このスクリプトでホントにいいの?『#インフラ女子の日常』を描くなつよ氏がキャリアアップには疑問を持つことが大事と語る理由
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このスクリプトでホントにいいの?『#インフラ女子の日常』を描くなつよ氏がキャリアアップには疑問を持つことが大事と語る理由
インタビュー・取材
一番ヶ瀬 絵梨子
2022.09.12
この記事でわかること
なつよさんは絵を描くためのパソコン欲しさに高専の情報工学科に進学し、エンジニアになった
オンプレとクラウドは別物ではないので、知識をアップデートする感覚でキャリアチェンジできる
インフラエンジニアのキャリアアップには、目の前の仕事に疑問を持つことが不可欠

ITエンジニアの中でも、とりわけその実態が知られていないのが「インフラエンジニア」。他のエンジニア職に比べてさらに男性比率が高い職種でもあります。

そんなインフラエンジニアの世界から、「インフラ女子」として“あるある漫画”を発信しているのが、なつよ(@infragirl755)さん。Twitterのフォロワーは1.2万人、2022年4月には書籍も発売になっており、“日本でいちばん有名な女性インフラエンジニア”と言えるかもしれません。

今回はなつよさんに、インフラエンジニアになった経緯や転職した理由、今後のインフラエンジニアの展望についてインタビュー。

後編では、インフラエンジニアのキャリアアップをテーマにお話を伺っていきます。

▼前編はこちら

デスマーチ、夜勤、炎上プロジェクトは今は昔…?歴10年のインフラ女子がインフラエンジニアを勧める理由

パソコンを欲しがった結果が、インフラエンジニア!?

一番ヶ瀬 絵梨子

なつよさんがエンジニアになったきっかけは、なんだったんでしょう?今はTwitterで『インフラ女子の日常』を発信していらっしゃいますが、漫画も昔から?

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なつよさんの著書、『インフラ女子の日常
なつよさん

もともと、絵を描くのが好きだったんです。中学時代からは父親のパソコンを借りて絵を描いていたのですが、やっぱり自分専用のパソコンが欲しくて。

高専に行けば1人1台のパソコンが手に入ると知り、パソコン欲しさに高専に進学したんです。

一番ヶ瀬 絵梨子

なつよさんのブログ『infragirl’s blog』にも、そのエピソードはありましたね。でも、本当にそれだけの理由だったんですか?

なつよさん

はい、本当にそうなんです。ペンタブ繋いで絵を描きたい、pixivに投稿したい、そんな理由で高専の電子情報工学科を志望しました。

一番ヶ瀬 絵梨子

若さってすごい…!でも、絵の道に進もうとは思わなかったですか?

なつよさん

わたしは漫画家になりたいというより、イラストを描きたかったんですが、美術部にも入ってなかったんです。

美術部の友達が上手すぎて、自分には無理だと思ってて。同人誌のイベントでペーパー(同人ペーパー)を置くことはあっても、その道へという感じではなかったです。

●同人ペーパーとは

同人サークルの情報を書いたチラシのこと。販売されるものではなく、同人誌イベントの会場で無料で配布したり、購入者に渡したりする。チラシ置き場が用意されているイベントもある。
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高専への進学動機となった「パソコンで絵を描くこと」は、今も続いている
一番ヶ瀬 絵梨子

実際に高専に入られて、どうでしたか?

なつよさん

数学・物理・電気工学…、プログラミングだけでなく、2進数とかアルゴリズムとかも勉強しました。

高専の勉強は、性に合ってたと思います。

一番ヶ瀬 絵梨子

学生生活も楽しかったですか?

なつよさん

15歳から22歳まで幅広い年代で過ごすのが楽しかったです。

研究室で、モンハンやったりもしましたね。今考えると近い年代ですが、15歳から見ると22歳なんて大人ですから。

一番ヶ瀬 絵梨子

卒業後は、就職されたんですよね。高専は大学に編入する人も多いですが…?

