デジタル・マーケティングとは

最近脚光を浴びているデジタル・マーケティングですが、言葉は聞いたことはあっても、その概念は漠然としているのではないでしょうか？

DX時代を迎え、デジタル・マーケティングはこれまでにも増して期待が高まっています。最早、デジタル・マーケティングを利用せずに企業活動は成り立たないとさえ言われています。ITエンジニアの皆さんの中にも、デジタル・マーケティングに関わるシステムの開発や、製品開発に携わっている方も少なくないでしょう。これからは、デジタル・マーケティングに明るいエンジニアの活躍の場がさらに広がってくるでしょう。

マーケティングは、商品やサービスを顧客に効果的に購入してもらえるように企業が行う市場調査・製造（制作）・輸送・販売・宣伝などのすべてのプロセスの総称です。市場活動や販売戦略とも呼ばれます。簡単に言えば、企業が顧客との取引を最大化し、利益を得るためのすべての活動のことです。例えば、アンケートやモニタリングなどの市場調査・商品の開発・店舗の開発・広告宣伝・ポイントカード・メンバーズカードなどの販売促進、そうしたもののすべてがマーケティングの領域と言えます。

デジタル・マーケティングとは、ITやインターネットなどのデジタル環境を利用したマーケティング施策の全般を指します。そこにはWebサイトやSNSなどから、デジタルサイネージ、今流行りのオムニチャネル（リアル店舗とECサイトの融合）なども含まれます。また従来のマーケティング手法とは大きく異なるのは、ビッグデータなどの技術を活用した「データの分析と活用」です。

インターネットの普及によって、消費者1人1人の購買行動などが詳細に把握でき、それらのデータを分析することで消費者の嗜好やニーズを把握し、科学的・効率的なマーケティング活動が行えます。今やマーケティング活動においてデジタル・マーケティングの導入は不可欠の施策なのです。

デジタル・マーケティングと聞くと、Webマーケティングのことだと考える方がいますが、イコールではありません。両者の違いはその対象範囲にあります。Webマーケティングが対象としているのはWebサイトを軸としており、SNS・Eメール・Web広告・アフィリエイト・SEOなどが対象です。

一方のデジタル・マーケティングはマーケティングの領域すべてを対象とし、デジテルサイネージ・ビッグデータ・AI・VR・フィンテック・CRM・IOTなど、デジタルで得ることができるあらゆるデータやタッチポイントを活用します。

それでは、国内でデジタルマーケティングに強い会社には、どのような企業があるのでしょうか？代代表的な企業3社を挙げてみました。

1.株式会社電通デジタル 電通デジタルはデジタルマーケティングのあらゆる領域で、コンサルティング・開発・運用などのサービスを提供しています。

2.株式会社オプト オプトは広告代理店ですが、インターネット広告事業に強みを持つ企業です。インターネット広告代理業務に加えデジタル人材の育成・デジタル新会社のサポート・既存企業のデジタル化特化したサービスの提供をしています。

3.アンダーワークス株式会社 アンダーワークスの得意分野は、デジタルマーケティング戦略立案や最適なソリューションの選定に加え、グローバル領域に強いことを強みとしています。

次にデジタルマーケティング企業の平均年収ですが、求人ボックスナビによると、597万円とITエンジニアの平均年収506万円（同求人ボックスナビ）を上回っています。

デジタル・マーケティングの具体例

デジタル・マーケティングの概要については理解されたと思いますが、ここではデジタル・マーケティングの具体例をいくつか上げて紹介します。

CRMは"Customer Relationship Management"の略語で、日本では顧客管理システムと訳されるケースがありますが、顧客管理というよりは顧客との良好な関係を構築するためのシステムのことで、「顧客関係管理」と訳した方が正しいでしょう。CRMは、IT（デジタル）を用いて販売側と顧客との距離を縮めるマーケティング手法の1つです。

購買履歴を分析して顧客の見える化を行い、見込み客に対して次の商品購入タイミングを告知したり新商品を提案したり、さらにはダイレクトメッセージでセール情報を配信するなどして、従来のDMとは比較にならない精度でリピート客を確保できることが実証されています。

オムニチャネルの"omni"は、ラテン語で「あまねく」を意味する言葉です。オムニチャネルは企業や店舗と顧客との接点である、あらゆるチャネル（Webサイト・デジタルサイネージ・Eメール・スマホなど）を融合させていくことです。顧客は場所や時間を問わず、必要な時に必要な商品やサービスを得られることを望みます。リアルやネットを問わず、目の前の気に入った商品を必要とする場所で購入したいという願いに応えられるのがオムニチャネルです。

例えば、リアル店舗で手にし、試着した商品をその場でスマホで注文して自宅に届けてもらう、逆にネットで注文した商品を店頭で受取るといった、ネットとリアルを1つにした購買行動がオムニチャネルでは可能となるのです。ユニクロなどはいち早くオムニチャネルを実現し、多くの顧客の支持を得ています。

