能強化し、企業のデータを保護する業務用AIチャットシステムとしてリリースするものです。AIツールの導入により、企業のデータの有効活用と保護を両立し、仕事の創造性と生産性をより高めることが可能です。
【参考】:Bingチャットエンタープライズ
Bing Chat Enterpriseの利用料金
Microsoft 365 E3、E5、Business Standard、Business Premiumのライセンスをお持ちであれば、追加費用なしに利用することができます。将来的には、スタンドアロンサービスとして利用を想定しており、1ユーザあたり月額5USドルが設定される予定です。
【参考】:AIのさらなる野望 - Bing Chat EnterpriseとMicrosoft 365 Copilotの価格を発表
「Microsoft Inspire」とは
Microsoft Inspireとは、マイクロソフトが開催する年次イベントで、パートナーエコシステム構築を目的とするものです。マイクロソフトから最新のテクノロジーや製品・サービスに関する情報を共有し、パートナーのビジネス拡大を進めることを目的としています。
2023年の主な発表は、「Bing Chat Enterprise」のリリース、「Microsoft 365 Copilot 」の価格発表です。付随して、Dynamics 365 SalesのMicrosoft Sales Copilotを活用したAI支援や、Power Automate Process Miningによる、ワークフローの障害をAIで解決するなど、AIの利活用がテーマとなっていました。
AI活用は、マイクロソフト社のみならずパートナーの賛同やソフトウェア連携など、多方面でパートナーの協力が必要です。そのために、Microsoft Inspireの場で各種発表を行ったと考えるのが適当です。
イベントでは、新たな「Microsoft AI Cloud Partner Program」の発表もあり、価値創造のために活動を進めることがプログラムで述べられています。
【参考】:マイクロソフト インスパイア パートナーシップによるAI変革の加速 【参考】:new Microsoft AI Cloud Partner Program: Fueling partner growth and profitability in the era of AI
Bing Chat Enterpriseのリリース詳細
Bing Chat Enterpriseは、企業の業務用チャットシステムとして、商用のデータ保護を前提としています。そのために、アクセス権が設定されマイクロソフト社もデータを確認することができません。Microsoft 365と連携し、企業における業界の分析や調査、各種データの分析をより創造的に行うことが可能になります。
また、企業向けの利用においては「AI Principles、AI原則」に従って設計されており、引用文献を示す検証可能な回答が得られます。
【参考】:Bing Chat Enterprise 概要 【参考】:MICROSOFT AI / RESPONSIBLE AI: Principles and approach
Bing Chat Enterpriseのプライバシーと保護
Bing Chat Enterpriseは業務向けに設計されており、企業のデータが組織の外に漏れることはありません。企業のユーザは「Microsoft Entra ID」でサインインすることで、職場アカウントを介してのみBing Chat Enterpriseにアクセスすることができます。
Bingに送信されるデータは、職場のIDが削除されます。すべての通信は暗号化されており、チャットデータも保存されませんので安全に利用できます。マイクロソフト社も、チャットのデータにアクセスすることができませんし、モデルのトレーニングにも使用されません。
【参考】:Bing Chat Enterprise プライバシーと保護
Bing Chat Enterpriseの管理
Bing Chat Enterpriseは、2023年8月中旬以降は規定で有効になります。Microsoft 365 E5、E3、Business Premium、Business Standard のライセンスをお持ちであればそのまま利用できます。
8月中旬までは規定で有効にならないので、手動で組織の全体管理者または検索管理者が「Microsoft 365 管理センター」の「Bingの Microsoft Search」の設定をオンにし、「Bing Chat Enterprise」をオプトインする必要があります。
同様に、8月中旬までに「Bing Chat Enterprise」をオプトアウトしておくと規定でBing Chat Enterpriseが無効の状態を維持することも可能です。
Bing Chat Enterpriseの利用方法
Bing Chat Enterpriseを利用するには、「Microsoft Edge」を使います。ブラウザあるいはサイドバーを使用することができます。Microsoft 365 E5、E3、Business Premium、Business Standard のライセンスアカウントからアクセスします。
ライセンスアカウントでログインすると、アカウント名の右側に「Protected」と表示されます。同様に、プロンプト入力欄には「Your personal and company data are protected in this chat」と表示され、チャットでの個人情報と企業のデータが保護されていることが示されます。使ってみた場合には、この表示部分で違いを確認することができます。
質問の仕方は新しいBingと同様です。Bing Chat Enterpriseでは企業の業務向けに組織のデータが保護されています。日本語にもそのまま対応します。将来的にはMicrosoft Edge以外のブラウザに対応する見込みで、今後「Windows Copilot」でも利用可能になる予定です。
Bing Chat Enterpriseは企業向けのAIチャットシステムとして有効
Bing Chat Enterpriseは、これまで企業向けのAIチャットシステムの懸念事項であったデータ保護に対応します。そのため、業務の生産性向上や創造的作業への活用が見込まれます。対象となるMicrosoftライセンスを契約済みの企業は、追加費用なしですぐにその恩恵を受けられるため、おすすめです。
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