Web3.0とは?
1989年にWorld Wide Webで利用されるHTMLが考案されて以来、利用しない日はないと言ってよいほどWebは人々の生活に浸透しています。
当初Webの利用方法は情報を静的コンテンツとして表示するだけでしたが、現在では双方向のコミュニケーションがとれる場としても活用されています。また最近ではWeb3.0という言葉が使用され始めています。
Web3.0は正確な定義を決定付けられている言葉ではありません。ですがWeb開発当初の思想であるDecentralization(分散化・集中の排除)を語源としているとされており、次世代のWebのあり方や概念を表す言葉として使用されています。
Web3.0の前には「Web1.0」と「Web2.0」という言葉が使用されていました。ここではWeb1.0から順番にそれぞれのWebについて紹介していきましょう。
Web1.0とは?
Web1.0とは、2000年以前のWeb利用形態を指します。
Webは1989年に欧州原子核研究機構 (CERN) のTimothy "Tim" John Berners-Leeによって考案された「World Wide Web」により実現化しました。1990年代にブラウザが開発され、以後一般利用が進んでいきます。
その目的はコンテンツ情報にハイパーテキストで記述したリンクを作成し、参照を容易にするというものです。つまり一方向の情報発信を主としており、出版印刷物の参照と同じ意味合いを持っていました。
コンテンツは静的Webコンテンツでユーザは変更できないため、ホームページ参照用のものでした。また政府が初期のWebに出資し商業利用は禁止されていたため、単に情報を探すだけのものでもありました。
Web2.0とは?
Web2.0とは、2000年以降のおよそ10年間のWeb利用形態を指します。
Web2.0ではコンテンツ利用が双方向となり、SNSのように相互に発信可能なサービスが考案・提供されました。商業利用の解禁により、広告事業への活用やコンテンツ発信の事業化が進んでいきます。
利用分類は多岐に渡り、Webの活用方法は増加しました。具体的には「調べる」・「教わる」・「知らせる」・「蓄積する」・「共有する」・「発信する」・「繋がる」などがあります。
これによりWeb1.0の「ドキュメントの参照」から、Web2.0では「データの作成・更新・利用・共有」に利用形態が拡大したと言えるでしょう。
Web3.0とは?
Web3.0ではWebの形態がさらに変化していくとされています。Web3.0の大きな特徴として単一の中央集権組織が存在しないことがあげられます。
またネットワークやネットワーク上のデータの管理権を個々のユーザーが所有している分散型と呼ばれる構造をとることも、Web3.0における大きな特徴です。
そのため個人情報の保護やプライバシーの保護が強化可能な技術やハッキング対策のためのセキュリティ技術などの実装が進むでしょう。加えてブロックチェーン技術の活用によりさまざまな変化が訪れると予想されます。
続いて人工知能の活用領域の拡大が期待できます。具体的には人工知能を活用した個々の希望に合わせたリコメンデーションの精度向上やパーソナライズへの適用が挙げられます。そのためビッグデータや機械学習の精度がさらに向上していくでしょう。
Web3.0の特徴と最新テクノロジー
Web3.0の特徴を紹介していきます。Web3.0は従来のクライアント・サーバー接続を発展して、ピア・ツー・ピア(P2P)のネットワーク接続を基本的な分散接続の方式としています。
クライアント・サーバー方式では情報がサーバに蓄積されるため、サーバー攻撃や個人情報管理等のリスクが増大します。一方P2Pでは仲介するサーバがないため、政府や企業による想定外の情報蓄積や閲覧リスクが軽減します。
加えてIoT市場拡大により情報量が爆発的に増えることが想定されます。そのため、人工知能(AI)や機械学習を活用しデータ検索の効率化・ブラウジング効率を高めたカスタマイズサービスが増加するでしょう。
それによって広告・マーケティングの質の改善やカスタマーサポートの品質改善・効率向上がもたらされると考えられます。加えて双方向の情報開示が進んでいくことで、民間ジャーナリスト等の活躍の場が増えていくことが予想されます。
ここからはWeb3.0に関係してくる最新テクノロジーや特徴的な技術について紹介していきます。
ブロックチェーン技術
ブロックチェーン技術はサトシ・ナカモトと名乗る人物が2008年に暗号通貨ビットコインの公開取引台帳の実装のために発明したとされています。
この発明によりピア・ツー・ピア(P2P)接続における当事者間の取引をオープンな分散型台帳で、安全に恒久的に管理できる方法が確立されました。チェーンブロック技術は一般の仮想通貨(暗号通貨)の公開取引台帳として広く利用が始まっています。
同様に分散型台帳はその安全性の高さからビジネスでも活用され始めています。日本においても各金融機関での実証実験が進んでおり、今後の活用が期待できます。
【参考】Bitcoin: A Peer-toPeer Electronic Cash System
AI
AIとは人工知能を指すAirtificial Intelligenceの略で、人間が行うような知的な行為をコンピューターに機械的に実行させる技術や研究分野のことを指します。
人間の介在なしに機械的に実行することができれば人間の負担が減り、従来経験則に任せていた領域も科学的に最適な結果を導くことが可能になります。