MAは"Marketing Automation"の略語で、デジタル技術やITを用いて、マーケティングのさまざまなプロセスを自動化するツールの総称です。例えば、商品を購入した顧客に自動的にフォローアップメールを送る、自社の商品情報やセールス情報を見込み客に送るといったこともMAのカバー範囲です。またマーケティング活動のさまざまなプロセスを自動化することによって、業務効率の向上、コスト削減といった効果が得られ、MAは企業には利益向上をもたらしてくれます。

SEOとは"Search Engine Optimization"の略語で、「検索エンジン最適化」と訳されています。SEOは、ユーザーが検索エンジンを利用してキーワード検索した際に、自社のサイトが上位に表示されるよう、Webサイトを最適化する施策を意味します。検索エンジンとしてよく用いられるGoogleの検索エンジンは、ユーザーが入力した検索キーワードに最も合致するサイトを拾い集めます。この検索エンジンの検索・抽出ロジックがすべて解明されているわけではありませんが、どのようなユーザーがどんな意図で、何を求めているのかをユーザー目線で探ることがSEOの基本になります。

デジタル・マーケティングに活かせる資格

デジタル・マーケティングに関係する資格は数多くありますが、ここでは、よく知られた比較的チャレンジしやすい資格試験を中心に5つ紹介します。デジタルマーケティング分野としては、まだ国家資格はなく、すべて民間資格です。

国際実務マーケティング協会主催の、マーケティングに関する実務検定資格です。デジタル・マーケティングを学ぶ前に、マーケティングについて学ぶことをおすすめします。この資格を通じて、マーケティングの基礎から一通り学ぶ事ができ、体系的にマーケティングついて理解することができます。デジタル・マーケティング分野を目指す方は是非チャレンジしてみてください。A級からC級まで3ランクあります。

▪受験方法：Web ▪難易度：中 ▪サイトマーケティング・ビジネス実務検定

ネットマーケティング検定は、（株）サーティファイ主催の民間検定試験です。 試験を通じて、インターネット・マーケティングの全般について、基本知識や一般的な方法論などを学べます。 

▪受験方法：Web ▪難易度：易（合格率7割前後） ▪サイト：ネットマーケティング検定

Webアナリスト検定は、一般社団法人日本Web協会（JWA）主催の民間検定試験です。 講座受講と試験を通じて、Web分析やWebマーケティングの全般についての基本知識を学べます。 Googleアナリティクスの使い方についても学べます。

▪受験方法：Web ▪難易度：易（合格率8割前後） ▪サイト：Webアナリスト検定

Googleアナリティクス個人認定資格（GAIQ）は、Google主催の認定アナリティクス資格で、「Googleスキルショップ」から無料で受験することができます。Googleアナリティクスを体系的に学ぶことで、（自社）サイトの改善や効率化のヒントなどを得られます。Webサイト運営担当者のスキルアップにおすすめします。

▪受験方法：Web（無料） ▪難易度：易 ▪サイト：Googleアナリティクス個人認定資格（GAIQ）(https://skillshop.exceedlms.com/student/path/2949-google-gaiq)

IMA検定（Internet Marketing Analyst）は、クラウドマネージメント協会主催のマーケティング検定試験です。インターネットでの集客やGoogleアナリティクスを用いたアクセス解析・サイトの改善策作成・実行・広告プラニングなどのデジタル・マーケティングに必要なスキルを学べる検定です。スタンダードコースとプロフェッショナルコースの2コースがあります。

▪受験方法：Web ▪難易度：易 ▪サイト：IMA検定

デジタル・マーケティングの将来性

デジタル・マーケティングの概要について解説し、デジタル・マーケティングに活かせる資格も紹介しました。では、デジタル・マーケティングに将来性はあるのでしょうか？一過性のブームということはないのでしょうか？そうした皆さんの不安や疑問にお答えしましょう。

総務省が発表している通信利用動向調査（令和2年版）によると、インターネットの利用率が89.8%（約9割）と、ほぼすべての国民がインターネットを利用している状況にあります。また、ビジネスにおいてSNSを活用する企業の割合が4割前後に達し、クラウドサービスを活用する企業は6割を超えるなど、企業でもデジタル活用が当たり前になっており、デジタル化の流れは止まることを知りません。

この動きは止まることはありません。さらに、コロナ禍という状況がデジタル化に拍車を掛けています。ECサイトやNetflixなどの動画配信サービスは右肩上がり、低迷を続けてきたPCの販売もテレワークやオンライン事業によって急速に増加しています。

日本では世界に後れを取るDXに対する危機感から、政府主導のDX化が推進されています。

デジタル・マーケティングはDXの一部というよりは、DXそのものと言えます。一方で、DXはDXに対応した組織や人材が不可欠であり、ビジネスのあり方を根本から見直すことが前提となっています。

すなわち、顧客の獲得や売上増進を目指すデジタル・マーケティング化がDXと一体で進むことで、企業そのものの在り様を大きく変えていくことを意味するのです。

ITエンジニアの多くの方にとって、日本の企業の大変革に関わる機会が訪れたと言っても過言ではありません。この絶好の機会を見逃さず、デジタル・マーケティングに関わる資格を身に付け、さらなる飛躍を目指してください。