なつよさん

学科にもよると思います。うちの高専には商船学科があるのですが、そこはほとんどが就職でした。

わたしが通っていた電子情報工学科は、就職と大学進学の割合が半々くらいでした。リーマンショック後で求人が少ない時期だったので、マイナビなどの就活サイトにエントリーして就職活動しました。

一番ヶ瀬 絵梨子

高専生は推薦でサクッと決めるようなイメージを勝手に持っていましたが、普通に就職活動するんですね。

で、就職してインフラエンジニアに?

なつよさん

地元富山のSIerに就職したんですが、会社がISP(インターネットサービスプロバイダー)事業も手がけていて、配属先がプロバイダーの保守をする部署だったんです。

エンジニア=プログラマーといった感覚でいたので、驚きました。

●SIer(エスアイヤー)とは

ソフトウェア開発や情報処理サービスを一括で請け負う企業のこと。システムインテグレーション、システムインテグレーターも同じ意味。
一番ヶ瀬 絵梨子

実際に情報工学を学ばれていても、インフラエンジニアに対してはそのような認識なんですね。

そういう意味では『インフラ女子の日常』での発信、エンジニアを目指す方にはかなり有益ですね。

オンプレ中心から、フルリモートのクラウドエンジニアへ

一番ヶ瀬 絵梨子

新卒で就職後、プロバイダーを保守する部署に配属されたとのことですが、配属後はどんなお仕事をされていたんですか?

なつよさん

サーバやネットワーク機器が壊れたら復旧作業をしたり、古いOSやソフトウエアの更新作業をしたり、OSをインストールしたり…。

オンプレ(オンプレミス)中心だったので深夜作業も多かったですね。

●オンプレミスとは

オンプレミス(on premise)を直訳すると、「敷地内に」。サーバやソフトウェアなどの情報システム機器を、使用者の施設内に設置して運用することを指す。「自社運用」とも呼ばれることもある。
一番ヶ瀬 絵梨子

苦労されたことはありましたか?

なつよさん

OSがLinux系だったのですが、Linuxを触ったことがなかったので、慣れるまでは戸惑いました。

深夜作業で古い建物内を1人で歩かないといけなかったりするのも、最初は怖かったです。8年ほど勤めました。

一番ヶ瀬 絵梨子

転職されて、2社目ですね。転職しようと思った理由は、なんだったんでしょう?

なつよさん

最初の会社は、待遇は良かったんですが、古くても安定している技術を好む会社だったんです。

CI/CDやパイプラインも使わず、新しい技術を使うよりもテスターを大勢雇って人海戦術で検証していく、というような。新しい技術に触れたくなったというのが、転職の動機ですね。

今はクリエーションラインという会社で、クラウド(クラウドサービス)中心のインフラエンジニアとして働いています。

●CI/CD、パイプラインとは

CI/CDとは「Continuous Integration(継続的インテグレーション)」と「Continuous Delivery(継続的デリバリー)」の略。ソフトウェアのリリース工程を自動化するツールや方法の総称。また、そのリリース工程のことを「パイプライン」と呼ぶ。

●クラウドサービスとは

インターネット経由でさまざまなITリソースを利用することができる仕組み(クラウド)を用いて提供されるサービスの総称。サーバなどのハードウェアを導入する初期投資が不要で、必要なときに必要な量のリソースに、オンデマンドで簡単にアクセスできるのが特徴。Amazonが提供する『AWS(Amazon Web Services)』、Microsoftが提供する『Azure(Microsoft Azure)』、Googleが提供する『GCP(Google Cloud Platform)』は3大クラウドと呼ばれている。
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「インフラエンジニア」といっても、そのスキルの幅はとても広い
一番ヶ瀬 絵梨子

転職先はどうやって探したんですか?

なつよさん

SNSで声をかけてもらったのがきっかけです。CTOが富山出身で、富山ゆかりの人が多い会社なんです。

スタートアップ企業でまだ成熟していない部分もありますが、もっとよくしていこう、どんどん発信していこうというマインドのある会社です。

一番ヶ瀬 絵梨子

リモートワークには慣れましたか?

なつよさん

チームメンバーにはたまに会いたいなと思いますが、リモートワークのほうが自分には合っていると思います。

コロナ禍で妊娠・出産することになったので、フルリモートでいろいろ助かりました。

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現在育休中のなつよさん。お子さんのお昼寝監視装置はなんと自作。

疑問を持てば勉強する――それがキャリアアップの基本

一番ヶ瀬 絵梨子

なつよさんはオンプレからクラウドへ移られましたが、オンプレとクラウドってどんな違いがありますか?

