AWS発表の新プロセッサGravition3の性能は2と桁違い?
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AWS発表の新プロセッサGravition3の性能は2と桁違い?
開発ツール
アンドエンジニア編集部
2022.01.02
この記事でわかること
AWSが発表したGraviton3はGraviton2から計算速度が25%アップ、消費電力が最大60%削減
Graviton3を採用したC7gインスタンスもプレビューとして同時に発表
Graviton3のようなARMを採用したプロセッサはAWSにおいてはx86と比べてコストパフォーマンスが高い

Gravitonとは

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Gravitonとは、クラウドプラットフォームを提供するAmazon Web Services(AWS)が開発したプロセッサで、読み方は「グラビトン」です。AWSが2015年に買収した半導体企業Annapurna Labsによって設計・製造されており、ARMアーキテクチャを採用しています。

この記事では、Gravitonとは何かを説明しつつ、先日新たに発表されたGraviton3とそれを採用したインスタンスについて、その特徴を徹底的に解説していきます。

AWSのためのプロセッサ

Gravitonは、AWSが提供するAmazon EC2と呼ばれるクラウドコンピューティングサービスに特化したプロセッサとなっています。2018年に初めて発表され、ARMアーキテクチャが採用された自社開発のプロセッサとして注目を集めていました。その後、2019年に第2世代としてGraviton2が発表され、4倍のコア数、5倍のメモリアクセス速度を実現し、さらに注目を集めました。

Gravitonを使ったインスタンス

Amazon EC2ではAWS上に仮想サーバを構築し、様々なクラウドサービスを運用することができます。EC2上で構築される仮想サーバを「インスタンス」と呼び、ユーザの用途に応じてサーバのスペックを自由に変更できることを特徴としています。インスタンスはAWS上で様々な種類が提供されており、例えば、処理速度に特化したもの、大規模データの運用に向いたものなどがあります。

GravitonはこのEC2における多くのインスタンスで採用されており、AWSにおいて最良の料金とパフォーマンスを提供するものとされています。

AWS Amazon EC2のインスタンスとは?インスタンスの起動・確認方法を合わせて解説!

Gravitonを使うメリット

AWSにGravitonを使うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。最も大きなメリットはコストパフォーマンスの高さでしょう。初期のGraviton発表時にAWSは、同プロセッサを使用したインスタンスでワークロードあたりのコストを低減することが可能としています。さらに、その後のGraviton2では、x86プロセッサと比較してコストパフォーマンスが40%も高いことが公表されています。

このようにGravitonが使われたEC2のインスタンスを利用することで、AWSの利用コストを下げることが可能です。

Gravitonを採用する企業

優れたコストパフォーマンスを持つGravitonですがAWSにおいて様々な企業が同プロセッサを利用したインスタンスを採用しています。

サイバーエージェント

既存のx86ベースのEC2インスタンスからGraviton2ベースのインスタンスへ移行することで、同社は50~60%のコスト削減に成功したとのことです。

ナビタイムジャパン

x86ベースのインスタンスで稼働していた4つのサービスをGraviton2ベースのインスタンスへ3カ月で移行し、スループットを15%改善し、20%のコスト削減を達成できたようです。

【参考】:Graviton2を採用した企業

新発表のGraviton3

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そして2021年12月、Graviton2の後継となるGraviton3がAWSから発表されました。今まで同様ARMアーキテクチャを採用した本プロセッサはどのような進化を遂げたのでしょうか。

Graviton3のスペック

発表の中でGraviton3の詳細な仕様は下記のように公表されています

  • 2.6GHzのクロック周波数
  • 300GB/秒の最大メモリ帯域
  • DDR5 RAMに対応
  • 64個のコアを実装
  • 550億個のトランジスタにより構成

Graviton2のクロック周波数が2.5GHzであることから、さらなる高速化が達成できていることがわかります。

Graviton2からの性能比較

Graviton3では、以下のようなGraviton2と比べた性能改善が公表されています

  • ワークロード全般での計算速度が25%アップ
  • 浮動小数点演算が最大2倍の速度アップ
  • チップ自体の消費電力量が最大60%削減
  • 機械学習のワークロードで3倍の速度アップ
  • 新たなポインター認証機能に対応

全てにおいて進化している同プロセッサですが、特筆すべきはこれだけの性能向上にもかかわらず、消費電力が最大60%まで削減されていることでしょう。今までGraviton2で恩恵を受けていた以上のコストパフォーマンスを受けられるようになるはずです。

想定されるワークロード

Graviton3はどのようなワークロードでの使用を想定されているのでしょうか。現時点では同プロセッサを採用したインスタンスは、後述するC7gインスタンスのみとなっています。このインスタンスは、「ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)」「バッチ処理」「Electronic Design Automation (EDA)」「メディアエンコーディング」「科学モデリング」「広告配信」「分散型分析」「機械学習」に最適であると公表されています。

