Slackware 15.0の登場
2022年2月3日、「Slackware 15.0」がリリースされました。2012年9月28日にリリースされた14.0以来、約10年ぶりのメジャーアップデートの安定版(Stableリリース)となります。Linuxカーネル 5.15.19を採用し、長期サポートを予定しています。 【参考】:The Slackware Linux Project
Slackとは「ゆるい」という意味で、Linuxのアプリケーションをほぼそのまま搭載しています。パッケージに癖がないので、Linux黎明期に幅広く選択されました。
Slackware概要
Slackwareは、1991年に登場したLinuxの最も古いディストリビューションで、1993年にリリースしました。「自分で管理し、把握できるLinuxディストリビューション」が、コンセプトのディストリビューションです。Linuxのアプリケーションそのままであることから、Linuxの学習用にも活用されています。 【参考】:General Information
「UNIXライク」でシンプルさを目指し、ゆるやかに改良を続けています。フルインストール時には、X Window System・C/C++開発環境・Perl・メールサーバ・ニュースサーバ・ウェブサーバ・FTPサーバ、各種ツールが導入されます。
Slackwareでサポートされるハードウェア
SlackwareはLinuxカーネルでサポートされるハードウェアがサポート対象となります。詳細は以下のリンクからご確認ください。 【参考】:Linux Hardware Compatibility HOWTO
Slackware Live Editionとは
Slackware Live Editionとは、SlackwareをDVDや USBメモリから実行できるようにしたエディションです。ISOイメージをブートすることで、インストールせずにSlackwareを動作させることができます。 【参考】:Live Edition of Slackware 【参考】:Slackware Live Edition
Slackware 15.0の特徴
Slackware 15.0の特徴ですが、今回のリリースについてリリースノートの記載から整理しておきます。 【参考】:Slackware Release Notes
・カーネルバージョン 5.15.19がサポートされます。安定版ですので、少なくとも2023年10月あるいはそれ以上の長期サポートを提供予定です。
・カーネルタイプ これまでと同様に、generic(汎用版)とhuge(巨大)の2種類が提供されます。汎用版はブート時に必要なカーネルモジュールをロードし、メモリ節約とブート時の警告を最小化できます。
・UEFIサポート x86_64版でUEFIファームウェアがサポートされます。セキュアブートも今後正式サポートしていきます。
Slackwareの使用
Slackwareのインストールと実行に必要な最小限のシステム要件は以下の通りです。かなり古い世代のPCでも動作します。
・486プロセッサ ・64MB RAM(推奨は1GB以上) ・約5GB以上のハードディスク空き容量(フルインストール時) ・CDまたはDVDドライブ または、起動可能なUSBフラッシュメモリまたはPXEサーバー/ネットワークカード
GUIとしてX Window Systemを快適に使用する場合は、ハードウェアの増強を適宜行います。 【参考】:Installation Help
Slackwareのインストール
Slackwareのインストールは、ミラーサイトからISOイメージをダウンロードします。そのISOイメージをライターでメディアに書き込んでインストールディスクを作成しておきます。 【参考】:mirrors.slackware.com 【参考】:Slackware ISO Images
インストーラーの起動は、書き込んでおいたインストールディスクをCDまたはDVDドライブに挿入して再起動するだけです。ブート順番がBIOSやUEFIで設定されている場合は、CD・DVDドライブの優先順位を上げておきます。インストールディスクが起動したら、そのままLinuxレスキューディスクとして使用したり、ハードドライブにインストールを行います。 【参考】:Slackware installation
ブート時にはキーボードの選択を行い起動します。他のLinuxディストリビューションで用いる、専用のインストーラープログラムはありません。起動後のログインプロンプトで、パスワードなしのrootで操作します。Linuxパーティションの他に、Swapパーティションが推奨されます。Swapパーティションは次の様に作成します。
mkswap /dev/<partition> ; swapon /dev/<partition>
パーティションの準備ができたら、”setup”を実行します。
setupプログラムの使い方
setupプログラムは、cursesベースのプログラムとなっており、端末のテキストベースの表示制御で対話的に処理を確認することができます。以下は、主要なsetupプログラムの操作項目です。
・Help 初めてSlackwareをインストールする方向けのヘルプ情報です。
・Keymap US以外のキーボード使用時に適切な操作を行うために指定します。
・Addswap スワップパーティションを作成し、有効化します。
・Target インストールするルートパーティションと追加パーティションを指定します。
・Source インストールするパッケージの格納元を指定します。CDやDVDの他、ハードドライブ・NFS・FTP・HTTP・Samba・マウントディレクトリが指定できます。
・Select パッケージのインストールするセットを指定します。フルセットの他、必要なセットのみ選択してインストールすることができます。
・Install インストール時のプロンプト表示を設定します。”full”では全てインストールするのでプロンプト表示されずおすすめです。“menu”と“expert” は詳細な指定を行うことができます。“newbie”は初心者向けにさらに細かく確認を行います。時間がかかるのであまりおすすめはできません。
・Configure LILO(LInux LOader)の構成を行います。自動インストールは”simple”を選びます。
その後マウス操作を必要に応じて追加し作業を進めます。次にネットワーク設定でホスト名を追加します。IPアドレスは静的IPかDHCP、あるいはループバックを指定します。
Slackwareの構成方法
setupコマンドでインストール後は、再起動後にユーザを作成します。デフォルトではユーザはrootのみですので、アクセス制限可能な一般ユーザを追加します。追加するには”adduser”を使います。”useradd -m -g users -G”でまとめて作成することもできます。
続いてセキュリティ対策のために、slackpkgツールを使ってパッケージのリストを更新し、アップデートモジュールをインストールすることをおすすめします。
GUIを使用するには、”startx”でX11が起動できるか確認します。デスクトップが表示できれば問題ありません。問題ないようでしたら、root権限で/etc/inittabファイルにデフォルト run levelを設定します。4でグラフィック表示のみとなります。
その後必要なソフトウェアが決まったら、モジュールを最新の状態に維持するためにPackage Managerの利用をおすすめします。具体的にはslackpkgが一般的に利用されています。”slackpkg install-new”でモジュールをインストールし、”slackpkg update”で最新に維持します。 【参考】:Configure your new Slackware System
Slackwareの言語設定
Slackwareはシンプルですので、英語圏で用いるUTF-8が設定されています。インストール後に必要となる言語localeを設定します。環境変数としては、およそLANG・LANGUAGE・LINGUAS・LC_COLLATE・LC_ALLのパラメータが該当します。 【参考】:Localization: Adapt Slackware to your own Language
デフォルトのlocaleは”en_US”ですので、”ja_JP.UTF-8”に変更することで日本語に対応します。各ユーザーのログインシェルの ~/.profileに、LANGやLC_ALL等に設定しておきます。
X Window Systemのデスクトップ環境であるKDEを利用する場合は、言語パッケージ(l10n-packages)をインストールすることで対応できます。残念ながら、2022年3月時点ではSlackware 15.0のパッケージとしてkde-l10n-jaを見つけることができませんでした。もう少し待つ必要があるかもしれません。
10年ぶりのメジャーリリースを楽しみましょう
SlackwareはLinuxソフトウェアをほとんどいじっていないので、Linux本来の動作確認や学習に利用できます。どうしても英語中心の環境となりますが、コマンドの動作確認ではさほど支障がありません。率先して新バージョンを実験するか、日本語環境の整備を待つかは利用者のチャレンジ精神に依存しそうです。
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