なつよさん

オンプレとクラウドは、まず操作方法が大きく違いますね。

オンプレだとVM(バーチャルマシン)を建てるのに2時間かかっていたのが、クラウドだとワンクリックです。それにオンプレだとロードバランサーなどの機器が高いんですが、クラウドは自動でスケールとスケールアップをしてくれるのでラクですね。

●VMとは

VMは仮想マシンとも呼ばれ、コンピューター(ホストOS)上に別のコンピューター(ゲストOS)を再現させたもの。本体とOSが1:1の関係にあるパソコンと違い、現代のサーバに使われるようなコンピューターでは複数のホストOSを実現することができる。

●ロードバランサーとは

外部からのアクセスを複数のサーバに適切に振り分けて負荷を分散したり、意図しないアクセスを遮断したりするシステムのこと。負荷分散装置とも呼ばれる。
一番ヶ瀬 絵梨子

インフラエンジニアは昔ほど大変ではない、というのは本当のようですね。

でも、そんなに違うのであればオンプレからクラウドへのキャリアチェンジは難しいのでは…?

なつよさん

もちろん、勉強しないといけないことは多いです。でも、オンプレとクラウドは別物ではないですよ。

オンプレ時代の知識も半分くらいは使えましたし、新しいことを勉強するというよりはオンプレ時代の知識をアップデートしていくイメージです。決して、いままでの勉強が無駄にはなるわけではありません。

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クラウドと物理サーバ(オンプレ)の操作性の違いもコミカルな漫画になっている
一番ヶ瀬 絵梨子

インフラエンジニアのキャリアアップとしては、クラウドを目指すほうがいいんですか?

なつよさん

時代がクラウドに移っているのは事実ですね。フルリモートで働きたいなら、クラウド一択です。でも、オンプレが時代遅れというわけではないですよ。

どんなクラウドも、大元をたどればオンプレで動いています。クラウドにアクセスするまでに使われている「オンプレ」を守る道を極めるのも、かっこいいと思います。

一番ヶ瀬 絵梨子

ではインフラエンジニアがキャリアアップしていくうえで、何を大切にすればいいでしょうか?

なつよさん

何よりも大事なのは、目の前の仕事に疑問を持つことです。

インフラエンジニアの仕事って、最初は「このスクリプトを実行しておいて」というような単純作業をこなすことが多いんです。でもそこで言われたことをやるだけでなく、「なんでこうしないといけないのか」を考えることが大事です。

なつよさん

「もっといい効率のいいコマンドはないか」「本当にこのスクリプトでいいのか」と、考えていくんです。

もっとよくしたいと考えると、本を買ったり、勉強会に参加したりといった行動につながっていきますよね。知識が深まり、輪が広がれば、キャリアアップの道は必ず拓けていきます。

一番ヶ瀬 絵梨子

どの仕事にも必要な心構えですが、キャリアのスタートが単純作業になりがちなだけに、よりそういった姿勢が大事なんですね。

【取材後記】

たまたま配属されてインフラエンジニアになり、新しい技術を求めてステップアップしたなつよさん。

だからこそ、勉強するジャンルの指定でなく「目の前の仕事に疑問を持てば道は拓ける」というアドバイスに説得力がありました。

育休復帰後に漫画まで描くのは大変かもしれませんが、『フルリモートインフラエンジニアの日常』の発信に期待したいです。

【関連リンク】

Twitter:https://twitter.com/infragirl755

ブログ:https://natsuyo.net/

著書「インフラ女子の日常」:https://www.amazon.co.jp/dp/4863543840

ライター

一番ヶ瀬 絵梨子
心理学科卒業後、新卒未経験でSI企業に就職し、Java系のSEとして10年。 結婚出産を経て、2015年にトラベルライターに転身。 現在はMONOLISIX株式会社に所属しweb編集やマーケティング業務にも携わっている。 新婚旅行では1年かけて世界50ヶ国を巡るほどの旅行好き。 日々の晩酌が何よりの楽しみ。
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