また、今後対応したインスタンスが増えることで、さらなるワークロードへの最適化も期待できるでしょう。

同時に発表された新たなインスタンス

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Graviton3の発表と同時に2種類の新たなインスタンスも発表されました。1つは前述したGraviton3採用のC7gインスタンス、もう1つはTrainiumというプロセッサを採用したTrn1インスタンスです。それぞれどのようなものか詳しく見ていきましょう。

C7gインスタンス

C7gインスタンスはGraviton2を採用したC6gの後継となるインスタンスです。C6gが元々高パフォーマンスを要求するワークロード向けなだけあって、このインスタンスも同様のワークロード向けとなっている形です。

C7gのインスタンスの特徴としては、まずGraviton3を採用したことによる高いパフォーマンスとその性能に見合わない低消費電力が挙げられます。加えて、同プロセッサがDDR5に対応していることに合わせてDDR5メモリが搭載されていることも特徴です。AWS公式によれば、DDR5メモリの採用はクラウド業界初となっているようです。

さらにネットワークについて、最大30Gbpsのネットワーク帯域幅と Elastic Fabric Adapter(EFA)をサポートしている点も特徴的です。

Trn1インスタンス

Graviton3ではなくTrainiumというプロセッサが採用されたこのインスタンスは、機械学習モデルの学習に最適なインスタンスとなっています。TrainiumはAWSによって設計されたカスタムチップであり、機械学習の学習部分に特化して作られたものです。

カスタムチップとしては、2018年に発表されたInferentiaが初であり、本プロセッサは2番目となっています。Inferentiaを採用したInf1インスタンスは、機械学習における学習済みのモデルからの推論に特化しており、本インスタンスとペアで使用することでAWS上での機械学習のパフォーマンスを大きく向上することができるようになります。

新たなインスタンスを使用するためには

新たに発表されたC7g、Trn1インスタンスは、現在プレビューの段階であり、通常のサービスから利用することはできません。しかし、いずれもAWS公式ページからプレビューに参加することは可能となっています。それぞれ下記の公式ページのリンクにアクセスし、必要事項を記入することでその性能を体験することは可能です。

【参考】:C7gプレビュー参加

【参考】:Trn1プレビュー参加

AWSにおけるARMプロセッサの立ち位置

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ここで紹介してきたGraviton3を含むGravitonシリーズは、ARMアーキテクチャを採用していることが特徴です。ではクラウドコンピューティングにおいて、ARMを採用しているということはどのような意味を持つのでしょうか。

サーバーチップのシェア

クラウドコンピューティングなどで使用されるサーバー向けのプロセッサは、今までインテルのx86アーキテクチャが独占してきました。それはAWSにおいても同様で、EC2におけるインスタンスにおいてもインテル製x86ベースのプロセッサが多く採用されています。

プロセッサとしての実績の多さからx86は大きなシェアを持っていましたが、GravitonのようにARMベースのプロセッサの普及も少しずつ始まっています。x86とARM、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。

ARMとx86の違い

x86とARMの違いについて、最も大きな点はx86がインテル社のプロセッサでのみ利用されているのに対し、ARMはそのアーキテクチャを使用してAWSを含む各社が独自プロセッサを設計していることです。これはARMのビジネスモデルがアーキテクチャを設計図として販売することにあるためです。この違いにより、様々な企業がARMを採用したプロセッサを開発し、販売できるようになります。

性能面での違いでは、両者を簡単に比較することができません。ただ、AWSのGraviton2が提供するM6g・R6g・C6gインスタンスは、x86ベースのインスタンスよりもコストパフォーマンスが40%優れているとAWSが発表しています。

x86からGraviton2への移行することでメリットも

上述のようにAWSにおいては、ARMベースのGraviton2を採用することでコストパフォーマンスの向上が報告されています。そのため、現状AWSでx86ベースのインスタンスを利用している方は、Graviton2ベースへ移行することでメリットを享受できるでしょう。

ただし、AWSではインスタンスを移行するためにはいくつかの要件があり、例えばインスタンス間に互換性がなければ移行することはできません。公式ページで移行要件の詳細が記載されているので、考えている方は注意深く見ておきましょう。

【参考】:インスタンス変更要件

Graviton3でAWSを快適に

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AWSが新たに発表したGraviton3は、前身であるGraviton2よりもはるかに優れたプロセッサであることがわかりました。AWSのEC2サービスで機械学習を始めとしたハイパフォーマンスなワークロードを利用もしくは検討している方にとっては、注目すべきプロセッサと言えるでしょう。

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