人工知能の学習方法には機械学習と深層学習があります。機械学習(Machine Learning)は学習方法を定義し機械的に学習させることを目的として、過去の蓄積データから将来を予測するための技法を指します。
学習し得たデータはビッグデータとして蓄積していきます。そして過去のデータと合わせて事象の分析や個人に適するコンテンツのパーソナライズ・リコメンデーションへ活用されていくのです。
深層学習(Deep Learning)とは人間の脳神経であるニューロンをヒントにモデル化されたニューラルネットワークを用いた技術になります。
IoT
IoTはInternet of Thingsの略を指し、全てのモノがインターネットに接続され情報が相互に共有される仕組みを指します。
IoTにおいては情報共有される環境が整備され従来は不可能であった機器にも搭載されることにより、我々の生活がより豊かになることが期待されています。
スマートデバイスやスマート家電・産業システムへの適用拡大が続いています。そのためIoTによって生み出された膨大なデータは、情報を蓄積するビッグデータや分析するAIと連携し有効活用されるでしょう。
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングとはインターネットを通して接続されたコンピューティングシステムをサービスとして提供することを指します。
従来は所有型システムとして必要とされる用途に応じたサーバやストレージを設計し調達していました。
クラウドコンピューティングではクラウドサービス事業者が提供するITインフラストラクチャーをサービス契約し、利用型システムとして利用料課金によりシステムを利用します。
そのためシステム資源不足部分を早期に割り当てたり、新規の業務サービスをスピーディに立ち上げたりすることが可能です。それにより新しいサービスの開発が次々と行われていくでしょう。
Web3.0がもたらす変化
ここまでWeb3.0について紹介してきました。Web3.0になっていくことでさまざまな変化が訪れます。
ここではWeb3.0がもたらす変化について「Web2.0における問題点の解決」・「サーバが安定する」・「仲介組織を通す必要がなくなる」・「コンテンツへのアクセスが自由になる」・「データの所有権をユーザーが掌握できる」の5つを紹介します。
Web2.0における問題点の解決
Web2.0における問題点として「サイバー攻撃を受けやすい」や「不正アクセス」・「個人情報などの漏洩」・「データの改ざん」などがあげられます。これらの問題点はWeb3.0が実現することで解決可能であると考えられています。
Web3.0ではブロックチェーン技術の活用により情報管理の形が非中央集権型となります。つまり個人情報は特定の企業に収集・管理される形から、ブロックチェーンに参加した個々のユーザーの手によって分散管理されるようになるのです。
また現在ではサービスの基盤を特定の企業が提供していますが、Web3.0ではユーザーの参加しているネットワークがサービスの基盤となります。
このようにブロックチェーン技術が活用されることで個人情報が一箇所に集中せず、外部からの攻撃に強いネットワークの構築が可能になると考えられています。
サーバが安定する
Web3.0におけるブロックチェーン技術の活用はサーバの安定にも繋がります。
現在は特定のサービスやコンテンツを使用する際に各々の企業が管理しているサーバを使用しています。そのためアクセスが集中すると処理速度が落ちることやサーバがダウンしてしまうことがあります。
ですがブロックチェーン技術を用いれば、ユーザー同士で構築したネットワーク上での使用となります。そのためアクセスの集中やサーバのダウンによるサービスの遅延や停止の発生率が低くなるのです。
仲介組織を通す必要がなくなる
前述の通りWeb3.0ではユーザー同士が直接繋がることで構築されたネットワーク上にて、サービスやコンテンツを使用します。そのため現在のように仲介組織の所有するサーバを通したり、使用したりする必要がなくなります。
コンテンツへのアクセスが自由になる
Web3.0は単一の中央集権組織が存在しない分散型ネットワークです。そのため国籍や性別などの制限なく、誰もが自由にネットワークへ参加することができます。
また検閲やアクセスの制限を行う組織等も存在しなくなるため、自分の使用したいサービスやコンテンツへ好きな時にアクセスすることが可能となります。
データの所有権をユーザーが掌握できる
前述の通りWeb3.0には中央集権組織が存在しません。そのためデータの所有権は完全にユーザー自身のものとなり、ユーザーの許可なくデータが使用されることや単一の組織が多数のユーザーの情報を保持するといったこともなくなるでしょう。
ユーザーの権利がより尊重されるWeb3.0
Web3.0とは次世代のWebのあり方や概念を表す言葉です。Web3.0の大きな特徴として単一の中央集権組織が存在しないこと、ネットワークやネットワーク上のデータの管理権を個々のユーザーが所有することがあげられます。
またブロックチェーン技術の活用によりセキュリティ面の強化やサーバの安定が期待できます。
これらのことからWeb3.0では誰もが自由に好きなサービスやコンテンツを利用することができるようになるとされています。
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