WindowsでEmacsの利用
Windowsのテキストエディタは、Windowsに同梱されるメモ帳(Notepad)が用いられます。プログラム開発でメモ帳を使うとなると、もう少し機能がほしいところです。ソフトウェア開発業務でLinuxやUNIXシステムをご利用の方は、同じような編集機能があると便利と感じることが多いと思います。
ここでは、代表的なソフトウェアとしてEmacsを紹介します。Emacsはクロスプラットフォームで利用可能のため、開発生産性が高まります。WindowsでEmacsを利用することで、キー操作だけで効率的に編集作業を進めることができます。
Emacsの概要
Emacsは、1970年代に登場したテキストエディタです。UNIX全盛時代にはviと人気を二分し、現在でもテキストエディタとして人気があります。組み込みコマンドとマクロ機能により、簡易アプリケーションを記述することができ、開発者に利用が広まりました。
【参考】:EMACS: The Extensible, Customizable Display Editor
GNU Emacsとは
GNU Emacsとは、GNUプロジェクトの中心的なフリーソフトウェアを指し、長い歴史を誇ります。Emacsはいくつかの派生版が登場しましたが、現在ではEmacsはフリーソフトウェアとして登場したGNU Emacsを指すことが多いです。
GNU Emacsは現在でもアップデートが提供されており、最新版は2022年4月4日にリリースされたEmacs 28.1です。
【参考】:GNU Emacs
GNU Emacsの特長
GNU Emacsは、テキストエディタとして登場しましたが、以下のように多岐に渡る機能が実装されています。 【参考】:GNU Emacs A Guided Tour of Emacs
・プログラムの編集が効率的 プログラムの編集に優れており、編集するコンテンツ形式に応じてシンタックスを識別し、色分け表示できます。LispやPython・HTML・Javaを識別し、効率的に編集できます。
・統合開発環境として利用可能 GDBと連携して、統合開発環境(IDE)として利用することや、編集ファイルを比較表示することができます。ファイルマネージャー機能も搭載します。
・豊富なカスタマイズ機能 Emacs Lisp(Elisp)により、多くの処理をカスタマイズすることができます。キーボードマクロにも対応しており、繰り返し行うキー操作を登録することができます。
GNU Emacsの使い方
GNU Emacsは、Linux・BSD・MacOS・Unixや、Windowsで動作します。Linuxでは通常ディストリビューションに含まれます。ここでは、Windows版のインストールから設定・利用まで解説していきます。 【参考】:GNU Emacs Download & Install
Windows版GNU Emacsのダウンロード
Windows版GNU Emacsは、公式ダウンロードサイトやミラーサイトからダウンロードします。必要なバージョンのインストーラーをダウンロード後、インストールを実行します。 【参考】:GNU Emacs Nonfree systems
以下は、FTPサーバーの表示内容です。最新版の”emacs-28”をクリックします。
【図】:公式FTPサーバーのWindowsモジュール
クリックすると、格納されている各種モジュールが表示されます。ここでは、インストーラを選択し、Windows PCにダウンロードします。
【図】:公式FTPサーバーのWindows emacs-28モジュール
【参考】:GNU Emacs FTP Windows Download
【参考】:GNU Emacs FTP Windows Emacs-28 Download
Windows版GNU Emacsのインストール
2022年6月時点の最新のインストーラは、“emacs-28.1-installer.exe”です。PCに保存されたインストーラをダブルクリックすると、以下のようにインストーラが起動します。
【図】:Windows版 GNU Emacsのインストーラ起動画面
ここで、「Next」をクリックするとLicense Agreementが表示されますので、「I Agree」をクリックします。続いてインストールが実行されて、以下のようにInstallation Completeが表示されたら完了です。次に「Next」をクリックします。
その後、Choose Start Menu Folderでスタートメニューの作成を行うかどうか指定後、インストール作業が終了します。
GNU Emacsの設定
GNU Emacsの設定ファイルは、”C:\Usersユーザ名\AppData\Roaming.emacs.d”のパスに格納されます。インストール時にはまだ存在しませんが、init.elを作成・編集することでカスタマイズが可能です。設定ファイルの書式は、Emacs Lisp (Elisp)に従います。
【参考】:An Introduction to Programming in Emacs Lisp
Emacsの使用方法
デフォルト設定では、WindowsのスタートメニューにEmacsのアイコンが表示されます。アイコンをクリックすると、以下のようにGNU Emacsが起動します。起動後は、追加変更せずにすぐに作業にとりかかることができます。
すでに利用されている方は、設定ファイルのinit.elを格納し、操作環境を統一することができます。
【参考】:The Emacs Editor
【図】:Windows版 GNU Emacsの起動画面
Emacs Tutorialとは
初めての方は、GNU Emacsの起動画面に表示されているEmacs Tutorialのリンクをクリックしてみてください。Emacs Tutorialとは、Emacsの入門ガイド(チュートリアル)を指し、日本語で基本情報が解説されています。キー操作からファイル作成手順等、必要な操作が分かりやすく解説されています。
GNU Emacsの日本語化
GNU Emacs 27以降では、ほとんど気にすることなく日本語入力と表示ができます。Windows標準のIMEで支障がない場合は、インストール後すぐにデフォルト環境で利用することができます。
【図】:GNU Emacsで日本語文章の入力と編集
Windowsのキーバインドの変更
Emacsのキー操作に慣れた人は、キー操作を他のツール操作時でも統一したくなります。そのため、Windowsのキーバインドを変更してEmacs風に変更して利用する方もいます。例えば、AutoHotkeyを用いてキーバインドを変更することができます。
【参考】:AutoHotkey
Emacsのキー操作
Emacsのキー操作は、最初は慣れが必要です。マウス操作やカーソルキーが使えますが、効率的な操作を行うにはEmacsのコマンド操作が必要です。操作に慣れるまでは、他のWindowsアプリ同様に上部のメニューから操作するのが良いでしょう。
慣れてきたら、複数のフレームを用いてファイル編集を同時に行うこともできます。大規模な編集作業にも効率的に対応できます。
カーソルの移動
基本的な考え方と表記ですが、最初に目に触れるチュートリアルやドキュメントにC-<文字>やM-<文字>の表記が出てきます。
C-<文字>は、Ctrlキーと<文字>を同時に押します。M-<文字>は、Altキーと<文字>を同時に押します。
カーソル移動の例では、カーソルの上下左右に対応するのが、C-p・C-n・C-b・C-fです。pはPrevious、nはNext、bはBackward、fはForwardの頭文字であり、英語圏の方にはなじみやすいキー操作です。M-fで一単語先に進み、M-bで1単語前に戻ります。
ファイルの作成と保存
Emacsのテキストはバッファ上に作成され、テキストを再利用するにはファイルに保存する必要があります。ファイルを開くには、C-x C-fでファイル名を入力し、保存するにはC-x C-sで保存できます。
Emacsは使い込むと良さが分かります
Emacsはカスタマイズが多岐に渡り可能で、自分好みのキー操作や初期設定を行い調整していきます。そのため、使えば使うほどその良さを実感できるはずです。効率的な開発作業は環境整備から始まるので、最初の1歩として、まずは使ってみて操作感を体感してみてはいかがでしょうか。
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