ITエンジニアの中でも、とりわけその実態が知られていないのが「インフラエンジニア」。他のエンジニア職に比べてさらに男性比率が高い職種でもあります。
そんなインフラエンジニアの世界から、「インフラ女子」として“あるある漫画”を発信しているのが、なつよ(@infragirl755)さん。Twitterのフォロワーは1.2万人、2022年4月には書籍も発売になっており、“日本でいちばん有名な女性インフラエンジニア”と言えるかもしれません。
今回はなつよさんに、インフラエンジニアになった経緯や転職した理由、今後のインフラエンジニアの展望についてインタビュー。前編では、女性インフラエンジニアのリアルに迫ります。
インフラエンジニアは、“サーバを守り、ハードウェアの面倒を見る人”
まずは基本的なことからお伺いさせてください。「インフラエンジニア」とは、どんなお仕事ですか?
簡単に言うと、「サーバを守る人」「基盤(ハードウエア)の面倒を見る人」ですね。
でも、その表現では異業種の人には伝わりにくいので、「サブスクやECサイトが24時間問題なく動くように、データセンターを監視してるんだよ」と説明しています。
プログラマーだと思われがちですが、プログラミングはあまりしません。
なかなか伝えづらい、伝わりづらいお仕事ですよね。
仕事の場でインフラの重要性を訴えないといけないときは、エンドユーザーにどのような影響が出るかを強調して伝えるようにしていますね。例えば、「この脆弱性を放置すると、外部からの攻撃によってサービス停止の恐れがあります。」という言い方をします。
インフラを軽視すると危ないぞ、と。
責任ある立場にある方に対しては、たしかにそのアプローチが有効そうですね。
24時間監視ということは、3交代の仕事が多いんですか?
3交代のケースがないわけではないですが、システムを常時監視するオペレーターという職種があるんです。
そして、異常があったときに呼ばれて対応するのがインフラエンジニア。サーバを守っているという意味では同じですが、職種としては違います。
最近はフリーランス志向の方も多いですが、雇用形態は選びやすいですか?
フリーランスは、ないことはないでしょうが、あまり聞きませんね。
プログラマーと違って案件の期間が明確ではないし、システムトラブル時にすぐに対応しないといけないので、会社に所属することが多いんじゃないでしょうか。
フリーランスを目指す人にはあまり向かないけど、リモート正社員として働きたい人には、魅力のある職種ですね!
●オンプレミスとは
●クラウドサービスとは
クラウドの登場で、インフラエンジニアの大変さが変化
エンジニアといっても幅広いですが、インフラエンジニアは特に大変だと言われますよね。実際、どうですか?
前職ではオンプレ中心だったので、夜中に呼び出されたり、サーバを停止させるために終電で出勤して始発で帰るようなイレギュラーな勤務になったりすることもありました。
夜勤明けも帰れずずっと仕事、とかは…?
基本的に代休はもらえていましたが、人手が足りなくて「午前中いっぱいはいてほしい」と言われることはありましたね。
でも、AWSなどメガクラウドが普及してきたので、夜中に呼び出されるようなことは減っています。
技術の向上で耐障害性も高くなっているし、落ちても復旧しやすくなっていますしね。
それに、最近はクラウド(クラウドサービス)が普及してリモートで操作できるので、リモートワークも可能になってきましたよ。
それは朗報ですね!ただ、インフラエンジニアは、エンジニアの中でも特に女性比率が低い職種ですよね。
女性には大変、ということはないですか?
寝ているときに急に呼び出されて、「化粧してから行くべきか?システムの早期復旧のためにスッピンで行くべきか?」と悩んだことはあります。そのときは、スッピンにマスクで行ったんですけど。
データセンターのネタも漫画にありましたね。
スカートでデータセンターに行ってしまって、風でまくれて困ったことはありましたね。でも、女性ならではの苦労と言ってもそれくらい。
女性だからできない仕事というわけでは全然ないですね。
高専卒ですし、なつよさん自身は周りが男性ばかりの環境もあまり苦にならないタイプですか?
バイクとか男性比率が高い趣味も持っていますし、それは平気です。でも、数少ない女子の同僚と話すのは好きですよ。
「あそこのデータセンター寒いよね」とか、そんな女子トークも楽しかったです。
●データセンターとは
やりがい充分、インフラ女子がインフラエンジニアを勧める理由
クラウドが台頭してきたとはいえ、システムが24時間動いているとやはり不規則ですし、気も休まりませんよね。
インフラエンジニアは今でも大変なお仕事だと思いますが、なつよさんは後進の方にインフラエンジニアをおすすめしますか?
はい、おすすめしたいですね。
技術の進歩やクラウドの普及で昔よりラクになっている、ということ以外の理由はありますか?
ひとつは、技術的な発展スピードがプログラマーよりは遅めなことです。
もちろん勉強は必要ですが、一度覚えると、10年くらいはその知識で働けると思います。
システムの基盤を、最新技術で頻繁にアップデートするわけにはいきませんもんね。
そうですね。あと、地味ながらも“システムを守っている”というやりがいは大きいですよ。
急な障害対応や夜勤は大変ではありますが、障害対応時の謎のテンションというか、お祭り気分もけっこう楽しいです。
そう聞くとたしかにちょっと楽しそうですが、なかなかマニアックですね。
誰もいない会社をうろうろしたり、夜中のコンビニにプリンを買いに行ったり、その帰り道に流れ星が見えたり…。
流れ星は富山だからかもしれませんが、オンプレ中心だった前職時代のそんな思い出も懐かしいです。
IT業界を目指す方はプログラマーを選ぶ方が多いですが、インフラエンジニアをもっと知ってほしいですね。
どんなことをしているのか、著書を読んで知ってくれる人が増えたら嬉しいです!
【取材後記】
謎のテンションや夜中のコンビニがけっこう楽しい。修羅場やトラブルを経験したことがあるエンジニアなら、共感できるのではないでしょうか(またやりたいわけではないけれども)。
インフラ女子本人がおすすめするインフラエンジニア、後編ではそのキャリアアップ論をお聞きします!
▼後編はこちら
【関連リンク】
Twitter:https://twitter.com/infragirl755
著書「インフラ女子の日常」:https://www.amazon.co.jp/dp/4863543840
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